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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

AREA 1 今、そこにある危機

10/110

stage 9 総評:微妙

 夕食の後、パソコンのチャットを使って目覚めたスキルについて話をしたのだが俺の仲間たちは実に現実的だった。

『微妙だなー、タケらしいっちゃらしいけど』
『微妙ね、全くの役立たずという訳でもない……けれど、効果的かと問われると首を傾げる性能なのが特に』
『で、でも沢木さんらしくていいのではないでしょうかっ、び、微妙……微妙、確かにそうとしか言いようないのですけどもっ』
『瞬と高峰は無慈悲なお言葉ありがとう。そして和奈は無理しなくていいんだぞ、思った事ははっきり言ってくれ』

 フォローの言葉を探して探して、それでも正直に言うしかなかった感が強い和奈にだけは皮肉ではなく素直に礼を返す。
 俺のスキル欄に新たに覚醒したスキルの説明をスクリーンショットで見せた時の仲間達の反応は多少のコメントの差異はあれど総評は同じだった。ふふ、悲しいかな、俺だってそう思うので怒る気にもなれない。

 灰色の沈思黙考(シャープタクティック)

 それが目覚めた俺の固有スキルの名である。
 一見、なにやらカッコよさげな響きではあるが、説明文を見て愕然とした。
 任意で発動可能な特殊スキルであり、使用時における待機時間などのデメリットは無しの即時発動型のスキル。
 発動後、使用者の思考速度が極限まで増大し時間が止まったかの如き思考が可能になる代わりに、発動中は思考することとスキルの解除以外の行動は取れず。なお、発動中はTPを微量に消費し続けるため発動可能時間の長さはTPの最大値に依存する。

「時間制限つきのポーズボタンじゃねえか!!」

 その間に攻略本を見たり、wikiを参照したり、或いは他の人と作戦会議する事すらも出来ない。
 その時点で俺が得た情報と周囲の視覚情報を頼りに、安全に作戦を立てられる、せいぜいその程度の能力だ。他の二人に比べて地味かつ微妙、さらには戦局を左右するような仰々しいスキルでもないと俺をどん底に叩き落すかのようなスキルだった。こんなスキルでどう戦えと。いや、活用できないわけではないが。

『あれだよなー、ギャグ漫画とかでよくある登場人物がすげー長い長文で色々考えてるシーンとかで、結論が出た時に「この間、約1秒」みたいなのが任意で出来るってだけだろ?』
『おい、瞬。その例えにそこはかとない悪意を感じるんだが』

 よりにもよってギャグ漫画を例をあげるかキサマ。
 正統派とは言えないまでも、少年漫画的なパワーアップをしているお前にそれを言われると俺の心がマッハでブロークン寸前になるだろ。

『せめて和奈と相談出来るようなスキルならまだ活用できたかもしれないけど、沢木君一人が黙々と考えてるだけじゃねえ……』
『俺、別に天才でもなんでもないからな。まさしく下手の考え休むに似たりを地で行くと思う』

 これで頭の回転は鈍くは無いと思うが、少なくとも驚異的な頭脳の持ち主だったりするわけではない。学業の成績もいたって平凡だし、パズルゲームの腕前も極々普通、およそ頭脳を活用するようなジャンルに関しては秀でたものがあるわけではない。
 そんな俺が誰にも邪魔されず、妨害も受けず思考をまとめられるってスキルを得てもなあ……。三人の評価はあんまりだとは思うが、俺自身反論が思い浮かばないのだ。こんなんどうしろと、と自分でも思う限りである。

『そもそも、何故に俺にこんなスキルが覚醒したんだろうか……瞬のパッシブスキルと同じでぽっと出のユニークスキルっぽいのに』
『あれこれ考えたり悩んだりする癖があるからじゃねーの? 考える時間をやろう、みたいな流れを別に敵さんの許可を貰わなくても出来るようにとか』
『これ以上、俺の精神をズタズタにしないでくれ』

 さっきから瞬の例えはいちいち的確すぎる。
 だが、今まで立てた固有スキルの変化の傾向を考慮すると……俺に目覚めるべくして目覚めたスキルなのは否定できない事実だ。実際、ゲームでも戦闘でも目の前の事に対処しつつも頭は別の事を考えてたりするからなあ。

『タケ、ところでそのスキルって発動したらどれくらいの時間効果が続くんだ?』
『発動してる間だけTPを消費するオンオフタイプのスキルだから使い方によるが……今の俺のレベルだとTP全部回したら10分は余裕で保つと思う。いずれはもっと長い時間にもなるだろうけど』
『それもまた微妙じゃん。基本的にTPは時間経過の自動回復と攻撃を当てる事で回復するったって』

