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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第二章

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14.罠、力づく

 上質な絨毯、高い天井にシャンテリア。
 グランドホテルの広間、新聞社主催のパーティーが開かれていた。

 俺はそこそこの――あえてそこそこの吊しのスーツを着て、ここにきていた。
 まずは確認したいことがあった。

「本当にそれでいいの?」

 と、聞いてきたのは美海だ。
 彼女はパーティー用のドレスコートをしている。
 芸能人でありちゃんとした格好の美海、名前(、、)はともかく顔は知られてない上に吊しのスーツの俺。

 ぱっと見、タレントとそのマネージャーって感じだ。

「ああ、これでいい。目立ちたくないんだ。適当にマネージャーとして扱ってくれ、なんならあごで使ってくれて構わない」
「ダメだよ、シンジさんにそんなこと出来ないよ」
「俺を助けると思って、な」

 美海はまだちょっと不服そうだが、結局「俺のお願い」ってことで納得した。

 彼女に頼んで、ここに連れてきてもらった。
 新聞社主催のパーティー、ここに上層部のお偉いさんが大勢来ると聞いて、連れてきてもらったのだ。
 裕子がいる新聞社が、どれくらい外国人が入り込んでるのかを知りたかった。

「ねえ、他にあたしに出来る事ってない?」
「そうだな、ここのお偉いさんが誰なのかわかるか?」
「うん、分かるよ」
「じゃあ……」

 俺は少し考えて。

「そういう人と話すときに、さらっと海の向こうの話題をしてくれないか。それだけいい」
「それなら簡単」

 美海はにこりと笑った。

「そうなのか?」
「うん、最近は大陸マネーで番組を作ることおおいんだ。特に外部政策だとね。そういう話は普段でも業界の人とするし自然にできると思う」
「なるほど」

 大陸マネーか。
 確かに今、向こうは経済的に潤っていて、金にものを言わせて好き放題してるたまに聞く。

 既存メディアはまだいいが、ネット発の番組なんかはそっちが金主になってるって事が多いらしい。

 なるほど、話題としては自然だ。

「よし、それで頼む」
「うん! 任せて!」

 美海が意気込み、俺はその後についていった。
 目立たぬように、美海のフォローに徹する様にして。

 何も名乗っていないが、周りの人間は勝手に思い込んでくれた。
 俺が美海のマネージャーだと思い込んで、無視してくれた。

 その間、俺は読心を使った。
 美海が大陸マネーの話を振った相手――新聞社の上層部相手に心を読みまくった。

 結果は意外だった。

 まず、ここにいるお偉いさん――老人達は全員が日本人だった。
 そして大陸マネーについても抵抗感を示している。

 シロかクロかって言えば、シロだ。
 何故かと言えば。

『連中は成金、そのうち勝手に自滅する。それに客もいずれネットの流行に飽きて、新聞に戻ってくる』

 って本気で思ってるからだ。大半が。
 それはちょっと頭大丈夫かって思うけど、今回調べてる事に関して言えばシロだ。

 その結果に、俺はちょっと驚いた。

     ☆

 新聞社の中、応接スペース。
 上層部は分かった、今度は今度は裕子に頼んで入れてもらって一般社員の心の声を読んだ。

 すると、違う意味でびっくりした。

「どうだったシンジさん」
「ああ、半分近くが外国人だ。例えばあそこにいるパーマを当ててる男の人」
「内村さん?」
「あの人も外国人だな」
「えええ、嘘!」
「本当だ。パッと見る限り、中間管理職のほとんどが外国人だな」
「なんでそんな……」
「……多分だけど」

 俺はスマホを取り出して、ポチポチ検索した。

「お偉いさん……役員とかは名前が表にでるだろ?」
「うん!」
「でも中間管理職は別にそうじゃない。会社の課長とかなんて名前でないし普通はどうでもいい」
「そっか……そのクラスで留めておけば傍からはそう見えない!」
「そういうことだな」

 なぜそれがすぐに分かったのかというと、覚えがあるからだ。

 異世界にいたとき、バカなお偉いさんをごまかして、現場の判断で色々進めなきゃいけない事が多かったから。
 向こうにいたときは異人の俺にお偉いさんがいちいちいちゃもんつけてきてたからな。

