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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第9章 内政の季節が到来です

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291 雁木マリの提言を検証する簡単なお仕事

お色気回です。苦手な方は読み飛ばしてください。
「おおっ、素晴らしい施設だ。これを考えた人間は天才かよ!」

 医学的見地から見た場合、長期間にわたって入浴を行わなかった人間は、炎症や何らかの感染を引き起こす可能性があるとモノの本に書かれていた。
 また古い時代の不衛生な都市生活においては、伝染病が蔓延していたという文献も俺は眼にした事がある。
 中世ヨーロッパ社会では、入浴習慣が存在しなかったために黒死病の大流行をもたらたという事実もあるのだ。

「体を清潔に保つのは人間として最低限のエチケットだものね、ってニシカ義姉さま。服を脱ぎ散らかさしたままよ!」
「ご主人さまに改まって貧相な自分の体を見られてしまうのは、何やら気恥ずかしさがありますね……ですが奴隷とはご主人さまの所有物、奴隷が隠し立てをする事は許されません」
「貧相だなんてとんでもない! 素晴らしい。ありがとうございます、ありがとうございます」
「「?」」

 してみると、集団生活における衛生管理のためにまずもって都市計画が整備されつつあるゴルゴライに公衆浴場が設置された事は、道理にかなっていると言えるのだ。
 巨大な山脈の連なりを見て、これら連峰が美しく保たれる事に感謝しなければならないのだ!

「おい相棒。いくら全裸が好きだからっていつまでもそんなところに突っ立っている事はないだろうがよ」
「やっぱり全裸卿ともなると、公衆浴場の使い心地を逐一チェックしているのかしらね」
「足元が滑りやすくなっております。お気を付けくださいご主人さま、奥さま方」

 俺は今、ゴルゴライの新市街に作られた公衆浴場へとやって来たところだった。
 旅の疲れと垢を落とすためにと、さっそく運営が開始されたばかりの真新しい入浴施設を使いたいとニシカさんが所望したからである。
 それに今朝早くから隣村の接収任務に出かけていたラメエお嬢さまも、埃を落として身を清めたいと口にしたからね。

 竣工したばかりで、まだ一般利用がされていないこの施設。
 雁木マリの提言によってできた公衆浴場を、俺はお貴族さまとして検証しなければならないのだ!

「ごめんごめん。ちょっと感慨深いものがあったからね」

 巨大な連峰、いや巨大な大窯を眺めている俺に次々と奥さんたちが声をかけてきたので、あわてて俺は脱衣所を出て中庭へと進む。
 中庭は石畳になっていて、湯に塗られたそれはちょっとぬめぬめしている。
 そうして石畳を進むと、木製の桶が積み重ねられているのでそいつをひとつ手に取る。

「雁木マリによれば、ひとりひとつずつ自分用に持ってからシャワーを浴びるのです」
「ほう、こんな小さな桶じゃ湯に浸かる事もできねえじゃないかよ」
「シャワーですからね。シャワーは自分からお湯に接するのではなく、お湯から自分に接するものなのです」

 ニシカさんの疑問にわけのわからない説明を加えた俺は「さあこっちこっち」と、不思議そうな顔をしている家族を導いて大窯の給湯器前までやって来た。
 お風呂の建設を提案した雁木マリ、巨大給湯器を設計をしたという黄色い賢者、そして実際に公衆浴場を建設したゴブリンの職人さんたち、ありがとうございます。ありがとうございます。俺は全裸で全裸に感謝した。

「しかし本当に大きな給湯器ですね」
「きみたちほどでもないかな……」
「お戯れを」

 給湯器を見上げる男装の麗人は、いつもの三つ編みにした長い後ろ髪を解いている。
 アッシュグレーの美しい髪を片側の肩に乗せて、そうしておいて給湯器を見るために天を仰ぐ様な姿勢になるれば……
 当然その巨大な連峰もまたぐっと天に突き上げられるのである。

「ゴホン、よしラメエさまはこの飛び出た配管の前に立って見て」
「はい旦那さま」
「したらそのひもを引っ張る」
「ひゃん?!」

 給湯器の配管側にぶらさがったひもは、大窯の内部にある栓を開閉させるためのものだ。
 引っ張っている間はお湯が勢いよく吐き出されるが、ひもを放せば栓が閉まってお湯の供給は止まる。
 してみるとラメエお嬢さまは、小さな丸みを帯びた丘陵を抱きしめる様にして、頭からお湯を被って驚いた。

