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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第10章 冬籠りの辺境生活

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336 山小屋では全裸で抱き合えばいいというのは本当だろうか

新年あけましておめでとうございます!
短いですが更新です。
 雪原の中に放り出されたはずの俺であるけれど、どうやら意識を手放したの僅かの間だけだった様だぜ。
 それもそのはずだ、こんなところで全裸で放り出されてしまえば誰だって凍死してしまうのは目に見えているはずで、直後に駆けつけたニシカさん、それに蛸足麗人とけもみみによって覚醒させられたわけである。
 イグニッションな魔法恐るべし……

「当たり前だぜ! ただお前ぇは全裸を貴ぶ部族だからいいけどよ、他の嫁どもはただの人間だぜっ」

 アンタッチャブルで禁忌な魔法を発動させた女魔法使いは言うに及ばず、ベローチュやソープ嬢もキャストオフしてしまったのである。
 俺だけは問題無いだろうと言われて不機嫌そのものになるかけたけれども、今はそんな事を言っている場合ではない。

「不思議と体は何ともないぜ……」
「そりゃ全裸を貴ぶ部族なんだから、服が脱げても大丈夫なんじゃねえのか?」
「そっちじゃねえ!」

 今度こそ強烈に抗議をしながら、ニシカさんに抱き起されつつ俺は周囲を見回した。
 確かに体は寒さを感じていないらしい。
 今のところ女魔法使いのイグニッションな魔法のおかげで体は無駄に膨張感を覚えたままだったし、妙に芯がポカポカとする様な気もする。
 心なしか膨張感が多少なりとも収まっていて、腕や太ももを見た限りは人間の限界を超えた様なムキムキではなくなっているのだ。

「だとすると、あまり長くイグニッション魔法は続かないという事なのか……」

 手前ぇは何をわけのわからない事を言っているんだとニシカさんに呆れた顔をされながら、俺は少し離れた場所で、雪中に体を半分埋め込まれたような姿で転がっているワイバーンを見た。

「エルパコくん、あれはニシカさんがやったのかな」
「ううん、シューターさんたちがやったんじゃないのかい? ぼくたちが来た時は、もうすでに首の骨がへし折れて瀕死の状態だったよ」

 凄まじい衝撃を物語る様に首が完全にありえな方向へくの字に折れ曲がっている。
 それだけではなく、尻尾も急角度で折れているところを見ると、最後にマドゥーシャの放ったアンタッチャブルで禁忌な魔法の衝撃がそうさせたのだろう。

 すっぽんぽんになった女魔法使いを次に見やって、この女が俺たちの味方に加わっていたことを心の中で感謝せずにはいられなかった。
 手間のかかる愛人奴隷ですわね、などとカラメルネーゼさんが不平を口にしながら散らかった防寒具の破片を巻き付けて、寒さ対策にしていた。
 そのままけもみみに手伝ってもらいながら背中に括り付けているではないか。

 服を着せられている間にチラリと見た限り、女魔法使いのお股にはモサモサの赤毛は生えていた。
 意味もなくそれを見て温かそうなお股ですねなどと思ったのは場違いにもほどがある。
 当然その脇にも同様に赤く燃え上がる様なわき毛が生えていたのだが、そんな事はどうでもいい。

「山小屋までの距離は四半刻程度ですわよ。これから急いで引き返せば、まだ応急の処置を施す事ができますわ」
「あまり時間はねえな。エルパコ、お前ぇはみんなをを手伝ってやりながら、可能な範囲で周辺警戒をやれ」
「わかったよ。ニシカさんはどうするのさ?」
「黒いのはオレ様が担ぐしかねえだろう。その間、どうしたって狼どもの事が気になるからな。今は時間が惜しいぜ、下手にこっちから中途半端に追い払おうと手を出すと、しつこく付いてこられる可能性がある」

 そうなると、全裸で冷たくなっているソープ嬢を運ぶのは俺の役目という事か。
 最後の一匹を仕留めるためにかなり無理をしてくれたのは彼女だった。
 ニシカさんとけもみみが、取り急ぎ自分たちの防寒具を体に巻き付けたりして応急処置をしてくれているけれど、それでも大きく長い下半身を覆うための服の類は、ふたりぶんでもまるで足りない。
 ついでに膨張感が徐々に減退している俺の体も時間との勝負だ。