 上が何を思っていても、現場がその気になれば実務的にどうとでもする事ができる。
 その経験が、このちぐはぐな状況の理解に繋がった。

「むっ?」
「どうしたの!?」
「あのパーマ……内村だっけ」

 直前に読んでいたヤツが電話に出て何かを話していた。
 あっちこっちから声がしてて、ピンポイントでそいつの声を聞き取れなかったが。

『パンドラ対策の会合か……まったく面倒臭い事になったな』

 読心でははっきりと内容を拾えて、その内容は無視できないものだった。

     ☆

 俺は内村を尾行していた。
 雑踏の中、二十メートル離れて後をつける。

 尾行に気づけるものはいない。
 いや、それは正しくない。

 正しく言えば、尾行を気にするものはいない、だ。

 スキル・自由訪問。その応用。

 アメリカ大統領だろうとローマ法王だろうと問題なく会うことができるスキル。
 それを使っていれば、「後ろからついていく」間、それを問題視する人間はいない。

 周りからすれば尾行じゃなくて、会いに行く途中だからだ。

 それで俺は内村を尾行した。

 川をわたった、千葉県にある都心のベッドタウン。
 その駅前で降りて、徐々に人気の無い所に進んで行く。

 本当に何もなかった、住宅街以外何もない街になった。
 大げさではなく、コンビニとかスーパーとか、外食用のファミレスすらない、ただただ住宅だけが林立してる街。

 それも徐々にまばらになっていき、人気が少なくなる。

 内村は一棟のビルに入った。それにちょっと遅れて俺もビルに入った。

 曲がりくねった道をすすむと――明けた空間と、待ち構えている人相の悪い連中と出くわした。

 眉をひそめた、これってまさか。

 男の中に内村がいたが、そいつも困惑した顔だった。

「どうやらつれたようだな」

 一人の男が勝ち誇った顔でいった。

「つれた、だと?」
「ああ、パンドラがマスコミを狙っているのは分かってる。こっちがそれなりの動きをすれば針に食いついてくるってのは分かっていた」
「……」
「まさかこんなにすぐにつれるとは思ってなかったがな」
「……俺がパンドラじゃないって可能性もあるだろ?」
「それはこれからお前の体にじっくり聞くまでだ。本物であってくれよ? パンドラ対策が無駄にならずにすむんだからな」
「パンドラ対策?」
「スマホを見てみろ」

 俺は言われた通りスマホを出した。
 すぐに気づいた、アンテナが立ってない――圏外になってることを。

「今からする事をネットに流されちゃ都合が悪いからな、ジャミングさせてもらった。パンドラは生放送が大好きなんだろ」

 ニヤニヤする男、ますます勝ち誇った顔だ。

「なるほど、電波はジャミングして、後はパンドラを倒せば例え録画されてても問題ない、ってことか」
「そういうことだ」
「確かに、対策としてはそこが重要だ」

 俺は肩を大げさにすくめた。

「なんだ? その反応は」
「それが対策として成立するのは、パンドラを倒せたら、だろ?」
「ふっ」

 男は鼻で笑った。

「この人数が見えないのか?」
「ああ、見えるとも。ここにいるので二十。隠れてるので……更に二十」
「なっ!」

 男の顔色が分かった。
 悪いが、読心で人数は把握出来る。
 ちなみに全員、心の声は半島系だ。

「四十人程度でどうにかなると思ったら大間違いな」
「ふ、ふん! 強がれるのも今のうちだ。『お前ら、やっちまえ』」

 最後はお里の言葉がでて、連中は一斉に襲いかかってきた。
 電波ジャミングはいい手だが、攻撃はお粗末だ。

 人数差で押し切るだけの、ただの力押しだ。

 俺は連中を迎え撃った。
 近接戦闘、攻撃力アップ(回避)、カウンター。

 乗算がたっぷり乗った攻撃で連中を倒していく。

 悲鳴とお札が飛びかう中、ビルの中は文字通りの修羅場になった。
 一人また一人俺に倒されていって、連中の戦意が手に取るように落ちていった。

『ひ、ひぃぃぃ!』
『た、助けてくれ』

 早くも逃げ出す連中が出始めた。
 そいつらは俺が入って来た所から逃げようとしたが。

 パチーン!

 遠距離攻撃を駆使して、指パッチンで逃げ道を塞ぐ。
 天井が崩落してきて、出口が完全に塞がれた。

 反対側にもう一つドアが見えたから、そっちも指パッチンをして、ドアノブを使えないように壊した。

 誘い込まれた空間を逆手にとって、連中を囲い込んだ。

「誘っておいて逃げ出すなんてつれないじゃない」

 俺はにこりと笑った。連中はますます怯えた。

 怯える中、リーダー格の男がスマホをだしているのが見えて。

『お、オヤジに連絡しなきゃ』

 使えるはずもないスマホを必死にいじるそいつの心から上の人間らしい手かがりを得たので、そいつ含めて40人全員さくっと倒しておいた。
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