 そうなのだ。
 例えこのスキルを使って妙案を立てられたとしても、それがスキルの組み合わせなどに依存する場合、肝心の俺のTPが枯渇していてはご破算という可能性は大いにある。
 俺達のスキルの源であるTPはスキルを使わなければ何もしなくても自然に回復するがその量は微々たる物。他には俺たちのTPの元となる神経と密接に繋がっている武器などで敵を攻撃する事でも生み出されるが、それだってバカバカ大量に回復するわけではない。
 ゲームの方のREGAIN HEROESでは、TPを使い切るまでコンボを叩き込み、そこからまた通常攻撃で稼いでその繰り返し、みたいなプレイスタイルもあったがゲームオーバーと自分達の死がイコールで結ばれている戦いで、そんな戦法を取ろうとはとても思わない。
 このスキルを使うにしても自分の中できっちり時間がどれだけ過ぎたか、それに応じたTPの消費量をきっちり頭の中で把握できていなければマズイなんてもんではない。

 ……うん、何て使い勝手が悪いスキルなんだろうか。

『そ、それでも不意打ちされた時に体勢を立て直すまでの手順を考えるだとか、あと……あと……そうです、心を落ち着けるための時間に使うとかですね!』
『和奈、最初のはともかく後半の方はそのためにTPを使うのは費用対効果に問題があるわ』
『はぅぅ……』

 さっきから何とか俺をフォローしようとしてくれる和奈のいじましさだけが心の癒しだ。そして高峰の真っ当な指摘も胸に刺さるが事実だからどうしようもない。
 うん、そうだな。とりあえず俺にも固有スキルが目覚める可能性があったっていう結果だけは前向きに受け止めよう。

『とりあえず、俺にも固有スキルが目覚めたって事は色々やってスキルが目覚める方向性を探すことには意味があるって事で納得する事にしよう』
『タケがお得意の自分を誤魔化す理屈を並べることで気を取り直したな』
『瞬、余計な一言入れんな』

 学業含めてあんまり頭が良い方ではない親友はその分、勘に優れている。考えて気づかうのは苦手だし言葉も結構問題がある時もあるが、それは単に不器用というだけで場の空気とかそういうのには敏感な男なのだ。
 だからこそ、俺にはストレートな物言いで突っ込んでくるのだが。

『それよりもスキルの取得と作戦会議だろ。二人は大体方向性決まってるからいいけど、俺は二人に合わせるつもりだから』
『そうだなー、オレは補助魔法のレベルをもちっと上げてもいいんじゃね? って思うけど』
『味方の能力の底上げや敵の弱体は汎用性があるものね。確かマスタリーのレベルアップで効果時間が延びて、各種魔法のレベルアップで効果が上がるんだったかしら?』
『4から5に上がる時は魔法のレベルアップでも効果時間が延びるな。和奈、スキルのレベルって全部10が最大値だっけ?』

 瞬と高峰の疑問に答えつつ、俺は和奈にも質問を重ねた。

『そうですね。後は、大半の魔法の効果はステータスにも依存するので魔法やスキルそのものがレベルアップ出来なくなっても、効果が据え置きという事は無いはずです』
『ゲームじゃなくてもスキルに限界値ってあるのか?』

 なんかこう、努力を続けていれば延々と上がりそうなイメージがあるんだが。

『REGAIN HEROESはあくまで過去の戦士達が得た力を短期間で皆さんに再現させていっているようなものなので……』
『限界以上の力を得ることは私達の魂や肉体そのものを傷つけ、最悪自壊させかねないので、システム側で問題の無い範囲に留められているのよ』
『ああ、そうか。こうして強くなってる事自体が半分裏技みたいなもんだもんな……』

 世の中のフィクションに溢れているチート程便利ではないが、これでも十分強くなる、という点では裏道のようなものなんだろう。
 それも当然だ。現代高校生がたかだか数日で生き死にのかかったチャンバラをほぼ無傷で乗り切れているというのがそもそもおかしいのだ。なんらかの制限があってしかるべきである。

『やっぱり攻撃系のスキルはいったん捨て置くべきか……殴る斬るは瞬と高峰に任せて俺は後方支援を』
『でも、それだと強化魔法とかを使った後は沢木君のやることがないのよね』
『タケ、弱体化魔法も取ったらどうだよ? 筋力アップの魔法があるって事は敵にかけるその逆の魔法とかもあんだろ?』
『ああ、強化魔法と同じである程度離れた相手にも効果のある各種弱体化魔法はある』

