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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第二章

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16.裏切りと協力者

 さて、北大路をどうするか。

 片手を失って、苦悶の表情と脂汗を浮かべている老人。
 哀れな絵面だが、だからといって今までこいつがしてきたことが消える訳じゃない。
 今までやった事を白日の下に晒さないといけない。

「うぐ……はあ……はぁ…………」

 北大路が腕を押さえてうずくまる、もうまともな言葉も出てこないほどしんどいようだ。
 俺の記憶が正しければ90歳を越えてる老人だ、手を失うほどのケガはしんどいだろう。

 仕方ない、治してやろう。
 こいつがやってきた事を晒すためにはいまこの瞬間で死なれては困る。

 若干もったいないが、100ポイントでケガを治すスキルを取ろうとしたその時。

「閣下!」

 部屋の外から新しいヤツが現われた。
 北大路はもちろん、ペインに取り憑かれた山口よりも更に若い。
 三十くらいの青年だ。

 顔はこの場に似つかわしくない、ホスト風な感じだ。

「やま、き……私を……」
「もう喋らないで下さい! おい!」

 山木が手を振ると、更に数人入って来た。
 今度はいかにもヤクザっぽい顔の連中だ。

 顔に向こう傷があったり耳がかけてたり、顔欠損の見本市の様な連中だ。
 ホスト風の山木とは対照的な連中だ。

「食い止めていろ」
「「「うす!」」」

 連中は応じると、いきなり銃を取り出した。
 そして躊躇なく銃口を俺にむけてトリガーを引いた。

 とっさに後ずさった。
 そのまま床をコロコロ、ソファーの裏に隠れた。

 銃声が爆竹の様に鳴り響く、ソファーが掩体になって当たらないが、この弾幕の中飛び出すのは骨が折れる。
 とは言え向こうは銃だ、魔法じゃない。

 銃は銃弾の装填数に限りがある、それを待って、銃声が止んだ頃にソファーから飛び出した。

 マガジンの取り替えと、俺が飛び出した事で慌てた連中を思いっきり殴り飛ばす。
 一人だけマガジンの交換に間に合って更に撃ってくるが、一人だけならば問題なく、懐に潜り込んでのアッパーで、天井にめりこむほど殴りあげた。

 ――スキルポイントを4獲得しました。
 ――スキルポイントを4獲得しました。
 ――スキルポイントを4獲得しました。
 ――スキルポイントを4獲得しました。

 スキルポイントが入って、お札が部屋中を飛びかう。
 音が聞こえたからパッと窓際に走って下を見たら、北大路を乗せた車がまさに走り去ったところだった。

 ここまできて……逃がさん。

     ☆

 車の中、北大路は手首を押さえていた。
 全身が痛みで強ばって、小刻みに震えている。

「は、早く……病院、に……」

 助け出した山木に出す命令も弱々しかった。
 今にも死んでしまうんじゃないかって位弱々しい。

 実際、弱り切っていた。
 手首を丸ごと持って行かれた事に夜出血量はおびただしく、90を越えた老人にはつらすぎる。

「と、とっ、と……」

 そう言ったきり、北大路は意識を手放した。
 顔が真っ青で、今でも血がどくどくと流れ出ている。

 いかにも急患、いかにも一秒を争う事態。

 そんな状況の中、北大路を助け出した山木は、直前までの行動からは想像もつかないような、蛇のような冷たい目で北大路を見下ろしていた。

 そして、彼は懐から拳銃を取りだして。

「今まで居座りすぎだ、クソジジイ」

 冷徹な顔で、その銃を意識のない北大路に突きつけた。

     ☆

 二人に逃げられた後、ネットで居場所を探した。
 激しい銃撃戦で近所が通報してすぐにパトカーが来たから透明人間で逃げ出した。

 透明人間は俺にしか適用されないから、ヤクザの一人でも連れ出して読心で居場所を聞くのは出来なかった。

 だからネットで調べた

 元総理っていうVIP中のVIPである北大路の情報はさすがに出てこなかったけど、ヤクザで「やまき」って調べたらそれなりにでてきた。
 週刊誌のモノクロ写真だけど、顔もでてきた。

