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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
第二章 〜食糧確保と町造り〜
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婚活、再び。

「本日は、ようこそおいで頂きました。」


屋敷のホールで、フィリップの挨拶が始まった。

貴族達や令嬢達の視線が痛い。

特に令嬢達の肉食獣的な視線は、もうなんて言うか、思わずパウロを呼びたくなるレベル。

必死になるのはわからんでもないのだが、そんな目で見つめられても減点対象にしかならない。


「それでは、当主であるアルマンド様からも一言頂きます。アルマンド様、どうぞ。」


更に視線が集まる。

あまり緊張はしていないのだが、鬱陶しい。

俺は基本的に貴族と言う生き物が嫌いなのだ。

こうして態々、領地から出てきてパーティを開いてるのは、エルロンドに貴族としての財産を遺す為である。

親父は、貴族同士の付き合いとか、裏のやり取りなんかに弱かったらしく、結果としてあぁなった。

エルロンドに、俺と同じ目に遭わす訳にはいかない。

エルロンドの為になら、気色の悪い付き合いだろうが結婚だろうが、なんだってやってやる。


「本日は、私の為に集まってもらい、誠にありがとうございます。堅苦しい話しは抜きにして、心ゆくまで、お楽しみ頂きたい。」


短く挨拶を済ませると、拍手が起きてパーティが始まる。

俺は、さっそく貴族共に取り囲まれた。

当たり障りのない挨拶から始まり、皆が皆、うちの領地について何か聞き出そうとしている

ここに来ている貴族の過半数は領主派の貴族達なので、話題がそれしかない、と言うのもあるんだろう。

彼らにとって、今後うちとの付き合いは自分の懐に直接関わって来る。

現在でも、薬草の交易はかなりの金貨を生み出していて、今後は更に金やドワーフが作る金属製品なんかも輸出する予定でいた。

それらを、優先的に回してもらいたい、みたいな事を口を揃えて言ってくる。

後は、うちの家臣を出向させろだの、次男三男を養子にとれだの、まぁ色々言われた。


いやぁ、ナメてんのかね。こいつら。


どれもこれも丁重にお断りしといたが、俺が不機嫌になってくのが顔に出たんだろう。

段々と貴族共は寄って来なくなった。


お次は令嬢達が俺を取り囲む。

寄せて上げまくっているのは、四年前と変わらない。

違うのは、未亡人や行き遅れたおねーさんなんかが混じってる事ぐらいか。

猛烈なアピールに辟易しながらも、適当に相手する。

どうでも良い事をピーチクパーチク、おまけに知らない人間の愚痴まで喋りだす。


そういえば、エリーゼが愚痴の類を話してる事を聞いた記憶がない。

いや、何度か聞いた気もするのだが、こんなにうんざりするような話し方をしなかったんだろう。


一通りパーティの参加者と話した俺は、ちょっと休んで来る、と庭に出た。

俺とエリーゼが出会ったのが、こんなシチュエーションだったなぁ、などと思い出に浸りながらベンチに腰を降ろす。


そこにも、令嬢が数人待機していた。


どっかで俺とエリーゼの出会った時の事を聞いたんだろう。

互いに牽制し合って、誰もこちらに来れないのは、滑稽でしかないのだが。


一緒に抜けてきたフィリップも、苦笑している。


「必死になるのは、わからんでもないが、これはちょっと酷いなぁ。」


「当家の財産だけで言えば、公爵家にも匹敵しますからなぁ。エリーゼ様のようなお方は、貴族では珍しいと言って良いかと。」


別に、後妻にエリーゼを求めているわけではない。

邪魔にならない女なら、それで良い。

野心はなく、贅沢は程々、大人しいが夜の生活は拒まない。

そんな女が理想かな、と思っている。


俺の心は、エリーゼだけのモノだ。


後妻は、侯爵としての体裁と、エンリッヒ侯爵家の分家を作る為だけに必要なのだ。

余計な事をしたり、言う女は必要ない。


言うなれば、結婚もやらねばならない仕事のうちだ。


「よう、アルマンド。」


フィリップと、滑稽な令嬢達を眺めていると、オーガスタ神がやってきた。

心なしか、老けたような気がする。

神と言えど歳には勝てないらしい。


「お久しぶりですね。伯父上。」


「嫁探しはどうだ?」


「ご覧の通りです。」


言うと、神はニヤリと笑った。


「それなら、私の娘はどうだね。今年17になる。器量はそこそこだが、気が利くし、聡い娘に育ってくれた。」


おお、神よ。

あなたもですか。


と言うか、神の娘は、俺の従姉妹にあたる。

割と近い親戚を嫁にするってどうなんだ。

まぁ、前世では一応合法だったが。


「遠慮しておきます。俺の妻は、エリーゼだけで充分です。これからうちに来る娘は、きっと幸福にはなれない。」


言うと、気落ちした様子もなく、ニヤニヤしたまま神は頷いた。


「あぁ、わかってるよ。アルマンド。すまんな。」


なにがしたいんだこの人は。

たまに、わからない。


「で、気に入った娘ぐらいは見つけたんだろう?」


まぁ、そりゃぁな。

パーティの終わりまでに、声をかけようとは思っている。

領主派伯爵家の長女で、群がる令嬢達から一歩離れた距離で、おろおろしながらこちらを見ていた娘だ。

身なりは派手だが、顔が地味で、どうにもちぐはぐ感があった。

美人は美人なのだが、着飾って映えるタイプではない。


あと、言うまでもない事だが、巨乳である。


オーガスタ神に、曖昧に頷いて、牽制を醜い言い争いに発展させた令嬢達に目をやった。



こんな場を設ける事は、もう二度とするまい。


俺は、多分フィリップも、そう誓った。

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