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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第2章 ダンジョン・アンド・スレイブ

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41 フリーター家に帰る 1 (※ 扉絵あり)

http://15507.mitemin.net/i167332/

挿絵(By みてみん)






 ダイナミックおはようございます。
 吉田修太、三二歳は今朝もお仕事に余念がありません!

 俺は今、ヒモパン一丁でお屋敷の掃除をしている。
 なぜなら俺がこの屋敷のご主人さまに仕える奴隷だからである。

「こら、バジル! バケツで遊ぶのはやめなさい」
「キュゥゥ」

 しかし床の水拭き掃除をしている端から、遊びたいさかりのバジルが悪戯をするので大変だった。
 バジルというのはバジリスクのあかちゃんである。
 肉食動物の子供というのは、遊びの中で狩りを学んでいき成長するのだそうだ。
 しかしブルカの街という、いちおうは城壁に囲まれて外敵のいない場所ですくすく成長しているバジルにとって、遊びはどこまでもただのお遊戯であるのだ。

「だからやめなさいって言っているでしょ!」
「キィキキィ!」

 ひとつもいう事を聞かないバジルは、俺がひっくり返されたバケツを起こしてひとつ大目玉を食らわせてやろうと思ったところで、トテトテと走って逃げ去ってしまった。
 行先はだいたいわかる。
 甘やかす大人たちがいる場所に遁走して、俺から守ってもらおうという寸法なのだろう。

「こら、待ちなさい!」
「キュッキュッブー」

 あっかんべーとでも言わんとしているのだろうか、腹立たしい事に一瞬だけ振り返りやがった。
 今晩のエサは豚鼠から川魚に変更だ。
 ひもじい思いをして反省しなさい。
 鼻から憤慨の息吹を放出させながら逃走先に向かったところ、果たしてそこには大人を気取っているようじょがバジルを抱きかかえて、ぷりぷりしていた。

「あ、おはようございます。ッヨイさま」
「どれぇ、あんまりあかちゃんを厳しく怒ってはいけないのです。あかちゃんが怯えているのです」

 まるでそうは見えない様に後ろ足でエリマキの後ろをボリボリやっているバジルなのだが、いちおうはご主人さまのお言いつけなので、うやうやしく首を垂れておく。

「かしこまりましたッヨイさま。お言いつけ通りにいたします」
「そそ、それとですどれぇ。朝起きたらベッドのシーツがびしょびしょでした……」
「それはいけませんッヨイさま。昨日の夕飯にぶどう酒を呑み過ぎましたね」
「ごめんなさいなのですどれぇ」
「ッヨイさまははやく大人になりましょうね。はい、ぬぎぬぎしましょうね」
「………はぁぃ」

 小さい大人は今朝もおもらしをしていた。緊張感のある冒険中は大丈夫だったのに、お屋敷にもどると緊張と一緒に膀胱もゆるんじゃったんだね。
 寝間着のフリルワンピースの裾を掴んだようじょが、しゃがんだ俺を恥ずかしそうに見守っていた。
 毎度の事なので、俺はすばやくヒモパンの紐を外して下着を脱がしてさしあげた。

「おねしょしたシーツを持ってきてください。これからたらいを用意しますので、お股をきれいきれいして、お洗濯しましょうね」
「はいどれぇ!」

 俺がようじょの頭をなでなでしてさしあげると、元気に返事をして寝室に走って行ったのである。
 うむ。世の中は極めて平和だ。

 むかし俺の家のふたつ隣に住む幼馴染の女の子がいた。
 正確な事は覚えていないが、確か俺が三歳の頃だったはずだ。
 いつも幼稚園に一緒に出掛けたり、お家まで遊びに行っておままごとをしたりした気がする。
 まだ妹たちが生まれる前の話なので、当時は俺が近所で一番のお子さまだった。
 そして俺は幼馴染の家でおもらしをした事があった。
 ジュースの呑み過ぎである。
 実家では炭酸ジュースはお出かけする時しか許されていない「子供にはまだ早い飲み物」だったので、幼馴染の家でこっそりと飲んでいたのである。
 幼馴染は俺がお昼寝している時におもらしをしたので、びっくりして母親にパンツの替えをもらいに行ってくれた。
 今思えば幼馴染のかなえちゃんは、とてもいい子だったな。
 ちなみに、ズボンもジョビジョバだったので、パンツ一丁で過ごしていた記憶がある。

