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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第9章 内政の季節が到来です

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閑話 ラミア族の隠し財宝 後

 数日のうちにラミアの資産を移送する計画と人選をまとめ上げたオレたちである。
 家族のみんなにはその事を絶対に気づかれてはならないのだから、気を遣うってもんだぜ。
 ラメエの故郷、オホオ村に出発する当日の朝には、だからあえてオレはおちゃらけた態度でシューターにこう言ってやった。

「何だよ。お前ぇたちだけにぎやかに北に行列作って向かうのに、オレだけ仲間外れか……」

 その時にシューターは呆れた顔をしてオレを見返してきたじゃねえか。
 本心からそういう風にオレが口走ったと思ってたらしく「困ったひとだな」という表情が読み取れて、オレは途端に不愉快な気分になった。
 おい相棒、オレにした秘密の命令を誤魔化すために言ったんだよ!
 何でそれがわからねえのかなぁ……

「にっニシカお義姉さまは、わたしの補佐役というのが気に入らないのですかっ。わっわたしだって全裸卿と一緒に北に行きたかったのだけれど」
「手前ぇは自分の領地に向かわずに何で北の領地に行きたがるんだよ。無責任な領主さまだなおい!」
「だ、だってオホオ村の事はじいが取り仕切っていたのだし、今回だって任せておけばいいのよっ」

 オレはオレで大事なお役目があるからな。
 ラメエにはじじいと一緒にしっかりと徴税官の責務ってモンをこなしてもらわないといけねぇ。
 しかしまあ秘密のお役目を悟らせないためと、行き返りの面倒ぐらいはシューターに頼まれた以上、それなりの対応をしておく必要がある。
 何てったって女魔法使いの様な金目のものにあざとい女は騙しておくに限るぜ。

「しゃあねえな。コイツのお守りはオレがしっかり果たしてやるから、お前たちも触滅隊みたいな連中には気を付けるんだぜ。負けが込んでくると敵は正攻法以外で何かを仕出かす可能性があるからな」

 そんな言葉をオレが言ったところで反応したのはようじょだ。
 ッヨイはむっとした顔で何かを知った風にオレに向けて注意喚起してきやがった。

「おっぱいエルフの言う事はもっともなのです。ブルカ辺境伯とツジンには前例があるので、ッヨイたちも身の回りの危険には気を使った方がいいのです。まだまいふくの毒があるかもしれないのです」
「埋伏の毒か。遅効性の毒を使って獣を仕留めるという事は確かにオレたち猟師もやるからな。囮にする一匹に毒餌を食わせて、そいつを狙う捕食獣をおびき寄せるんだ」

 ついこの前にシューターといい感じになっていたのを邪魔したあの女。
 使用人の格好をしていたヤツをガンギマリーが尋問にかけた結果、当然の様にブルカの送り出したスパイだという事が発覚した。
 もちろんその情報はシューターだけでなく、オレやようじょや領主さまのところへ報告されているからな。

 その言葉を聞いたところで相棒はようやく悟った表情でオレを見返してきた。
 気づくのが遅えんだよな。まあ任せておけ、船の中じゃ役立たずだからそこは勘弁だが、森の中でどこに誰が潜んでいるかを探すのは、オレ様がもっとも得意としているところだ。

 ところが船に乗り込んですぐの事。
 オレは案の定というか酷い船酔いに悩まされて、そろそろ魂が異世界に旅立つんじゃねえかと覚悟を決めたところ、

「と、とにかくこのお薬を飲んでくださらない? 聖女ガンギマリーさまの処方したものだからきっと大丈夫よ」

 見るからに怪しく七光りしている謎のガラス瓶を、オレ様はラメエに飲まされたのである。
 ガンギマリーのポーションと言えば注入器具で体内に入れるもののはずだが、この小娘は口から飲ませようとしやがる。
 何でもいいから女神様か相棒に助けてもらいたい一心で、オレは直接口から飲んだのだがね。

 気が付けばその日の夜を迎えていた。
 場所はオホオ村の領主館にある寝台の上だったぜ……
 それが良かったのか悪かったのかわからねえが、眼が覚めた時にはスッキリと船酔いの苦しみが消えていた。

     ◆

 オレ様がオホオ村に到着後、別行動を取る事を連中に説明したのは夕飯の時だった。
 リンドルの軍船の中では言えない事だからな。
 ツンデレのマリアはオレ様の義姉妹で家族っちゃ家族だが、リンドルのへっぽこ水兵どもの中には今でもブルカと繋がりがある人間がいてもおかしくねえ。
 だからギリギリまで伏せておいたのは、正解だったんじゃねえかな。
 何度も秘密の工作員みたいな役目をやっていると、こういうところで知恵が回るようになった。

