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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
~第一章~ 開拓の始まり
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ドワーフの長

渓谷を抜けて、北に更に一日。

山脈の麓に、ポツンと小屋があった。


そこが、ドワーフの長との会合場所である。

互いに、長だけ、二人きりで話しをする約束だ。


一人で小屋に入ると、いかにもドワーフ、と言うおっさんが椅子から腰を上げて頭を下げた。


「お初にお目にかかります。ドルーアン一族の族長を務めております、ムフェトと申します。」


職人気質の、気難しい爺が出てくるかと思えば、えらく腰の低い爺さんである。

ドワーフと言う種族に、それほど幻想を抱いていたわけでもないが、なんというか。


ただのチビの髭おっさんだ。


だが、目が笑ってない。

あと、酒臭い。


「カイスト王国侯爵、アルマンド・エンリッヒだ。元は奴隷だった男だ。かしこまる事もないだろう。俺は、そんな上辺の言葉でどうこうするつもりはないんでな。」


ムファトは、ニヤリと笑い、長椅子に腰を降ろした。

卓はない。

俺も、向かい合う形で腰を降ろす。


「うむ。どんな若造が来るかと思えば、中々良い度胸してるじゃねぇか。」


「どうも。早速だが、話しの詰めに入りたいんだがな。」


「気の早いこって。」


「俺は、同じ事を二度言うのは嫌いでね。」


「ふん。まぁ、良い。何が欲しい。」


「竜対策の技術、山師、鍛冶屋、宝石職人、建築士、それぞれ二十名は欲しい。」


「またえらい数だな。対価は用意してるんだろうな。」


「手付けとして、一級品の酒を五十樽用意した。他は、正直思いつかんかったんでな。そちらの要望を聞きたい。」


「まず、八十もこっちは出せん。せいぜい三十だな。報酬はあんたらの金貨をもらっても、こっちは仕方ない。魔道具を寄越せ。」


魔道具。

多くの製法がロストしている、古代文明の遺産である。

その種類、用途は多岐に渡り、押し並べて非常に高価なモノだ。

貴族でも、所有している家は限られる。


「モノによる。手に入るモノなら、用意しよう。」


「魔法剣が欲しい。一振りで良い。」


「わかった。三日後、此処に持ってこさせる。」


言うと、ムファトは目を見開いた。

まぁ、そりゃそうだ。

魔法剣と言えば、オモチャ程度の代物でも白金貨一枚からが相場で、そんなものでも金があれば手にはいる、と言うモノでもない。


だが、俺はそれを持っている。

いや、正確に言えば、最近買ったのだ。


その魔法剣は、王国各地に散逸したエンリッヒの家宝の一つだ。

買い戻して来たのは、シュナである。

おそらく、彼らが欲しがるものを事前に調べてきていたのだろう。


いつ使うかわからないような宝物より、今は人が必要なのだ。

俺は、ほとんど考える事なく、了承した。


「えらく気前が良いな。侯爵さんは。」


「アルマンドだ。気前もクソも、こっちは生きるか死ぬかがかかってるんだ。剣一振りで、多くの命が買えるんなら安いもんだよ。」


言うと、ムファトは苦笑で返してきた。


「こちらに来る連中は、うちで召し抱える事になる。それだけは、徹底してくれ。」


「あぁ、そりゃ大丈夫だ。」


「俺が言っときたい事は以上だ。」


言うと、ムファトは苦笑した。


「アルマンド、お前、いつもそんなんなのか?」


「さぁ、な。」


「ふむ。フィリップに聞いてはいたが、ここまで、か。」


「なんの事だ。」


「いや、良い。」


俺は首をかしげ、じゃぁな、と言い残して小屋を出た。

とぼけて見せたが、ムファトが言いたい事はわかる。


俺は、小屋に入ってから出て行くまで、笑顔どころか、一切無表情だった。

家臣達の前では、最近色んな表情を作る癖がついたが、他所の人の前では中々上手くいかない。

十五年間の習性は、中々抜けないのだ。


まぁ、仕方ない。いずれ、治るだろう。


俺は、ダルトンに手配を命じて、赤虎馬に跨った。

早く、屋敷に帰りたい。

エリーゼが、恋しくなっていた。

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