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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第9章 内政の季節が到来です

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閑話 ラミア族の隠し財宝 中

 しかしアレだな。
 大任を与えられたオレ様は、徴税の旅に出る前にやる事がいっぱいだぜ。
 ソープの資産を持ち帰るとひと口に言っても、桁がふたつもみっつも大きいので胸の内に挟んで運ぶというわけにもいかねえ。
 シューターからは秘密の内に信用できる人間を使って、しっかりお宝を持ち帰る様に言われたわけだ。

「持ち帰った金の使い道はどうなるんだよ」
「ソープさんとアレクサンドロシアちゃんが話し合った結果、サルワタの城にソープさんの部屋を作るという事で、その予算に充てられるそうです」
「それでも大分残る事になるんじゃねえか……」
「まあそうですね。ソープさんは熱心な女神様の信者だそうだから、一部は騎士修道会に寄進して、残りは何か別の使い道を考えているそうですよ」

 べらぼうな額だから少々目減りしても大金が残る事になるぜ。
 何か意味深な反応を相棒がしてみせたので、オレの知らなくていい計画でもあるんだろうなと見当が付いた。
 そういう知恵のいる事は学のある相棒や領主さま、あるいはようじょに任せておくに限るぜ。

「最終的にどこの場所でサンタ王がソープ嬢の資産を管理させているのかは、モエキーさんに確認してくれますか」
「お前は知らないのかよ相棒」
「聞いてはいますけど、詳細はちょっと口では説明できませんねえ。どのみち地元の人間にしかわからないような場所であるみたいで。へへ」

 機密上の問題というやつです。
 なんてスカした事を言いやがったが、つまりコイツも知らないって事だろうね。

「信用のおける警護に連れて行きたい人間は集めてもらっても構いません。モエキーさんに確認を取って、詳細な護送計画を立ててくださいね」
「その場所というのは、もちろん家族どもには内緒でだな?」
「カラメルネーゼさんは教えても構いませんよ。けどマドゥーシャ、あいつだけは駄目だ」
「あいつはケツの穴の小さい女だから、裏切りゃしねえよ」

 まずは資産を何処に隠したかという話をモエキーのところへ行って聞く必要があった。
 モエキーは普段、自分の役目が無い時はカサンドラの側仕えをやっているか、タンヌダルクと行動を共にしている事が多い。
 そうでない場合は実家の金貸しばあさんと銭儲けの算段をしている事が多いので、まずは義姉妹気取りの連中を探して、それで居なければ街に出る事にした。

 誰もかれも徴税官のお役目で出かける準備をしているのか、領主館の中は静かなものだった。
 シューターと打ち合わせをしているうちにカサンドラたちも出かけたところを見ると、モエキーも屋敷にはいないみたいだね。
 そこで金貸しばあさんのところに向かっている途中で、バッタリと買い物帰りのモエキーと遭遇だ。

「丁度いいところに居たぜ、探していたんだ」
「わたしをお探しだったのですか?」
「ソープ嬢の資産と言えばわかるんじゃねえか、シューターからラミア族の財宝を持ち帰る様に命令されたんだ。この事はオレとお前だけの秘密にして、教えていいのは蛸足ネーゼだけだと言われているぜ」
「あっ、わかったかもです。付いてきてください……」

 ハっとした表情のモエキーがすぐにも居住まいを正しすと、周囲を見回して確認したところで新市街に向かいはじめた。
 公衆浴場の前を通過して娼館の立ち並ぶ路地に向かう。
 行先は蛸足ネーゼの商会だったらしく、豚面の猿人間どもがオレたちを迎え入れてくれた。

「おう、相変わらず景気のいい顔をしてるじゃねえか」
「おかげさまで」
「カラメルネーゼ奥さまはおられるかも、ですか?」
「ああカラメルネーゼ卿なら、中の執務室で書類と睨めっこしていやすぜ」

 案内されるがままに仕事部屋とやらに入室すると、そこにはしかめっ面の蛸足ネーゼがいた。
 酒杯を左手に羽根ペンを右手に、ウンウンと言いながら書類と睨めっこをしていたところの様だった。
 何を見ているのかと散らかされた書類のひとつを見ると、どうやらリンドル川西域の地図も広げられている。
 いくつかの書類と見比べていたのはオレたちの要件と同じだったのだろうかね。

「おう、邪魔するぜ」
「ちょうど良いところに来ましたわね、ニシカさん。盟主連合軍の占領統治下にある村々から税収報告が上がって来たのですわ。あちらはベストレとリンドルの管轄ですので、写しを頂いて奴隷の販売計画を……」

