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第九話、トリステイン政戦 2
 トリステインで犯罪者として裁かれそうになった政治家達はアルビオンに逃げていった。彼らがどうなったかは分からないが、多くのお金を持ち逃げしたのは確かである。
 ラ・ヴァリエール公爵率いる旧世代の英雄は今後のトリステインの動きをしばらくは見守ることにしたようだ。
 しかし全く問題がないというわけではない。『今回の戦争は軍事関係の知識がない政治家が引き起こしたものであり、軍人が政治をしていれば回避できた』と軍人達が言い始めたのだ。
 それを銃士隊や王家に近いグリフォン隊などが仲裁に入り、武力で訴えないように抑えているのが現状である。
 これには大きな原因があった。グラモン伯爵家が最前線から退いた後、跡取りの兄は父親のような活躍を見せていない。つまり英雄と呼べるメイジがいないのだ。
 皆が一定レベルの実力しか持たない現状では従わせることができず、隊長の座をめぐって争いが続き、その不満を王家に向けたのだ。
 その問題に対してギーシュは頭を悩ませていた。争いごとを嫌ったギーシュは戦略を殆ど勉強しなかったため軍人に受けが悪いのだ。
 これから問題は大きくなっていく、はたしてどうするつもりなのだろうか・・・・・


〈夢想家集団〉
 軍国主義が広まりつつあるトリステイン軍の扱い方に悩んでいた。彼らが悪いわけではない、戦力バランスを考えない無能な政治家が悪かったのだ。
 彼らは祖国防衛のため金を軍のために使うよう訴えてきたのだ。分からなくもない、あれだけ一方的に攻撃されればな。
「ギーシュ、このまま軍を無視して計画を続行するのは無理です。何か納得してもらえる方法を探さないと。」
「しかし彼らに従い戦争をするわけにはいきません。」
「分かっています、何か考えはありませんか?」
「彼らの言っていることは極端すぎます。まずは話し合い、本当の要求を聞くべきです。それからでも遅くはないでしょう。」
 このときギーシュは思っていた、政治家のように名誉や金が欲しいのだろうと。しかしそれは間違いだ。彼らは腐敗したトリステイン政府を怒っているのだ。
 軍に配属されるのは政治的な取り引きで名誉を求めるものばかりで役に立たず、政治家は何か問題が起こると軍を勝手に出動させるのだ。
 『平民が貴族の名誉に泥を塗った』という理由で軍を動かし平民を殺す。それが一般的となってしまった。
 騎士達は政治家の尻拭いをさせられ続け、トリステインの政治家を信用しなくなったのだ。『自分達が国を動かせばいいのではないか』そんな考えが広まり、軍国主義が広まりつつあるのだ。
「問題はどこまで妥協するかです。」
「はい、議事堂建設は中止。上下水道の設置は一部に限定。新型戦艦を多く買うくらいでどうでしょうか。」
「そうですね、彼らも分かってくれるでしょう。」
 だが彼らが抱えている問題はそれだけではない。軍と政治家の関係を変えなければならない。
 今までは政治家が各国の動きを見て決めていた。しかし前王が死んでから腐敗し、権力を求めて政戦を繰り返す愚かな国となってしまったのだ。
 今回の敗北で今までのような貴族による政治の仕組みを変えないといつか滅ぼされてしまうのは確定だ。
「軍と政治家は関心が違います。それをどのように一つにするべきか悩みます。」
「平民を議会に招いても知識不足で役に立たない。国家のためという考えも違う。しかたがないと言えばそれまでですがね。」
「それでも考える必要があります。戦争で軍人は名誉のために戦います。本当に国を思うなら汚れ仕事をしてもらいたいです。」
「確かに綺麗事しかしない軍隊は存在価値がないですね。」
「はい、そこでギーシュにはこの件の責任者になってもらいます。」
「分かりました、お受けいたします。」
 ギーシュはこの日から対策会議を繰り返した。しかし軍隊の仕組みを基本しか知らないギーシュは役に立たず、そして運命の日が訪れた。