「なるほどねえ、お湯が自分からというのはこういう事か。これを考案したヤツは天才に違いない」
「ガンギマリーさまの考案だと聞いています。実際に設計に起こしたのは、クワズの森の開拓村に住んでいた黄色エルフの学者さまだと聞いていますけどね」
「やっぱり聖少女ガンギマリー義姉さまは、女神様の守護聖人だから天才なのね!」
「そうじゃねえ、黄色エルフが賢者の部族である事が証明されたというわけだな」

 女が三人集まれば姦しいとは言うけれど、俺が全裸の女性たちを前に眺めていればそれは視姦である。
 給湯の配管はいくつもあるというのに、どういうわけか面白がって順番にひもを引っ張ってはお湯を浴びてキャアキャアと奥さんや奴隷たちは大喜びだった。

「よし! 体が冷える前にちゃっちゃと洗ってしまおうぜ。おいヘチマのたわしはどこだ?」
「これですね。ガンギマリーさまの発明で、棒切れの先端にヘチマを付けているので背中を洗うのも簡単ですよ」
「で、でもこういうのは、家族なら旦那さまにやってもらうのが常識だと、カサンドラ義姉さまが言っていたわよ。全裸卿、やらせてあげてもいいんだからねっ」
「足を洗う時に不便だな、この変テコな凹んだイスを使えばいいか。これもガンギマリーの発明かよ?」
「いいえそれはご主人さまの考案です。この凹みに手を突っ込めば、大切なところも座ったままで洗えるそうです」
「全裸卿もやるじゃない。さすがわたしの旦那さまね!」

 古来よりお風呂の習慣は地域によってまちまちで、インダス文明やローマ文明の時代から大規模な公衆浴場があったそうだね。
 それに浴槽を張った本格的な湯船に浸かる環境が整備できない時代は、蒸気によるサウナみたいなスタイルの沐浴が盛んに行われていたらしい。

「うわっこのブクブクしたのは何なのかしら? 柔らかくてとても気持ちいいわっ」
「これは石鹸(シャボン)ですね。シャブリン修道院の倉庫から騎士修道会が持ち帰ったもので、これで体を洗うと垢がよく落ちるそうですよ。シャブリン修道院の語源は、修道院で作られていた石鹸製造所に由来しているそうです。って、誰も聞いていない?!」
「おおっ、何かお肌がすべすべになる気がするぞ。おいシューター、そんな顔であんまみんなよ」

 ちなみにこのファンタジー世界では、都市部ならば公衆浴場が整備されていた。
 初めて利用したのはブルカの街で奴隷だった頃。それからセレスタやリンドルにも旅の汚れと疲れをいやす目的で整備されていた。
 まず浴槽に浸かった後に、ゴブリンの垢すりが体の汚れを擦り落としてくれる。頼めばオイルを塗ってマッサージもしてくれるので、雁木マリやッヨイさまからも人気だった。

 ちなみに入浴施設の無い田舎の過程では、たらいに湯を張ってヘチマのたわしでゴシゴシだ。
 石鹸など高価なので村にはなかった。

「ニシカさん、あんま動かないでくださいよ。動くと石鹸で滑って変なところを触ってしまいます」
「ばっか、こそばゆいんだよ。でもこのシャボン最高だなおい!」

 辺境随一の豊かすぎる胸と言ってもいいニシカさんのそれは、スラリとした長身に鍛えられた体と併せて素晴らしい張りを持ったドッヂボールだ。
 腰に手を当てて俺の洗うに任せていた彼女は、感心したり相槌を打つたびにばるんぼよんとドッヂボールを揺らして重力に逆らって見せた。脇から毛がチラチラ見えているのが俺の新たな性癖を刺激した。

「ご主人さまに奴隷である自分の体を洗って頂けるなど、光栄の極みでございます」
「いいんだよ。いつもベローチュにはお世話になっているからね」

 対する、褐色エルフ最強のおっぱいを持っているベローチュのそれは、間違いなくタンヌダルクちゃんと二位争いを出来るほどの破壊力である。
 腕組みをすると押し付けられた山々が地殻変動(プレートテクトニクス)によって激しく揺れた。俺は大陸移動説と地震の因果関係について深い理解を得たのだ。知能レベルが一つ上がった。お毛々もアッシュグレーなるほどな。

