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虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第一章

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02.チンピラでポイント稼ぎ

 歓声に包まれる中、窓の外に動きがあるのが見えた。
 包囲していた警察やら機動隊やらが、中の様子――多分この歓声だろう、それを察して包囲を狭めて、今にも入ってこようとしてる。

 俺の狙いは大使に顔を売ることだ、警察につかまると面倒臭い。
 ここは三十六計逃げるにしかず、だ。
 幸い印象づけたし、今いなくなればもっと印象づけられるだろう。

 俺は更にたたみかけるべく、令嬢の手を取って。

「これにて失礼、また」

 手の甲にキスをして、ホールから飛び出した。
 とにもかくにもまずは印象づける。
 手の甲にキスされた大使令嬢、そして大使本人の顔を最後にちらっと見た。
 俺という男の存在をしっかり印象づけられたと確信する。

 警察らが突入してくる前に、俺は大使館から逃げ出した。

     ☆

 大使館から遠ざかった路上、歩きスマホする通行人を避けつつ、俺はスキルを確認した。

-----スキル-----
スキルポイント:3/999

取得スキル(5/10)
近接戦闘LV5
透明人間LV2
必要ポイント減少(80%)
スキルポイント増加(200%)
完全翻訳
-------------

 スキルが大分増えた。
 転移初日とは思えないくらい豪華なもんだ。
 思えば前回の転移初日は近接戦闘LV1とっただけで一日が終わったんだっけな。
 それに比べるとものすごい豪華ラインナップだ。

 とはいえ、スキルポイントがほとんどすっからかんだ。
 まだまだ取るべきスキルも多いし、ポイントを稼がないとな。

 ポイント稼ぎの一番の方法、やっぱり戦闘だ。
 こっちの世界で戦闘になりそうなのは……。

     ☆

 電車に乗って新宿にやってきた。
 日本きっての不夜城、眠らない街として世界中に有名な街だ。

 同時に、裏社会がひしめく混沌の街でもある。

 俺は駅を出て、繁華街を抜けて、一番賑やかで――一番危険な通りにやってきた。

 アーケードを歩く、キャッチとかを無視しながら、さりげなく周りを観察する。
 それっぽい(、、、、、)事が起こりそうにないか、それだけを見た。

 今日は運がいい、すぐにそれを見つけた。
 ちょっと裏に入った路地の中、男が二人、スーツの男を取り囲んでいた。
 スーツの男は無理矢理土下座させられて、囲んでいる男は頭を踏みつけていた。

