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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第7章 戦場でお会いしましょう

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253 バジル大作戦 終

おかげさまで、気が付けば900万PVを達成する事が出来ました!
ありがとうございます、ありがとうございます。作者は全裸で平伏した。

 完全に退路を断ってしまうと、窮鼠猫を噛むという言葉にある通り敵は死に物狂いで応戦してくるものである。
 事前の取り決め通りに俺たちは入り口の敵を相当して、作戦が失敗した時のための一応の自分たちの退路だけは確保しておいた。
 けれどもその作業をカラメルネーゼさんたちが処理してくれて直ぐにも、入り口付近のブッシュの中に俺たちは挺身隊の面々を伏せた。
 ここで逃げてくる敵を効率的に漸減するためである。

 ひとり残らず皆殺しにでもするつもりだと言わんばかりに、男色男爵は下馬戦闘まで命令して徹底的に宿営地の中の敵を殺戮した。
 あれはもう殺戮だろうと俺は思ったぐらい、後の宿営地の中はひどいものだったけれども、それだって逃げ出す事が出来た幸運なブルカ兵たちはいる。
 そんな連中がおおよそ百数〇名余り、この入り口を飛び出してくるのだ。

「ニシカさん、竜巻を!」
「よしまかせておけよ相棒っ」

 ただちに飛び出してきた連中に例の切り裂き風の竜巻をぶち込んだところ、どうにか軍馬に乗る事が出来た数頭の騎士が、ズタズタにされながら大地とキスをする羽目になった。
 さらに竜巻が収まるかおさまらないかのタイミングで女魔法使いが水魔法をぶち込んだせいで、敵はさらに大混乱だ。

「行くぞお前たち、マタンギに栄光あれ!」

 そのタイミングでデルテ騎士爵が部下たちを連れ、野牛の騎兵に預けて運んでもらっていた軍馬で駆け出した。
 さらなる後続から数頭のブルカ騎兵が飛び出してくるのを見て、このまま逃げられればリンドル川西部戦線の敗北を敵に知らせてしまうと判断したからだろう。
 俺とカラメルネーゼさんたちと軍馬に跨ってすぐにそれを追いかけたけれど、次々と飛びつく様に仲間たちがブルカ騎兵を馬ごと体当たりをする様な勢いで引き倒していくので、残ったのは俺とわずかばかりの主従だけになってしまった。

 すなわち。
 あまり馬術が達者ではない俺と、どうみても重装騎士のカラメルネーゼさん、そしてさすが妖精剣士隊の隊長出身だけあって軍馬の扱いに長けた男装の麗人ベローチュだけだ。
 けもみみやニシカさんたちがこの場にいれば、数十メートル先を馬に鞭打ちながら必死に逃げる敵騎士を射落としてくれたかもしれないが、いないものはしょうがない。
 少し遅れた場所で野牛の騎兵も数頭ばかり追従していた様だけれど、そちらは別の目標に向かって離脱していく姿が見えた。

「こっここで逃がすわけには行けませんわ!」
「しかし俺の操縦ではこれ以上速く走らせることは出来ませんよ?!」
「そこを何とかなさいましな! 婿殿は弓を、弓は使えないのでか?」

 使えないよ! 練習してこなかったんだよ……
 しかも仮に短弓を持っていたとしても、馬上から射撃するなんて芸当は熟練の技術が必要だ。風の魔法でホーミングアローの出来るニシカさんならいざ知らず、もしかしたらけもみみでも即興では難しい芸当なのではないだろうか。
 するとわずかに遅れて俺たちふたりを追いかけていた男装の麗人が、速度を上げながら追い抜いてくる。

「自分が、自分にお任せください!」

 激しく上下する馬上で、激しく上下するお胸を押さえつける事も無く短弓を構える姿が見える。
 だがまずは速度を一気に上げてから少しでも追いついて、一瞬だけ速度を緩めて射撃するつもりらしい。ところが、