 山木勇勲、いわゆる三次団体の組長で、年齢は30ジャスト。
 上昇志向が強くて、年の割にはかなり出世してブイブイ言わせてるようだ。

 そいつのいるかもしれない場所はすぐに分かった。
 地域の匿名掲示板に、山木組の事務所がある近辺にはなるべく近づくなって書き込みがあった。

 警察が踏み込んできたあの場でヤクザどもに聞けなかったけど、山木組に行けば今度はゆっくり聞けるだろう。
 そう考えて、車を運転して山木組の事務所に向かった。

 異変が起きた。

 最初は左右、その次に前後。
 計四台の車が俺の車をぴったり取り囲んだ。

 ガラスの向こうにうっすらと見えているのは人相の悪い奴らばかり、多分全員本職……この流れだと山木組の連中だろう。

「しかけては……こないか」

 ぶつけたり爆破したりってのを警戒したが、そんな|空気《、、」はなかった。
 ならばどうするのか、って思っていると、連中は俺の車を取り囲んだまま誘導を始めた。

 俺は誘導に従った。
 どこに連れて行かれるのも分からないが、どこだろうと問題はない。
 しかけてくるのなら返り討ちにするだけだ。

 30分くらい運転して、県境を越えて、都心からすこし離れた場所に連れてこられた。
 周りは畑だらけだが、その畑に似つかわしくない連中がうようよいる。
 数えるまでもなく100は余裕で越えてるかなりの数だ。

 俺が車をおりると、一人の男が前に進みでた。
 山木だ。

「北大路はどうした」
「閣下は亡くなられた。貴様のせいでな」
「なに?」

 眉をひそめる、死んだ?

 手首を食いちぎられて出血がひどかったが、それでも元首相というVIPだ、最高級の主治医と医療資源がついてるはず。
 それを考えたら死ぬのは早い、悪くでも今はまだ集中治療室であがいてる程度のケガだ。

 不審に思った俺は山木の心を読んだ。
 今までちょこちょこ出てきた連中同様、山木勇勲の心の中も外国語だった。
 そして内容は、勝ち誇っていた。

 北大路は自分が殺した。
 それを目の前の男――つまり俺になすりつける工作が進んでいる。
 更にここで俺を仕留められれば、北大路の仇を討った人間として、組織での更なる出世が確約される。

「なんというか……ネットの人物評通りの人間だな、あんた」
「なに?」
「出世欲が強すぎるってことだ。そこまで手段を選ばないのはある意味すがすがしいが」

 山木の顔色が変わった。
 何もいってこないが、その顔は「何処まで知ってる」って物語ってるように聞こえる。

 話すつもりはない、必要もない。

 周りは山木の子分達だ、ざっと心を読んだだけでも、オヤジ――山木には何があってもついていくって連中ばかりだ。
 そんな連中にがひしめくこの場で真実を暴いても意味がない。

 そもそも俺の目的はそこじゃない。

「なるほど、あの新聞社の中にはお前の組のやつも入ってるのか」
「――っ! やれ! こいつをぶっ殺せ!」

 更に表情を強ばらせる山木。
 その命令で子分どもが一斉に襲いかかってきた。

 迎え撃った。
 ドスやらバッドやら持って襲いかかってくるチンピラヤクザ、ドスを躱して、バッドを掴んでへし折って、アッパーで殴って浮かせたヤツを掴んで、人間こん棒とばかりに振り回した。

