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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
三章 〜心と領地〜
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奴隷購入。

すいません。

投稿ボタン押さずに、寝てしまったようです。

さて、今日も再び朝の奴隷市だ。

明け方頃、ハリーが宿を訪ねてきたので、そのまますぐに出発した。


前回、数人の目星をつけ、奴隷商達に取り置きするように頼んであったが、新たにやってきた奴隷に、より旅に向いた人間がいるかも知れない。


奴隷商と言うか、この街では、俺の身分は隠していない。

初日から随分目立つ事をしてしまったので、隠しようがなかった。


このソーテルヌで、俺の頼みを断る商人など、いる筈もなかった。


「アルマンド様、買い取るのはよろしいのですが、本当に選んだのですか?」


ハリーが呆れた顔で、奴隷達を見ている。

ずらりと並んだ、使用人候補や護衛候補の奴隷達。

七人で、金貨三十二枚だ。

この奴隷達は、もちろん全員エンリッヒ侯爵家で買い取った。

旅の供に選ばれなかった者は、ソドムにマルガンダまで、連れていってもらう事になっている。


安くもなく、高くもない微妙な価格で、更に売れ残りそうな者を厳選してある。


「もちろんだ。他に買い手がいる者なんか買っても、仕方ないだろう。」


四十ぐらいのガタイの良いおっさんが二人、三十半ばの女性が一人。

まともなのは、この三人だけだ。

おっさん二人は傭兵崩れで、二人共、非合法の博打で奴隷に落とされたそうだ。


女性の方は、親の薬代の為に身売りしたらしい。元は農民だが、未婚だそうだ。


明らかに人間失格なおっさん二人と、他にも絶対何かありそうなおばはん。

これで、まともな方だ。


他は、虚ろな眼をした十代前半の男の子。まったく喋らない。

全身に謎の文様のタトゥーを入れてる二十代半ばくらいの女性。前歴不明。清々しいほど怪しい。

右腕がない四十代男性。元狩人で、魔物に襲われたそうだ。

そして、最後はなんと七十代のおばぁちゃん。貴族の奴隷だったそうだが、それなりにデキる人だったらしく、教養豊かで物静かな方だ。高齢過ぎて、いつ死ぬかわかんないので、後始末が面倒と言われて売られたそうな。

本人は至って健康であるとは、奴隷商の言だ。


「いくらなんでも、色物が過ぎます。選び直して下さい。」


いやいやいや。


ハリー、ハリーよ。お前の言いたい事はわかるよ?

このうち、少なくとも二人は旅に伴う。

残りはマルガンダの屋敷だ。

貴族の側に侍る者として、人格的に相応しくなかったり、能力や寿命に懸念がある人がいるのも、わかってる。

なんせ、半数は俺が選んだんだから。


それでも、それでもだ。ハリー。

誰がこんな奴ら買うんだよ。

パウロとイェーガーが連れて来た、博徒のおっさん二人なんか、見た目まるっきしヤクザだもん。

傭兵のくせに、武具まで売り払って博打してたような人間だし。

うちから支給した武具を売り払って、博打された日には眼も当てられないもんな。

だがな、ハリー、うちの領地に、賭博場、闇のも含めて、まだないんだ。


おばちゃんの方だって、まぁ良いじゃないか。

二十歳になる前に結婚するのが、普通だって事は知ってるよ?

何かしら、隠し事してる臭、半端ないよ?

それでも、仕事さえしてくれりゃ、別に良いじゃない。


男の子なんて、言わずもがなだ。

こんな眼をした子供一人養えなくて、何が侯爵だ!

お前も医者の端くれなら、なんとかしてやるのが、筋ってもんだ。


狩人のおっちゃんも、別に本人が悪い訳じゃない。

不幸な事故だ。

うちは、戦傷兵の為に身体が不自由でも出来る仕事を、幾つか作っている。

その枠に入れちまえな良いんだ。


おばぁちゃんなんか、金貨十枚もしたんだぞ。

教養あるってだけで、日本円一千万。


私はもう老い先短い身、他の若くて綺麗な子に素敵な人生を歩ませてあげて下さい、なんて笑顔で言われてみろ。


即決したわ!


え、刺青女忘れてるって?

あいつは…あれだよ。

多分、ただの変態だ。


なんでそんな刺青してるの?って聞いたら、なんて答えたと思う?


これが、私の芸術なの。身体の方も見る?


奴隷の芸術。意味がわからん。

まぁでも、絶対売れないから買う事にした。

慈善事業ってのも、時には必要だろ?


と、言いたいのを我慢して、ハリーを拝み倒す。

せめて、おばぁちゃんだけでも、と縋る俺を、奴隷改め当家の使用人見習い及び騎士見習い達が不安そうな眼で見ている。

約二名ほど、視線の種類が変わらない者もいたが。


別に、俺が買うって言ったら買ってくれるんだけどさ。

て言うか、金貨は俺の財布から出すんだし。

でも、うちに来るのに、家宰候補が嫌々受け入れるって、なんか嫌だろ。


「良いじゃない。ハリーの好みがいなかったんなら、貴方も選んで買って貰えば?」


シエーナの援護射撃。

ちなみに、シエーナが連れてきたのは、三十代の隠し事おばちゃんである。

三十過ぎても未婚って、モテなさそう!アルマンドの操が守られる!と言うのが、決め手だったらしい。

戦わずして勝つ、と昔の偉い人が言ったらしいが、そんな高度な事をシエーナが考えられる訳がないので、多分ただのボケだろう。

もちろん、ツッコミはしない。


「奥様、そういう訳では。」


「良いじゃない。アル、一人ぐらい連れて行くの増えても良いよね?」


えーと、シエーナ、ハリー、パウロ、バックス、イェーガー、オーズ、アルファド、バルザックに三人か四人足して、全部で、十一か十二人。

ちょっと多いが、まぁ許容範囲内か。


「構わん。」


「じゃぁ、ハリー、誰連れて行くのか決めたら、選びに行きましょ。」


何故か、シエーナの司会で選考会が進んでいく。


一時間ほど話し合い、連れて行くのは、隠し事おばちゃんと、虚ろな眼をした男の子に決まった。


おばちゃんの方は、名前をコラリー。

男の子はわからない。瞳孔がちゃんと動いているので、反応していない訳ではないのだが、本当にまったく喋らない。


魔眼で見てみたが、魔力に違和感もない。

まぁ、明日、ハリーが魔法薬を使ってみるそうだ。


それでもダメなら、パウロが鬼の訓練で、なんとかする。

死の一歩手前まで打ちのめせば、身体が生きようと動く。

不思議なもので、意思と本能は、やはり別にあるのだ。

その一歩を踏み出さないように、意識して追い詰めるのは、並の腕では不可能だ。

まぁ、パウロの腕なら問題はないだろう。


俺は、割りと気楽に考えながら、シエーナに引きずられていくハリーを見ていた。

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