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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第10章 冬籠りの辺境生活

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335 全裸家族、怒りの反撃

いったん投降後、後半パートを加筆修正してました。
すでにお読みの方は申し訳ございません><
 筋肉の躍動とはこういう事をいうのだろうか。
 立ち上がった俺の体は、ビクンビクンと震える様に感応している。
 イグニッショナルな魔法を使ったマドゥーシャのおかげか、膨張した様に感じる体は猛っていた。

「おのれ悪龍よ、このわたしが相手をしてやる!」

 眼前で叫びを上げたソープ嬢であるけれど、いかにラミア族の体を取り戻したと言ってもその体躯の差は大人と子供だ。
 何しろ彼女は上半身が人間の体をしているのだから、いかにも若き飛龍を前にしてみたら非力に感じるのだ。
 けれども、一歩も引かないどころか体当たりをかまし、果敢に攻撃を続けるのだ。

「ギュルロロロロン」
「今のうちにベローチュどのを!」
「わかった、無理に戦おうとするなよっ」

 膨張感を覚える体をなだめながら即座に動いた俺は、強引にズタボロになった男装の麗人を引き起こしながら退避させる。
 体が悠々と彼女を片腕で引き上げてみせたので驚いたのだが、それはベローチュも同じだったらしい。

「ご、ご主人さま。見苦しい姿をお見せしてしまいっ」
「今はそんな事はどうでもいい、体に大きな怪我はないかな」
「この程度は問題ありません、聖なる癒しを受ければすぐにも復活を……」

 褐色の美人顔をしかめて男装の麗人は健気に返事した。
 という事は体のどこかは骨折かヒビが入ったかしているだろう。

「待ってろ、俺たちがあの化け物を仕留めてやる」
「し、しかしご主人さまはお体が変に盛り上が――」
「今は黙ってろ、じきにニシカさんたちも駆けつけてくる!」

 俺はというと、この身を暴れさせてくれとはやる筋肉に応えてやるべく、白刃をきらめかせた。
 雪の大地を暴れるワイバーンが思った以上に小さく見えるのは、もっと巨大に成長したコイツの親戚やバジリスクと対峙した経験があったからだろうか。

 引き抜いた剣を大きく振りかぶりながら駆けだすと、ちょうどワイバーンが首をこちらに向ける瞬間だった様だ。

「おらトカゲ野郎、こっちだぜ!」

 大きく潰れた顔を振って噛みつこうと攻撃態勢に入ったワイバーンだけれど、何とか姿勢を低くしてそれをかわす。
 不細工な顔に振り回した剣の先が走り抜けたけれど、表皮に浅い傷を付けただけだった様だ。
 だがそれでいい。

「ソープさん、今だ」
「了解だ愛しいひとッ」

 側面に上手く回り込んだソープ嬢はそこから剣を突き上げて、どうやらワイバーンの翼を徹底的に攻撃しようと考えたらしい。
 隙を伺いながらズブリと剣を差し込んだところで、比較的ワイバーンの体の中でも柔らかな翼の被膜が破れた。
 悲鳴めいたものを口から零しながら両翼をバタつかせようととしたところに、今度は反対の手に持った手槍を投げつけて別の個所を破ってみせる。

 けれどソープ嬢が隙を付いた攻撃を繰り出せたのはここまでだ。
 体を振って方向を変えてみせたワイバーンが大きく首を持ち上げて口を開いたのである。

「バインドボイスだ、くるぞッ」
「待ってくれ心の準備――」

「ドオオオオオオオオオオオンン!」

 空気を震わせる強烈な咆哮がが発生して、ソープ嬢はその場にのけぞりながら耳をふさいだ。
 このまま放置していれば怯んだ彼女が餌食になる事は明確だ。
 そんな事はさせるわけにはいかない。

 俺はいきり立つ体の四肢に勇気を貰いながら走り、長剣をワイバーンの顔面にそいつを叩きつけてやる。
 バインドボイスを発生させる時に一時的に動きを止めるのがトカゲの親戚どもの特徴だ。
 そして俺は度重なる咆哮をこの体に受けたせいで、バインドボイスの魔法が効きにくくなりつつある様だからな。
 恐怖は未だに抜けきらないけれど、その恐怖を騙すすべは体が身に着けていたらしい。