「ワイバーンの逆鱗部位は確保した後だから、残りは狼どもにくれてやる。そのシューターの妙に膨らんだ筋肉も、そのうち魔法が消えて萎むんだろう? 急ごうぜ!」

 そんなニシカさんの言葉に促されて、俺たちは元来た道を急ぎ引き返し、必死の形相で山小屋へと一旦の帰路へとついた。
 ソリがあればどれほど楽だろうかと思ったのだが、

「恐らく山小屋の装備品の中にあったはずだぜ。けもみみ、ある程度まで行って狼が手を出す様子がねえのなら、ソリを持ってきてくれるか?」
「了解だよ。たぶんもう狼たちは来そうもないよね、辺りから気配も消えてるし、」
「今頃はワイバーンの死骸にたかっている頃合いじゃねえのかって事だな。わかったぜ、じゃあいいなシューター?」
「た、頼みます!」

 女性を重たいと言ってひんしゅくを買う習慣がこのファンタジー世界にあるかどうかわからないが、ソープ嬢は上半身はともかく、下半身まであわせれば全長3メートルはあるだろう(身長ではない!)のだから、確かに重たい。
 下半身を引きずっていれば、そこも体を冷やす最大の限界になることは間違いないしな。

 それに先ほどから必死で女魔法使いを背負って歩いている蛸足麗人は、無言でプルプルと体を震わせていて、今にも限界そうだ。

「……なんですこと?」
「弱音を吐かないんだなカラメルネーゼさんは……」
「と、当然ですわ。仮にも国王陛下の軍隊に属した事のあるわたくしが、主人の前で泣き事を口にするなどありえない事なのですわ。おっほっほっほ!」

 強がりを言って笑っているけれど、エルパコが雪の中を先行して駆けていってソリを持って来た時には彼女もかなり安どの表情を浮かべていたものだ。
 小柄なけもみみひとりで持ってこれたのは小さなサイズのソリを重ねてふたつだけだった。
 取り急ぎこいつに女魔法使いとソープ嬢を載せる事にして、奥さんたちが三人でどうにか山小屋まで運ぶ。
 ベローチュは俺が背中に背負い直す事にして、ようやく今朝出立したばかりの山小屋まで帰還する事ができたというわけである。

 いつ雪が降りだすかもわからない天候の中、木々の切れ目から空を見上げれば雲を通してぼんやりと見える太陽が頂点に差しかかっていた。
 時刻は正午辺り、ここから早馬を飛ばしてゴルゴライに救援を要請するか、ギムルにそれを求めるか考えなければいけない。

「見るからに雲行きが怪しくなってきていませんかねえ」
「恐らくまた夜にでも雪が降りはじめるんじゃねえのか。ただ遠くを見ている限り、雲が濃いからな。いったん降り出せば、しばらく続くんじゃねえか」
「装備は大丈夫でしょうか。みんなの防寒具がみんなこの有様でボロボロの状態です、巻き付けておくのはともかくとして、服の態を成してない」

 俺とニシカさんは、奥さんたちを運び込みながら外の様子を見あって思案する。
 するとぐったりして気持ちよさそうな顔をしている女魔法使いを引き取って、けもみみが口を開いた。

「山小屋に籠っている限りは問題ないんじゃないかな?」
「数日は何とかなる、というわけか」
「うん。食料の保存もされてるしその点も心配ないけれど、命に係わる病気とかが発生すれば、ガンギマリーさまを呼んだ方がいいかもね」
「マリがすぐに動けるかどうかという問題はあるが、腕のいい医療従事者の司祭や修道騎士が呼べれば助かるのは間違いない」

 ギムルたちの視察が長期間になる事も考慮して防寒具以外の服の替えは存在していた。
 さらに運のいい事に、見た目さえ気にしなければ防寒具の類も山小屋の備え付け備品の中に幾つかの予備がある事もわかった。