 俺はそこに割り込んだ。

「やめろ」

 声を出して割り込むと、男二人がこっちを見た。
 まだ若いが、暴力につま先だけ突っ込んだ人間にありがちな傲慢さが顔に滲んでいた。

「お前、関係ない。消えろ」
「消えないと、ぶっ殺す」

 二人は片言の日本語で威嚇してきた。
 この街で暴力的な人種は必ずしも日本人じゃない。

 日本のヤクザ以外にも世界各国のマフィアが多国籍軍かってくらい入り込んでる。
 男達は東洋人系の顔だ、となればある程度の察しがつく。

 何もないなら苦労するが、今の俺はスキルがある。
 俺は普通に話しかけた。

「その人を話せ」

 スキル、完全通訳。
 意識して話した場合、相手にそっちの母国語で聞こえる様に伝わるスキル。

 男達は少しだけ驚いた。

「綺麗な発音だ、お前も中国人か」

 なるほど、中国マフィアか。
 まあ、順当なところだ。
 この街で東洋系のマフィアといったら中国か韓国だ。
 最近はモンゴル系も台頭してきてるが……それはいい。

 とにかくこれで相手の素性は分かった。

「余計な事をするな」
「その男が何かしたのか?」
「これが見えないのか?」

 男の一人が自分の足元をさした。
 足がどうしたんだ? って首を傾げたが、ようやく気づいた。

 男のズボンの裾、そして靴の端っこに。
 吐瀉物――ゲロのようなものがついていた。

 土下座している男から酒の臭いがする、なるほどゲロに巻き込まれたのか。

「そんなハナクソ程度の汚れ、ティッシュで拭けばいいだろ」

 俺は事実を混ぜて、挑発的に言い放った。
 この手の人間にはこれがよくきく。
 案の定、二人は逆上してこっちに向かってきた。

「何だと!?」
「てめえ日本人の味方をするつもりか」
「すごまれてもなあ。俺は事実をいっただけだ」

 更に煽った。早速乗ってきたこいつらは煽り耐性ゼロだと判断したからだ。
 案の定、ゲロのついた男はパンチを放ってきた。
 サッと避けて、うなじに手刀を叩き込む。

 近接戦闘レベル5。
 戦場で百人抜きができるほどのレベルだ。こんなチンピラ一人、軽くねじ伏せた。

 ――スキルポイントを2獲得しました。

 スキルポイントを獲得した。
 やっぱり三下のザコだからか、ゲットした分は最小限の1ポイントの2倍、2だけだった。
 それでもないよりはマシだ、と俺は残ったもう一人の男に振り向いた。
 男は同じように殴ってきた。半身で避けて、同じように手刀を叩き込む。

 ――スキルポイントを2獲得しました。

 ポイントが入って、男は倒れて動かなくなった。
 4ポイントか、こんなものかな――。

「そこで何をしてる」

 一瞬ピクッとした。
 もしも警察だったら面倒な事になる――って思ったが問題なかった。
 やってきたのは今倒した二人と同じ臭いがする男。
 暴力を振るうことに躊躇のない、三下のチンピラの臭いだ。

 数は8――いや7+1だ。

 7人はチンピラだった、しかしその向こうにいるヤツはちょっと違う。
 多少の分別がある顔をしている、立ち位置からも、ほかのチンピラの兄貴分か、そいうポジションの男のようだ。

「張! 李! てめえ……」
「よくもやりやがったな!」

 七人のチンピラは倒された仲間をみて逆上して、一斉にかかってきた。
 迎え撃つ、パンチを放ったり鉄パイプで殴ってきたりする男達に手刀で反撃。
 全員一撃ずつ、無駄の無い動きで倒して、更に14ポイントゲット。
 これで21ポイントになって、残りは一人。

 兄貴分の男は静かに前に出て、武器を抜いた。

「危ない!」
「大丈夫だ……っていうか銃刀法はどこ行った」

 顔を上げて、俺の身を案ずるスーツの男。
 普通に日本人らしく、俺もスキルを意識しないで返事をしたら。

「日本人が……舐めた真似を」

 残った男が目を剥いた。
 俺はそいつの表情よりも武器に目がいった。男が抜いたのは、本来なら映画とかでしか見ないはずの中国の刀、青竜刀だった。
 そんなものを持っているのもすごいし、使う気満々で抜いたのもすごい。

 今までのがザコ敵なら、こいつはステージボスのような雰囲気だ。
 ヒュン! と空気を裂いて斬りつけてくる青竜刀をよけて、手刀を放つ――が。
 男はわずかに体をずらす、手刀が背中に当たった。
 男は悶絶する、ダメージはあるが、一撃で意識を刈り取るまでは行かなかったようだ。

 さすがにほかのチンピラよりは出来る。
 このままごり押しでも倒せるが、20ポイントたまったし、次のスキルを覚えようと思った。

 攻撃力アップシリーズ。
 特定の行動を続けている間、攻撃力が上がっていくスキルだ。
 それぞれ命中、回避、防御、打倒の四種類がある。

 命中は殴り続けて――いわゆる百烈拳的な攻撃をする時によく聞く。
 回避と防御は避ければ避けるほど攻撃が上がっていく、避けるか耐えるかの果てに一撃必殺の攻撃を叩き込むスタイルだ。
 打倒は敵を倒すごとに上がっていく。戦場でももっとも使えたスキルだ。

 四つのスキルは全部とれるが、同時に発動する事は出来ない。
 回避中にあがった攻撃力は防御したら防御の最初からカウントする、耐えてるときに間違って反撃で倒したら打倒の最初からカウントし直し。
 そういうスキルだ。

 最終的には全部とる事になるけど、まずはどれをとるか……回避だな。
 青竜刀だし、スキルの揃っていないこの時点での防御はない。
 打倒は相手が一人だから意味ない、命中も殴ってる内に普通に倒してしまう。

