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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
三章 〜心と領地〜
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ハリー合流

「以上で、シュナから上がっている報告は終わりです。」


ハリーが、羊皮紙をくるくると丸めながら、言った。

さも当然、といった風に俺の部屋に入り浸っている。


「それは、まぁわかったんだが。」


「外出はあと二日、お身体の様子を見ましょう。この街を出るのは、どれだけ早くとも五日後。よろしいですね?」


シエーナを攫った犯人は、捕らえる事が出来なかった。

敵は手練れ揃いで、手を抜けばこちらがやられていた、と言うのがシュナとパウロの意見だ。

俺が数合でも打ち合えたのが、奇跡的なほどらしい。

結局、確定できた事項は余りに少なく、俺達は命を狙われている、と言う事実だけが残った。


幸いな事に、俺以外で動けなくなるような、大怪我をしたやつはいない。


シエーナとバックスが擦り傷を負ったぐらいで、その傷もハリーが魔法で治してしまったそうだ。


「医者みたいだな。ハリー。」


「みたい、ではなく、医師なのですが。」


俺の言葉に、ハリーは苦笑して応えた。

なんと言うか、大人の余裕ってやつを感じる。


ハリーが此処にいたのは、運が良かった。

俺達がマルガンダから旅立つ一月ほど前に、ローヌに到着した彼は、エンリッヒ家に帰参を果たす前に、お供を一人連れて領内を見て回っていたそうだ。


なんでも、領外の噂と現実のエンリッヒ領を、自身の眼で見て回りたかったと。


どうだった?と聞くと、彼は笑って言った。


十年足らずで、よくぞここまで、と。


「付いて、来るのか?」


言うと、ハリーは笑みを深くした。


「無論です。」


目が笑ってない。


「あら、良いじゃない。仲間は増えた方が賑やかになって良いよ。」


シエーナが、口を挟む。

彼女も、俺と同じく、この宿に缶詰である。

パウロとイェーガーは、シュナの一党と共に進路の安全確認で出かけている為、この街にいない。

パウロが、これからの旅はより慎重を期すとかなんとか言ってたので、その一環だろう。

護衛騎士を増員したがったが、それは断った。

だが、どういった具合に俺を守るかは、パウロに全て任せてある。

多少の不自由も、あんな事があったのだから、仕方ない。


あの屋敷にいる事に比べれば、どうと言う事はないのだ。


「それに、ハリーさんは結構旅慣れてるんでしょ?」


「呼び捨てで、結構ですよ。奥様。」


シエーナとハリーは、面識がなかった。

エンリッヒ家に嫁いできたばかりのシエーナは、最初の頃はそれらしく振る舞おうと、無駄に尊大な所もあった。


最近は、大分と肩の力も抜けて素でいられるようだが、そうなるとハリーとの距離感が掴めないらしい。


フィリップが、自分の後釜に、と一度は見定めた男だ。

俺が死ねば、エルロンドの後見役になる男でもある。


「ごめんなさい。追い追い慣れていくから。」


「臣下に、謝る必要もございません。わかった、の一言で結構です。」


「わかった。」


うへぇ。

なんか、俺が子供の頃のフィリップみたいだな。


「そういや、お前のお供ってのはどうしたんだ?」


助け舟を出すと、シエーナがあからさまにホッとしましたよ、と言う顔をした。

また突っ込まれんぞ。お前。


「彼は、パウロに付けております。使い物にならなければ、放り出して良いと言ってありますが。」


「護衛は、これ以上いらん。」


「生粋の冒険者ですから、そういった事は不向きなのですが。まぁ気に入られますよ。アルマンド様も。」


どういうこった。

まぁ、良い。

とりあえず、ねむたくなってきた。

やっぱり、まだ身体が回復しきってないらしい。

少し身体を起こして話すと、すぐこうなる。


「すまない。少し、寝る。」


言うと、ハリーはゆっくりと頷いた。

話しながら、察していた、と言うより回復具合を測っていたのだろう。


「かしこまりました。バックスを控えさせておきますので、御用がありましたら、彼に。私は少々出かけて参ります。」


「一人じゃ危ないわよ。攫われちゃうし。」


シエーナ、お前が言うな。笑えん。


「これでも、腕を磨いたんですよ。奥様。」


あぁ、なんかパウロが言ってたな。

そこそこ、強くなったみたいな事。


シエーナと、ハリーが何か喋っている。

その声が、段々と遠くなる。


夢は、見なかった。

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