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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第二章

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20.死体蹴り

 仮想空間、電子の海。
 電子ウサギのシロが俺の肩の高さ、真横で浮かんでいた。

 目の前にレールがある、レールがIPアドレスつきのドアを運んでくる。

「うん、うまくいったな」
「以前よりも便利になった気が致します」
「アドレス指定でそのドアを運んできてもらえるってなったな。アドレスを見つけるのは今まで通り任せていいんだな?」
「お任せあれ。しかし、さすがご主人様、このような便利なシステムをイメージ出来るとは」

 スキル・仮想空間。
 ここのシステムは俺がイメージした通りの物に作り替える事ができる。

 セキュリティシステムが近未来兵器のレーザーで今一つ戦いにくかったから、ファンタジー風にイメージし直したら異世界にで戦い慣れたドラゴンになった。

 難易度自体は変わらないが、見た目と扱い方を変えることが出来る。

 今も、歩いてドアを探すよりも、目当てのドアを運んできてもらうというシステムをイメージして作り替えた。
 いわば特定の場所にのみ繋がるどこでもドア。

 昔こんな映画があったから、イメージしやすかった。

「ご主人様! お気をつけ下さい」
「ああ、見えている」

 目的のドアからにじみ出る様に敵が現われた。
 古代ギリシャの人間ぽい石像だ、それが一体、身長は三メートル近い、ガッチリとしたマッチョだ。

 目だけ赤く爛々と輝いている石像は動いて、こっちをギロリ、と睨んできた。

「こいつがここのセキュリティシステムか」
「そのようでございます」
「3メートルの動く石像……適正レベルざっと30って所か」

 仮想空間は俺のイメージで出来てるから、俺はざっくりとモンスターの強さをスカウティングした。
 あくまでざっくりと、ってレベルだ。

「ご主人様なら余裕でございます」

 シロのおだてに微かに笑いながら、ゆっくりと歩いて近づいていく。
 動く石像はぶっとい柱の様な腕を振りかぶって殴りかかってきた。
 モンスターは戦い慣れている、この程度なら――。

 ドゴーン! ビシッ! ガラガラガラ……。

 放ってきたパンチを真っ向から迎え撃った。
 パンチとパンチがうちあう。
 轟音と衝撃波を立てて、石像の腕が割れて、そこから全身が崩れた。
 自動車程度なら粉々になる程度のパンチだが、打ち合って倒すのは一撃で十分だった。

「さすがご主人様」
「この程度ならな」
「倒すだけでなく、倒し方とその前後の立ち居振る舞い、この光景を可能なら世界中に広めたいと思いました」
「それを裕子の前で話すのはやめてくれ、彼女が俺をスクープしたい執念、この仮想空間まで届きそうだ」

 そんなことはあり得ないのだが、裕子はそう思わせる程の何かがあった。

 それはともかくとして、俺は倒した石像を蹴っ飛ばして道を空けて、ドアもブチあけた。

「シロ」
「お任せ下さい」

 シロはドアの向こうに入った。

「ございます、カメラも、マイクも」
「カメラを出してくれ」
「はい」

 俺の目の前に映像が表示された。
 どこぞの室内、カメラははげ頭のスーツの男を映している。

「アングルが微妙だな……まあパソコンのカメラだししょうがないか」
「音声、出します」

 シロが言った直後、今度は音声が聞こえてきた。

『ひとまずリストラをして身軽にならざるを得ないでしょうな』
『リストラの相手は』

 音声は二人分だ、いずれも初老と思しき年齢の男の声だ。

『世論が世論です、在日達になりましょうな』
『彼らが納得するか?』
『あくまで表向きのリストラだ、別会社を作ってそこを受け皿にする。そして少しずつ、こっちのリソースを移転すれば――』
『看板のすげ替え完了。なるほどな』

 悪巧みをしている現場だった。

「ご主人様の予想通りでしたね」
「悪い方の予想だがな。まさかあの新聞社のトップが、この期に及んで向こうに肩入れするとはな」

 仮想空間でハッキングしたのは新聞社の社長のパソコンだ。
 それに侵入して、カメラとマイクから映像と音声を拾った。

 念の為にの侵入だが、こうなったら仕方ない。

「シロ、生放送の準備だ」
「カメラとマイクの内容をそのまま流せばいいのですね」
「ああ。ついでにこの二人が持ってるスマホのドアを出してくれ。侵入してしばらく連絡とらせないようにする」
「御意」

