『これで終わりにしましょう。バーニングスター』
星のような小さな焔が、矢となってスバルに降り注ぐ。
「────試合は立ってる者がいなくなったら終わりだぜ」
小さな焔とぶつかるように風が吹く。風は焔を打ち消し、消えていく。
『あなたですか……ウィンド』
レーヴァテインは憎憎しげにそう呟いた。彼の目の前には二人の電波人間、キリュウとミソラがいる。
「スバル君を死なせはしないよ」
ミソラの決意のこもった声は、スバルには届かない。けれど、ミソラははっきりとそういった。
『あなたが来てなんになると? 現にあなたよりも強いお仲間を三人ほど倒しました。弱いあなたではどうしようもありません』
「けど────」
「たしかにそうだ」
ミソラの声を遮ったのは、キリュウだ。
「たしかにこいつは一人じゃ役に立たない。本当に邪魔なだけだ」
『ちょっと、それ本気で言っているの?』
ハープはキリュウに抗議をするが、それを無視してキリュウは続ける。
「だけどよ、こんなことわざ知っているか?」
途端に、レーヴァテインに向かって黒い剣が飛んでいく。
『ちっ』
「塵も積もればなんとやらってな。なあ、ブライ?」
彼を援護するように現れたのは、ソロであった。
「何を言っている。おれはロックマンに用があるだけだ」
「はいはい、まあいいや。で、レーヴァテインどうする?」
『……ゲイボルグが来ればお終いでは?』
「そうだな、けどよ。まさかこんなときに対策してないと思ったか?」
『なに?』
「一応、連絡しておいたよ」
『サテラポリスにまだ戦えるものがいたと!?』
「この女以外は避難させるために動員されているよ。だから、もっとほかの奴さ」
「ククク、君がゲイボルグ?」
『……誰だ? キサマは』
ゲイボルグの前に立ちはだかる、謎の少年。それは笑いながら話しかけてきた。
「僕、君のことあんまり知らないけど。戦ってくれない? ちょっと最近暇でさ」
『死ぬぞ? さっさとどけ』
「ああ、それはない。だって、僕のウィザードは君の基となった奴だから」
『なに?』
『無駄話をするな』
少年のウィザードは、冷たくその場を制する。
「分かったよ。じゃあ、あっちも大変だし手短に終わらせようか?」
右腕を黒く禍々しいソードに変形させて、少年はそう宣告した。
「おまえの増援は無い。ヘイトも今は来ないだろ? つまりだ。おまえの作戦負けだよ」
『……フフフ、いいでしょう。三人いっぺんにかかってきてください』
「…………あんた、行け」
「え?」
「あいつを止められるのはおまえだけだ。さっさと行け。そしてさっさと元に戻してやれ。俺達は時間稼ぎだ」
「……分かった」
ミソラは一人、スバルの元に向かっていく。それを、止める者はいなかった。
『どうせ死ぬだけですよ? 獣化は彼女が敵う相手ではありません』
「それをなんとかさせに行ったんだよ。ブライ、俺達は時間稼ぎだ。いいな?」
「命令するな……だが、まあいい。これが終わったら返してもらうぞ」
「さあ? それはまた別の話だな。じゃあ、おっぱじめるか」
「スバル君、もうやめて!」
ミソラの悲しき叫びを受けてもなお、スバルは止まらない。獣となり、本能の限り破壊を行う。
「もう・・・やめてよ」
その場にへたり込んでしまうミソラ。彼女は、カイに言われてからずっと考えていた。その答えが休業だ。
けれど、カイのいうとおりそれは手遅れであった。それが、どうしようもなく悔しくて、悲しかった。
そして、今できることはただスバルを止めること。ほかの誰よりも簡単なはずなのに、彼は元に戻ってくれない。
彼女は思う、自分がもっと重荷を背負わせていなければ、こんなことにはなんなかったのではないだろうか? もっと自分が、なにかをしていれば、こんなことには
「もうやめてよ、スバル君!」
「ぐあ!」
「がはっ!」
キリュウとソロはそれぞれ別の方向に吹っ飛んでいく。
『これだけですか? 弱いですね』
レーヴァテインが真の名前を告げた途端から、やはり戦況が全てひっくり返った。ブライカイザーとなったソロでさえ、攻撃を防げずなかったのだ。
『やはり、レゾンの力は偉大ですね。力が体のそこから溢れていますよ』
「ちっ、黙れ」
キリュウは毒づくが、戦況は一方に良くならない。炎の質がおかしい。通常状態の火が1センチほどなら、真の名前を告げた途端それが30センチになるのだ。約三十倍に跳ね上がる力。
『【解放状態】だけではこれほど強くなれませんよ、全く』
「くそ、どうにかならないのか!」
立ち上がりながらいうソロ。彼ももう相当のダメージを負っている。
『では、一足先にさようなら。バーニングスター』
もはや槍だった。幾戦もの槍が、雨のように放たれる。
「くそ────」
その場が大爆発し、二人の生死も確認できないほどに煙が立ち込める。
これが、『ガイア』の本気。災厄の杖の本領だ。
暴れまくっていたスバルだが、ふいに止まった。
(……止まってくれたの?)
そう思って嬉しくなる心だが、スバルはただミソラをただ見つめている。まだ、獣のような眼で。
「……え?」
そして、スバルは動いた。理由は簡単だ、ミソラを壊すために。思わず体が硬直したミソラだが、これが運命だと悟った。自分が悪いから仕方がないと開き直った。
だから、心の限り叫んだ。せめてもの可能性を賭けて。
「────元に戻ってよ、スバル君!」
ミソラは、スバルを抱きとめた。
「はぁ・・・はぁ……」
槍の雨を防いだキリュウとソロだが、体がもう限界を迎えていた。体中に傷を負い、そしてなにより心が参っている。勝てない、それだけが脳を駆け巡る。
「(くそ……加速は意味ないし。かといってあれは……)
加速は距離が遠すぎて意味が無い。さらに防御面が薄い。その理由は、圧倒的過ぎるスピードで攻撃があたらないと仮定しているからだ。だから、意味が無い。
「(どうせなら、あいつも呼ぶべきだったか……)」
脳裏に浮かぶのはある知り合い。防御なら自分よりは全然性能がいいだろう。巻き込みたくないから、世話になりたくないから呼ばなかった。自分が強くなりたいと思わせた人に、手伝って欲しくなかった。
『キリュウ』
「使わないよ、絶対に」
ここで死ぬのだったら、意味が無い。ここまで来たのなら、死ねない。だから、このあとのことも考えて切り札は使わない。
『これで充分でしょう、ファイアボール』
巨大な火の玉が、高速で迫ってくる。もう、避けれない。けれど二人は動いた。火の玉に向かって。
「「うおおおおおおおおおおっ!」」
二人が火の玉に直撃する瞬間、赤きなにかが通り過ぎた。それは火の玉を吹き飛ばしていった。
「待たせてゴメンね」
ふいに届いたのは忘れていた存在。もう、諦めかけていた存在。
「僕も戦うよ」
獣化を完全に制御して、赤い怪鳥となって戻ってきたスバルだった
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