挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
虐げられた救世主の俺は異世界を見捨てて元の世界で気ままに生きることにした 作者:三木なずな

第一章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

11/54

11.現ナマに踊るシンジ

 車はエグゼクティブ1の車庫に入れて、トランクからいくつかの紙袋を持って、キャビンに入った。
 キャビンには志穂がいて、せっせと掃除をしている。

「ただいま」
「お帰りなさい、風間さん」
「わん!」

 エグゼクティブ1のおく、寝室の方から子犬が走ってきた。
 子犬は俺の足元までやってくると、小さい体をフルに使って、体を押しつけてくる。

「なんか懐かれちゃったな」
「それはそうですよ、だって風間さんが命の恩人なんですもん」
「わかるのかそんなの。意識がないのに、どうやって助けられたのかも分からないのに」
「だからだと思います。動物は本能でそういうの分かりますから」
「なるほどな」

 そう言われるとそうかもしれないと思った。
 異世界にいたときもこんなことがちょくちょくあった。
 知性じゃなくて本能で生きる動物の方がストレートに行為を向けてくることが多い。
 ……人間なんかより。

「あっ、お荷物お持ちします。何処にしまえばいいですか?」
「ああ、それは志穂、お前にあげるものなんだ」
「私に……ですか?」

 首をかしげる志穂、キョトンとした表情で紙袋をみる。

「ああ、開けてみろ」
「はい……これは、メイド服、ですか?」
「ああ。メイドにって話だからな」
「そうですか……あのぉ、風間さん?」
「うん? どうした」

 おそるおそる聞いて来る志穂、普通に聞き返す。

「いまちょっと触ってみたらすごくあり得ない程いい生地だったんですけど……本当にメイド服ですか? ドレスとかスーツとかじゃないんですか?」
「いい勘をしている、女性ならではかな?」

 俺はクスリと笑った。

「どういう事ですか?」
「それは間違いなくメイド服だ、ただしオーダーメイドの特注だ」
「えええええ!?」
こっち(、、、)だとメイド服は普通に手に入らないからな、アキバ系のコスプレ用のがあるけど、ちゃっちぃ過ぎる。メイド服に関して言えば向こう(、、、)にあきらかに劣ってるな」
「お、おおおおおオーダーメイドですか?」
「驚きが周回遅れしてるな。そうだ。可愛くて動きやすくて、けつ下品にならない程度に色っぽい。そういうメイド服を作らせた」
「あの……参考までに聞きますけど……おいくらくらいですか?」
「二十万だな」
「えええ!?」
「一着で。全部五着あるからジャスト百万だ」
「えええええ!?」

 盛大に驚く志穂、そんなに驚いてくれると作らせた甲斐がある。

「そ、そそそそんな高いものダメですよ」
「ふっ、周りをよく見ろ」
「え?」
「総大理石張りのキャンピングカー、シャンテリアとかもろもろ付きの高級な内装だ。ならそこで働くメイドもちゃんとした格好じゃないとな。一流の要人の秘書とかも相当な格好をするもんだろ」
「で、でも……」
「いいから着替えてこい。ダメだったらなおしてもらう」

 俺は志穂を無理矢理部屋に押し込んだ。
 困り果てていた志穂だったが、ドアが閉まる直前には観念した顔になっていた。

 俺はキャビンに戻ってきて、ソファーに座った。
 子犬がそばにやってきたから、何となく頭を撫でて、テレビをつけた。

『入院中の新井議員は――』
「お?」

 テレビで流れているのはワイドショーだった、ネタは例の議員、俺が追い込んだやつだ。
 テレビの中で女子アナが更に読みあげる。

『議員辞職の意向を示しており、また、所属政党も党籍を除名する方針とのことです。これにより次期外務大臣と目されていた新井議員の入閣の可能性は限りなくゼロとなりました』

 一気に話が進んだが――って外相候補だったのか。
 あぶねえなあ……それ。

『今回の事件、山本さんはいかがお考えでしょう?』
『そこまでする事はないんじゃないかって思いますね。だって何もしてないでしょ、新井さんは。何も悪いことしてないし、それを示す証拠は何もない。あれって単なるジョークだったんじゃないですか?』

 おいおい。
 ものすごいぶっ飛んだ擁護だな。

『むしろ議員会館に侵入して撮影をした男の行動の方が問題だと私は思いますね』
「なんですかそれ!」

 真横から憤慨する声が上がった。
 振り向くと、メイド姿の志穂が眉を逆立ててテレビを睨んでいた。

「その言い方おかしいです! なんでこんな弁護が出来るんですか。しかもキャスターや他の人まで同調してます。おかしいですよ」
「まあ、それがマスコミってヤツだな。だからマスゴミなんて呼ばれるんだろ」
「うぅ……」