「うおおおおおおおおっ」

 手前ぇの潰れた鼻頭を、ますます短くしてやるぜ!
 空手ではインパクトの瞬間に拳へ力の全てを集中させる様な感覚で突きを放つ。
 その要領でイグニッションな魔法の効果なのか、全力が剣のを握る両手に集中した感覚に陥った。

 すると膨張感のあった両腕が、感覚だけではなくまさに膨張していたのだから驚きだ。
 獣皮の防寒具の縫い目がバチンとはじけ飛ぶと、もろもろ服がキャストオフしたのだ!

「キャストオフ?!」

 それは腕だけの事ではなく、斬り抜けた瞬間に身にまとったすべての服が吹き飛んで俺は筋肉ダルマみたいになっていたのである。
 な、なんじゃこりゃあああああ?!
 と驚く余裕はまるでなかった。
 ワイバーンの鼻腔に叩きつけた白刃は、その瞬間に硬い鱗をめきりと割って頭蓋骨の鼻頭まで到達し、決して叩き斬る事はできなかったけれどもかなりの斬撃を当てる事ができたらしい。

「グオギャオオン」
「おらあああああああっ!」

 間の抜けたワイバーンの絶叫とともに、俺は剣を振りぬいた。
 見れば完全に白刃は刃こぼれをしていた。しかし両刃の剣であるから反対側はまだ使える。
 叫びながら自分にさらなる勇気を与えつつ、のけぞって退避行動をしようとするワイバーンの頸根目掛けて突き込んでやる。

「逃がすかおら。俺はまだ暴れたりないんだよ!」
「グオオン!」

 くそったれ、若いとは言っても相手は軽トラ級のモンスターだ。
 イグニッション中の俺のパワーなどは子供のテレホンパンチ同然だったのか、剣先はわずかにワイバーンの首に刺さった程度だ。
ところが気が付くと、背後から俺を抱きしめる様に体当たりしてくる存在がいた。
 男装の麗人だった。
 退避していろと言ったはずだが、背後から強引にぶつかる様にして攻撃を加勢したんだ。

「何しているベローチュ。下がっていろと!」
「ご主人さまが戦っているのに、忠実なる奴隷騎士たる自分が下がる事は許されませんっ」

 そんな言葉が背後から聞こえてきたところで、さらに後方から衝撃がぶつかってくるではないか。
 今度はソープお嬢さまだ。
 遮二無二ぶつかってきた彼女の衝撃で、ズンとより深く剣が刺さった感覚は確かにあった。

「わたしもいるぞ。ここで仕留めておかねばならんのだろう」
「ご主人さまにお力添えしてこそ奴隷騎士の本懐ですッ」

 意味がわからねえよ!
 だが今こそこいつにトドメをさす事が出来そうだぜ。けれども、

「ドギャアアアス!」

 そこにきて言葉にならない悲鳴めいたものをまき散らしたワイバーンが、体を左右に振って俺たちを引きずり離そうとしたのである。
 右に振ってソープ嬢が振り飛ばされ、左に振ってベローチュが引き離された。
 最後まで俺はイグニッショナルな魔法の力でかじりついていたが、さすがに羽ばたく瞬間にその手を放すしかなかった。

 こいつ、まだ片翼を傷つけられて飛べたのかよ?!

     ◆

 やはり翼に傷を負ったワイバーンの若い個体は、そのまま上空に高く逃げ出すという事はできなかったらしい。
 当たり前だ。あれだけソープ嬢が命懸けで必死の攻撃を集中させていたのだ。
 一度はフワリと木々の上に逃げ切ったものの、被膜が破れているので飛翔効率が悪いらしく、必死に翼をバタつかせて空を泳いでいる有様だった。

 逆を言えばワイバーンは風の魔法でも使って、あの巨躯を無理くりでも飛ばしているんじゃないだろうかと疑いたくなる。

「に、逃がしてしまいましたね……」
「手負いのモンスターは恐ろしい存在だと聞いた事がるが、悔しい事をした」
「ワイバーンは魔法が使えるんだよな。大きな傷を負うと癒しの魔法を自分にかけるために、安全な場所に退避するらしい」
「それでは逃げたあのワイバーンは、より人間を恐ろしいものと学習して厄介な相手に成長してしまうのでは……」
「可能性としてはあるかもしれないな、愛しいひと……」

