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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第10章 冬籠りの辺境生活

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閑話 とあるおちんぎんのファンタジスタ 中

 先輩はわたしに向かって家族の一員に加わる日が来るのだと宣言したのですよ!
 さようなら、わたしの奴隷生活。
 これで家族の一員となるのであれば、肩身の狭い借金地獄から無条件に解放される事になります。

「マドゥーシャ。お前はご主人さまと結婚し、女神様の祝福の元にご主人さまの妻としてその命の限り忠誠を誓う事を誓いますか?」
「はい誓います。ありがとうございます。奴隷身分から解放されるなら何でもオッケーです!」

 わたしはたまらず前のめりになって、二つ返事で了承しちゃいました。
 あんまり勢い身を乗り出したものだから、大正義さまと先輩を驚かせてしまったかもしれない。

「法的な手続きを行うためには、カラメルネーゼ奥さまがお帰りになるまでは出来ないと思います」
「は、はい」
「カラメルネーゼさまは今サルワタに戻るために馬車の手配があるとかで、ここ数日セレスタまでお勤めに出ておりますから。マドゥーシャさんにはご辛抱をかけますけれども、それまでの間はお待ちください」
「待ちます!」
「今さら言うまでもない事ですが、わたしたち家族のルールは何事も順番が大切だというモットーを守る事です。その事を守ってしっかりとこれからもシューターさんをお守りしてくださいね?」
「かしこまり!」

 にこやかにわたしへと説明するカサンドラの奥さまに、わたしは何度も首肯する。

 家族になるという事は、これ即ち閣下の数多くいる奥さんのひとりに加わるという意味です。
 ハーレムは姉妹、ハーレムは家族であるというお考えから、カサンドラ奥さまはこの義姉妹による家族の団結をとても重要視されていますからね。

 閣下は女神様のおわす世界から降誕された、身も蓋も無い言い方をすれば辺境に地縁も血縁もお持ちでない方だからわかりますねえ。
 これなら家族と部下を一挙両得に手に入るわけですから、よく考えられたものですよ。

「……読んでてよかった、愛人から成り上がりに必要な七つのメゾット!」
「マドゥーシャ、何かカサンドラ奥さまに言う事でも?」
「い、いえ何でもありませんよ先輩っ。ありがとうございます、そのうそれでわたしはいつ閣下を寝所にお誘いすればよろしいのでしょうか」

 ちょっと余計な事を口走りそうになって、白い眼で先輩に窘められてしまいましたよ。
 危ない危ない。
 せっかく人生の風向きが変わりつつあるのだから、ここで余計な事をするべきではない。

「さあもうそんなところで立っていないで、こちらに来てお茶にしませんか」
「かしこまりましてございます奥さまっ」

 先輩がウンと頷くのをしっかりと確認してから、座った先輩の後に続いて腰を落ち着けた。
 ちょうど、お勤めの休憩時間にさしかかったんでしょうかね。
 食堂やそれぞれのお部屋から奥さまのみなさまたちが顔を出してくるじゃありませんか。

「家族になるって聞きましたよう。うふふ」
「魔法使いの嫁は宝石よりも貴重であるから、そなたがお兄ちゃんの妻となるのは家族にとっても有益だ。まこと重畳であるな」
「ぼくはきみがもしシューターさんを裏切ったら、二度とその口で魔法の呪文が呟けない様に喉をつぶして歯を全部へし折るから安心していいよ。おめでとう」
「シューターさまの妻になるのであれば、あなたはもう少し早く朝起きる様にしなければなりませんの。それから夜も早くにお休みになるべきですのよ」
「愛しいひとはどこまで妻を増やすのであろう。ラミアのわたしには測りかねる遠大な計画があるのやもしれぬ」
「わたしがお義姉ちゃんになるという事かしら? 傑作ね!!」

 リビングルームに集まった奥さま方は、口々にそんな言葉を並べてくださる。
 祝福されているのか値踏みされているのかイマイチわかりませんけれども、殆どいつもと変わらないティータイムをしているはずなのに、妙に緊張してしまうじゃないですか!
 そうかわたしもこれで高貴な身の上の一員になるわけですよ。
 一員、一員なんて繰り言の様に頭の中で言葉をイメージしていると、お優しいカサンドラ奥さまが言葉をかけて下さいます。

「マドゥーシャさんも家族の一員になるのですから、あまり緊張なさらなくてもいいんですよ」
「は、はい。お貴族さまのお作法なんてあまりよく知りませんからねっ」
「これからは貴族令嬢の鑑であるカサンドラ義姉さまを見習って、勉強をするといいわよ。ジイ、マドゥーシャに作法の指南書を貸してさしあげなさいな。確か行李の中にあったでしょう、できる淑女のお貴族マナーという本が!」
「かしこまりましたお嬢さま、魔法使いどのには後程……」

 ははは。おいおい勉強させていただきますね。
 なんて作り笑いをしながらも、もちろん脳裏では別の事を考えていましたよ。
 そんなお貴族マナー本の勉強をするよりも先に、愛人から成り上がるための七つのメゾットに書かれていた内容を今こそ実践しなくちゃいけませんとね。

 閣下のお金を利用して、効率的にお金を稼ぐ方法です。
 家族の一員になればおちんぎんの他に、結婚に向けての支度金が貰えるんですよ!
 わたし知ってます! カラメルネーゼさんはその支度金で奴隷商売の支店をゴルゴライに出店したんですよね。
 あわよくばわたしも支度金を転がして、おちんぎん以外でも収入を。うふふ……

 もちろん素人が商売に手を出したって、失敗したらまたまたの転落人生。
 だから手堅くいくなら、魔法塾を開いて先生になるという方法……

「魔法使いを訓練する私塾ですか?」
「そうですカサンドラ奥さま。せっかくわたしも家族の一員になる事を許されたので、家族の一員らしくサルワタ貴族の利益になる事をひとつやってみようと思いまして!」

 わたしはおちんぎんを頂いた時の様な笑顔を浮かべて元気にそう返事をしておきました!
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