「くっ避けた?!」

 背後を一瞬だけ振り返ったブルカ騎兵は、射撃の瞬間に馬速を緩めてたベローチュを確認した次の瞬間に、するりと馬を左右に振って見せた。
 引き絞った弦から矢は放たれたものの、それは見事に回避されてしまった様だ。
 あまり激昂しないタイプの男装の麗人だけれど、これには面子が潰された気分になったのか、俺が待てと言うのも耳を貸さずに馬を強引に加速させる。
 けれども、

「あっ」
「ベローチュ?!」

 剣を馬上で振り込みながら馬を寄せたベローチュが、ブルカ騎士と斬り結んだ。
 何とか数合の撃剣は激しく渡り合ったものの、どうやら相手のブルカ騎士の方が技量が上だったらしく、剣を見事に弾き上げられてしまったのだ。
 そうして敵の攻撃をかわしけれない状態になったところで、ブルカ騎士は激しく剣を振り抜いた。

 敵の攻撃を喰らったのか、あるいは避けるために体を倒したのか。
 男装の麗人はそのまま姿勢を崩してしまい、弾き飛んだ剣の被害が蛸足美人に向かったらしいのを背後で感じた。
 ギャンという変な金属音が聞こえたかと思い背後を振り返ると、カラメルネーゼさんの重武装甲冑にけたたましく当たったらしい。
 彼女はその驚きと衝撃で馬足を大幅に落としたのか、闇夜の中に吸い込まれてはるか後方に消えた。
 いよいよ前面のブルカ騎士を追いかける事が出来るのは俺だけになってしまった。
 男装の麗人もいつの間にか姿勢を崩したままの状態で、脱落しつつある。

「糞ッ垂れめ待ちやがれ!」

 だが速度を落としたのははブルカ騎士も同じだ。
 男装の麗人が稼いだこのわずかなチャンスを無駄にしない様に、馬ごと俺が体当たりをかましてやったのである。
 重たい甲冑を身に着けていたブルカ騎士は、たまらずその瞬間に落馬した。
 俺もその甲冑に抱きつきながら転がり落ちたので、したたかに地面に叩きつけられる事になる。

「ぐはっ」
「かはっ、おのれ……逆賊め!」

 ただしまともな防具を身に付けていなかった俺は、身軽に土の上を転がって受け身を取る事が出来た。
 具合が悪かったのは転がる途中で岩か石か、硬いものに脇腹をぶつけてしまった事だけれども、まだ戦える。

 挺身隊突入時に持っていた手槍はどこかにいってしまった。
 よろめきながら立ち上がる俺は、剣を抜いて身構える。
 転がった体を強引に引き起こそうとするブルカ騎士は、重たい甲冑の一部を放り投げる様にして脱ぎ捨てた。肩パットみたいなものが動きを阻害するらしい。
 脱げば身軽になって強くなるとでもこの男は勘違いしているのか!
 俺は彼が防具を解いて楽になる時間など与えないつもりで駆けだした、のだが。

「スキだらけだぞ!」
「ぬかるかっ」

 懐に入り込む様に斬撃を走らせたかと思うと、体を入れ替えながら直ぐに振り返る。
 剣は確かにブルカ騎士の甲冑を叩いて一撃を入れる事が出来たが、逆に敵の一撃が俺の肩を掠った。
 先ほどぶつけた場所を斬られた様だったが、すでに痛みの感覚がなくなっていたのでどういう状況かわからない。
 チラリと剣の先を見れば刃こぼれをしていた。
 胸甲を激しくたたいたせいで、ものの一撃で切っ先を駄目にしてしまったらしい。

 ブルカ騎士の側から今度は走り出して来て、剣を俺の懐に突き刺そうと手を伸ばす。
 受け流しながら体を当てに密着させると、すぐにも足を掛けて転ばそうとした。
 だが相手の防具が硬すぎて俺の足を差し入れて転ばそうとしてもビクともしなかった。
 あわてて剣を走らせて距離を置こうとしたところに、金属鎧の防具を付けた状態でローキックをかまされてしまった。

 いっでぇ!