「まあ悪くねえんじゃねえか。ッワクワクゴロみたいな点がいけ好かねけが、冬場に活動する猟師に必要な最低限はあるってわけだ」
「シューターさんは何を着てもシューターさんだよ」
「まるで猟師の親方みたいな格好ですわね、わたくしは遠慮したいところですわ……」
「俺も元はと言えばサルワタの猟師だったわけだし、ようやく猟師っぽくなったって事だよ蛸足奥さん」

 取り急ぎ発見した備え付けの猟師風の防寒具を引っ張り出したところで、元気な奥さんたちは口々に意見をする。
 元が猟師のニシカさんやエルパコはともかくとして、カラメルネーゼさんはイマイチな反応な様だ。

「モノは考え様で、この毛皮の装備一式の方が冬場の森で活動するには暖かいんじゃないですかね」
「そ、そうですけれども。このモケモケの毛皮を身にまとっている様では、まるで蛮族……」
「蛮族じゃねえ!」

 妙なところで反応するニシカさんである。
 とにかく意識を失った家族に暖を取らせるために窯に火を入れたり毛布をかけてやったり。

「……幸せそうな顔をしてるだろ。おちんぎんの夢を見ているんだぜ」
「婿殿ッ。馬鹿な事を言っていないで、早くロフトから寝具を下してくださいな!」
「あ、シューターさんお湯の用意ができたよ」
「おう、クリスティーソープさえ回復したら、他の全員が重病に陥る事はないからな。持たされてる気付けの薬を使えるのは、そのヘビ女だけだぜっ」

 そうして何とか難を逃れた俺だけれど。

「びえっくしょい!」

 俺は盛大にくしゃみをした。
 全裸で雪の中をウロついてたら当然だよね!

「シューターさんも、他のみんなと一緒にお布団の中に入ってよ!」
「え、俺もかよ?」
「義姉さんが言っていたんだ。油断をしてたら例え全裸を貴ぶ部族でも風邪を引くって」

 こんなところで風邪を引いて馬鹿じゃない事が証明されてもうれしくない。
 服を着させてくれるという選択ではなく、全裸で奥さんたちと抱き合えときたか!

「まあ部屋が温まるまでは時間がかかりますし、婿殿が彼女たちを温めておやりなさいな。その方が彼女たちも早くに目を覚ますかもしれませんわよ? おーっほっほっほ!」
「おう、それよりちょっくらオレは外の様子を見てくるからな。まだ他にもワイバーンがいるかもしれねえし、念のためだ念のため。って、何を笑っているんだ蛸足ネーゼは?」
「なっ、何でもありませんわっ」

     ◆

 そんな次第で俺は奥さんたちを抱き寄せながら、山小屋の午後を過ごしている。
 ところで。
 雪山で雪山で遭難したら裸で抱き合えばいいのは本当だろうか。
 その事について熱心に俺は考えながら、気のせいか冷たくなっている女魔法使いの体に腕を回しながら考え事をしていたら……

「か、閣下。何かとても熱いものがわたしのお尻に当たっている気がするのですが、これはどういう事でしょうか。もしや、おちんぎんと似て非なるものでは……」
「そういう時は大人しく受け入れる準備をすべきですよマドゥーシャ。お情けをくださいと言うのです」

 やはり服を脱ぐ必然性があるかどうかだろうか。
 もしも防寒具が濡れていたのに身にまとっていれば、それは体温を消耗する事になるはずだ。
 無理に裸で抱き合う必要性は無いわけで、これはケースバイケースなのだろう。
 しかし人間の体は思いの他発熱量を持っているというのをモノの本で読んだことがある。

「おちんぎんなどは、どれだけ貯め込んでも死んで異世界に旅立たせてしまえば何の意味もないからな。それよりは子種を残す方が生きた証になるというものだろう」
「な、何言ってるんですか先輩たちはっ。そういう事はふたりきっりの時にしてくださいよ。みんなこっちを見てますよ」

 おっと、みんな起きているじゃないかいつの間にか。
 俺は気が付けば元気に会話をしている奥さんや奴隷たちの声を耳にして、ようやく安堵するのであった。
 よかったよかったひとまず無事で。
 そう思えばたまらず女魔法使いを抱きしめてしまったのである。

「ていうか閣下、もうわたしは元気です。むしろ閣下が元気になってるうううう?! ギュってしないでギュッと……!」


 
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