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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
三章 〜心と領地〜
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焦れる心。

嫌な予感がする。


シュナと、少しだが打ち合わせをし、魔眼を開いた。

俺の魔眼は、人の多い所で全開にすると、様々の色の靄がかかって、何も見えなくなる。

だが、眼球に通す魔力を絞れば、顔を判別できるぐらいの視界はあるのだ。

魔法で何かされる前に、こうしておけば感知しやすい。

ついでに、魔法系のトラップ対策にもなる。


腰には、遺跡から発掘した純ミスリルの剣。

炎が吹き出したり、雷を纏ったりといった浪漫ある能力はないが、ミスリルの魔力が全て斬れ味に注がれている逸品である。

斬鉄の技術など持ち合わせてはいないが、ただの鋳鉄ぐらいならば豆腐のように斬れるし、下手に扱えば、鞘すら斬ってしまう。

黒麒石のような、魔力が通用しない物質相手には、勿論通用しないか、まぁそんなものを持っている奴はそういない。


うちで出た黒麒石は、オーガスタ神に売ったしな。

彼の販売ルートは、東の砂漠やその先の帝国にある。

王国内で、流通している事はまずないだろう。



昼過ぎになっても、ラターシュの市場は人が多かった。

だが、人に見るべきモノはない。

魔道具、それも一見ソレとはわからないようなモノ。


シュナがイェーガーから聞いた所によると、隣にいた筈が、忽然と消えたらしい。

シュナ曰く、手段が魔法や魔道具以外に無いわけではないが、探知系魔法に優れているイェーガーのすぐ傍では、それらを使用するのは、ほぼ不可能と言って良いそうだ。


シエーナの姿を探して、市場の人を掻き分ける。

何故か、死骸になったシエーナと高笑いする豚公爵、そして泣いているエルロンドが、頭に浮かんだ。


不吉な。


大丈夫だ。


シエーナはあれで、そこそこの護身術を身につけてるし、俺と違って人並み程度には魔法を使える。

すぐに、どうこうなる事はない。


ない、と信じる。


不意に、俺の魔眼に扉が映った。

赤の魔力で出来たそれは、所々歪んでいるが、扉だ。

よく見ると、俺が進む方向にスライドして動いている。

この中に、入れと言う事か。


ゴキブリみたいな扱いしやがって。


多分、別空間への扉だ。

転移魔法と呼ばれる系統で、中々難しい魔法だった筈だ。

この世界の魔法は、神界にいる古い神を力の根源としているので、四大元素から成り立たない魔法、時間や空間、重力などと言った類の魔法は格別扱いが難しい。


どうも、それなりの魔法使いが、あちらにはいるようだ。


人混みの先にあるそれに、不自然にならないよう、辺りをキョロキョロと見渡しながら近づいていく。

シュナの手の者が数人、いる。

多分、遠巻きに護衛させていたんだろう。

他に、怪しいやつはいない。


やはり、あの先か。


剣の柄を、握っていた。

人を斬った事はない。

この剣なら、容易く両断できるだろう。

剣の腕も、良くはないだろうが、悪くはない筈だ。

シエーナが、あそこにいる。

捕らわれているのなら、捕らえた者を斬らねばならない。

あるいは、斬られる。


どちらでも良いが、とにかくシエーナが逃げる時間は作らねばならない。


扉は、もう目の前にあった。


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