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後ろから全力で見守ります!③

 


 ところ変わってお昼休みの中庭です。

 私は今とっても大事な局面に向き合っているのでしょうか。とうとう一ノ瀬さんと篠宮くんが衆目の中で対峙しています。

 中庭にからくさが転がって見えるのは私だけの幻覚ではないと思います。

 誰もが彼らのいく末を固唾を飲んで見守っています。二大禁忌と呼ばれるのと同時に二人は学園内の超有名人です。注目されない訳がありません。一触即発の空気の中、一ノ瀬さんが先手を切りました。

「篠宮くん、友達になってください」

 ああ、私だっあらこんな風にお願いされたら一も二もなく承諾します。けれど篠宮くんは頑なに受け入れようとはしません。やっぱり一匹狼の彼は人と馴れ合うことを良しとはしないんでしょうか。

 篠宮くんの拒絶の言葉にぶるりと身震いしてしまいます。心なしか風も冷たくなってきました。夏がもうすぐだといってもまだ桜が散り始めた春。北から吹く風はひんやりと冷たいです。おまけに今の時間は中庭の半分が校舎の影になっているので余計寒いです。

 それでも教室に戻ろうなんて思いません。というか今動いたら目立つことこの上ないでしょう。

 生徒の大半果ては教師陣もちらほらと見受けられます。そんな中私たちは中心に近い位置にいるので身動ぎ一つできないのです。

 そんな緊迫した雰囲気で一ノ瀬さんは周りに頓着することもなくただひたすらに篠宮くんに笑みを向けています。

「わたしね魔法使いを探してたの」

 ん?なんだか不思議な言葉が聞こえてきました。魔法使い?そう言えば自己紹介の時も言っていた気がします。

 何かの比喩でしょうか。それにしても篠宮くんには似合わない言葉だなーと成り行きを見守っているとな、なんと!

 篠宮くんがオーケーを出しました!

 感動です!一ノ瀬さんは篠宮くんの手を取ってそれは素晴らしい笑みを浮かべています。

 急展開に唖然としたのもつかの間中庭が大歓声に包まれます。

 だってだってあの一ノ瀬さんと篠宮くんですよ!?優木くんの言っていたこともあながち間違いではないのかもしれません。

 どこかやつれた篠宮くんは半分、魂飛ばしてませんかね。大丈夫ですかね。

 なにはともあれお二人はお友達になれたようです。良かった良かった。

 で、終わる物語ではありません。

 ここからが私たちの本当の闘いの幕開けでした。






「主ら!また邪魔をする気か!!」

「なんども言いますけどそのしゃべり方どうにかならないんですか。気持ち悪いんですけど」

「なーにー?我々を愚弄するか!」

「愚弄って言うか鳥肌たつんだよ!いい加減現実に戻ってきたらどうだ?」

「リア充どもめ!」

 はい、なんとも間抜けな言い合いをしている私たちです。痛い発言はもちろん私たちじゃありませんよ。

 一ノ瀬さんファンクラブの皆様です。彼らはなんと申しますか二次元に生きる人種と言いましょうか。いや、一ノ瀬さんファンクラブの皆さんが全員これではないですが、一つの派閥と申しましょうか。

 私たちは今、一ノ瀬さんファンクラブを足止めしております。なぜかと言うとこれまで静観していた彼らがとうとう動き出したからです。

 私たちがやりあっている彼らは下っぱも下っぱ。けれど一ノ瀬さんと篠宮くんの友情を邪魔させる訳にはいきません。障害が友情を厚くするとも聞きますがうぶなお二人には時期尚早でしょう。

 なので二人に近づけないように通せんぼしていると言うわけです。

「ええぃ!そこをどけ!我らがアイドルゆかりちゅあんの側から汚物を排除せねばならぬのだ!!」

 汚物って……。もしかして篠宮くんのことでしょうか?私から見たら彼らの方がよっぽど……。

 それはさておき。です。

 一ノ瀬さんファンクラブ第一の刺客はザ・おたく集団です。

 ゆかりラブと刺繍した鉢巻きを頭に巻いて剣の如くゆかり命と書かれた手作りうちわを掲げています。

 おまけに制服の上にはコスプレのつもりなのか白衣まで着ています。

 はっきり言ってドン引きです。前に立ちたくありません。視界に入れたくもありません。しかし、これははゆかりさんのため!これが一ノ瀬生とは信じられませんが現実逃避している訳にもいかないので自身を奮い起たせます。

「ここはいい。お前は優木を援護しろ」

「ですが!」

 同士の一人観月くんが私を背後に押し退けました。よく見ると優木くんも戦線を離脱して私を手招きしています。

「敵は彼らだけじゃない。一ノ瀬さんたちの側に誰かがついてないと。それに僕はなんとかとっかかりを作ろうと思う」

「それは、まさか!?」

「宣言通り僕は一ノ瀬さんとも篠宮くんとも友達になりたい。まずはきちんと話すところから始めようと思うんだ。君には後方支援を頼みたい」

「そういうことだ。お前確か一ノ瀬さんたちと同じクラスだろ」

「……分かりました。誠心誠意努めさせていただきます」

 観月くんはにっと笑うと頑張れと言うように私の髪をぐしゃっと撫でました。行けというように背を向けます。その後ろ姿に感動したのは言うまでもありません。

 迫りくるおたく集団に立ち向かう同士たち。

 皆の犠牲無駄にはしません!

「行こう!」

 優木くんの言葉に頷きを返すと私たちは次の戦場へ向かっていきました。

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