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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第10章 冬籠りの辺境生活

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326 冬籠りと胎動 2

いったん投降後に本編を大幅に修正いたしました。
「旦那さまはすぐに情に流されてしまうところがありますからねぇ。スルーヌのご領地に戻ってきたときも、ふたりでお風呂に入っていたら旦那さまったら。あン……」

 カサンドラが珍しく語気を強めたところで、野牛奥さんのタンヌダルクちゃんも同調した。
 最後の方はこの場で思い出してもらいたくない秘め事をチラリと口にしたものだから、他の奥さんたちから咳払いや冷たい視線が野牛奥さんと俺に集中する。

「ダルクちゃん……?」
「し、失礼いたしましたのですわ。オホホホホ」
「そういうわけですから、旦那さまも今後は家族の幸せのために、改めて順番を大事にしていただきたいと思います。ですから、次はきっとわたしにお授かり下さる様にと、カッシーマの女神様にお願いする事にします」

 ちなみにカッシーマの女神様というのは、どうやら奥さんたちがハーレム大家族の守護神だという事にしている存在しない神様である。
 もとは武芸の神様である鹿島大明神について俺が以前語って聞かせたのを覚えていて、それが今では変節を経て家族の中で全裸の神様と思われているらしいね。

「それはもう、いくらでも励むがよいだろう。しばらくわらわはそういう事を許されないというではないか。そ、そうだろうガンギマリーどの?」
「そ、そうね。そういう事は安定期に入るまでは控えた方がいいと、わたしも聖堂会の学舎で学んだわ。助産をした事はあるけれど、その辺りの事は他の修道士に聞いてみるといいわっ」

 女領主は言い訳をする代わりにわけのわからないことを口走り、家族みんなの前でそんな事を説明するのが気恥ずかしかったのか雁木マリもしどろもどりである。

「ところでゴブリン族の血筋が入っていると、妊娠期間が他の人間たちよりも短いのです。時期を考えれば、あかちゃんが産まれてくるのは、だいたい春の頃合いになるのです」
「え、そうなの? そういうはなしは知らなかったけど、アレクサンドロシアちゃんはゴブリンとヒトの愛の子だから、どれぐらいになるのだろう」
「早ければ二月にはあかちゃんが産まれていてもおかしくないのです」
「そうかあ、俺も二月にはパパになるのかぁ。名前は何がいいかな、ちゃんと今のうちにみんなで考えておかないとな……」

 お説教&謝罪タイムにもかかわらず、俺がついうっとり天井を見上げながらそんな事を考えてしまった。
 すると息せきを切ったようにその場に集まっていたハーレム大家族の奥さんたちが次々とこんなことを言うのだ。

「義姉さんの次はわたしの番ですねえ。ヒトとミノタウロスの愛の子ですから、きっと立派な戦士になれると思いますよう!」
「ぼくは三つ子のあかちゃんがいいな……」
「わ、わたしはみなさんよりも年齢が高いので、早めにお願いしたいですの。シェーンさまも弟か妹が出来れば嬉しいですものね?」
「わたくしはいつでも構いませんわ。婿殿が欲しいと思った時が、女神様からの授かり時なのですわ。おーっほっほっほっほ!」
「……あたしは今すぐに妊娠というのは困りものだわね。これから騎士修道会を立て直す重要な時期だし、ニシカさんは軍事の重責を背負っているから避妊が大切、ラメエ卿もまだ新婚を味わいたい気分でしょう?」
「そ、そうね。わたしはまだ大丈夫かしら?」
「ちなみにわたしはラミア族だが、子供は卵で産み落とすなんて事はないから安心してくれていいぞ、愛しいひと」

 本当に好き勝手を並べてくれたものだ。
 タンヌダルクちゃんの主張は当然としても、けもみみはいつのまにか三つ子が欲しいと子宝の希望が膨らんでいる。
 マリアツンデレジアとカラメルネーゼさんは年齢も年齢だしね。雁木マリの意見はもっともで、ラメエお嬢さまもどうしていいのかわからないのでここは保留。
 ラミア族は卵であかちゃんを産み落とすわけではないらしい。なるほどね。

「自分たち奴隷ははあくまでも奥さま方に使える身分ですので、妻であっても優先順位は最後の側です」
「わたしはそうでうすねぇ。おちんぎんを貰えればあかちゃんはいくらでも」
「いつかわたしも、お母さんになるかも、です!」
「おらはおまけで結構だす。身分も低ければ家督争いには巻き込まれないですだ」

 視線を反対方向に振れば、こちらからもあれよあれよと要求が飛び出した。
 おちんぎんとか言っている一部の人間は放置しておく。おちんぎんによく似た何かをきみは貰う事になるんだよ。ウシシ……