 取って、今発揮するのなら回避しかない。

 俺は20ポイントを使って、攻撃力アップ(回避)レベル1を取った。

 青竜刀の男が更に斬りかかってきた、俺は反撃せず、回避に専念した。
 ヒュンヒュンと空気を切り裂き、壁のコンクリートをかち割ったりする青竜刀を避け続けた。

「ふざけてるのかお前!」

 男は激高した、避け続けてる俺を怒鳴った。
 当然の反応だが、俺は取り合わない、あくまで回避に専念した。

 躱すごとに体に蓄積して、高まっていく力を感じる。
 やがて「カチッ」と、頭の中に何かが聞こえた。

 上限に達した合図だ。
 攻撃力アップは無限に上がるわけではない、上限がある。その上限に達したのだ。

 俺は一歩下がった、男がまっすぐ突っ込んでくる様に誘導した。
 その誘導通り、男はまっすぐ突っ込んで、真っ向から青竜刀を振り下ろしてきた。

「死ねえええ日本人め!」
「――ふっ!」

 カウンターでパンチを放った。
 真っ向から、何の変哲もないパンチ。

 俺の拳は青竜刀ごとへし折って、男を吹っ飛ばした。
 飛んだ距離は二十メートル、大通りに弾き飛ばされた男はその勢いのままごろごろ転がっていく。
 まるでトラックにはねられたかのような勢いだ。

 ――スキルポイントを10獲得しました。

 倒された男の周りに集まって、一般人達がざわざわした。
 まずい、やり過ぎた。

「あっ、待ってください――」

 引き留めようとする絡まれた男を置いて、俺は路地から抜けて、人目のつかないところで透明人間レベル2を発動して、その場から逃走したのだった。

     ☆

 スキルを一個新しくとれて、ポイントも11に上昇した。
 今日はもうこれでいいだろうと、俺は近くのホテルに飛び込んだ。

 ラブホテルでも、ビジネスホテルでもない。
 地上40階建ての高級ホテルだ。

 一晩100万円のスイートルームを現金で払って、豪華な部屋で体を落ち着かせた。
 今日はここでいいけど、やっぱり家は欲しいな。
 異世界クリアで引き継いだ120億がある、明日になったら不動産屋にいって、家でも買うか――。

「待てよ、今のままじゃ買えないぞ?」

 ここは異世界じゃない、現実世界だ。
 俺の初歩的な知識でも分かる、不動産は登記が必要だ。
 今の俺は異世界から舞い戻ってきた人間、戸籍がどうなってるのかも怪しい人間だ。

 そんな俺が……家なんか買えるのか?

「……まあどうにかなるだろう」

 俺は必要以上に考えるのをやめた。
 120億もあれば、スキルをどんどん増やしていけるこの力があれば。

 戸籍なんてどうとでもなる、そう思った。

「それにもしダメだったとしても」

 俺は笑った、一面に広がる窓際に立って、東京の夜景を見下ろす。
 一晩100万のホテル、120億あれば四十年も住める。

 クリアボーナスのおかげで、問題はほとんどあってない様なものだと確信する。

     ☆

 ふわふわとした何も空間。
 俺はすぐにまた女神に呼ばれた事をしった。

「前回と同じだな」
「よく覚えてますね」

 目の前に現われた女神、彼女は苦笑いしている。

「そりゃ覚えてる。前回も転移直後、初日の夜にまたここに呼ばれて、その時に色々スキルと世界の事を確認したからな。そうだな……」

 俺は考えた、何か似てるのを思いだしたから。

「そうだ、チュートリアルだ。初日はチュートリアルで、これがチュートリアル終了のタイミング」
「その認識はユニークですね、でも、あってます」
「それなら今回は大丈夫だ。特に聞くことはない」
「……」
「どうした」
「あなたの言うとおり、向こうの世界は沈みはじめました。魔王がいなくなって、今度は人間同士で争いを」
「はやいな……ああいや、こっちと向こうの時の流れちがうんだ」

 向こうで二十年いたけど、こっちの世界ではちょっとしか経ってない。
 戻ってまだ一日だけど、向こうではかなり時間が流れたんだろう。

「……もう一度向かっていただくことはできませんか? あなたなら――」
「御免被る」

 疎まれてるところにわざわざ行くのはバカのやることだ。
 あの世界は嫌いだ、道を切り開いても、異人ってだけで見返りは一切なくなる。
 二度と行くもんか。

「分かりました……では、一人預かってもらえませんか?」
「あずかる?」
「はい、向こうの人間です。あなたの元で経験を積ませて、しかるべき時に戻したいです。今度は現地の人間を現地の救世主として」
「……わかった、それなら請け合おう」

 あっちの集団はともかく、人間個人個人は嫌いじゃない」

「では準備整ったら送ります。すぐに分かるようにあなたの前に送りますので」
「わかった」

 それだけいって、俺は女神と別れた。
 にしても……やっぱり泥船だったか。

 予想が当たって、俺は苦笑いを禁じ得ないのだった。
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