〈武装集団〉
 普段はトリステイン軍の各隊長の待機所となっている場所で会議を始めた。彼らはこれまで政治家の娯楽のために多くの平民を殺してきた。
 政治家は多くの権力を持っている。国王の次に偉い存在なのだから当然だが、彼らはそれを振りかざすのが好きだった。
 だがいつも汚れ仕事をするのは軍隊だ。ドットやラインメイジでしかない彼らは軍隊に頼んでいたのだ。
 そして今回の戦争で多くの隊長や副隊長が死に、生き残ったのは経験不足で簡単な仕事を任されていた者や、王都防衛のために残った部隊だけであった。
 その後の権力争いは酷かった。戦闘能力や経験が殆ど変わらない者が隊長の座をめぐって争いが続いたのだ。
 グラモン家の長男がそこで皆に提案したのだ。『このままでは軍まで腐敗する、我らの地位と軍の強化を訴えよう』と言ったのだ。
 その後何度も会議をして考えたが、『政治に関わるべき』という意見が増えたため武力で訴えようとしだしたのだ。
「さて現在休戦が続いているが、どうすべきだろうか。」
「確かなのは政治家は戦争を理解していないということだ。」
「さよう、世代交代と王の死が一度にきたため軍は行動しなかった。それが政治家を肥やした原因じゃな。」
「そうだ、われらが動かなかったから・・・・・」
「後悔しても始まらない、大切なのは今だ!」
 実際トリステイン軍は最弱だ。同じ弱小国家であるアルビオンは空軍力で各国を抑えている。だがトリステインは政治に金を使い、軍隊や国の発展に金を使わなかった。
 ギーシュは積極的に行動しそれらに金を使ったが、戦争を嫌うため軍隊には殆ど手をつけなかった。
 ゲルマニアは多くのドラゴンを使ってヴァルハラを攻めた。その結果強いドラゴンを手に入れて戦力が上がった。
 それに対してトリステインはただ不満を口にするだけで自分の利益を心配し、行動せずアンリエッタ王女に金を求めた。
「ゲルマニアは空軍力が上がった、ガリアは変わらず最強のまま、アルビオンは内戦で王軍が負けつつある。」
「それに対してトリステイン軍は全滅・・・・・国が存在するのが奇跡だ。」
「地位が必要だ、政治家の言うことに反発できるくらいのな。」
「賛成だ、ここで変わらないと国が滅びる。」
「だが問題はグラモン家のギーシュだ、彼は政治にしか興味がない。」
「あれは夢想家だ、現実を見ていない。今は無理でもいつか殺すべきだろう。」
「とにかくまずは政府に宣戦布告しよう、我らの思いを伝えるために。」
「そうだな。」
 この日トリステイン軍隊長同盟という組織を創り、アンリエッタ王女に宣戦布告を伝えた。手紙には次のようなことが書かれていた。

アンリエッタ王女様へ
我々は度重なる政治家の悪行に対して我慢の限界に達しました。
戦争を知らぬものが戦闘指揮をするのに問題があり、
また利益の追求しかしない貴族に怒りを感じている。
我らはトリステインの未来のために宣戦布告することを決意しました。
我らは政治家と同等の権力、
戦時の最高権力の保障、
国家方針の変更、これらを要求する。
受け入れられない場合は王家を滅ぼすと警告する。
トリステイン隊長同盟

 これを見たギーシュは行動が遅かったことを後悔した。その証拠に砲弾が城に撃ち込まれ、内部のメイジを混乱させた。
 ギーシュは銃士隊とグリフォン隊をつれて交渉を訴えたが、ギーシュでは相手にもされず、攻撃されたのだ。
 ヴァルハラ戦に続いて内戦、まだまだ混乱は終わらないのであった。


〈ギーシュ〉
 まずい、彼らは本当に怒っている。僕は戦争をする軍人が嫌いだ。その為関わらないように行動していたのが裏目に出た。
 父は僕のことを腰抜け扱いする。でもそれで領地が荒れ果て、借金を抱えて没落寸前では意味がない。
 しかしグラモン家は軍人の家系、母もそれを理解していてそれを許さなかった。だから僕を受け入れてくれた王女やルイズ達には感謝している。
 なぜ戦うという選択肢を選ぶんだろうか、戦えば国のお金を消費し、平民に多くの死者が出るというのに繰り返す。その結果がヴァルハラ戦だ。
 僕の研究は無駄になり、彼らの力を上げただけだった。本当に許せない、僕らの苦労して手に入れた成果をただで奪うなんて。
 それにトリステイン軍もそうだ、弱いくせに文句だけは言う。結果を出してからなら聞いてもいいけど、弱いまま。政治家と一緒で利益しか求めていない。
 でもジェイルのおかげで戦力が上がった。ドット魔法を無力化する防具があれば銃士隊も強くなる。
 彼らに見せてやろう銃士隊の新戦力を。


〈銃士隊〉
 トリステイン軍との戦争、それが我々の初陣だ。どう考えたって戦力・経験・数、全てで劣っている銃士隊が勝てるわけがない。
 指揮官のギーシュ様は高度な戦術を私達に教えてくれた。しかしそれを実現するのに必要な武器がなかった。
 だが新型銃のおかげで可能になったが、まだ銃に慣れていない騎士が多い銃士隊は行動が遅くなっている。
 それに最大の問題は敵の指揮官が軍人であり、こちらは政治家だということだ。戦力として数えられないため本当に邪魔だ。
 だがグリフォン隊がいてくれるのはありがたい、空中戦ができない私達はそちらを期待していいだろう。
 そもそも彼らの言い分には理がある。政治家が戦闘で口を挟んでも良い事はない。それを理解できない現在のトリステインは変わらないといけない。
 おそらく相手もそれを理解しているのだろう。私達がするべきことは被害を小さくして、政治家が理解するのを待つことだろう。
 本当にトリステイン貴族には精神が子供である者が多すぎる、大人である私達が現場で教育するしかないのだろうか。



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