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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第一章

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09.現代のメイド

 次の日の朝、エグゼクティブ1の中。
 俺はキャビンでコーヒーをすすりながら、100インチのプラズマテレビを見ていた。

 テレビが流れているのはワイドショー、昨日「やらかした」新井の話題で持ちっきりだ。
 画面の右下に「新井議員、緊急入院」って出てる。
 昔からよくある、政治家の時間稼ぎのよくある手だ。

「無駄だよ、新井センセイよ」

 俺はコーヒーを更にすすって、呆れ笑いをした。

 もはや新井は逃げられない。
 今までの新井は「アイツ絶対やってるよ」という、世間での認識だった。
 それが今は「ほらやっぱりやってた」になった。

 二つとも同じ「心証」で、ほぼ真っ黒なのが一緒だけど、実際は大きく違う。

 「絶対にやってる」って疑惑はまだ助かる、「やっぱりやってた」って確証になるともうどうしようもない。
 今回の新井は「やっぱりやってた」と思われる流れに入った。
 いくら逃げてももうどうしようもない、むしろこの状態で下手に逃げ回った方が傷が深くなる。

 まあ、もう俺には関係ないけどな。

 ピコーン!

 テーブルの上に置いたスマホが鳴った。
 それを取ろうとして、間違ってコーヒーカップに触れてしまって、コーヒーを少しぶちまけた。
 テーブルの上と、床にもこぼれてしまった。

 俺は雑巾を取りにキッチンに向かったが、シンクにある前使ったカップが目に入った。

「……面倒くさいな」

 エグゼクティブ1はいい車だ、敷地数十平米で実質三階建てに車庫付きの家を乗せて走るキャンピングカー、内装も機能もまったく文句のつけようがない。
 本当に家そのものだ、でもだからこそ。

 家事、という問題が発生する。

 異世界にいたときもいれると、かれこれ二十年近く家事をしてない。
 異世界にいった直後、奴隷商人との絡みの後で、奴隷を買ってメイドにしたんだ。
 家事は全部奴隷メイドにやらせてたんだ。

 家事か……どうにかしないとな。

 俺は雑巾を取ってきて、軽くテーブルと床をふいた。
 テーブルも床も大理石だから、こぼした直後って事もあって綺麗に拭けた。
 雑巾をもってキッチンに戻ろうとした、その時。

 テレビの中に一瞬だけ映った姿に反応した。
 雑巾をもったままテレビを食い入るように見つめる。

 画面は新井がいた議員会館の前、もううつってはいないが。

「間違いない、彼女だ……でもなんで……?」

     ☆

 エグゼクティブ1の車庫から乗用車を出して、それに乗って議員会館の前にやってきた。
 昨日の今日で、マスコミが大勢押しかけて議員会館をバックに報道している。
 その周りに野次馬が集まっている。

 俺は周りを見た、特に野次馬の中を探した――いた。

 透明人間スキル、発動。
 二十秒間の透明人間、そのままダッシュして相手の所にむかう。
 到着すると肩を組んで歩き出す。

「ひゃあ! だ、だれ?」
「しー、黙ってついて来い」
「あっ……」

 肩を抱き寄せた瞬間抵抗されたが、俺の声を聞くとすぐに大人しくなって、言われた通りついてきた。
 彼女の肩をだいて歩いて、曲がり角を曲がったところで透明人間が解除された。

「風間さん!」
「やっぱりあんたか、佐山志穂。なんでこんな所にいたんだ」
「えっと、ネットの動画を見ました」
「ネットの動画?」
「はい! 風間さんがあげた動画です」
「新井を追い込んだあれか。よく都合よく見れたな」
「都合よくじゃないですよ。あれもう再生が一千万超えてるんです。今すごい人気です」
「なに?」

 俺はスマホを取り出した。
 スマホの待ち受け画面に「通知999+件」って表示されてた。
 ああ、さっきコーヒーをこぼした時の通知か。

 通知を開くといろんなメッセージが来ていた。
 全部があの生放送、そして動画をみたユーザーからだ。

「取材がしたい……無視だな。転載してもいいですか……無視しとけば勝手にするだろ。よくやった、すげえ、すっきりした……」

 メッセージは色々あったが、特に重要なものは見当たらなかったから、通知機能を切ってスマホをポケットに入れた。

「これをみて、声で分かったんです、風間さんだって。だから東京に出てきて、議員会館の前にきたんです。どうしても風間さんにもう一度会いたくて」
「なるほど。でもなんで俺にあいたいなんておもったんだ? 金井興業の連中はもうまともに身動きとれないほど始末したはずだが」
「その、またお礼をちゃんと言えてなくて」
「それだけのために?」
「それに……恩返しもしたくて」
「恩返しか」
「はい!」

 志穂はまるで俺に食いつくかのように、身を乗り出してきた。

「恩返ししたいんです! 風間さんに助けて――命を助けてもらったようなものだから」
「命って大げさ――でもないか」

 志穂は頷いた。
 新井の動画をみてここに来たって事は話の流れもわかってるって事だ。
 一歩間違えれば自分も海外に売り飛ばされてた事を、そしてそれはもはや生きて日本の地を踏めないような事になっただろうと。
 志穂はそれを正しく理解していたようだ。

「だから! 恩返しをしなきゃって! なんでもします! なんでもさせてください!」

 更に身を乗り出して力説する志穂。
 命をすくった恩返しさせてと押しかけてくる女、押しかけだが、悪い気はしない。

 ふと思い出した。
 俺は今、少し困っている事に。
 少し考えて、彼女に聞く。

「そうだな……家事は出来るか?」
「はい!」
「よし、じゃあメイドになってくれるか」
「――っ! ありがとうございます!」
「おいおい、即答していいのか。メイドだぞ」
「もちろんです!」

 志穂は大喜びして、パッと頭を下げた。

「私、頑張って風間さんのメイドします!」
「ん」

 悩みが解決されたからか、最初にあったときと違って前向きで、どことなく忠犬っぽい感じがする志穂。
 彼女なら大丈夫だろう、そしてこれでエグゼクティブ1の家事はどうにかなるだろう。

 奴隷じゃないけど、それに近い境遇の子がメイドとして加わった。
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