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口号抄
作:白琴


○いきる いのち


 イヌも、サルも、トリも、
 吐息の白い季節はまるくなる。
 まるい地面に、よっとのり、
 くるくる、ぐるぐる、
 ヒトの言葉はまるくなる。
 イヌの言葉もまるくなる。
 サルの言葉もまるくなる。
 トリの言葉もまるくなる。
 丸い天を見上げては、
 心も丸くならないかと、
 あまねく生物を代表して、
 かしこみながら、
 祈る、
 ヒト、
 人間、
 サピエンス。



○人間 主義(自由な空白)

 バクダン 降って、陸が海になった。
 モグラは、知っていた。
 地中深く逃げた。 死んだ。
 
 バクダン 降って、海が光った。
 イルカは、知っていた。
 海の底で息を潜めた。
 息も吸わずに 死んだ。




○何の罪もなく。

 風が言った。
 罪なく歩いている私に、なにを問うのか。
 人が言った。
 あなたは口を開いてはいけない物体だ。
 風が言った。
 罪なのか。



○日々

 やるせなく生きる時代は終わった。
 派手に生きる時代はとうに終わっていた。
 もの哀しく生きる時代はすぐに終わった。
 私達は、どのように生きるのでしょうか。
 やるせなくもなく、
 派手でもなく、
 もの哀しくもなく、
   私達の日々は、
 いつか、時代と呼ばれるのでしょうか。




○旅立ちたいとおもう


 雨となって、私の所に来たあなた。
 それまであなたは雲でしたね。
 どこを巡っていたのですか。
 楽しかったですか、苦しかったですか。
 地上の具合はどうですか。
 怪我をしていませんか。
 大丈夫ですか。
 色々あったでしょうけども、
 おつかれさま。
 また、会いましょう。




○小石道

 つねにするどい家のなか、
 パープルごときの家のふち、
 ちびっこだらけの軒下で、
 あたりはいつも色だらけ。
 ただし、家はまっしろの、
 まちのみちにつらなって、
 どこか、どこかの、
 小石道。

 毛玉の吐息は愚におわる。
 イエローいろのいえのふち、
 かたまりあった、こちこちの、
 苦しみだけが生き残り、
 通った道を忘れる日、
 どこか、どこかの、
 小石道。




○人間観察記

 ながいみち、光の束。
 手にみちる、光の束。
 生きまくる、はだいろ。
 かけあしで、ながいみち、
 まったりと、ながいみち、
  うら、
  おもて、
 美しいもの、
 にがいもの、
 みちるまち、
 まだ、まだ、
 生きまくる、
 はだいろの、美味。




○ターナーからの引用

 越えるあしを持っているのでしょうか。
 ひきつっていても、
 すりへっていても、
 あなたの、その、あしは、
 あの、とんでもなく高くけわしい大地を、
 越えていけるのでしょうか。

 走るあしを持っているのですね。
 ころんでも、
 おされても、
 あなたの、その、あしは、
 あの、おそろしい、高くけわしい宇宙を、
 のぞんでいるのでしょう。

 生きるすべを持っているのですね。
 ののしられても、
 しぼられても、
 あなたの帆は、折れないでしょう。
   



○ 変転、詩

 狂った外道の美々しさよ、
 偽善の外道のうつくしさよ、
 まわる人、人のはつものよ、
 五体をすまさぬ物、物よ、
 はてなき、愛欲の、
 くるくる、ぐるぐる、
 まわりそこねた、猛々しさよ、
 万物の剣よ、
 なすがままの剣よ、
 外道の反転した世界よ、
 終わりのない文物、
 ものどもよ、
 ああ、ものどもよ、
 憎しみをもって、
 ほこをもって、
 日没をまつべきか。





○ さらに転変


 生命の泉を真中にすえて、
 実りある愛に乗り、
 東西南北、自由自在。
 くるぶしまでしたたる生命の泉、
 嵐がきても、犯した者がきても、
 ぱあ、ぱあ、光をそそぐ。
 怒りの者は、ほほえみ、
 しっとの者は、やすらぎ、
 病の者は、回復する。
 生命の泉よ、
 たれが君をじゅうりんしようと、
 君のまわりの衛兵が、
 君をいとおしくおもうなら、
 永遠に枯れぬ水を、
 にくしみの、雷さえも通さない、
 生命の水を。





