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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
第二章 〜食糧確保と町造り〜
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旅立ち。

「アルマンド。」


宴の席で、オーガスタが絡んで来た。

既に相当飲んだのか、顔が真っ赤である。

今日は、うちの家臣達もよく飲んでいる。

ちょっと心配になるような飲み方をしている奴が多い。


「しっかり、休んで来い。こっちを気にするなとは言わんが、のんびりすれば良い。お前は、働き過ぎた。」


俺の横に座り、肩を抱かれる。

酒臭い。


俺は曖昧に頷き、曖昧に笑った。

休むと言うのが、どういう事なのか、正直よくわからなくなっている。

だが、皆の前で旅に出ると言った時、肩が少し軽くなったような気はした。


「めんどうな事を、お願いして申し訳ありません。伯父上。」


言うと、思いっきり頭を叩かれた。

久々に、叩かれた。

不愉快ではない。


「そういうのは、一度だけ言えば良い。」


オーガスタは、ニヤリと笑って言った。

もう老境に入ったと言って良い歳の筈だが、未だ若々しい。

ある意味、俺の方が老けている。


「すいません。」


「飲め。アルマンド。」


ドバドバとワインを注がれる。

オーガスタは、所謂高級ワインよりも、スッキリとした飲みやすいテーブルワインを好む。

堅苦しい場にいる時以外は、本当に貴族らしくない貴族だ。


「それなりに、飲んでますよ。」


皆に目を移すと、例によってパウロがキートスを潰しにかかっていた。

マンシュタインは、静かに飲んでいる。

彼の隣に座っているグレンは緊張しているのか、飲むペースがちょっと尋常じゃない。

フィリップとダルトンは、真剣な顔で何か話し合っていた。

アルフレッドは、潰れてテーブルに突っ伏している。

ソドムも眠そうに眼をしきりに擦っていた。


それぞれ、宴を楽しんでいるが、何か違う。


「家臣に、気を使うな。アルマンド。それは、お前の美徳でもあるが。」


ぽつりと、オーガスタは呟いた。


「彼らには、甘えてばかりですから。」


「互いにそう思ってる限り、救いようがない。もっと大きく構えろ。お前は、こいつらにとって唯一無二の主君なのだからな。」


「しかし」


「何も言うな。そうやって、お前は自分の言葉で自分を追い詰めた。領主と言うのは、家臣が働いてるのを黙って見てりゃ良い。やる事を決めてしまえば、出来る事などほとんどないと言って良いんだ。」


俺は、諭されてるんだろうか。

ぼんやりと、そんな事を考えた。

オーガスタの声には、慰めるような響きがある。


「旅で、よく見て来い。」


そう言って、オーガスタは俺の肩を叩き、パウロとキートスの方へ、歩いていった。



翌朝、旅装を整えて屋敷の門に向かうと、シエーナ達が既に待っていた。

二頭立ての馬車と、馬が三頭。

旅に必要なモノは、既に馬車に積み込んである筈だ。

フィリップとキートスが、見送りに出て来ていた。


「待たせたか?」


馬の鞍に革袋をくくりつけていたシエーナに声をかけると、彼女は振り返って首を横に振った。


「全然。時間通り。」


「そうか。」


「エルは?」


「散々、駄々をこねられた。」


昨夜、宴が終わった後、俺は初めてエルロンドと同じ部屋で寝た。

一年ほどは、ここに帰って来ない。

そう言うと、エルロンドは自分も行くと、珍しく我儘を言った。

どれだけ無理だと言っても、エルロンドは食い下がったが、最後には折れた。

ただ、一緒に寝たいと、俺の部屋について来たが。

今はまだ寝ている。

起こした方が良いかと思ったが、また我儘を言われると困るので、そのまま部屋を出てきた。


「まだまだ甘えたい年頃だから。帰ってきたら、ちゃんと構ってあげなさい。」


頷く。

いつの間にか、こんな事をシエーナに言われても腹が立たなくなった。

いや、最近は感情の起伏そのものが希薄になった気がする。


「アルマンド様。」


フィリップが声をかけて来た。

やはり、生気が今一つ欠けている。


「フィリップ。後を頼む。」


「一年、ですな。」


「あぁ。必ず、帰って来る。」


あの後、俺とフィリップでオーガスタが滞在する館に二人で行き、オーガスタに俺が旅に出たい事、後の事を頼みたい事を伝えた。

本当は、フィリップも伴うつもりだったのだ。

オーガスタは、俺がマルガンダを離れる事は賛成したが、フィリップは置いていけと言った。

他に、領地の事を理解した上で家臣の指揮を執れる者がいない。

オーガスタは、俺の親戚とは言え、未だラフィット家の当主でもある。

最近は、ほとんどの権限を息子に移譲して半分以上隠居生活らしいが、他家の領地に関する権限を握るのはよろしくない。


結果として、フィリップは残る事になった。


「どうか、お健やかに。」


「お前もな。」


言うと、俯くようにしてフィリップは頭を下げた。


「そろそろ行きましょう。アルマンド様。」


パウロの威勢の良い声。

俺達はまず、十日ほどかけてマルガンダ周辺の村を周り、南下してサンジュリアンに入る。

その後、東に向ってローヌを目指し、マルガンダに戻ってくる予定だ。

急ぐ理由はないので、ゆっくりと進めば良い。

これは、視察ではないと、俺は何度も自分に言い聞かせた。


赤虎馬に跨る。


「行ってくる。」


言うと、キートスも頭を下げた。


門を出る。

百名ほどの騎士が整列していた。

エンリッヒ家の旗、黒に、交差する三本の麦が掲げられている。


「マンシュタイン殿が。珍しい。」


パウロは、少し驚いていた。

まぁ、マンシュタインは余り派手な事を好まない男だ。確かに、珍しいと言えば珍しい。


俺達は、ただ静かに進んだ。

オーガスタは、どこにもいなかった。

遠慮したのかもしれない。


また、この季節か。

俺は、なんとなくそんな事を思い浮かべていた。

気がつけば、冬の終わりは近い。

ここで、二章は終わりです。


今回は、無駄に長くなった上にまとまりのない話しになってしまいました。

アルマンドの心理描写に、やたらと力を入れ過ぎた結果でしょうか。


二章は全体的に、非常に暗い話が続き、読者の不評を買ったようですねぇ。

正直、こんな話にするつもりはなかったのですが、何処で間違えたのか…。

次章からは、もうちょっと明るめの話しをいれて行こうかと。

四章は、全体的に暗くなる事はないですが、鬱要素は出てくる予定ですし。


いやしかし、途中から書くのがめちゃくちゃ辛かった。

こんなの続いたら、最後まで書ける自信が正直ありません。

難しいですねぇ。長編書くのって…。


次章は、二章で書ききれなかった領地の事や、王国の事を…書きたい(´・_・`)

だいたいそんな感じです。


ではでは、今後ともよろしくお願いします。


2014年2月5日 昼

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