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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第三章

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08.鉄砲玉

 ぐったりうなだれるアンディ、うつろな目で空を見上げている。

『これはもう……再起不能ですね』

 アルベルトが哀れみの視線をアンディに向けた。

『でもいいのですか?』
『何が?』
『話を聞く前にここまでやってしまったら、話を聞けなくなるのではありませんか?』
『大丈夫だ……意識さえあればどうとでもなる』

 スキルの事をしらないアルベルトに適当な事をいっといた。

『なるほど……さすがパンドラ、何もかもが予想以上です』
『何もかも?』
『ええ。I国の公用語だけじゃなくて、方言までこんなに流暢に話せるとは思いもしませんでした』
『必要なものは覚えるさ』

 俺はほとんど間を開けず、それっぽい台詞で返事をした。
 少しでもためらったり聞き返したりするとそこからほころびが出るかも知れない、そうならない様に取り繕った。

 どうやらアルベルトとの会話は標準語じゃなくて方言だったようだ。
 スキル・完全翻訳はそこまでの細かい差はわからない、ただただ完全に翻訳するだけ。

 ちょっとした弱点……って程でもない「仕様」だな。

 そんな事を思っているうちに、スマホがなった。
 アルベルトにアンディ。
 二人のスマホが同時になった。

 アルベルトはぎょっとした、スマホを取り出した。

『知らない番号です』
『こっちもだ……むっ』
『どうしたんですか』
『そっちと同じ番号だ』
『え?』

 俺がアンディから取り上げたスマホ、それとアルベルトのものはまったく同じ番号が表示されていた。

 二人のスマホに同時に同じ番号から電話がかかってきた。
 普通じゃないなと、俺は気を引き締めてアンディのから電話に出た。

『初めまして、というべきかな』
『あんただれだ?』
『人に名前を聞くときは自ら名乗るべきではないのかな?』
『……パンドラだ』

 隣でアルベルトが行きを飲むのを感じた。
 パンドラって名乗るのは危険だが、このタイミングで、このような電話のかかってきかた。
 無駄に腹芸をやっててもそんなに意味はないだろうと思った。

『なるほど、有名人だ』
『今度はそっちの番だ』
『よかろう。わたしはレオン・ウォン』
『レオン・ウォン』
『なんですって!?』

 アルベルトが声をあげた。

『知ってるのか?』
『C国権力序列第十位の大物です……同姓同名の騙りでなければ』
『なるほど、そりゃ大物だ。そしてアンディ・ロウのボスってことか』
『ふむ、なるほど』
『なるほど?』
『電話ごしなら嘘はつけるということだ』
『……へえ』

 息をのむ――のを必死に堪えて、冷静なそぶりをして見せた。
 相手が本物のレオン・ウォンじゃないかもしれない、あるいはこれがブラフなのかもしれない。

 それは分からない、ヤツの言うとおり、電話ごしじゃ読心が使えないのは確かだ。

『ふっ、これはいいことを知った』
『そのかわり電話で出来る事もあるぞ』
『ほう? それは何かね』
『お前の居場所だ』

 そう言って、スキル・仮想空間を使った。
 電子の精霊、シロがアンディのスマホから相手の回線に侵入する。

 操作じゃなく回線の場所だけならすぐに分かった。

『用心深いな。次々と偽装先が変わってる。富士山の山頂、自由の女神、ISSの中……まだまだ変わってる』
『……』

 気配を感じた、さっきまで勝ち誇っていた相手の雰囲気が変わったのが電話口からでも伝わってきた。

『偽装先が分かったところで――』
『クルーザーはオススメしない、いざという時救援がはいらない』
『――っ!』

 ガタン! って音が聞こえた直後電話が切れてしまった。
 最後の聞こえてきた音は慌てて立ち上がって、移動をはじめた音だ。

『クルーザーの上にいたんですか?』
『ああ、C国の国内だから、今すぐにどうしようもないけどな』
『なるほど……それにしてもすごい。今のはハッキングですか?』
『ああ』
『機材も無しにどうやって』
『俺のスマホは特別製なんだ』