○犬のねごと

 ああ、地面はまあるいなあ。
 ああ、足足、足のむれだ。
 あれはどこへ行くのだろう。
 あたらしいところへ行くのかなあ。
 ああ、地球はまあるいなあ。
 あたらしいところへ向かっても、
 あたらしいものなんか…。
 ああ、まあるいなあ。




○トリアージ

 飛んで行こうか。
 逃げ切れなかった、あの日をおもい、
 死に切れなかった、あの日をおもい、
 あいまいな言葉を連ねつつ、
 ぼやけるままに区切られた、
 この世界、このとりまく世界から、
 飛んで行こうか。



○地球の名前

 地球の名前は何だろう。
 耳をすまして聞いてみる。

 大きな体の地球には、
 何と名前を付けようか。
 畑を耕し考える。

 生物みなが考える。
 ミミズも、
 モグラも、
 ヒトも考える。

 彼らが付けた名前みて、
 地球は何も言いません。
 なにもかもを受け入れる、
 地球の美しさ。




○地獄天国

 どくをぬく、
 悪魔のいおりに、
 腕二本。
 はらはたをひっかいて、
 ゴーレムでもこしらえれば、
 人々は、逃げるだろう。
 逃げるついでに苦しむのは、
 造り手だけの特権か。

 美しい、
 天使の顔に、
 金二つ。
 財をほじくり、
 ゴールドをひっかき、
 人々は、喜ぶ。
 それをしりめに叫ぶのは、
 地球だけの特権か。





○ピエロと哲学者

 道化師のうるおい、輝く宵の月。
 学問の、うるわしくおどる赤の舞い。
 対する、者と物。
 嫉妬の嵐。
 思想の恋、
 恋、恋と、つまらぬ人の、人、人よ。
 ひとではないのか、ひとでなし。





○大衆主義

 手をあげても、
 規則には逆らえぬ。
 ためていた感情も、欲情も、
 そっけなく、すてられる。
 思想のための頭脳か、
 規則のための生き方か。
 


○気体詩

 ベラスケスの憂鬱、
 もやもやのあくたがわさん、
 おそろしい芸術家たち、
 箇条書きの詩、
 一ナノメートルの雲、
 切り取った命、くいっと広げて、
 新しい生命の発見。



○ブーイング

 追われ、つかまり、
 はりつけに。
 必死に、逃げて、
 洛外へ。
 ブラックホールに、
 抗のなかに、
 あるいは、人の中に、助けを求める。
 



○手と手

 手の甲と、手の甲を、
 ぱちんと合わせれば、
 てのひらと、てのひらは、
 くっくっくと笑って、
 泣くでしょう。
 さみっしくって、さみしくて、
 おん、おん、と泣くでしょう。



○ぺんとぺん

 さきっちょの、
 むなしさや、かなしさや、
 いなくなる、わびしさや、
 さきっちょの、
 もの静けさや、くるしさや。

  


○なぞの詩

 しかけたこころのすみで、
 かんなをかけるこころたち、
 きょうも、あすも、
 ふところにしのばせた、
 もっとも恐怖なものを、
 ふうじこめ、
 ぬくぬくへいぜん、ぬくぬく、へいぜん。


 おうごんにぬりつぶした、
 かめんやら、ふくやら、あくせさり、
 みにつけるものは、
 ひからび、くちる、
 王者のみ、
 かれはないている。
 なにゆえに、ないている。
 ぷく、ぷく、ぷく、と、
 いきができない、ぷく、ぷく、ぷく。





○音色


 音色とは、こういうものかい。
 こたつの赤外線を、
 かつ、かつ、とこすったら、
 たらりん、たらりん、
 音色ではありませんか。

 音色とは、こういうものかい。
 時代、時代の弦を、
 かつ、かつ、とこすれば、
 ほんとうにうつくしい音色が、
 そこいらへんに、
 ひびきますなあ。




○るる、止まる時代

 母よ、どこへ行った。
 ローマ文字にはない時代。
 母は父を探すため、
 日本の文字は、どこへ行った。
 遠い国へ行ったのだ。
 つめのさきが、わずかにでも、
 かみの毛が、わずかにでも、
 さらり、さらりと、
 ふれたなら、
 母よ、
 母の追う父よ、
 あなたがたに、
 わたしたち、人間は、
 あえるのだろう。




