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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
序章
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再会したよ。

奇跡が起こった。

正式に男爵になるのは、王都に戻ってからになるらしいが、扱いは王国貴族である。

すぐさま、俺は最寄りの街に向かい、身だしなみを整え、街一番の宿屋で迎えに来た貴族が、俺が奴隷だった間に起こった事、これからの事を話してくれた。


この誰がなんと言おうとイケメンな完璧超人、いや神にも等しい貴族は、オーガスタ・ラフィット子爵。

俺の母親の兄、つまり伯父にあたる。

客観的には、特に顔の特徴のない、そこそこの顔面なおっさんだ。


まず、俺の両親の話し。

親父は牢を出された後、3日間も磔にされた後、全身を槍で突かれて死んだらしい。

もちろん、公開処刑。

遺骸は、更に三日晒された後、宮廷魔術師達によって塵も残さず焼き尽くされた。

母親は親父とは別行動だったらしく、騎士が捕縛に来た時点で、実家に知らせを送り、毒を煽って自殺。

遺書には、謂れの無い罪に対する憤慨と、俺の身を案じる言葉が綴られていたそうだ。


そして、エンリッヒ家の領地だ。

親父は中々優秀な内政家だったらしく、非常に豊かな領地だったのだが、今は王家の血縁である公爵家に分配され、取り戻すのはほぼ不可能とのこと。

男爵に叙された後、新しい領地をもらう事になるそうだ。


エンリッヒ家の財産だが、これはとある公爵家が接収。

王家に対する反逆を暴いた功績で、ほぼ独占したらしい。

エンリッヒ家は爵位は低い方なのだが、建国王の旗揚げから付き従った忠臣から続くかなり古い家系で、家格だけは高い。

金銀財宝はそれほど持ってない筈だが、今では製作不可能なアイテムを幾つか家宝として所蔵していた筈。

それと、この公爵家はエンリッヒ家没落を主導した家である。

オーガスタ曰く、でっち上げの主犯はこの家でほぼ決まりなのだが、公爵は一部の例外を除いて王家の血が入っているので、下手に手出しできないのが現状らしい。


次は、エンリッヒ家の家臣達。

家宰はさっきの公爵家で、領地の代官をしているそうだ。

間違いなく裏切り者だな。

エンリッヒ家の軍事力だった従士長を始め、ほとんどの兵力は親父に連座して処刑、もしくは殉死し、親父の手足だった内政官達も以下同文。

この家宰以外、ほとんど残ってないそうだ。


「もちろん、例外はいるがね。入りなさい」


俺達が寛いでいる街一番のスイートルームに、見覚えのある老人が入ってきた。

背筋を伸ばし、乱れ一つない白髪のオールバック、見事に手入れされた真っ白なヒゲ。

執事のおっさんこと、フィリップ・ロスチャイルドだった。

真一文字の唇と、眉間に寄った皺が、昔の小煩い説教を思い出させ、俺は思わずニヤついてしまった。


「アルマンド様、よくぞ、よくぞご無事で。」


フィリップは、声を震わせ、今にも泣きそうな感じだ。

俺は、なんと言ったら良いのかよくわからず、曖昧な感じにニヤついたままだ。

どう見たって無事ではなかったしな。

今は清潔ではあるし、きちんとした服も着ているが、ガリガリに痩せてるし、身体中あちこちに痣がある。


まぁ、産まれた時から、めんどうを見てもらっていたのだから、フィリップにとって俺は息子か孫みたいなもんなんだろう。


「アルマンド殿、声ぐらい、かけてやれ。」


オーガスタにせかされる。

俺がもっと喜ぶとでも思ったのか。

不満そうな顔しやがって。


「なんと言えばいいのか。ちょっと。」


言って、フィリップに視線を戻す。

当たり前なのかも知れないが、かなり老けた。

俺が奴隷になる時は四十手前ぐらいっぽかったので、今は五十半ばぐらいか?

老けて当然だが、奴隷のじいさんと似たような雰囲気がある。

彼も、この十五年間、苦労したのだろう。

いつも厳しかった、あのおっさんが。

そう思った瞬間、頬に何か伝うのを感じた。



涙だった。


【家宰】

貴族家における、家臣団筆頭。

貴族家当主の政務全般を補佐する。

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