 シロはぼうっと光った。
 俺の言うとおりカメラとマイクでとれた映像をsinji=パンドラ名義で生放送して、男達のスマホに繋がるドアをレールで運んできた。

 ドアに現われたモンスター、汎用のセキュリティをさっくり倒してドアもぶち破る。

 最近は俺の生放送途中で相手の知りあいから連絡が入ることが多かったが、こうすれば連絡がいかなくなった。

 二人の男は、上機嫌に新聞社の看板をすり替える方法を話しあっていた。
 それが中継されているとも知らずに。

     ☆

「あっ、風間さんが戻ってきた」
「シンジさん!」

 仮想空間からエグゼクティブ1のキャビンに戻ってくると、まず強い衝撃が俺を襲った。
 何事かとおもってみると、いつの間にか訪ねて来ていた美海が俺に抱きついてきていた。

「きてたのか……それにその衣装」

 装飾過多のブラウス、それにチェックスカート。
 今流行りの、一目でアイドルだと分かる衣装だ。

「仕事だったんだ。どうかなこれ」
「似合うよ」
「本当?」
「ああ、こういう大勢にみられる芸能人らしい格好はお前によく似合う」
「……嬉しい」

 さっきまでハキハキしていた美海が嬉しそうに頬を染めた。

「これは撮らないのですかな?」
「私はパパラッチじゃないよ! こんなプレイベートな写真なんか撮らないです!}
「え?」

 びっくりして横を向く、そこに裕子と涼介がいた。

「二人もきてたのか」
「済みません風間さん、勝手にいれてしまって」
「いやいい。この二人なら大丈夫だ」

 申し訳なさそうにする志穂にそう言って、安心させる。

「それよりも……なんかお前達、距離感が近い気がするんだけど」

 そう言って裕子と涼介をみる。
 気のせいかもしれないが、パッと見てそう感じた。

「うん! シンジさんが戻ってくるまでの間話してたんだけど! 話せる人だよね前森さん!」
「私も、今の彼女の答えが気に入りました。スキャンダルを狙うパパラッチのような存在なら排除せねばと考えていたところだ」
「そんな事しないよ! シンジさん、パンドラはヒーローだもん! こんな所を撮って公開するはずないよ! それよりもシンジさん、また誰か懲らしめてたんですか!」
「それ私も気になりますな。なにかフォローは必要ですか?」

 裕子と涼介が揃って俺を見つめた。
 なるほど、二人の距離が縮まっている理由が分かった。

 ものすごく意気投合したんだろうな。
 どっちも、「パンドラ」の強い味方、信奉者みたいなものだ。

 そんな二人に答える。

「トドメを刺してきた。残念だが裕子の出番はない」

 俺はそう言って、スマホを100インチテレビに出力させた。
 表示したのは例の動画サイト、sinjiの生放送。

『なあに、大衆は愚かだ。そのうちほとぼりが冷めて誰もこの事を気にしなくなるだろう』

「社長だ!」
「なるほど……ふむ、墓穴をどんどん掘ってますな」

 裕子は驚き、涼介はにやりと笑った。

「ふむ……これはもう、あの新聞社はおしまいですな」
「そう思うか?」
「ええ、トドメの一撃になる。もう何をしても巻き返しは無理ですね」

 そう言って肩をすくめる涼介。
 そうなるだろうとは思ったが、お墨付きをもらって少しホッとした。

「さすがという他ありませんね。この短期間で新聞社を一つ完膚なきにたたきのめすなんて」
「半分以上は向こうの自爆だ」
「それを暴けるのはあなた以外ありえません」

 ……そうかもな。

「所で、明日からしばらくお時間をいただけますか?」
「うん?」
「前森グループが建設したリゾートがオープン前なのですが、是非それに先駆けて試して頂いて、ご感想を聞かせていただければと」
「リゾート?」

 なんでいきなりそんなことを。
 気になったので読心で涼介の心を読んだ。

『この程度のアメに釣られるような方ではないでしょうが、彼が存在するだけで国益になる。接待になりそうなものをコツコツと積み上げなくては』

 ……。
 ちょっと意外だった。
 そんな事をいわれたこと今までなかった。

 異世界の連中の言ってる事とまったく逆だ。
 それは……割と嬉しい。

「せっかくだし、お言葉に甘えさせてもらうことにする」
「ありがとうございます、では私は準備して参ります」
「志穂と美海も一緒につれてく……でいいよな」
「もちろんです」

 涼介はにこりと笑って、エグゼクティブ1から出て行った。

 オープン前のリゾート、志穂は控えめに喜んで、一緒に行けると美海は更に俺に抱きついた。

 こっちに戻って、気ままに過ごしてやりたいことだけをやってきた。

 スキルを稼いだり、大金を思いっきり使ったり。
 なんかに巻き込まれたり見過ごせない悪者を成敗したり。

 異世界にいたときと変わらない日々だが、こっちの方がずっと楽しいと。
 俺は思ったのだった。
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