「今度はこっちもお願いだわ。ひゃん、そこはらめぇ自分でするからッ」
「ここは汗をかきやすいから恥ずかしいからと言って洗わないのは駄目だよお嬢さん」

 ラメエお嬢さまの肢体に俺は戸惑いを覚えた。(よわい)十一歳の白人少女ともなれば、成長著しい年頃だ。騎士の訓練を受けた体はスレンダーなスポーツ少女の体をしているけれど、少女特有の線の細さは庇護欲を掻き立ててくるのである。抱きしめたい衝動に駆られたが、他の奥さんや奴隷の眼があるので駄目ですダメー!
 なるほどワキの下はまだ綺麗だ。

 こうして丹念に体をキレイキレイしたところで、改めてひもを引っ張ればお湯がザブンだ。
 中庭に洗い場が設置されているという構造上、冬場は寒さ対策が必要だな。
 今は給湯器から湧き上がる蒸気がモクモクとしているが、こんなものは雪に支配された辺境の冬の前には見掛け倒に違いない。

「そう言えば全裸卿、向こうの施設には蒸し風呂も設置されていると聞きいたわね。せ、せっかくだから、旦那さまが行きたいのなら付き合ってあげてもいいわよっ」

 本当は自分が行きたいのだろう。
 すっかり石鹸の泡を洗い流したラメエお嬢さまが、俺に指を差し向けて同行を許可して下さった。

「蒸し風呂というのは何だよシューター」
「それはですね、大窯のお湯を沸かす余熱と蒸気を使った温室の事だ。まあ百聞は一見にしかずというから、行って見ればわかりますよ。さ、お嬢さまこちらへ」
「しょうがないんだからっ」

 ニシカさんの質問に何となくの説明を加えながら、俺はプリプリとみせつつも興味津々のラメエお嬢さまを誘った。
 全裸でもお貴族さまというのは正々堂々としているのが面白いね。男勝りなニシカさんとは違った意味で気後れがない。
 などと思っていると、

「自分はまだ利用していないので、是非この機会に利用してみたいものですが……残念ながら自分は奴隷なので遠慮すべきでしょうか」
「ばっか何言ってんだ黒いの、お前ぇはシューターの所有物なんだから体の一部なんだろ? いいからその蒸し風呂に行こうぜ。体が冷えちまう」

 振り返れば、黒おっぱいの肩に腕を回して強引に連れていく本家おっぱいである。
 男装の麗人も元は高貴な身の上たる騎士さまだったのだから、気にする必要はないのにね。
 カサンドラが言う様に、俺たち家族から一歩身を引いて尽してくれる彼女の事だから、こうして俺たちから誘ってあげるべきだ。

「さあおいで、遠慮なんかする事はないから」
「はい、ご主人さまっ」

 俺の投げかけに表情をほころばせたベローチュは、いつもの男装の麗人らしいキリッとした表情を脱ぎ捨てて、年頃の女の子らしい愛らしさを浮かべていたのである。
 いいね!

     ◆

 これはどういう事でしょう……。
 蒸し風呂は蒸気で満たされた畳一枚もない狭い個室になっていて、これでは四人も人間が入れば定員オーバーもいいところである。
 L字になったイスに腰かければ、当然俺たちは密着する他はない。

「しかし狭いなおい」
「これ、隣にも個室があるんだから、みんなでバラバラに入れば良かったんじゃないですかねぇ……」

 まずニシカさんがイスにどっかりと腰かけて、その後に俺が失礼する。
 ニシカさんは元々俺とほとんど身長が変わらない様な長身のレディで肉付きもよろしいから、その結果もちろんパイタッチ。不可抗力です!

「お風呂は家族で入るものだってお義姉さまが言っていたわ。旦那さま、あまり動かないでくださるかしら?」
「え、ラメエちゃんそこに座るの? おじさんちょっとドキドキだな」

 そこにラメエお嬢さまが入って来て、座る場所がないので俺の股の間に座ろうとした。
 毛の生えた小柄なレディの背中が俺の胸板に押し付けられて「これでいいわね」と本人的には大満足なのだが息子も大満足だ。これはいけない!

