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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
~第一章~ 開拓の始まり
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侯爵様のお帰り。

対談を無事終え、俺達は王都に戻ってきた。

ラドマンは、対談が終わると再び渓谷に入っていった。

あいつからはバトルマニアの臭いがする。

父親は割と大人しいんだが、なんであんなんになったんだろう。


それはさておき、麦畑は収穫が終わって丸坊主になっていた。

少し、物悲しい。

農民達は、麦の製粉に忙しいらしく、風車塔にせっせと麦を運んでいた。


遠くから見ると、人が蟻のようだ。


城門を潜り、大通りを抜け、屋敷に戻る。

収穫祭は、これからなのだろう。

人が多かった。


「おかえりなさいませ。アルマンド様。」


屋敷の門の前で、中央にハリー、両側にメイドと使用人がずらりと並んで、一斉にお辞儀する。

正直、恥ずかしい。


と言うか、他にもやらなきゃいけない仕事があるだろ。


「ハリー、帰って来たぐらいで、こんな大袈裟にする事はないだろう。」


「屋敷の主人、それも侯爵のお帰りならば、このぐらいは当然かと。」


「やめてくれ。無駄だ。そういった客がいる時は仕方ないにしても、俺だけの時はしなくて良い。」


馬を降りて言うと、ハリーはやや不満気な顔をしながらも頷いた。

背中から、殺気を感じる。


俺に向けられたモノではない。

熟練の執事にとって、主人の考えは神のお告げに等しい。

うちの筆頭家臣殿は、ハリーの態度がご不満なようだ。


まぁ、この後ハリーに何が待ってようと俺には関係ない。


知らぬふりをして、馬の手綱を使用人に手渡し、エリーゼにただいまのキスをしに行く。

最初、身重の身体でついて来ようとしたのだが、必死に宥めたのだ。


寝室のドアを開けると、エリーゼはベットで寝ていた。

起こさないように、そろりと近寄り、額にキスをする。


「ただいま。」


言って、俺は言葉を失った。

エリーゼの肌が、透き通るように白い。

まるで、死んでいるような、そんな白さだ。


ナヴァレの笑みが頭に蘇る。


血の気がひいていくのが、わかった。


「ん、アル?」


もぞもぞと、エリーゼが動き出す。


「おかえり。」


エリーゼは寝ぼけてるのか、左目だけ薄っすらと開けて微笑んだ。


あぁ、俺は彼女のこの顔を見る為に、帰ってきた。


「ただいま。エリーゼ。」


もう一度、今度は唇に、キスをする。

エリーゼの唇は、柔らかく、暖かい。


俺は、王都に帰ってきた。

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