○人間だった

 なみだ、
 しずく。なみだのしずく。
 ――人間だった。

 死、
 自然のおもしろさ。死と自然。
 ――人間だった。


 生命、
 他の生き物のため、
 他の、思想のため、
 燃える、生命、
 黒コゲの、
 ――人間だった、生命。




○手


 でっかい手。
 あなたは、さしだしてくれなかった、
 偉大な手。
 命は、一つっきり。
 心の思想は、一度っきり。
 にくしむじゃないか。
 うらめしいじゃないか。
 いつだって、
 あなたの手は、
 おおきいのに、
 私の手は、いつだって、
 あなたの手の中じゃないか。



○ふとんのかおり


 あのころのかおりは、いずこにただよう。
 病のふとん、
 どれほどの血を吸ったことか。
 うるわしのかおりよ、
 あの、あたたかなかおりよ、
 汗ばんだひたい、
 ぬれた、かみ、
 そっと、やさせくなるのは、
 あの、かおりのせいだ。
 綿は、
 重みの中心に、
 心を置く。
 溜め息まじりの、
 かさなる、
 かおり。



○まとのうた

 まっとうに考えると、
 つまらない人生かもしれない。
 ねじれて考えると、
 きみのわるい人生かもしれない。
 ぼう、と考えると、
 一瞬の人生かもしれない。
 考えながらの生きかたは、
 苦しみの人生かもしれない。
 こう、つらつらと、
 ケセラセラと考えて、
 文字を書いてる人生は、
 まとをいているのか、
 いてないか。
 ひとに考えてもらおうかと、
 的をはずれた答えで、
 ゆるしてほしい。




○かたいことぬきで

 ダンス、ダンス、
 かたいことぬきで、
 つまらぬ愛をすて、
 つまらない愛情をすてて、
 欲はどこからわくのか、
 わくなら、とかせばいい。
 この上のない現実の大空で。

 まわる、まわる、
 やわらかいことだらけで、
 おもしろい言葉を聞き、
 おもしろい人をみて、
 欲をあちらこちらに探しながら、
 快楽なら、たもてばいい。
 極上のふうせつ風節にまかれて。




○マッチポンプ


 はては夢見るだいじん大人か。
 しかけだらけのよのふちで、
 宙に飛ぶは、UFO。
 ひとのしそうも、そのなかの、
 おもしろい、いきかたの部品かね。

 写真とる、あぶらきった人間の、
 感受性。
 宙に浮かべばいいものを、
 人の思想をその中へ、
 じょぼりじょぼじょぼ、つけたす命。

 よせばいいのに、
 よしてしまえば、
 火はつかない。



○にせもの

 わるいきがします。
 ようかいのような、
 くるしみのような、
 つまらなさの、
 きみのわるい、
 にせものの、
 レモンあじ。




○よくぼう

 たけだけしき、性欲よ、
 むさぼる。くいちらす。
 自慰こういではおさまらぬならば、
 けものにおちるだろう。
 しかし、けものはうつくしい。
 五体すべてが役に立つ。
 人は、けものになれるだろうか。



○おっぽ

 はなやいだ、
 無言の生き死にに、
 腕の中、
 ぶらいの国の、ことばかず。
 ふるえるままに、
 いぬのおっぽ。




○なぁ、なぁ

 なぜかなぁ、
 いのちのなぁ、
 つながりのねぇ、
 たいせつななぁ、
 おもしろさかなぁ、
 このよのねぇ。
   命をふくむ人生

 いざ、つながりのとき。
 なにを機械にして戦うべきか。
 どのような甲冑をつけて戦うか。
 どさくさにまぎれて逃げようか。
 おう、そうだ。
 どさくさにまぎれて、逃げてしまえ。





○世界一の震え

 手紙を書きつつ、震えるのは、
 何のせいかとおもっていたら、
 ざらざらの物体が、
 何兆何京とならんでいたせいだと、
 ついつい手紙に書いてしまい、
 ついに、ついに、おたけびを、
 犬のお尻にひっかける。
 四月一日、親父の死。



○海

 酔いどれ達の海遊行。
 するどい眼を海へ向け、
 力のこもった肉体を、
 やあれ、やあれ、のかけ声で、
 生命の縄を巻き上げる。
 糧を得るために、
 陸にあがった魚らを、
 おおらかにつつみあげ、
 さあ、
 食おう。
 むしゃり、むしゃり、
 食ってから、
 もう一度、するどい眼を海へ向け、
 なにものかに祈っていれば、
 心も体も、しみいって、
 明日もまた、
 大漁だい。




