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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
三章 〜心と領地〜
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救出と侯爵の危機。

魔法の扉を潜ると、そこは山の頂きだった。

風が、強い。

遥か遠くに、街並みが見えた。

辺りは岩ばかりで、なんとも荒涼とした土地である。


そして、囚われたシエーナがいた。


竜の鳴き声のような音が、常に聞こえている。

おそらく、ローヌ峡谷のどこかだ。

谷の底ではなく、頂の方だが。


「アル。」


シエーナの悲鳴に似た叫び。聞こえた瞬間、身体が勝手に動いた。

シエーナは、一抱えある岩に、鎖で縛り付けられていた。

抵抗したのだろう。髪と衣服が乱れている。

犯人は、すぐ横に立っている男か。

顔を隠していて、目だけを出している。

いかにも忍びといった風情だ。


剣を、抜いた。

抜き打ちで、斬りあげる。


手応えはない。

皮一枚ほどで避けられた。


振り上げた剣を、そのまま斬り降ろす。

忍びが、仰け反って避け、そのまま数歩後ろに下がった。


「どこの手の者だ。」


殺す。殺人。

その行為に、一切の戸惑いを覚えなかった。


当然だ。


こいつは、この男の背後にいるであろう人間達は、それだけの事をした。


男は、応えなかった。

いや、矢を放ってきた。

何処かに、小さな弩でも仕込んでいたのだろう。

辛うじて、斬り落とした。

完全に、まぐれだ。危ない所だった。

避ける訳には、いかない。

男から、シエーナを庇う位置に、俺は立っている。


それに、こいつは魔法使いじゃない。魔眼で見る限り、魔法を使う素振りはなかった。


どこかに仲間が潜んでいる。


剣の鋒で、シエーナの鎖を斬り落とした。


「何人いる?」


「わからない。三人はいたと思うんだけど。」


そんなにいんのかよ。

忍びが、驚いたように目を見開いた。


「飾りで」


最後まで言わせず、踏み込み、突きを放つ。

問答は、無駄だ。

こいつは、シエーナを攫った。


殺せる時に、殺す。


油断していたのか、男の喉に鋒が容易く吸い込まれていく。


「アル。」


忍びの喉に、突き立てた刃を引き抜き、振り返った。


三人、いる。

剣が二人と、魔法使いらしき徒手の男。

魔法使いは、指輪などのアクセサリーを発動体にしているんだろう。

スタンダードではない、と言う事はそれなりに特殊な魔法の使い方をしてくる筈だ。

転移の魔法が使えると言う事は、空間系統の魔法か。


厄介な相手だ。


「シエーナ、逃げろ。」


言った時には、駆け出していた。

勝てずとも、シュナ達が来るまでは、粘ってみせる。

これ以上、この下衆共にシエーナを触れさせてたまるものか。


「我が名はアルマンド・エンリッヒ。首に、不足はあるまい。」


魔法使いの男が、詠唱を始めていた。

こいつの魔法は、さっさと潰さねばならない。

だが、剣の二人が、前に出てくる。

横薙ぎに、剣を使う。

俺の剣を弾こうとした、男の剣が羊羹の様に斬れる。

そのまま、男の肩を深く斬りつけた。

男の眼は、驚愕で見開かれていた。

本来なら、俺よりも剣の腕は数段上だろう。


「アルマンド様。」


パウロの叫び声。

どうにか、辿り着いたか。

振り返りそうになったが、もう一人の男が斬りかかってくる。

咄嗟に、後ろに下がった。


上からの斬撃。


見えている。


だが、足元の衝撃と同時に、視界が回った。


岩に躓いた。

なんと無様な。


男の剣先が、ゆっくりと迫ってくる。


これは、死んだな。

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