 言いかけたところで書類を机に置いてモエキーと俺の顔を見比べる。

「おふたりして、という事は主人から例の資産の移送命令があったのですわね?」
「野郎は面倒臭い事はすぐにオレたち嫁に押し付けてきやがるからな」
「主人に信用されているというのは、素晴らしい事ですわ。おーっほっほっほ! さあこちらに来て、計画を練りましょう。モエキーさんも、お座りになりなさいなっ」
「わ、わかりましたカラメルネーゼ奥さま、かもです……」

     ◆

 オレは資産の移送任務にかかわる人間として、徴税官になったラメエの随行を装って現地に入る予定となる。
 地図で詳細を確認した限り、ラミア族の財産が隠されている場所は幾つかあるオホオ村にほど近い場所という事だ。

「だからオレがわざわざ南の領地に向かえと、シューターが命令しやがったのか」
「そうですわね。家族でも、特に主人の古くから親しいのでしょう?」
「古くからって、オレたちゃ付き合いがあるのは半年程度だぞ?!」

 そういう意味では家族の絆を大事にしているカサンドラのやっている事は、ごっこ遊びも当然だ。
 けれど相棒から信頼されている事は悪い気がしないので、詳細な地図で岩窟王のドワーフ兵が駐留している守備位置を確認し、オホオからの移送ルートの策定に取りかかる。

「護衛にあたる戦士はこのままじゃ心もとないんじゃねえのか。船を使った場合、平時は不文律で襲わないという約束事があるそうだが、戦時は別の問題だろう。オレもアテにしてもらっちゃ困るぜ」
「攻撃をされてしまって万一沈没する事態になれば、そのまま資産を川底に沈めてしまう事になる、かもです」
「ですわねえ。けれども逆に、一気に運び出すという意味では船ほど便利な方法はありませんわ。軍船はリンドルやセレスタ、オッペンハーゲンの諸侯たちのものであれば立派な造りのものありますが、わたくしどもの保有している軍船というのは……」

 領主さまがまともな軍船を保有しているという話は、聞いたことがねぇんだよな。
 そもそもサルワタの片田舎は舟艇を湖浮かべて喜んでいる様な連中だぜ。
 じゃあどうするのかと言うと、

「お金で借り上げるしかないかもです。リンドルかセレスタの軍船を手配する事にしましょう」
「行きがけはどうするんだよ? 行きの船はもう用意されてるんだろ、明日明後日には出発するんだから」
「そっちはリンドルのシェーンお坊ちゃまがゴルゴライまで下向する船で、モッコまで移動する予定になっていますわ」

 こうして軍船の手配についても確認を取りながら、資産輸送の人選と護送ルートが決定した。
 幾つか考えられたルートはモッコを経由するものや現在占領作戦が行われているシャブリン修道院経由だったけれど、もっとも安全かつ確実な味方の支配域を経由するらしいね。

 リンドル領アントワームの村を経由して、ここから一気にゴルゴライ領内の船着き場まで運び出す。
 その際にオレは貨客船に運び込まれるまでの監視を行い、乗り込んだ護送チームとお別れしてラメエのところまで戻るという手はずだぜ。

「何でわざわざ別行動をとる必要があるのですこと?」
「しょうがねえだろ! オレが船に乗っていても役に立たねえだろうからよ。シューターが船酔いしないおまじないしてくれれば別なんだがな」
「いないものはしょうがないかもです。それでは護衛チームをさっそく現地に向かわせる事にしましょう。めだったら不味いので、みなさんにはリンドル行きの便に乗り込んでいただき、アントワーム経由で向かっていただくのがいいかも、です」

 護衛を担当するチームは、蛸足ネーゼが最近手足の様に使役している連中だ。
 故郷を失った豚面の猿人間どもは戦争自慢の筋肉贅肉野郎ばかりなので、少なくとも船の上ではオレ様よりも頼りになるかもしれない。
 しかしあれだね。

「別にそういう事ならばオレじゃなくて、カラメルネーゼが直接指揮を取ればよかったんじゃねえのか? お前ぇは貴族軍人サマの出身だし、こういう事には慣れているんだろ?」

 すると蛸足ネーゼとモエキーは互いに顔を見合わせた後に、こんな事を口にした。

「それは愛され自慢をしておりますのかしら? 主人は最も信頼できる妻として、将来は一軍の将をお任せになられる腹積もりがあるのですわ。こうしたご差配を経験なさる事で、主人の期待に応えられるようになるのですわよ。ニシカ将軍、よろしくって?」
「素敵な夫婦愛かもです。わたしも何れ……」

 オレ様が将軍だと?
 くっくっく。悪くねえ、いい響きだぜ……

「そうか、独眼龍殺しの鱗裂き将軍サマというわけだな!」
ニシカ将軍の爆誕秘話。
すぐノせられるタイプですねチョロいぜ。
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