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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第10章 冬籠りの辺境生活

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362 おめでとう、俺は父親になりました

いったん投降後、後半パートを加筆修正しました。

 出産の際に一番取り乱すのは父親だ、何て事を聞いた事がある。
 実際その立場になってわかった事だが、いったい男が何の役に立つのだというほど俺はオロオロしていた。
 取るものもとりあえず迎賓館を飛び出すと、旧市街にある教会堂の診療所に向かう。

「おい相棒、これから父親になるんだから少しは落ち着いたらどうなんだ。ん?」
「そんな様子では産まれてくるあかちゃんに、侮られてしまいますわよ婿殿。高貴な身の上の旦那さまたるもの、もっと堂々と構えておいでなさいな!」

 ニシカさんやカラメルネーゼさんに声をかけてもらって、どうにか落ち着きを取り戻そうとする。
 それにしたって出産が予定よりもずいぶん早いものだから、不安なのだ。

「アレクサンドロシアちゃんの体は大丈夫なのか?!」
「落ち着いてくださいシューターさん。先ほども申しましたが、ゴブリンの血筋を引いていると妊娠期間は短いのですから。それにゴブリン族ではッワクワクゴロさんのご兄弟の様に、双子や三つ子も珍しくなく、」
「えっ、アレクサンドロシアちゃん三つ子を身籠っているの?!」

 聞いてないぞそんな話は!

「いえ、そうではありませんから落ち着いてくださいね、シューターさん!」
「う、うん」
「お話の続きですが、一度に産まれるお子さんが多い場合は妊娠期間も長くなるそうで、そうでない場合は比較的早い場合もあるとか」
「それに大丈夫ですよお。ガンギマリーさまがいるから、万が一にも母体が健康を害される事は無いのです旦那さま。これで少しは安心できましたか?!」
「うん……」

 診療所の入口までやって来ると、優しく大正義カサンドラとタンヌダルクちゃんが微笑んでくれた。
 少しは落ち着きを取り戻せた気がする。
 つまり俺の領主奥さんは、別に問題があってあかちゃんが予定より早く産まれるわけではないのだ、きっとそうだ。
 ゴブリンとヒトの愛の子だから、たまたま早産だったのだ。

「よし、中に入るぞ。俺はどんな顔をすればいい?」
「男は黙って笑顔だよ、シューターさん」
「お、おう!」

 俺の服の袖を引っ張って、いつも俺が口癖にしている様な事を言って笑いかけてくれるけもみみだ。
 勢ぞろいしたハーレム大家族の視線を浴びながら、俺は精一杯の笑顔を取り繕って診療所の扉を開いたのである。

「ああっ、ご主人さまが来られましたハーナディンさま」
「本当ですかモエキーさん?! こっちですよこっち、アレクサンドロシアさまが首を長くしてお待ちしております!」

 廊下に入れば待合室のベンチに座っていたモエキーおねえさんが反応して立ち上がった。
 奥で何かの作業をしていた修道騎士ハーナディンを呼んでくれて、あわててこちらにハーナディンがやって来る。

「奥さんはどうなっているんだ」
「元気も元気です。先ほどから閣下のご到着はまだかまだかと聖女さまに聞いてばかりの有様で」
「そ、そうか。モエキーさん、俺の顔はどうなっている? 産まれてくるあかちゃんに泣かれたりしないかな?」
「……あかちゃんは泣くのがお仕事なので気にする必要はないかもです。それに、ハーレム大家族の大黒柱として、とてもご主人さまは立派なお顔をしています。ただ、」
「ただ?」
「ちょっと顔が引きつっているかもです……」

 ほらほらシューターさん、などと大正義カサンドラにふたたび窘められながら、大きく俺は深呼吸をした。

「奥でガンギマリーさまと教会堂の優秀な医療スタッフたる助祭たちが控えていますからね。シューターさまは何もご心配なさる必要はありませんよ」
「わかっているよ。よし、俺は男になるぞ、いや父親になるぞ!」
「俺は男性だからこの先はご遠慮しておきます。さ、閣下や奥さま方はご遠慮なさらずにどうぞ中へ」

 頷いた俺の背中を叩いてハーナディンが笑った。
 もしかすると俺がよほど情けない顔をしていたので、珍しいものを見たと思ったのかも知れない。
 そのままゾロゾロと奥さんたちを連れて診療室の奥へやって来ると、さっそくにも俺の領主奥さんのくぐもった声が聞こえてくるではないか。

「……ところでお兄ちゃんはいつになったら顔を出すのだ。妻たるわらわがもうすぐややこを出産するというのに」
「さあ息を整えましょうご領主さま、苦しくなったら言ってくださいね、吐いて吐いて吸って、はいどうぞ」
「ハァハァヒイッ。……帰還したという知らせはオホオの小娘から届いたのであろう!」
「はい、吐いて吐いて吸って。安心してちょうだい、先ほど迎賓館にもッジャジャマを使いに走らせたから、その内にも血相変えて飛んでくるに違いないわ。さあもうすぐよ、力を抜いてちょうだ」

 雁木マリの指摘通り血相を変えて飛んできた俺は、寝台を仕切っていたつい立をけ飛ばす勢いで中に顔を出した。

「アレクサンドロシアちゃん!」
「お、お兄ちゃん。お兄ちゃんではないか。わらわは頑張っておるぞ、わらわは頑張っておるからな!」
「うんよく頑張ってる。あとちょっとだ、頑張れ、頑張れ!」
「わらわ頑張る、わらわ頑張るぞ!」

 普段は毅然とした態度で部下たちを睥睨しているアレクサンドロシアちゃんが、こうも気弱そうに俺を見上げて来るので。
 何と言葉を添えていいかわからない俺の意味不明な励ましに、これまた意味不明な言葉で反応を返してくれた。
 こうしてハーレム大家族の奥さんたちに見守られ、守護聖人たる雁木マリによる聖なる祝福の魔法を受けながら、アレクサンドロシアちゃんは俺の子供を出産した。
 おぎゃあ、おぎゃあ。

「おめでとうシューター。あなたとアレクサンドロシア卿の第一子は、女の子だったわね!」

 産まれたばかりのあかちゃんを、眼の前で直に見たのはこれが初めてだ。
 真っ赤な顔をして必死に口を大きく開けて、想像したよりもかなり小さな生命だった……
 けれども、泣き叫ぶあかちゃんは元気な証拠らしい。少しだけ耳が尖っているのは、この子もアレクサンドロシアちゃんの血を受け継いでいる愛の子の証という事だろうか。

「母子ともに健康で何よりだわ」
「わらわは頑張ったぞ。お兄ちゃん……」
「ありがとうございます、ありがとうございます!」

 本当にありがとうアレクサンドロシアちゃん。
 俺は父親になりました!
 溢れる涙を気にする事も無く、俺は妹から母親になった領主奥さんを優しく抱いた。
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