 そう言って自分のポケットに入ってるスマホを見せた。
 アルベルトは納得した。

 俺は更にスキル仮想空間をつかった。

 仮想空間にダイブして、シロにさっきのヤツのスマホに繋がるドアを出させようとした、が。

『すみませんご主人様』
『どうした』
『どうやら向こうの端末が破壊されたようです』
『なるほど。物理的に破壊すればハッキング出来ない……当たり前だな』
『すみません……私も端末が生きてないと……』
『近くに端末はなかったか? そうだな、物理的に五メートル以内に』
『なるほど! さすがご主人様。探します!』

 シロは慌てて動き出し、しばらくしてとあるドアをレールで運んできた。

『こちらです。クルーザーのシステムです』
『ふむ』

 ドアを開ける、中から巨大なサメが飛び出してきた。
 映画に出てくるような人食い鮫。飛びかかって、噛みついてくるそれの口を掴んで、上下にひきさいた。

 仮想空間がイメージした障壁の守護者を倒して、ハッキングに成功し、現実に戻ってくる。

 すると、俺のスマホから音声が流れ出した。
 さっきまで電話で話してたヤツの音声だ。

『私だ、今すぐ例の日本人を始末しろ』
『こ、これは!?』

 驚くアルベルト。

『ヤツのクルーザーのシステムにハッキングした。それを使って通信してるみたいだな』
『そんな事もできるのか……』

 驚愕するアルベルトとはよそに、男は更にいう。

『タカナシって名前だ。ああそうだ、すぐにやれ』
『タカナシ!?』
『知ってるのか?』
『ああ。鉄道建設計画での日本人のスタッフの一人だ』
『なるほど……それを殺すって事は。こいつが情報をうったスパイで、証拠を捕まれる前に始末しろってことか』
『守らないと!』

     ☆

 車をかっ飛ばして市街地まで戻ってくる。

『あれです! あれがヒロシ・タカナシ氏です!』

 一緒に連れてきたアルベルトが叫んだ。
 指さすのは中央分離帯を挟んだ反対の歩道にいる日本人の男。
 異国の地でもスーツにネクタイという、フルアーマーな日本人サラリーマンだ。

『早いところ確保してしまおう』
『そうですね――あっ!』
『どうした』
『あの車!』

 慌てたアルベルトが指さす方を見た。
 そこから一台の車が、タカナシめがけて突っ込んでいく。

『ちっ!』

 車から飛び出して、車道を駆け抜ける。
 暴走車のスピードが速く、タカナシを助けてる暇はない。

 俺はぐっと踏み込んでジャンプ、暴走車に向かって突っ込んでいった。
 真横からの体当たりで、暴走車の進行方向をずらした。

 ドーン!
 暴走車は近くのビルに突っ込んでいく。

「え、え、えええ?」

 周りで悲鳴が飛びかう中、引かれそうになった当事者のタカナシは何が起きたのか分からないままきょとんとしていた。

 アルベルトが向かってくるのを確認して、タカナシを彼に任せて、俺はビルに突っ込んでいった暴走車にむかった。

 運転席のドアを乱暴に開けて、運転手を見下ろす。

「酒くさい……偶然なのか?」

 一瞬そう思ったが、違ったようだ。

『くそ! あの日本人を殺さないと! このまま酒に任せて暴走した振りをすれば――』

 まわりくどいやり方だった、しかし有効な手口だった。

 離れててもかなり酒臭いこの男、タカナシをはねて事故ってもただの飲酒運転(、、、、、、、)で片付けられてしまうだろう。

 だが、それももうおしまいだ。

『少し黙ってろ、鉄砲玉』
『――っ!』

 低い声で恫喝するように告げると、向こうは「なんで知ってる!」っていうような、死ぬほどびっくりした顔で俺を見つめてきたのだった。
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