 遠い遠いむかしの俺物語だった。

「おいシューター。口をニヤつかせてようじょのパンツを持っている姿を嫁が見たら悲しむぜ」

 ふとした拍子に、背後からニシカさんの声がして俺は振り返った。
 紫がかった黒髪ショートに、時々向きが変わる眼帯姿。鱗裂きのニシカさんだった。

「おはようございます、ニシカさん。これは決してやましい事ではなくてですね、俺の子供の頃を思い出して懐かしんでいたのですよ」
「お前もよくおもらししたのか」
「ええもう、ジョビジョバでしたよ」

 バジリスク討伐を完了してから、ちょうど五日ほどが経過したところだった。
 先日はその足で冒険者ギルドにクエスト完了の報告をしに行ったのだが、ブルカ伯金貨三〇枚を即金で支払うにはたまたま手元になかったという事で、出直しを要求されたのである。
 時刻が夕方だった事と、大規模なオーガ討伐等々で準備金が不足していたのでしょうがない。
 本日はそのために改めてギルドに行かなければならないという事で、朝からニシカさんがようじょのお屋敷に顔を出したというわけだ。

「……お前、ちょっと奴隷生活に染まり過ぎじゃないか」
「なんも言わんでください。俺だって好きで奴隷生活をしているわけじゃないんですから」
「村と嫁はどうするつもりなんだよ。オレはこの換金が終わったら、そろそろ戻ろうと思うんだ……」
「そう、ですね。せめてギムルさんに頼まれていた冒険者の斡旋と、開拓者や猟師の募集経過だけは報告しないといけませんからね」

 ため息ひとつこぼしながら俺は気になる息子の位置を調整した。

「今日、金が手に入るんだろう」
「まあそうですね」
「オレの取り分で、お前を奴隷として買い取るってのはどうだ」
「ニシカさんが新しいご主人さまに。いや悪くはないですが。いいんですかそんな大金を俺に使って」
「ああ構わねぇぜ、どうせ金を持っていても酒に化けるぐらいしかねえんだ。どのみち村じゃ金貨なんてものは使い道がねえからな」

 ニシカさんはそう言って赤くない鼻をこすり上げた。
 なんと素晴らしい提案だろう。
 確かに二頭のバジリスク討伐で、俺たちはパーティーで金貨六〇枚もの大金を手に入れた。
 そのうちニシカさんが参加したのは二度目の討伐だが、奴隷である俺を差し引いて仮に三等分したとすれば、金貨一〇枚が手に入るという寸法である。
 俺が奴隷商人から売られた額には足らないが、ニシカさんはオーガ討伐の報酬もいくらかもらっているので、合わせればもしかしたら買取り可能と計算しているのだろう。
 ちなみに雁木マリに聞いたところ、ブルカ伯金貨一枚の貨幣価値は日本円にして二〇万円相当になる。つまり俺を除いて三等分をしたとするなら、、ニシカさんが手にするだろう金は二〇〇万円という事になる。
 大金だ。フリーターだった頃の俺の収入の半年以上の収入なのである。
 だから受け取るには躊躇する。

「さすがに太っ腹すぎやしませんかねぇ、俺はもともと借金はしない主義なんで……」
「お前、奴隷の分際で何をわけのわからない心配してるんだ。村に帰りたくないのか? 」
「とんでもない! 俺たちは新婚ですよ。カサンドラに早く逢いたい」
「そうだろう。オレに任せておけ。それともようじょの事を気にしているのか」
「そりゃ、買い取ってくださって良くして下さったのは事実ですし、懐いてますからね」
「じゃあこうすればいい、村に周旋する冒険者というのをようじょと雁木マリにすれば何も問題ねぇんじゃないのか」

