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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第二章

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11.ピュア過ぎる記者

 新聞社近くの公園、俺は新聞を広げていた。

 昼間の公園で新聞を広げている……一昔前のリストラお父さんになった気分だ。

「あっ! シンジさん!」

 そこに裕子がやってきた。
 彼女は俺の事を見つけると、入り口からほぼダッシュとも言える速度で走ってきた。

「こんな所でどうしたんですか! ――って、うちの新聞の?」
「ああ、ちょっと読んでた。俺の名前とか正体とかでてたらって思ってな」
「そんな事しないよ!」

 裕子はプンプン起こった。

「私パパラッチじゃないです! シンジさんの名前とかプライベートとか書くわけがありません」
「そうなのか?」
「もちろんです! 書くのはシンジさんの活躍、悪者を懲らしめた時の記事です! それをやってシンジさんの事を世界中に知らしめて、あの歓声を本物にするんです」

 そう言って、裕子はキラキラした目で空を見上げた。
 夢を見ているというか、うっとりしてるというか。

 彼女がいうパパラッチ的な事があるかもって思ってただけにちょっと拍子抜けだ。

 実の所、裕子への読心はあまり機能していない。
 彼女の心を読むとあの大歓声が聞こえてくるからだ。

 大歓声の中に裕子の声があるんだか、それは歓声にかき消されてほとんど聞こえない。
 ちなみに歓声は俺に向けられたものだ。それは確認してる。
 最初に読んだときは「パンドラ」、今試しに読んでみたら「風間」「シンジ」が混ざっていた。

 彼女が俺にむけられた歓声を――まあ幻聴している、のは間違いない。

 それでここ数日の新聞を読んだり、ここで彼女を待ってたりしてた。

「ねえシンジさん! 次は何処を狙うんですか?」
「うん?」
「何処の悪者を狙ってるんですか! 教えて下さい!」
「教えるわけがないだろ」
「ええ、いいじゃないですか。写真撮るだけですから! ねっ」
「ダメだ」
「ちぇ、しょうがない! 記者らしく自力で追いかけます!」

 追わない選択肢はないのかって思った。

 まあ、彼女に邪気も悪意もないのはこれで改めてはっきりした。
 こだわりも本当らしいし、これなら放っとけばいいだろ。

 なんて思ってそこから立ち去ろうとすると、いつの間にか公園に強面の人が集まっている事がわかった。

 二つある入り口からわらわらと入ってきて、俺を睨みながら向かってくる。

 どう見ても堅気じゃない人種、ざっと十人。

「俺になんか用か?」
「やっぱりここに現われたか」
「うん?」

 強面の一人がそう言い、持っていたものを俺に見える様に地面に放り出した。

 新聞だ、例の俺が一面に載っかってる新聞だ。

「俺を探してるのか、何で」
「俺はな、金井の兄弟分なんだ」

 強面の男――もといヤクザはいった。

「兄弟をあんな目に会わせたてめえは許せねえ」
「なるほど、金井の復讐って訳か」

 金井。
 志穂を助けるために突入したヤクザの組長で、議員の新井と手を組んで赤い国から不法入国者を手引きしたヤツだ。
 あの事件は主に新井を懲らしめたが、まあ金井が無事でいるわけもないな。

 俺は目の前の男の心を読んだ、一応本当かどうか確認だ。

(『ぶっ殺して兄弟の汚名を晴らしてやる』)

 どうやら本当みたいだ、そして、心の声は日本語じゃなかった。
 試しに周りの連中も読んでみた、十人の内半分以上が日本人じゃないみたいだ。

 おいおい、この国どうなってんだ一体。

 呆れた俺の目があるものをついでに捉える。
 裕子だ。
 彼女はヤクザに絡まれた俺を見て、あきらかにわくわくしてる。

 読心は歓声のせいで聞こえないが――俺が()ることを予想してわくわくしてるんだな。

 ますます呆れた俺、ため息が出た。

「てめえ、舐めやがって!」

 それが男の逆鱗に触れた。
 男がそうすると、残った連中も一斉に武器を取り出した。

 ドスと呼ばれる短刀だ。
 それを抜いて、構えて、俺に向けた。

「おぅ、てめえら! そいつをぶっ殺せ」
「「「へい!」」」

 腰ためのドス、切っ先は全員俺に向けられている。
 そして数人が前後左右からと一斉に突っ込んできて――

 パッチン!

 都会の公園に響く指パッチン。
 それが鳴り響くのと同時に、男達が全員ドスを取り落として、手首を押さえた。

「てめえ何を――」

 言わせるはずもない、言うつもりもない。

 俺は速攻でヤクザ達に肉薄して、全員に当て身を喰らわした。
 至近距離からみぞおちに突き刺さる腹パン。

 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。
 ――スキルポイントを2獲得しました。

 ポイントが一斉に入った、全員を瞬殺した。

「ああ!?」

 裕子が声を上げた、悲しそうな声だ。

「どうした」
「写真撮れてない……全部ぶれてる……」
「そっちか」

 とばっちりで何か喰らったのかって一瞬思ったが、拍子抜けした。
 裕子は持っているカメラを操作して、多分経った今とった写真を確認するが、全部失敗らしくてがっくりきていた。

 ガチなんだな――って思ってると。

「動くな」
「きゃ!」

 倒したはずの一人、心が外国語のボスが起き上がって、裕子を羽交い締めにしてドスを首筋に突き当てた。

「動くな、動いたらこの女どうなるかわかんねえぞ」
「……」
「そのまま動くな、てめえにこの――ひぃ!」

 恫喝していたはずの男がいきなり悲鳴を上げて、すくみ上がった。

「それは……脅してるのか」
「な、な……」
「俺に人質をとって、それで脅してるのか?」
「く、くるな、くるなあ!」
「……」
「くるなああああ!」

 ドスを俺に向けた男、その瞬間、俺はヤツの目の前から消えた。
 全速力の踏み込み、男の背後に回って全力で殴り飛ばした。

 男は縦にぐるぐる回って吹っ飛んでいった。

 ――スキルポイントを6獲得しました。

 ポイントをゲットした、ザコよりも多かった。
 ポイントを確認する、ああ、さっきのは2の9人分、18しかはいってなかった。
 アナウンスが一気にきたから、10人まとめてやれたって思い込んでしまった。

 そのせいで裕子を危険にさらしてしまった、反省。

「大丈夫か裕子」

 男の羽交い締めから解放された裕子は地面にへたり込んで、手元に視線をおとして、わなわなと震えた。

「おい大丈夫か、どっかケガしたのか? それなら直して――」
「やった!!!」
「――は?」
「やった! やったよ! ほら見て! 今のはちゃんと撮れたよ!」

 裕子は持っているカメラを俺に見せた。
 小さな液晶に表示されてるのは男を殴り飛ばした俺の姿。
 アクションのワンシーン、自分の事ながらかっこいいなって思う写真だった。

「やった! またまた撮れたよ! これを記事にしないと!」

 裕子はそう言って、大はしゃぎで公園から出て行った。
 一瞬の出来事で反応出来ず、取り残された俺。
 なんというか……。

「彼女は大丈夫だな、うん」

 この出来事で、俺は改めてそう思ったのだった。
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