 俺は防具を付けていないので、とても痛い。
 痛いどころの騒ぎではなく、その状態で敵の剣が迫って来るのを見て思わず逃げ腰になってしまった。
 これは強い。強いと言うかここで死んでたまるかと言う信念めいたものを感じる。
 しゃにむに剣を振り回して俺を殺そうと近付いてきたブルカ騎士に向かって、どうにかスキを見て頸根に剣を走らせたけれどもこれも空振りだ。
 しかし体力の損耗著しいのは敵も同じだ。
 ふらついた体でぶうんと剣を振り回した敵を見て、俺もその剣を巻き上げてやる。
 しめた! と思った瞬間、左手を差し出して、こちらに何かしようとしている姿が飛び込んで来た。

「ファイッ!」

 何を叫んだかと思うとファイアボールとでも言いたかったのだろう。
 変に簡略化されたその呪文から拳ほどのサイズで火球が出現したものだから、俺は数歩背後に飛び退った。
 次の瞬間に剣の腹でどうにかファイアボールの一撃を逸らす事が出来たのだが、大失敗だった様だ。
 しかも火の粉は俺の服に飛び火して「あっち、ほげぇ」と俺は暴れ狂う様に服を引きちぎって脱ぎ散らかした。

「てこずらせるな、死ねえええ!」
「死んでたまるかあああ!」

 ほとんど絶叫だろう。
 地面を叩きつけるファイアボールで土煙が立ち上ったかと思うと、次の瞬間には暗闇の中にぬっと迫るブルカ騎士の顔があった。
 薄暗い中で妙に眼だけがギラついていた。
 武器も持たない敵が両手を広げて俺に組み付いてきたものだから、体を捻る様にして敵の勢いを逸らし、あべこべに地面に叩きつけてやった。
 そのアゴに勢いを付けて掌打を見舞ってやる。

「ぐはっ。ほがっ。どはっ……」

 一撃、二撃と敵が反撃する気を失うまで何度も叩き込んでやると、さすがに敵の抵抗は無くなる。
 そして俺の手も感覚がなくなったところで、そのままべったりとブルカ騎士に抱きつく様にして脱力してしまった。

「おーいだれかー、俺を助けてくれ。喉が渇いたよ……」

 ああ。何だか体の血が足りないような気がするけど、気のせいじゃないと思うぜ。
 たぶん肩以外の場所も気が付かないうちにやられたような気がする。
 ごろんと体を転がしてブルカ騎士から引き離れると満点の星が輝く夜空を仰いだ。
 いや、空は満点の星などひとつもないどころか、どす黒い雲が夜空を覆っているではないですか。

「こりゃあ、もうすぐ秋雨が来るな。もう少し早く降り出していれば敵を探すのにだいぶ苦労したかな?」

 凄まじい難敵と図らずとも一騎射ちをする事になったが、どうにか勝てました。
 やべえ脇腹が斬られているらしい。ここは前にも何度か斬られたから、傷口かプロレスみたいにすぐ血が出やすい場所になってるんじゃないのか?
 ブルカ騎士の黄色いマントを強引に引きちぎった俺は、ボロ布になったそれで衛生面も考えずに出血個所を抑えた。

「誰か、ベローチュ……」

 だんだんと意識が薄れていく。
 少し遅れた場所に男装の麗人やカラメルネーゼさんが居たはずだが、怪我はしてないよね?
 脇腹を抑えておくのもおっくうになった俺は、少しずつジンジンとし始めている肩の具合を見ようと首をひねったけれど、首が重たくて動かない。

 最悪だ。
 どうすんだよこれ、誰も助けに来ないんですけれど。
 本気でみんなどうなったっていうんですかね……

「たす、けて……」

 かゆうまである。

第七章はもう少しで終わるんじゃ。
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