 ちょっと気の利いた提案をニシカさんがしてくれたので、俺は考え込んだ。

「……そうですね、なるほど。時間はそんなにいりませんので、少し考えさせて下さい」
「おうわかったぜ、変な遠慮はいらねぇから」

 ニシかさんはそう言って腰に手を当て白い歯を見せた。
 おっぱいの付いたイケメンというのは、こういうひとの事を言うんだろう。

「ありがとうございます、ありがとうございます」
「礼は上手くいってからでいいって事よ!」

 俺の言葉にニシカさんのおっぱいが返事した。

     ◆

「それではバジリスク討伐を祝してカンパーイ!」
「乾杯だぜ、ビールうめぇ」
「おつかれさまね」
「おめでとうございます、おめでとうございます」
「キュイ!」

 というわけで、無事に冒険者ギルドで討伐資金の受領をした俺たちは、ギルドのすぐ隣にある食堂で不味いビールの入った樽ジョッキで乾杯した。
 不味いビールは相変わらず不純物が多くてぬるく、やっぱり不味かったので一口呑んでテーブルに戻した。
 未だに慣れないと言えばビールもそうだが、このファンタジー世界の住人はあまり年齢に拘りなく酒を飲む事である。
 ようじょは美味しそうに樽ジョッキをグビグビやると、口元に白い泡を置いてプハァと吐息を吐き出した。
 いい呑みっぷりだが、さすがに将来の体の発育が不安になてしまう。
 ようじょの隣で舐める様にビールを口にしていた雁木マリなどは、一部の成長にまだ期待を込めているのだろうか、呑みっぷりが穏やかだ。

「浮かない顔をしているわね」
「いや、ビールがあまり美味しくないからな」
「冷えてないと飲めないなんて、贅沢な証拠よ」
「まあそうなんだが」

 雁木マリとマジマジと会話しながら、あまり発育よろしくないその胸をガン見していると、酒に弱いののか桜色に頬を染めて俺を睨み付けて来た。

「ちょっとジロジロ見ないでよ。今日は鎧も着てないしボディラインが出てるから恥ずかしいのよ」
「眼福です。ありがとうございます、ありがとうございます」

 言われて見れば、クエストに出かける訳でも無いので雁木マリは鉄皮合板の鎧を着ていなかった。
 いつものノースリーブワンピースには、ささやかな胸のふくらみとその先端の突起物が浮き出しているではないか。
 いいね!
 これも悪くない。眼福、眼福。

 しかしこの世界の人間はどういうわけか同じ柄の服をいくつも仕立てている。
 ッヨイさまや雁木マリなどは、いったいいくつのワンピを持っているのだろうかと思うし、ニシカさんも上に着ているブラウスは半ばトレードマークである。
 俺も同じようなチョッキを四六時中羽織っているが、こいつは一張羅で義父の形見だからしょうがない。

「どうせコイツは胸ばかり見てたんだぜ。いつもオレの胸を見たりする助兵衛だからなシューターは」
「ちょ、そうなのシューター? この変態! ブラも着けてないんだから見るんじゃないわよ!!」
「どれぇはえっちなのです!」
「え、違いますから。違いますからね! ここのひとは同じ様な柄の服を着ているから、それで気になっただけですから!」

 ニシカさんが赤鼻をひと擦りしながらそんな茶化しを入れたので、反応するパーティーメンバーに慌てて釈明した。
 やばいやばい。

「まあそれは簡単な理由よ。服の型紙を作るのもお金がかかるから、どうしてもね。それに染色した服は高級なのよ」
「そうなのです。ッヨイははついく真っ盛りだから、高い色付きの服を作っても、もったいないのですどれぇ」

 小さな胸を押さえながら雁木マリが言うと、ようじょも真似して胸を押さえた。
 じゃあニシカさんの黄色いブラウスは何なのだというはなしだが、

「オレはただ貧乏だったから、行商人から買ったブラウスを着まわしてただけだぜ」
「そうですか。いや田舎のヤンキーが黄色いブラウスを学校に着ていたので、あれかと思いました」
「お前ぇは時々わけのわからん事を言うな」
「そんな事よりも、注文した料理が運ばれてくるまでにさっさと清算を済ませてしまいましょう」