 男装の麗人を抱き起し、ソープ嬢にも同様に手を差し伸べる。
 くそ。エルパコとお揃いの長剣をワイバーンは頸根に刺したままで逃げやがった。

「また引き返して襲ってくるという可能性はあるのだろうか?」
「そこまではわからないですねえ。しかしベローチュを救出できた事が一番大切だ」
「もうしわけございません。ニシカさんやエルパコ奥さまと早めに合流せねば」

 そうやって俺たちは傷付いた男装の麗人を木の幹のところまで運び、背中を預けさせる。
 チロリと舌なめずりしてみせたソープ嬢は「失礼する」と小さく言葉を口にして、俺の眼の前でベローチュの唇を奪ったのだ。

「はむ。ちゅぷん。くちゅう……」
「……じゅぷん、くちゅん、ぷはぁ」
「もう大丈夫だ。今は無理をせず大人しくしておくことだが、時間がたてばやがて動けるようになる」
「ご、ご主人さまとするのとは違う感覚っ。マドゥーシャの手当てもしてやってくださいますか」」
「もちろんだ」

 ラミア族は独自の回復魔法を使う事ができるのだが、その方法が唾液交換なのか何なのか、ディープキスである。
 奥さん同士のそんな姿を見ていると、心のイグニッションなスイッチが入って膨張する吉宗であった。
 だが吉宗が暴れ出す事は許されなかった。

「ご、ご主人さま。またワイバーンがこちらに?!」
「げげえ、しぶといな。というか何で逃げずにこっちにくるんだッ」
「わたしに捕まれシューターさま。このままでは衝突する!」
「ベローチュいけるか?!」

 見上げれば一度は離脱しようと逃避行に移っていたワイバーンであるけれど、どうやら飛翔そのものがそうとうの負担だったらしい。
 墜落する様に地上に落ちた後に、向きを変えてこちらへ突進してくる姿が見えるではないか!

「ぐぬぬ、閣下。まだ、まだご褒美をもらうには活躍が足りませんですね……」
「マ、マドゥーシャお前っ」
「あの首に刺さった剣が抜ければ、ワイバーンも出血多量で死にますよっ。だから!」

 するとボロ雑巾の様に雪の中に転がっていたマドゥーシャが起き上がって、全力で突進してくるワイバーンめがけて護符を二枚ほど持ち上げたのである。

「ふ、フィジカル・マジカル・アンタッチャブル!!」

 片膝をついた状態でそう叫びを上げた女魔法使いである。
 空間がひずんだ様な衝撃派が発生して、暴走トラックよろしくこちらに潰れた鼻頭を向けて突進するワイバーンに向かって、その黒く周辺の光源を吸い込む様な濁りの塊が膨らんだ。

「馬鹿野郎! それを今ここで使ったら全員が巻き込まれるぞ?!」
「閣下、ここにいるのは全員ではないですよね? ならワンチャンありますよワンチャン!」

 違う、そういう事か。
 女魔法使いは彼女なりに、今側にニシカさんがいない事を計算してこの魔法を使うつもりなのか!
 大地を震撼させる魔法の衝撃とともに、ワイバーンの首が明後日の方に向いている。そして、

「アンタッチャブルいっけえええええええええええっ!」

 遥か後続からニシカさんやけもみみが遅れてこちらに向かってくる姿をチラリと確認したところで、俺たちその場にいる全員が吹き飛んだ。ワイバーンですらもだ。
 ついでに俺以外の、その場にいた奥さんたち全員の服もね。
 脱げば脱ぐほど強くなるのがハーレム大家族のルールなんだろうかと、馬鹿な事を考えながら意識を手放した。

「相棒大丈夫かっ……」
「シューターさん?!」

 後はニシカさんに、任せたぜ――
明日からコミックマーケットに参加するため、しばらく更新をお休みする事になります。
また感想お返事が遅れてしまいます事、ご了承くだされば幸甚です!
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