○物体そのもの


 直視するのは恐ろしい。
 たれもが怖がっているものは、
 おそらく私自身も怖がっている。
 けっとばして、
 ばちん、とはって、
 眼が覚めれば良い夢も、
 物体そのものの力は、すさまじい勢いで、
 脳のなかに忍び込む。
 
 けれども、けれども、ぐうぜんに、
 いつのまにか、生きている、
 わたしは、
 けとばすこともできているし、
 ばちん、とはることもできている。
 直視するのは恐ろしいが、
 のぞきみくらいは、できるらしい。




○須臾の命

 次項ゆくまでに、
 いつかは、はらむ、
 りんかくよ、
 釧路の山は、遠きもや、
 那須の川は、ゆるゆると、
 なき命をもてはやす、
 せつなき海は、非業とはならず。



○ヒュ―ヒュララ

 風っ気こどものはみだし笑い、
 うかうか、うかうか、
 金のつえ、
 おしどり夫婦のほったてこや、
 やまも、たにも、
 ヒュ―ヒュララ



○人計り

 後悔した太陽。
 酩酊した月。
 あとは、人ばかり。
 人計りはどこへ行った。
 あの、かみやら、ほとけや、聖人は、
 どこへ行った?



○ひこう非光

 もっともむずかしいのは、
 闇だ。光の中の闇だ。
 闇は作れない。
 ほんのちっぽけなあこがれに、
 闇の名がはいるのは、
 それのせいだ。




○くる

 くるまる、
 くき、
 そよそよ、
 くるまる、
 くちびる、
 ぽつん、
 くる。



○だだこねるてて

 だいだいいろの空、
 だしをとる、
 いすだらけ、
 すっぱい、
 むかし
 。




○牧歌的理想郷

 はっぱの根、
 るるとかおる、
 なのはなの、
 つめたい、
 あめは、
 きのねっこ、
 ふみゆくは、
 ゆかいな、人々よ。




○いたみ

 ふあ、ふあ、
 快楽のすみっこに、
 いたみ、いみな、
 しゅらとも、らせつとも、
 不明なきらきら星が、
 痛みを欲す、現世界。
  


○おもちゃ


 ありゃあ、おもちゃじゃ、
 作ってこわして、
 こしらえて、
 くりかえすんじゃろうか、
 作ってこわして、
 こしらえて、
 
 そうそう、そうそう、
 
 おもしろいおもちゃ、でも、
 おもちゃはひからびくちる竜かいな、
 竜ならまだいいけれど、
 ひとよ人世は竜のすみかではなく、
 ありゃあ、おもちゃじゃ。



○泳ぐ

 はたして、
 川の流れだったか。
 数々のものは、
 とうとうとして、流るるものだったか。
 いたみがある。
 血がある。
 それをかきわけての今は、
 みたされているのだろうか。

 かつて平和だった土地に、
 いたずら小僧がやってきて、
 畑をあらし、野を焼いた。
 けれども小僧は悪びれすらしない。
 やがて小僧は殺される。
 あれた畑が、コンクリートになった時、
 焼かれた野に塔が建ったとき、
 はたして、
 小僧は、泣くべきだろうか。



○音の行為

 ササミさか立つさかさ声、
 たたみたたくきびと木人たち、
 なにをいうか、なこうどよ、
 はかのまえに、はかない命、
 まめを食らえば、
 またいつか。




○殺された時間

 本意をすてたなつかしさ、
 自分が、自分が、日々重く、
 いのちは、とろけぬ、バターソース、
 発信元は、からくりら、
 殺された時間は、
 らりくらか。
 



○青よ、さらば
 
 青のない世界に生まれた。
 雨を、目に映る雨を、美しいとおもった。
 肉を、あの肉の香りを美しいとおもった。
 音の、世界に生まれたかった。
 美の、世界に生まれたかった。
 雨を美しくおもいたかった。
 肉を美しくおもいたかった。




○行き行きて又行く

 ことぶきの朝。
 落ちる光。
 行く道。
 いつか、この世界が、
 一番、やわらかい万物になるように、
 息をする。




○わをん、あ

 見上げては、
 ほしぼしの数に指おって、
 夜風は、背中を、
 ぐいぐいと、
 おお、これこそが、
 空。

 ほしの間に、
 ちかちか、
 赤や白、
 飛行機などが飛んでいる。
 風向き変わっても、
 ほしのなか、
 道の記の、重々棚、
 見上げる、
 人と道かよ交い、
 ついに終わりは、
 知らず顔。







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