 呻く志穂。マスコミの腐れっぷりは今日に始まったことじゃないから今はどうでもいい。
 それよりも志穂の格好だ。

「似合ってるな、その格好」
「え? あっ……ありがとうございます」

 俺はソファーから立ち上がって、志穂に近づき、彼女のメイド姿を観察した。

「うん、よく似合ってる」
「ありがとうございます……でもこれ、20万円ですよね……なんか落ち着かないですよ」
「そうか? まあそのうち慣れるさ」

 メイド姿の志穂は眼福の一言に尽きた。
 ちゃんとした仕立てのメイド服。
 いやらしさのない色っぽさと可愛さ、そして上品さを併せ持つメイド服。
 写真にとって永久保存したくなるくらいの可愛さだけど……毎日見れるしいっか。

 俺はソファーに戻って、新井を擁護、俺を叩いてるテレビを消した。

「あの……風間さん」
「どうした」
「風間さんって何者なんですか?」
「大金持ち、じゃだめか?」
「確かにこのキャンピングカーも車もそうですけど、でも」
「でも?」
「そのわんちゃん。わんちゃんが治ったのはそれじゃ説明つきません」
「……たしかにな」

 俺は少し考えて、いった。
 志穂は多分信用出来る、だけど一から十まで説明しても面倒臭いし必要もない。
 だから俺は。

「他人にはない特殊能力をいくつか使える男、それだけだ」

 と、ざっくり説明した。

「特殊能力ですか?」
「ああ、超能力でも魔法でもいい、呼び方は特にない」
「なるほど……」

 信じられないけど、でもなるほど……って感じで納得しつつある志穂。

「ちなみにこれ、他の人間には内緒な」
「あっ、はい! わかってます!」
「うん」
「あの……ちなみに他にどういうのがありますか? 特殊能力」
「ふむ」

 俺は少し考えた。
 スキルがそろそろデフォルトの10枠埋まる、枠拡大のスキルとるまでに一つねじ込みたいものがあった。
 それは見た目的に面白いから、志穂に見せてやろうと思った。

     ☆

 繁華街の裏路地の中。
 肩がぶつかったとかぶつからなかったとかで因縁をつけてきたチンピラ四人をあっさりしずめた。
 ポイントは四人で8、目標達成だ。

「あの……風間さん? どういう事ですか?」

 一緒に連れてきた、メイド姿の志穂が聞いてきた。

「まあ、もうちょっとみててくれ」
「はあ……」

 訝しむ志穂、俺はそのまま待った。
 しばらくチンピラの仲間がやってきた。今度は6人だ。
 連中はテンプレな台詞を吐いて、更に因縁つけて、俺に喧嘩を振ってきた。

 反撃の前に、スキルを取った。
 元が10必要、8割引きで8でとれるスキル。

 金銭ドロップ。

 それをとって、殴りかかってきたチンピラにカウンターパンチを見舞った。
 顔面に叩き込んだカウンターパンチ、5割程度の力。
 それでチンピラが吹っ飛んだ――次の瞬間。

 チンピラの体からお札が宙に舞った。

「え?」

 驚く志穂。まだまだこれからだ。

 残った五人は更に襲ってきた、札束が舞ったことよりも俺への怒りが先行した。
 四人がナイフを抜いて、一人が警棒を取り出した。

 俺は飛び込んでいった。
 スキル構成は「待ち」の強いけど、この程度のチンピラなら全力じゃなくても問題ない。
 飛び込んで、ナイフと警棒を捌いて、次々とチンピラを殴った。

 なぐったそばからお札が宙を舞った、ヒラヒラと舞い飛んだ。
 全員殴り倒すと、お札はまるで紙吹雪のようになった。

 それは本物の金、実体があって使える金。
 スキル「金銭ドロップ」が出した本物の金。

 倒した相手から現金が舞い飛ぶ、そんなスキルだ。

「ど、どういう事ですか?」
「見ての通りだ、俺は人間を殴ったらお金を出せる」
「その人たちのお金じゃないんですか」
「ああ、ちがう。とと、ちなみにこれは内密にな。対外的にはマジックって事で頼む」
「分かりました……」

 驚き、困惑する志穂。
 しかしそれらは徐々に収まっていき、やがてもっと別の。

「よく分からないけど……すごい……」

 尊敬と憧れの目に、次第に変わっていったのだった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