 雁木マリが俺たちのやり取りを制止して、金貨の詰まった革袋をテーブルに置いた。
 それを見たようじょとニシカさんもそれぞれ革袋を取り出す。
 バジリスク討伐の報奨金のブルカ伯金貨六〇枚に、オーガ討伐分のおまけ報奨金である。
 オーガの方はニシカさんの分はすでに差し引かれていて、金は俺たち三人分だ。

「じゃあ計算しましょう」
「キュイ」

 ようじょと雁木マリが金をテーブルに広げて金貨を振り分けていく。
 俺たちのパーティーが利用している冒険者ギルドには酒場が併設されてないかわりに、すぐ隣に何軒も食堂が並んでいる。
 基本的にこのあたりは金持ちが多い地区なので、食堂で金を広げても安全なのだそうだ。
 清算を待っている間にあかちゃんのバジルがみんなと同じ様にビールを呑もうとしたが、俺は慌てて制止した。
 バジリスクに食べさせてはいけないものについて詳しくないが、これはお前の呑んでいいものではないからな!

「じゃあとりあえず、うちのパーティーの一人当たりの報酬はこれ。ブルカ辺境伯金貨十六枚と、銅貨六六枚よ」
「これがガンギマリーのぶん、これがッヨイのぶん、それでこっちがどれぇのぶんです!」
「ニシカさんのぶんは助っ人として活躍してくださった分、追加討伐の資金を半分の金貨十五枚という事で問題ないかしら。まあほとんどニシカさんのおかげで倒せた様なものだしね」
「ああ、申し分ないぜ」

 それぞれのテーブルにようじょが振り分ける。
 いやまて。俺のところにも報奨金を差し出してきたが、俺はッヨイさまの所有物なのでもらう権利はあるのか?

「あの、ッヨイさま。俺もいただいちゃっていいんですか?」
「当然ですどれぇ。どれぇは労働の対価としてちゃんとおちんぎんをもらう事が許されています!」

 さも当たり前の様にようじょが説明した。
 が、雁木マリが間に割って入る。

「とは言え、シューターはあくまでもッヨイの奴隷だから、お金の受取人はッヨイよ。装備の代金はこの子が立て替えていたわけだし、食費にパーティーの資材や家賃分も貰う必要があるし……」

 雁木マリは指を折りながら必要経費を捻出している。
 まあ、やはりそんなに簡単に奴隷解放というわけにはいかなかった。
 ほんの少しだけ俺は家に帰れる事を期待しつつ、その際にはご主人さまに何と説明しようかと考えたが、無駄だったな。

「けれども、今回のバジリスク討伐はいつもより報酬もよかった事もあるので、これだけは当座の小遣いとして渡しておくわ」
「ど、どうも」
「普通、奴隷にこんな金を渡す事なんてありえないんだからね? シューターは特別に同胞だからそうしてあげるんだし、感謝しなさい。ッヨイにはしっかり奉公するのよ?」
「あ、ありがとうございます。ありがとうございます」

 そう言った雁木マリが、色々経費を差っ引いた残りを俺に差し出した。
 ケチくせぇ。
 十五枚もあった金貨が五枚に目減りしてしまった。
 しかし金貨五枚俺の手元に残るのなら、ニシカさんの所持金と合わせる事で、俺がようじょに買い取られた金額を上回る事になるのだ。 
 そう思ってニシカさんを見やると、向こうもこちらを見てこくりと頷く。

 本当はもう少し考えさせてもらいたかったところだが、俺としても切り出すなら後回しにするよりも今この瞬間の方がいい気がした。
 考えてみれば状況を先延ばしにしたところで、ッヨイさまとの思い出ばかりが積み重なって、余計に別れ別れになるのが辛くなるばかりだ。 
 これ以上ご主人さまに懐かれると、それだけ大変になるのだ。
 そう判断した俺もニシカさんに頷き返す。

「ところでおふたりさんよ。オレ様からちょっとした提案があるんだが、いいだろうか?」
「なんでしょうニシカさん」

 キョトンとした顔でようじょがニシカさんを見上げた。

「実はな。お前さんの奴隷、つまりシューターを買い取らせてもらいてぇんだ」
「それはいったい、どういう事でしょうか?」

 鱗裂きを前にして一歩も引くつもりが無いのか、雁木マリが表情を変えてニシカさんを睨み返した。
 そんな雁木マリに臆する事も無く、ニシカさんが言葉を続ける。

「この男はサルワタの開拓村の人間だ。村には嫁もいるし、村長から命じられた仕事もある。いつまでもこんな街で油を売っているわけにゃいかねえんだよ」
「それはシューターの意志なの?」