 案の定だが誰からも信用されていねえ女魔法使いが、オレが寝室に引き上げたところで目ざとく質問する声が聞こえたぜ。

「その隠し財宝というのはどこに保管されてるんですか?」

 その情報を知っているのはオレ様と、秘密の護送任務にあたる連中だけに限られている。

 マドゥーシャをまったく信用していないというわけじゃないんだぜ?
 あいつは少々セコいところがあって、財宝の在処を敵方に通報してたんまり頂きにかかる様な尻軽女ではない代わりに、ケツの穴が小さいので少しばかりちょろまかしてもバレないとか、そういう事を考えるタイプだ。
 おちんぎん、おちんぎんうるさいヤツだからな。

 そのうちにシューターの野郎に働きに応じて賃金を上げてやる様にと、カサンドラ辺りが言うだろうからそこまで我慢しろよな。
 などと考えながら寝室の扉を閉じたところで、オレは真顔になった。

「ニシカ夫人、万事準備は整ったぜ……」

 寝室には知っている気配があった。
 この地元オホオの近くで猟師をやっている無口な黄色い同胞だぜ。
 ベルベボロンという妙ちくりんな名前だが、猟師としてはシューターの次の次ぐらいには頼りになりそうなところがいいね。

「おう、済まねえな。急に呼び出して手伝い事をさせてしまって。上等な酒は用意できたか?」

 断っておくが、オレが呑むわけじゃねえぜ?
 任務の途中で不必要に呑むのは、いくらオレ様だってやらない事だ。

「いいや構わない。全裸を貴ぶ英雄さまのためであれば、俺たちはいくらでも協力する。酒は注文通り、オッペンハーゲンのワインを用意させた」
「そうかい。ンで、お前ぇが来たという事は豚面のマスかき野郎どもはもう到着したって事だな」
「問題なく村の外に集まっている」

 そうかい、じゃあちょっくら顔を見せなくちゃいけねえな。
 オレ様は部屋の隅に放り出されていた旅荷をまとめたズタ袋をひっくり返して、ポンチョを取り出した。

「イブ=セイマス=ズィという男は凄いな。あれも全裸を貴ぶ英雄さまのご家中なのか?」
「マスかき野郎とその一族は、まとめてオレん家の手下になったのよ。武芸は達者な連中らしいから間違いなく守りには適任だ」

 豚面の移民どもは半分がサルワタ貴族の軍隊にぶち込まれて、残りの半分は蛸足ネーゼの商会で働いている。
 イブ=セイマス=ズィは相棒の紹介という事でサルワタ貴族の軍隊に入った後で、オレ様に今回預けられたわけだ。
 家族ども気づかれない様に窓から外に出て、暗がりの中で戦禍の爪痕が残った村の広場を移動したところでマスかき野郎の一族が迎え入れてくれた。

「おうニシカ夫人。財宝の在処を確認して、ドワーフ陛下の許可を受け取って来たぜ」
「そうかいご苦労だったな。ほれ、お前ぇたちに酒を持って来たぜ。こいつはオレ様とシューターからの駄賃みたいなもんだ。寒いだろうからこれで暖まりな」

 黄色い同胞のベルベボロンに持たせていた酒樽を指さしてオレはそう言った。
 まあ明日の景気づけに呑んでくれよな。

     ◆

「上手い具合に隠したもんだな。教会堂の廃墟を軍隊が宿営地に使っている様にしか見えねぇ」

 翌日になると別行動のために、豚面のマスかき野郎たちと地元猟師どもを引きつれて村を離れた。
 秘密の行先は実のところ戦災で放逐された集落のひとつだった。
 集落の住人たちも今は隣の村や集落に移動して、荒れかけた畑だけを盟主連合軍どもが収穫してまわったらしい。
 古ぼけた教会堂があって、戦禍でその一部が破壊していたけれども、ドワーフ兵たちが雨風をしのぐために今は利用している。
 という風に見える様に偽装されていたわけだ。

「廃墟と化した集落というのは野盗どもが住み着く事が多い。しかし、それを防ぐために軍隊が一定数駐留している、というストーリーをドワーフの王様が考えたそうだぜ、ニシカ夫人」
「よし、荷馬車の中に財宝を担ぎ込ませる前に森の中に怪しいヤツはいないか周辺警戒にあたる。ベルベボロン、猟師たちを森に入れてくれ!」
「了解だ、ニシカ夫人!」

 一斉に動き出した黄色い同胞と猟師たちは、各地に何かひとつでもおかしな傾向は無いだろうかと、周辺散策をはじめる。
 オレ様は馬車を降りて教会堂内部に詰めているドワーフ兵の指揮官に挨拶をしなくちゃいけねえ。

「付いてこいセイマス、ここの隊長にオレ様の到着を報告するぜ」
「応ッ、お前たちニシカ夫人に続け!」

感想お返事が遅れがちになっておりますが、拝見させていただいております。
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