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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第8章 ゴルゴライ戦線

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272 ゴルゴライ街道口の戦い 8

更新再開お待たせしました!
     272 ゴルゴライ街道口の戦い 8

 何もかも身ぐるみ剥がされて全裸となった俺が、武器も無くして追撃に加わる事は出来ない。
 すぐに同じく全裸の雁木マリによって聖なる癒しの魔法で治療を受けながら、仲間の追撃に加わる必要があった。
 ところがである。

「な、何でまずそこが回復しているのよ?!」
「いやあ、ピンチになると男は生理現象でこうなるんですよ……」

 裸体の雁木マリが熱心に俺の体を触りながら回復に費やしてくれたおかげで、俺も息子もうれしくなって立ち上がる事が出来る程度に回復したのである。
 しかし、息子まで立ち上がるのは想定外だったので、俺は適当な事を言ってごまかす事にした。

「すいませんねえ、でもマリだからこうなったんだよ」
「ま、まあいいわ。続きはけけけ、結婚してからにしてちょうだい」

 顔を赤らめて明後日の方向を向いていたマリは、気恥ずかしそうに、けれどもまんざらでもない表情でそんな事を言ったもんだから、俺と息子は何度も頭を振って謝罪した。

 しかしそんな事はどうでもいい。

「ご主人さま、ご報告申し上げます」
「どうした、まだオレンジハゲが裸で転がっているのは見つかってないのか」
「……残念ながら未だに。アレクサンドロシア奥さまのご命令で、すぐに出動可能な各隊が、逃走した場合の逃げ口に向けて先回りを開始しております」

 全裸の男装の麗人が、褐色のたわわなお胸を抱きしめる様に右手で押さえ、貴人の礼をしながら片膝をついて見せた。
 当たり前だが、全裸だとベローチュは全然男装の麗人という感じがしなかった。

「マドゥーシャの発動した魔法攻撃、あの一撃がご主人さまの前に立ちはだかっていたフルプレート騎士で、ブルカ辺境伯が守られていた可能性があります。あるいは敵の救出部隊の一部が魔法攻撃に巻き込まれずに、ブルカ伯を助け出した可能性も」
「誰かブルカ側の逃走する兵士を見た人間はいなかったのかな?」
「シューターさん。ぼくが見たよ」

 俺のそんな質問に対して、駆け寄って来た全裸のけもみみがそう言った。
 やはり逃げられたという事だろうかと、俺と雁木マリは顔を見合わせてしかめ面をしてしまった。

「方角はどっちだったのかしらエルパコ夫人?」
「河岸の方向に向かっていたと思うから、リンドル川伝いに逃走するか、もしくは舟を使うのかも知れないよ」

 けもみみは、大事そうに二本の長剣を成長がまるで無い胸元で抱きしめていた。
 当たり前だが全裸なので、俺とお揃いの皮被りの息子が、けもみみの吐息にあわせて優しく揺れていた。
 みんな全裸で不思議な光景だが、戦場でこんな姿を晒すとはまさか思ってもいなかったぜ。

「リンドル川の方面に捜索に出ているのはどこの部隊だ?」
「シューターさまの配下が中心となって実施中のはずです。率いているのは確かラメエ奥さまとクリスティーソープランジェリーナ奥さまですね」
「ふたりとも奥さまじゃないから……」

 平伏した男装の麗人にひとつ釘を刺しながら、けもみみが差し出した長剣を受け取った。
 大切そうに持っていたのは、サルワタで入手したお揃いの長剣だったらしい。

「ありがとう、ありがとう。俺たちもすぐにそこへ向かった方がいいな」
「シューター、それはソープさんが裏切る可能性を示唆しているのかしらね?」
「ご主人さまは刺し違えるつもりでソープ奥さまが動かれる可能性を示唆しているのかも知れません」
「いや、そういうわけじゃないけどさ」

 やはり三〇年来の想い人と再会するという事は、不測の事態が起きないとも限らないのである。
 哀れを感じて情に訴えられて見逃してしまう可能性もあるかもしれない。
 あるいは、ここで心中するつもりになるのはもっての外だ。

「とにかくソープ嬢のところに急ごう」
「誰か、ご主人さまと奥さま方のお召し物をお持ちしろ!」

 立ち上がった俺に呼応して、すぐさま男装の麗人が周辺に大声を張り上げた。
 すると、ばるんと激しく豊かな胸が揺れて俺たちはその場で釘付けになった。
 物欲しそうな顔をして指をくわえているエルパコと、何か釈然としない顔をした雁木マリである。

「どうしたら揺れるかな」
「ないものねだりはよくないわ。女は黙ってやせ我慢よ……」
「これ以上痩せたら、ぼく男の子みたいになっちゃうよ」
「自分の持ち味を武器にすればいいのよ、そうよ」

 雁木マリには胸がないかわりに、お尻の肉付きは女性的曲線美があるからな。
 しかしけもみみには他の女性には無い息子が付いている。一部の人間にはきっと喜ばれる事だろう。

「どうされましたか奥さま方。自分が何か?」
「何でもないわ!」「何でもないよ!」

 声を被せる様に不思議そうな顔をしたベローチュに向かって、雁木マリとけもみみが異口同音にそう言い放った。

     ◆

 ようじょ隊と合流したタンクロード隊の混成部隊は、森林地帯沿いに敗走を続けるブルカ同盟軍の残存兵に向けて、執拗な追撃を実施していた。

 タンクロード隊は騎兵を中心にした機動兵力という事もあって、逃げる敵兵を側面から射抜くようにして何度も何度も反復突撃する。
 その背後からようじょたちの弓兵と魔法使いたちによる攻撃で、逃げ遅れた敵を徹底的に叩きつぶすという戦い方だった。
 哀れ数千の兵力があっという間に蜘蛛の子を散らした様に四散して、玉砕覚悟で反撃に出て死滅する連中や、とうとう降伏する事になった敵もいたというから、よほど酷い有様だったのだろう。

 そしてその場所にデルテ隊が合流するに至って、敵は完全に軍隊としての組織だった行動が出来なくなって瓦解した。
 そのまま再編成をしたデルテ隊と混成部隊が勢いに乗ってシャブリン修道院を目指す事になった。
 あそこはブルカ伯とアレクサンドロシアちゃん、そして今は亡きカーネルクリーフが三頭会談を行ったこのファンタジー世界の歴史的舞台だ。
 今はブルカ同盟軍側の占領統治下にあった場所であるけれど、政治的にこの場所を取り戻すという意味合いは大きい。

 そして街道沿いにはマリアツンデレジア隊が大軍を率いてブルカ領方面に向けて前進に次ぐ前進を繰り返していた。
 最終的にはシャブリン修道院の門前村で合流して、進退何れに動くかを協議する事になる。

 ここでもしブルカ辺境伯を討ち取る事が出来れば、俺たちはそのままその勢いを駆ってブルカの街を攻略しようと考えいた。
 だがまだ、ブルカ伯の消息は不明のままだった。

 包囲網は完成したはずだ。
 万がひとつにもブルカ辺境伯ミゲルシャールに逃げられる可能性はないはずだ。
 そのはずだが……

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