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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
第二章 〜食糧確保と町造り〜
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発掘調査3

一ヶ月かけて、500m四方の第三層を調査し終えた。

明らかに道として造られたモノなのは明らかだ。

まず、両側に浅い溝がある事、黄色い砂の上には遺物や遺構が見つからなかった事、意図的に砂を使っているのは、水捌けを良くする為だ。


道の両側には建物跡が全部で七棟。

内、ひとつだけ柱と土の付け根に石をかませている建物があり、規模も他のモノに比べれば大きい。

ゴミ捨て場らしき穴から、他のモノより上等な白磁器や陶器の破片が見つかったので、他の建物の主よりは地位が高かったのだろう。


他の建物は全て掘立柱建物で、改築した跡は見つかっていない。

それほど長い間定住した訳ではなく、改築が必要になる前にこの周辺は放棄されたようだ。

掘立柱建物は、木の柱を穴にそのまま突っ込むので、何十年かすると付け根が腐ってしまい、改築しなければならなくなる。

どんぐらいで腐るのか、忘れたので正確にはわからないのだが、少なくとも世代交代が行われるほどの期間、ここに人が住んでいた訳ではなさそうだ。


神殿が放棄されたのは、第三層の年代だろう。

問題は、原因は何か、である。

見て来た訳ではないので、全くわからない。

今後、周辺の調査で明らかになってくる筈だが。


その後、第四層を完全に掘るのに二ヶ月かかった。

結論から言うと、この層が神殿の最盛期で間違いない。

道の、ほぼ真下に石畳の道があった。

所々、大穴があいてボロボロになっているが、間違いなく石畳である。

更に道の外側に整然と並ぶ柱穴。

その外側には幅1m、深さ5cmほどの浅い溝が道に沿って掘られている。

これは多分石壁の跡だろう。前世で、こういう溝を見た事がある。


建物跡はニ棟から十棟。

石で造られた基礎が全て残っているのだが、屋根を支えていたらしい柱跡の数が十棟だと合わない。少な過ぎるのだ。

基礎は別造りの巨大な建物だったのか、単純に十棟建っていたのか、判断が難しい。

共通していたのは、建物の近くでは土に大量の炭が混じっていたこと、どの基礎の石も焼けた跡があった事か。


大規模な火災、と言えなくもないが、それだと石畳が破壊されている説明ができない。


巨大な魔物に襲われた可能性がある。

と言うか、俺はそう感じた。

根拠は、ないと言えばない。

ごく僅かな引っ掛かりの積み重ねと勘である。


「お宝は、拝めそうになさそうですね。」


パウロは、すっかり諦めたようだ。

俺は、諦めてはいない。


「まだだ。この調査範囲の外側を踏査する。多分、墓があると思う。それに、神殿の一部がまだ地中に眠ってる筈だ。それを掘りきったら、一度マルガンダに戻ろう。」


必ず、何かある。

俺はほとんど確信していた。

それが財宝なのかはわからないが、歴史的にとても重要な事がまだ見えて来ない。


これほどの火災にあっても尚、復興しようとした意志がこの遺跡にはある。

ただの神殿ではない事だけは確かだ。


パウロはただただ不満気な顔をしていた。


キートスから、急かすような便りを、ラドマンの部下達が運んで来る。


俺達の信頼は、まだこんなにも浅い。

仕方のない事だが、俺はちょっと白けたような気分になった。

同時に、静かな炎が心に灯る。


こいつらを、黙らせて見せる。


今回の発掘では、俺は誰よりも働いている自信がある。

人夫達には貴族らしくない、と笑われたが、発掘の監督はそんな甘いもんじゃない。

自ら土に触れ、遺物に触れ、毎日毎日図面を描き、土に塗れて仕事が終わる。

それだけしなければ、まず間違いなく指示を誤る。

蓄積されたデータと経験があれば別だが、そんなものは誰も持っていない。


一番辛い所に俺がいるのは、皆わかっている筈だ。


後は、結果がついて来れば良い。


やってやろうじゃないか。

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