「ご主人さまもう少し詰めてください。扉を閉めますので」
「待て、早まるなベローチュ。そんな事をしては俺の魂が女神様の祝福を受けてしまいます!」

 俺の方便に小首をかしげながら、最後にベローチュが強引に入り込んでくる。
 ぐいぐいと、こういうところは無遠慮に割り込んでくるから、当然褐色お肌が俺に押し付けられるではないか。普段は騎士の平服っぽい男装をしているクセに、脱げば熟した褐色ボディだからけしからん。それを惜しげも無く俺に密着させて来るのだからたまらない。

「……にしても、せっかく体を洗ったのに汗をかいてしまうわね」
「それがいいんじゃねえかよ。いい汗かいたら気持ちいいだろ?」
「この公衆浴場を設計した黄色い賢者によれば、蒸し風呂を出た後、最後にもう一度お湯を浴びてから退出するとよいそうですよラメエ奥さま」
「やべえな。何か急にさっきの酒が体の中を巡っているみたいな気分だぜ」

 そんな事を言いながら、ニシカさんがコテンと俺の肩に頭を載せてくるじゃないか!
 しかし顔は相変わらずニヤニヤしているので、これはわざとである可能性がある。
 彼女なりに俺に対して甘えているポーズなのかもしれないが、人相が悪戯顔そのものなので挑発行動にしか見えないのが残念なのだが……

「ちょっとニシカ義姉さま大丈夫? 気持ち悪いなら外に出た方がいいわ」
「馬鹿野郎、オレ様を誰だと思ってるんだ。これくらいは何て事はねえ……」
「そう? ならわたしはいいけれども。でも、あっつぅー」
「でも確かに、蒸し風呂でかく汗は妙に気持ちいいですね奥さま方」

 今度は反対側からベローチュが、俺の腕に手を回しながら谷間にそれを挟んでくる。
 密着した状態で語りかけられると、無防備なお肌に吐息がかかるのである。これはもう流し目の上目遣いだからわざとだろ。
 嬉しいが、嬉しいけれどここにはラメエお嬢さまがいるんだ!

 何事も順番を大切にするカサンドラの方針によれば、次のひとは男装の麗人のはずだ。
 それがわかっていてあえてなのか、

「ご主人さま顔がお赤いですよ。うふっ」
「ハハハ、きみほどでもないさ」

 狭苦しさと蒸し暑さと、そして女の匂いに満たされたサウナ室の中で俺は昇天しそうになりながら必死で抵抗を試みた。
 やばい、非常にやばい。ブルカの悲劇再びだ。

 むかし俺は全裸で公衆浴場にやってきた時、雁木マリによって手ぬぐいで顔面を強烈に叩かれた事があった。
 十分に水分を含んで重くなった手ぬぐいは武器になるのだ。
 雁木マリの様な容赦のない暴力メガネはこの場にいないけれど、ラメエお嬢さまはすっかりデレたマリアちゃんと違ってツンデレの素養があるので、バレれば大変な事になる。
 これ以上は危険だ。

「そ、そろそろ外に出ようか。長く蒸し風呂の中にいると体によくないからね!」

 俺の宣言を聞いてラメエお嬢さまが額の汗を腕でぬぐいながら出ていった。
 するとニシカさんが巨大な胸を揺らしつつそれに続く。
 そして最後に残った男装の麗人が、出ていく途中でふと視線を止めて、俺の元気なご子息におやという顔をして見せるではないか。

「……うっベローチュ命令だ。きみは何も見ていない。いいね?」

 精一杯の威厳を取り繕うのにあえなく失敗し、結局すがる様な視線で俺がそう命じると。
 ニッコリ笑った男装の麗人は居住まいを正して貴人に対する礼をとったのである。

「ご命令は以上でしょうかご主人さま……」

 ベローチュの事だ。アピールはするけれども、それ以上自分から何かを求める事はないはずである。
 けどね、貴人の礼を取る振りをして、何気に興味津々に息子をガン見しているのはわかっているんだよ!
 困るんですよそういうの。他の奥さんたちが中庭でシャワー浴びてるんですよ。
 だから俺はこう言うしかなかった。これはご褒美をあげるチャンスだ。
 俺や息子にご褒美では断じてないのだ。

「……コホン。こみいった話があるんだけど」
「承りましょう?」
「長い話になるので、後で俺の執務室まで来なさい。ご褒美を上げよう」
「ご用命とあらばいつまでも! 急いで身支度をしてきますっ」

 男装の麗人はうなずくと、とたんに浮かれ顔をして蒸し風呂の個室を飛び出したが……
 あっ、石畳で今ちょっと滑りそうになったよね。喜びすぎだろ?!

 
凹スケベイス
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