 雁木マリが今度は俺を睨み付けて来た。

「ああそうだ。俺は新妻を村に残しているし開拓団と猟師の募集、それから優秀な冒険者を村に斡旋する仕事を命じられている。可能なら出来るだけ早く仕事をして、村に帰りたいと思っている」
「では、ッヨイを裏切るつもりなの?」

 裏切るって何だよ。
 奴隷としていいご主人さまに出会えたことは間違いないと自覚している。
 バジリスクの討伐をしない限り、当たり前だがこんなに簡単に自分の身代を買い戻すだけの金は手に入らなかっただろう。
 だが、村に帰りたい気持ちは本当だった。

「ッヨイさまに買い取って頂けた事はたいへん感謝しています。しかし、いつまでもというわけにはいかない。ッヨイさまがお許しいただけるなら、俺が頂くこの金とニシカさんの金とを合わせて、出来れば奴隷解放をしていただきたい」

 俺がそう言うと、悲しそうな顔をしたッヨイさまが俺を見上げて押し黙っていた。
 悲しいのだろうか。
 十分俺に懐いてくださっていたしな。

「そうなんですかぁ……」
「ほれみなさい。だから奴隷をあまり甘やかさない様にってあたしが言ったのよ」
「でも、どれぇはッヨイの成長を見守ってくれるって、いいました」
「そんなの、大人のおためごかしよ」
「キュイ」

 何だかとても居たたまれなくなった俺は、不味いビールをひと息にあおった。
 不味いビールがますます不味かった。

「ッヨイは、どれぇと離れ離れになるのは寂しいです」
「ありがとうございますッヨイさま。俺も出来ればいつまでもご一緒にいたいのです」
「でも、どれぇはお家に帰りたいんだよね?」
「妻がいますからね。ご無理を承知で言うなら帰りたいです。妻に心配はかけられません」
「ふぇぇ」

 ああ、ッヨイさま泣いちゃった。

「でもまあ、ようじょが断ってしまったらどうにもならねぇがな。オレとしてはこの男を身請けする用意があるとだけ言っておこう」
「…………」
「それに、オレたちは村に来てくれる冒険者を探していると言ったな? あれは本当だ」
「冒険者、ですかぁ?」
「そうだ。お前ぇたちがよければ、その冒険者はふたりに来てもらえばいいんじゃねえかと、オレは思っているわけだ」

 ニシカさんも白い歯を見せてそう言いながらビールを口に運ぶ。

「なるほど。どうするッヨイ?」
「サルワタの村、ですかぁ」
「屋敷の事もあるし、この先すでに予約をしてあるクエストもあるから、直ぐにというわけにはいかないけれど、まあそれも検討可能な要件ね」
「じゃ、じゃあ。お仕事がきっちり完了したら、そのサルワタの村に行きます!」

 泣きべそをかいていたッヨイさまが、椅子の上で立ち上がってそう宣言した。

「ありがとうございます、ありがとうございます。村人を代表して歓迎させていただきます」
「いいんじゃねえか。強力な魔法を使える魔法使いなんてのは村どころか冒険者にも数えるほどしかいねぇ。オレもオーガ討伐に参加してしったが、貴重な人材らしいぜ」
「ははあ、やはりッヨイさまはお強かったのですね」

 ひとまず料理が運ばれてくるまでのうちに、この話題は決着がついたらしい。

「わかりました! どれぇの事は、ニシカさんにお譲りする事にします」
「おう。いくらだ」
「どれぇは金貨十八枚ぐらいで買いましたので、それでいいです。明日にでも主従契約を更新しに、奴隷商人のところに行きましょう!」

 え、もしかしてまた名前の長いお高い壺を集めるのが趣味のルトバユスキさんのところに行くの?
 ちょっとやだな。


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