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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
三章 〜心と領地〜
126/164

たまには、悪くはない。

本日二回目投稿

もう随分良い時間の筈だ。

だが、酒場の喧騒は衰えない。

俺は、強かに酔った。

もう何杯飲んだとか覚えてない。


「あ、あそこのおじさん喧嘩してる。」


酔いで顔を真っ赤にしたシエーナ。

よしよし、愛いヤツめ。

今夜は思う存分可愛がってくれよう。


「ねぇ、喧嘩だってば。」


彼女の髪に触れていた俺の指先に、シエーナが頬ずりしてくる。

あぁ、今すぐ抱きしめたい。

柔らかい胸の感触を、全身で楽しみたい。


「アルマンド様、シエーナ様、こんなとこでイチャつかんで下さい。」


顔を向けると、パウロが呆れたような顔をしていた。

イェーガーとバックスはブスッとしてエールを煽っている。

免疫がないのか、オーズは耳まで真っ赤にして俯いていた。


「たまには、良いだろ。たまには。」


「酔ってんでしょう。」


「そりゃぁ、酔う為に飲んでんだから。」


「宿に戻ってからにして下さいよ。俺らが当てられたって、この街に娼館ないんですから。」


お、このやろ。主君の俺に説教垂れようってのか。


「お、なんだ。マルガンダの娼館、やっぱ行ってたのか。」


「いや、はい。行ってましたが。」


「奥さん泣くぞ。」


「私泣かないよ?怒るけど。」


「そうだね。奥さん。」


「泣かさないでね、旦那さん。」


「うん。頑張る。」


「いや、だから。」


パウロが盛大に溜息をついた。

シエーナが椅子を寄せて密着してくる。

腕、腕が優しさに包まれてる。

今日限定で、シエーナさんの戦闘力は五十三万だな。


「オーズ、任せた。」


オーズの頭をパウロが掴む。

かばっ、と効果音が出そうな勢いで、オーズは立ち上がった。


こいつ、いつの間にか寝てたな。


「あれ?」


あれ、じゃねーよ。


「ってえなこの野郎。」


あらやだ。

後ろで立ち飲みしてた、むさ苦しいナイスガイが、青筋立ててらっしゃる。

オーズが立ち上がった拍子に、どっかぶつけたんだろう。


見たとこ、中堅どころの傭兵か。

流石に、帯剣はしていないが、包丁サイズの短剣を腰にぶら下げている。

仕事終わりだったのか、革の胸当てはそのまま着けているが、防具はそれだけだ。


「あ、すいませんね。」


オーズが振り向いて、謝りながら頭を下げようとした瞬間、ぶっ飛んだ。

おっさんの拳が、オーズの顔面を中々良いフォームで振り抜いたのだ。


喧嘩慣れしてやがるな。


「お、喧嘩か。」


俺が呟くと同時に、アルマンド護衛三人衆が立ち上がる。

三人とも、ニヤァと笑ってる。


「おっさん。連れが迷惑かけたな。」


おっさんの連れが立ち上がるよりも早く、パウロが拳を振り抜いた。

文字通り、おっさんが吹っ飛んでいく。

今、宙に浮いたぞ。あのおっさん。

生きてんのかなぁ。


「この野郎!」


いちにぃさんしぃ、連れが六人か。

まぁ、パウロ達なら大丈夫だろ。


あれ、いやなんか人数増えてきてね?気のせい?分身の術?


「おわッ!?」


またオーズが飛んで来て、俺達の卓をぶっ壊した。

反射的に俺とシエーナのグラスは確保したので、問題はない。

オーズは、多分最初の一撃からノビてる。


オーズが飛んで来た方をみると、そっちでも乱闘が始まってた。

なんか、2mぐらいありそうなマッチョメンがいる。

多分、アレに投げられたんだろな。


「お酒。お酒ちょーだい?」


俺の腕を包み込んでいる優しさが揺れる。

愛いやつめ。いくらでも飲むが良い。


「おばちゃーん。」


シエーナにグラスを手渡し、呼ぶとおばちゃんは乱闘の中をするすると避わしながら、やってきた。

このおばちゃん、出来る。


「卓は、弁償だからね。」


第一声それかよ。

まぁ、良い。


「わかってるよ。酒ちょうだい、酒。」


「ワイン飲みたーいです。」


ピシッと挙手するシエーナ。

なんだ、今日のお前の破壊力パネェな。


「多分まだ壊すし、渡しとくよ。足りなくなったら言ってくれ。」


銀貨五枚をおばちゃんに握らせる。

こんだけありゃぁ、足りなくなる事はないだろう。


「はいはい。」


複雑そうな笑顔を向け、おばちゃんはまたスルスルと乱闘の向こう側へと消えた。



結局、乱闘は明け方近くまで、続いた。

もちろん、最後まで立ってたのはパウロである。

最後は、何故かパウロとバックスが殴り合ってた。


俺とシエーナは、杯を傾けながら、ずっと愛を育んでいたので、どうしてそうなったのかは知らない。


歩ける三人で、歩けなくなった三人に肩を貸し、並んで宿に帰りながら、俺は思った。


こういうのも、たまには悪くはない。

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