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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
第二章 〜食糧確保と町造り〜
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墳墓の財宝

石室の中に明かりを入れると、足の踏み場もないほどの遺物が散乱していた。

朽ち果てているモノもあるが、ざっと見ただけでも、かなりの数の品が殆ど完形で遺っている。


「パウロ。全ての人夫をここに呼んでくれ。それと、馬車を五台。通れなさそうだったら、道を開かせろ。」


まずは天井石を外してから図面を描き、一つ一つ取り上げて行かねばなるまい。

普通にやれば、時間がかかり過ぎる。人海作戦でいくしかない。

そして、とにかく馬車に詰め込んでポレスに運搬させ、必要ないモノから売り払えば良い。


集まった人夫達総出で黒麒石を持ち上げ、なんとか外すと、石室の全貌が明らかになった。

石室内部には、図面を書く事を考えるとうんざりするほどの遺物が散乱している。


人夫達がどよめきをあげたが、図面が描ける数人は顔が真っ青になっていた。


それぞれに図面を書く場所を割り振り、描きあがったモノから慎重に取り上げる。


見つかった遺物は、石棺、錫杖、冠、直剣、腕輪、指輪、イアリング、首飾り、玉、陶器等。


五台の馬車に遺物を入れた木箱が満載になる。

運搬時の衝撃を考え、大量の布を木箱に詰めているので、とにかく嵩張った。


あらかた積み終えた所で、ポレスが率いる騎士達が到着した。

騎士は配下の者全員連れて来ていて、歩兵は五百ほどか。

ポレスは、キートスから書類の山を預かってきた。

一度、帰って来いと言う事なのだろう。


図面を書ける者に今後の指示を出し、サンヴェラと言う男に統括を任せた。

一番図面が上手く、作業の意味一つ一つの理解が早かったし、何より意欲があった。

発掘は、根気良く丁寧に一つ一つの作業を続けられる事が、非常に大事になる。

やる気が続かなければ、投げやりな調査になりがちで、本来得られた筈の成果が半分以下になったりする。


俺の後任を決めてしまうと、俺はさっさとマルガンダを目指した。


古墳が掘れれば何でも掘れる、と前世では言われていたほど古墳の調査は難しい。

まだ幾つか調査が終わってない墳墓があるので、サンヴェラは身の細る思いをするだろうが、良い経験になる筈だ。


発掘調査現場から駆け通し、日が落ちると野営に適した場所で、天幕を張った。

麦の粉を捏ねて焼いただけのパンもどきが夕食だった。


俺は一人で粗末な兵糧を食い、焚き火の炎を見つめていた。

家臣はともかく、末端の者とは余り関わらない方が良いのだ。

向こうが緊張する、だとか、そういう気配り的な意味だけではない。

俺が兵士に死ね、と命令しなければならい時もある。

仲が良くなって、それを躊躇うような事があってはならない。


そこに、ポレスが薪を持ってやってきて、俺の向かいに腰を降ろした。


「凄い収穫ですね。キートス殿が喜びます。」


「どうだろうな。きちんとした金額を聞くまで、安心できん。」


ポレスが、薪を足してくれたようだ。

小気味良い音がする。


「具体的な数字は、私にはわかりません。が、キートス殿の試算では、最低でもローヌを五年間は無税で維持出来るほどのモノになるそうですよ。」


なら、大した事はない。

せいぜい白金貨三十枚程度か。

町一つどころか、村を二つか三つ作れば消えてなくなる程度のモノだ。


「あの黒麒石一枚だけで、です。」


「ほう。」


思わず、声が出た。

ポレスが、ニヤリと笑う。


「パウロ殿からの知らせは、あれの事だけしか言いませんでしたから。こっちに来て、驚きましたよ。」


「まだまだ、これからだ。」


そう、まだあそこには期待できる墓が一つ残っている。

調査が進めば副葬品以外のモノもいずれ見つかるだろう。

まだまだ、これからだ。


だが、遺物はいずれ掘り尽くす。調査が進めば進むほど精度は上がるだろうが、同時に成果をあげるのが難しくなっていく。


飽くまで、当座の金を稼ぐ手段でしかないのだ。


俺はもう、先を見ていた。


発掘が金になる事は、確信から確たる事実に変わったのだ。

前世と違い、しばらくは根幹産業になるだろうから、予算や工期を心配する必要はない。

俺が最前線でやるよりは、誰かに任せる方が効率的だろう。


ポレスの言葉には応えず、俺はこれからの事を思い描いていた。

誰も飢える事のない、俺の領地。


そこに辿り着く道筋が、見えてきた気がした。

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