 ポイントが2ずつ入る、お札が舞い散る。
 次々と襲いかかってくるチンピラを無双ゲームの如く殴り倒した。

 目的を達成する為の手段だが、割と美味しかった。
 2ポイントずつななのに、アッという間に400ポイント近く貯まった。

「ば、ばかな。お前ら何ボサッとしてる、弾いてしまえ!」

 山木が慌てて号令すると、無双を喰らった第一陣にぽかーんとしてる連中が銃を一斉に抜いた。

 距離は二十メートル近く、数は二十――いや三十。

 馬鹿正直に突っ込んでも蜂の巣にされるだけだ。

 クールタイムは開けてない、俺はタイム上書きの為に透明人間レベル3を取った。
 即、使ってしまう。

「き、消えた?」

 驚愕する山木、チンピラ達も目を見開いてトリガーを引くのさえ忘れて驚いた。

 効果時間は30秒とたっぷりある。
 俺は銃を構えてる連中の真横に移動して、深呼吸して準備を整えてから、連中の横から一気に駆け抜けた。

 銃をもつチンピラをすれ違いざまに銃を持つ腕をへし折った。

 悲鳴の中、駆け抜けた俺は姿を現わした。

「くっ、あ、アレを持ってこい!」

 あれ?
 銃の次は何がでてくるんだ? って思っていたらちょっとびっくりした。
 山木の後ろ、連中が乗ってきた車の一台のトランクから、チンピラは長い筒状のものを持ちだして、構えた。

 肩に担いで俺にむけて、トリガーを引く。

 ロケットランチャーだ。

 そんなものまで持ちだしてきたことに驚いた、が。
 俺は飛んでくるロケット弾を蹴った。
 上空に蹴り上げてからの、パチーン。

 頭上二十メートルでロケット弾が爆発して、爆風をまき散らした。

 爆風と砂煙が晴れた後、山木を含めほとんどのチンピラは尻餅をついたり倒れたりしていた。
 立ったままの俺はぐるりと連中を見回す。

「ば、ばかな……」
「化け物だ……」

 いろんな声が聞こえてくる、向こうは戦意喪失しかかっている。
 こういう時にすべき事は――異世界で体で覚えてきた。

「ふふ、この程度か?」

 にやり、と口角をゆがめて笑った。
 人間は圧倒されてるときの笑みにより恐怖を感じる、狙い通り、ほとんどのチンピラヤクザが戦意喪失していた。

 泡を吹いて気を失うのもいれば、錯乱したのか妙な事を口走ってるのもいる。
 尻餅ついてズボンのあたりが染みをつくって――失禁してる連中もいた。

 さて、きっちりとトドメを刺しとくか――。

 いきなり電話が鳴った、山木の懐だ。
 俺は動きを止めた、山木は電話に出た。

「お、オヤジ。すいません今は――えっ?」

 電話に出た山木は更に驚愕した目で俺を凝視した。

「そんなばかな! こいつ何も持ってませんよ」

 俺はなにも持ってない? 一体どういう事だ……。
 と思っていたら今度はこっちのスマホがなった。

 画面は前森涼介って表示されていた。

「もしもし。あんたが何かしたのか?」
『さすがお話が早い』

 涼介はすぐに認めた。
 アルフレッド・ペニーワース、ヒーローじゃなくてその裏方に憧れている男。

『あなたのアカウントを使い、その戦闘を生放送させました。望遠なので少し画像が粗いですが、十分伝わる絵になってます』
「俺のアカウントか」

 そんな事もできるのか……って思ったけど、あの動画サイトのアカウントは俺のスキルの効果が及ばないところだ。
 涼介ほどの権力者がその気になればハッキングは可能だろう。

「やるな」
『あなたの行動に乗っかっただけです』
「ついでに情報を流すのを頼めるか?」
『山木が外国人という話ですか? それなら――』
「いや、そうじゃない」

 涼介を遮って、真顔で山木に視線を向けながら言う。

「山木は元総理の北大路を殺害した。日本の社会に紛れてる同胞の地位を更に上げるために」

 山木にも聞こえるように言ったので、そいつは一瞬で青ざめた。

『それはものすごい情報ですね。さすが風間さん。任せて下さい』
「ああ、任せた。俺はここで連中を制圧しとく」

 涼介との通話が切れて、山木、そしてチンピラ連中に向き直った。
 放送中だし、すっかり戦意喪失した連中を全員殴り倒した。
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