「あのう、シューターさん。お顔がとても残念です……」
「ご、ごめんカサンドラそうだね。話を戻そうか」

 迎賓館に集まった理由を思い出す俺である。
 ここは本来、重要な来客をもてなすための施設として使われるべき場所だった。
 けれども家族が勢ぞろいした今となっては、ゴルゴライの政庁たる領主館は手狭になりつつある。ここに諸侯たちが集まって会議をしているのでは、ハーレム大家族のプライベート空間などありはしないも同然だったのだ。

 そういう事もあって、家族が勢ぞろいしている今は迎賓館を仮の新居として使う事になっている。
 何れ戦争が終わり平和になれば、領主館はもっと立派なものに建て替えられる事になるんだろうかね。

「……さて、話しというのは、わらわにサルワタの城へ帰還しろというのであったな」
「そうだった。アレクサンドロシアちゃんも妊娠して、ブルカ側の刺客にいつ狙われるともしれないからね。冬の間の妊娠から出産までは、本領のお城に居た方が安全なんじゃないかと思うわけだよ」

 そうなのである。
 アレクサンドロシアちゃんは放っておけば妊婦にもかかわらず戦場を駆け出しかねない性格だ。
 実際に、子供がその体に宿っていただろうにもかかわらず、自分が妊婦とも意識せずに槍を振り回していたのだから困りものだ。
 これで大事にならなかったからよかったものの、屈強なゴブリン族の血をひいていなかったら大変な結果になったかもしれないのだ。

「ドロシアさんは勝気な性格ですものね。いざ冬にもかかわらず事変でも起きたのなら、軍馬にまたがって陣頭指揮を執りかねませんもの。留守中の事が不安であると申しますのなら、わたくしにその点はお任せ下さいな」
「カラメルネーゼにわらわの代理を任せると言うのか?」
「そうですわ。わたくしとあなたは同期の貴族軍人、あなたに出来ることはわたくしにもできましてよ。それに、ドロシアさんも今はご自分の事を考えて、安静第一であることが望ましいのではなくって?」
「確かにそなたは戦場経験も豊富であれば、その点に疑う理由はないのだが……」

 強力な指導者のひとりを失うという意味で、盟主連合軍内の力関係が崩れる事を女領主は危惧しているのだろう。
 けれどその点を俺は安心していた。
 何しろ冬が本格化する前には、盟主連合軍に参加した諸侯たちは本領へと一時引き上げすることが分かっているからだ。

「だから俺からもアレクサンドロシアちゃんには故郷で過ごしてもらった方がいいんじゃないかと俺はおもうわけだよ」
「ふむう。確かにそうではあるが、いざという時の備えはやはりゴルゴライに置いておかねばなるまい」
「そこはあたしもゴルゴライに残るわけだから、問題はないと思うわよ」

 そう口添えをしてくれたのは雁木マリだ。
 彼女もまた騎士修道会再建とあわせて、配下の軍勢をゴルゴライ戦線の占領統治下に送り出して陣頭指揮を執っている立場だ。
 サルワタ貴族の軍人経験者であるカラメルネーゼさん、それに聖女ガンギマリーがいれば問題ないと家族たちも考えていたのだけれど、

「ッヨイはやはりドロシアねえさまは、お城でゆったりと過ごすのが一番だと思うのです。あかちゃんに万が一があってはいけないのです。ねえさま、そうですよね?」
「はい。ッヨイちゃんの言う通り、領主さまは故郷で安全にご出産をなさるべきかと思います。シューターさんも何か言ってさしあげてください……」
「そうだぞアレクサンドロシアちゃん。命令するばかりではなく、妹なんだからたまにはお兄ちゃんの言う事を聞きなさい」

 俺やッヨイさまだけではなく、カサンドラにまでそう言われてしまった女領主はバツの悪い顔を浮かべた。
 もともとが抜け駆けでその身に宿したあかちゃんだ。説教タイムだったのを思い出して、逃げ道をふさがれてしまったようだ。

「ぐぬぬ。寝室ではお兄ちゃんの言うがままではないか。ええい、そこまで言われてはこれ以上の文句はない、そのようにいたす故、手配せよ」

 ちょっとだけふっくらしているお腹をさすりながら、アクサンドロシアちゃんは降参した。
 みんなも故郷に戻っている時期なんだから、きみも自分の本領でゆっくりお腹の中のあかちゃんと過ごしなさい。
 俺もその方がいいと思うし、他の奥さんも同意なんだよ。

「ところでニシカさんの姿が見当たりませんけれども、シューターさんは何かご存じですか?」

 そういえば家族会議の最中だというのに、ゴルゴライに戻って来てからニシカさんの姿を見た人間が誰もいない。
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