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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
第二章 〜食糧確保と町造り〜
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墓の発掘。

墓の見つけ方は、実にシンプルである。


地面の不自然な盛り上がり、それが異様に多い所はだいたい墳墓の跡だ。

前世の日本では、ドーナッツ状の盛り上がりが山の中にたくさんあったりする。

そういった場所は盗掘され尽くした古墳群の可能性が高い。


そんなわけで、周辺の踏査であっさり墓らしき候補地点をいくつか発見した俺はその中でも特に大きな盛り上がり地点を二つ、小規模な盛り上がりが集まっている地点を四つ、掘る事にした。

神殿の最盛期は、町があったんじゃないか、と思えるぐらいには栄えていたようだから、必ず墓があると俺は結論付けた。

かなり地位の高い神官などの遺体は他の土地に葬られる可能性を考えねばならないが、特権階級ではない者たちは、死んだ土地に葬られるのが普通だ。

墓の候補地は他にも怪しい所はあったが、自然隆起の可能性がある所、立地的におかしな所は除外している。


「こんなのが、ホントに墓なんですかね?」


パウロが茶々を入れてきたが、俺は無視した。


必ず、ある。


すぐに縄張りを行い、周辺の図面を描いた跡、トレンチを開ける。


人夫達は、神殿の南に四十名、それぞれの墓に十名ずつ割り振った。

神殿の調査のスピードは落ちるが、仕方ない。


掘り始めて二日目、全ての地点で3cmほど薄い地層が幾つも重なっているのが、全ての場所で確認された。


版築と言う、日本の古墳の盛り土のやり方と同じモノだ。


「図面は断面図だけで良い。石や金属片に気をつけろ。」


各現場に歩兵を伝令として走らせる。

それぞれに、図面を書ける者を一名は配してある。

俺は各現場を見回るので手一杯だ。


墳墓を掘り始めて四日目、規模の大きい墳墓で天井石らしき巨岩が発見された。

馬を飛ばして見に行くと、間違いなく天井石だ。

切石の技術は既にあったようで、磨けば光沢を帯びそうな縦10m、横5mほどの長方形の黒い一枚岩である。


どんなもんじゃい、とドヤ顔でパウロを見ると、目玉が飛び出るかと言うぐらいに目を見開き、震えているパウロがいた。


「こ、黒麒石。」


呟くように言ったパウロが、よろよろと天井石の上に立つ。

しゃがんで指先で触れている。


「おい、どうした。」


言うと、パウロはゆっくりと顔を上げ、なんとも言えない笑顔を浮かべた。


「アルマンド様、黒麒石ですよ。これ。」


黒麒石とはなんぞや。

俺にはただ黒い一枚の岩にしか見えん。


聞くと、黒麒石とは魔力の影響を一切受けない性質を持った石で、南の王国で極少数産出している。

南の王国以外では、人間社会にはほぼ出回らない貴重な代物だ。

しかし、何故かエルフがこの石を使った鏃を愛用しており、その調達をどうやって行っているのかは彼らの中でも極一部しか知らないそうで、人間側に漏れる事はまずなく、人間にとっての謎となっている。


物理的衝撃にも強く、非常に頑丈で武具の素材としても優秀だが、他にも魔道具の素材、魔法の研究にも有用で、とんでもない貴重品と言う事もあり貴族の鉱石コレクターにも人気がある。


見分け方は、黒色であり、四本指の蹄のような斑点が薄っすらと浮かんでいる事、触感は非常に滑らか、金属に近い触感と光沢がある事などが挙げられる。


魔法を使えば一発で判別できるのだが、流石に初っ端からそれをやるやつはいなかった。


パウロ曰く、これだけの一枚岩なら、どれだけの白金貨に変わるか、予測がつかないそうだ。


「とにかく、すぐにポレスを呼びましょう。万が一にも奪われたりしたら大変です。」


とか言い出すパウロ。

その辺は良い。手配をパウロに丸投げすると、部下の護衛を五人、伝令として走らせた。


俺は、調査続行である。


周りを掘り下げると、墳墓の入口を発見した。

パウロ曰く、入り口に使われている金属は純ミスリル製。

この世界では、既に世界中どこを探しても、純ミスリルの製造法など伝わっていない。

貴重過ぎて職人が育たなかったのだ。

現在では、ミスリルは合金の材料でしかないなだが、ほんの僅かな含有率でも切れ味は劇的に上がるし、錆びる事もない。


以前、誕生日にプレゼントされた小剣のミスリル含有率は0.001%ほど。

それでも一流の職人が技術の粋を集めて造ったモノで、切れ味は普通のモノよりも少しは良いし、手入れしなくても錆びる事はない。


が、純ミスリル製の品が存在していない訳ではない。

王国貴族としての情報網でわかっているのは五点ある。


一つは王家が所有する国王の冠。

ドワーフの手によるモノと伝わっている逸品で、二流魔法使いが放つ魔法ぐらいなら無力化してしまうそうだ。


二つ目は、十六ある公爵家の一つ、オーブリオン家が所有する長剣。

王国の建国期、王家に仕えたオーブリオン家初代当主、レイガル・オーブリオンの佩剣で彼の伝説的な武勇伝に度々登場する。

伝説曰く、城を斬った、剣を向けただけで相手が昏倒した、空飛ぶ竜にまで斬撃を飛ばした等、中々ぶっ飛んだ性能らしい。


三つ目は、北の王国にある鎖帷子。

オーブリオン家の長剣から主を守ったと言う逸話がある代物で、とにかく軽いそうだ。

他国のモノなので詳しい事はわからないが、とある一族に伝わる品らしい。


四つ目は、西の砂漠の部族達が崇める神像である。

高さ40cmほどの品だそうだ。

これについては、オーガスタ神が一度見た事があるらしい。

特に特別な力は感じなかったそうだが。


五つ目は東の帝国が所有する弓。

これについては、弓である事以外、一切の情報がない。


その六つ目に、この扉が追加される訳だ。


扉には、鍵などついておらず、すぐに開ける事にした。


「アルマンド様は、下がっていてください。人夫達も遠ざけて。剣は抜いておいた方が良いかと。」


パウロ曰く、黒麒石で囲まれた場所は魔力の澱みが起こりやすく、ダンジョンとも呼ばれる地下迷宮の壁は黒麒石でできている所もあるそうな。


墓の主が、アンデット化し、魔物になっている可能性が高いらしい。


パウロが慎重に扉を開けると、少し離れた俺の所にまで腐臭が漂ってくる。

未盗掘の墓は、死臭が残っている、と前世で聞いた覚えがある。


入り口からパウロが飛び退いた。


続いて、骸骨が三体飛び出して来る。


初の生スケルトンだ。

意外と気色悪い。


「一体、魔力が濃いぞ。気を抜くな。」


パウロが叫ぶ。

護衛達は、寄って集って魔法をぶつけまくり、次の瞬間には十名ほどが一斉に斬りかかった。


スケルトンの弱点は頭蓋骨だと聞いた事がある。

そこに、核のようなモノがあるそうだ。


護衛達のリンチにより、三体のスケルトンはあっという間に崩れ朽ちた。


アンデット系の魔物は、魔力で身体を維持しているので、やられると朽ちてなくなる。


「主君と、殉死者かな。墓の周りを掘らんとなんとも言えんが。」


俺が呟くと、護衛達は呆れたような顔をして、一斉にこっちを見た。


なんだよ。

今回の目的は調査なんだ。


俺は間違っちゃいないだろう?

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