 バフとデバフの重ねがけによる有用性はREGAIN HEROESでも効果的だった。まだ、弱体魔法を習得していなかった時期に、同様の効果のあるアイテムを使ったりしたのだが明らかにダメージ量が増減したり、敵の動きが鈍くなったりなど明白に効果が現れていたのを覚えている。
 ソウルフォームではどのように作用するか原理は分からないが、剣が相手に通りやすくなる防御ダウンの魔法や、相手の動きを鈍くする魔法など見た目にも分かりやすい弱体魔法は幾つかあるのだ。

『あ、でも沢木君、出来れば片手剣の攻撃スキルのスマッシュも上げておいてもらっていいかしら?』
『別に構わないけど、何でだ? 確かに初歩のスキルだし前提になってるスキルも多いから後々には俺も多少は伸ばすつもりだったけど』

 威力は普通に剣を振ったりするより多少強い程度だが、闘気を剣に集中させて敵に当てるだけというスキルなので反動も硬直も短く、加えて消費するSPが僅かとコストパフォーマンスは悪くない武器スキル。

『近時の二十年前の戦いのデータを参考にすると、大掛かりな「防衛戦」の時に現れるインベーダーは大抵手下や雑魚を引き連れているはずなの。そういうのを「露払い」するのに、出が速くて多少威力のある攻撃手段の一つや二つ用意してくれていると、私や柏谷君がボスを攻撃するチャンスが増えるんじゃないかと思って』
『なるほどな。分かった、このペースならきっと当日までに補助魔法マスタリーのレベル3には出来ると思う。他の魔法をどう伸ばすかにもよるだろうけど、とりあえずスマッシュは取得しておく』
『そうね……相手の足を鈍らせる魔法があったわよね。あの魔法を取得しておいたらどうかしら』
『ムーブクリンプか……そうだな、行動阻害系の魔法の前提になってるしそれにするよ』

 この魔法から派生するスキルを取得していく事で、攻撃の動作に関わる行動を遅らせる魔法などが取得可能になり、最終的には全身の動きを阻害する魔法にまで発展する。
 俺と高峰は基本的に敵の攻撃は回避前提で作戦を立てている。どれだけ防御力を上げようとも、攻撃を食らうのは出来るだけ避けたかった。痛みもあれば怪我もする。そして万全ならいざ知らず、疲労や怪我が蓄積すれば出来る動きも出来なくなる。それを避けての考えだった。

『後はいざという時の回復か……訓練中は大した怪我とかしなかったけど瞬は事故るとヤバイだろ?』
『防御しそこなう可能性はゼロじゃねーな!』
『あれ? そういえば和奈。使う機会無かったから忘れてたけど、ソウルフォームの時ってアイテムみたいなのって使えるのか?』

 装備品はあっちの世界でしっかり顕在化してたが、REGAIN HEROESで取得したアイテムの扱いについてはまだ確認していなかった。

『はい、大丈夫ですよ。魔法を使うときのように頭の中で使うアイテムを念じていただければ手元に出現させますので。ただ、確保している以上の数を作り出すことは出来ませんし、使用可能回数にも制限はありますが』
『そこら辺もやっぱ敵の素材……というか敵から獲得したエナジーとかを使って作るのか』
『そうです、あらかじめ用意されたクリエイション用の方程式に従って、わたしの魔力を使って瞬時にこちらの倉庫にストックしてあるアイテムを分解し、皆さんの手元にマテリアライズするというシステムですっ。わたしの様に支援に徹底したソウルフォームの能力者にしか出来ない能力なんですよー!』

 裏方という事で引け目を感じていたっぽい和奈からやけに意気揚々とした長文が送られてきたと思ったが、そういう理由か。画面の向こうで満面の笑顔で、それでいてちょっとだけ誇らしげに胸を逸らしている和奈の姿が思い浮かんで俺は思わずほっこりした。

『ならやっぱり回復魔法は取らずに、俺は俺の好みのスタイルの中で次の戦闘に有用そうなスキルをまず伸ばしておくことにするよ。瞬も出来ればこっちのがいい、っていう魔法やスキルがあったら言ってくれ』
『おう、ま、後三日あるんだ。まだ方向修正は利くだろ、焦らずにやろーぜ』

 俺としては三日しかない、って印象なんだけどな。
 初戦を落とすわけには行かないし、出来る限り頑張っておかないと。 
 
主人公にはやはり特殊なスキルが必要ですよね。

ええ、特殊ですしユニークスキルですよ、これ(遠い目
+注意+
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