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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第7章 戦場でお会いしましょう

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198 セレスタへ 前編


 スルーヌまでの移動を五艘の幌付き小舟で終えたところで、俺たちは河岸から上陸した。
 現在この村を守備するために在中していたクワズ領主のエクセルパークというお貴族様が、俺たちを出迎えてくれた。

「義姉上、いよいよ有力諸侯による連合軍の結成ですね」
「うむ。本来であればお前もリンドルへと連れていき、お披露目をするいい機会であったろうが。残念ながらクワズ騎士爵への招待はこの会談に含まれていなかったようだ」
「ご心配には及びません。義理とは言え俺は義姉上の弟ですから、代表者として義姉上がわれらが領内から向かわれるのであれば十分ではないですか」
「すまんの。この戦争が終結した暁には、そなたにも義父上、義母上にも何かを差し出さねばならぬであろう。許せよ」

 小さな体躯に騎士然とした甲冑を纏った男エクセルパーク卿は、確か女村長の義理の弟にあたる人物だと道中に説明されていた。
 彼女にとって最初に嫁いだ夫の末弟で、貴族軍人を代々輩出した家柄にありながら、そうは見えない華奢な印象のある青年騎士だった。
 年齢はどれぐらいだろうか。
 初婚の際に出来た義弟という事を考えればそれなりの年齢だと思っていたし、アレクサンドロシアちゃんとそう違わないと想像していたのだが、どうやらギムルよりやや上と言った方がいいのではないか。

「もったいないお言葉です。必ずこの戦争で武功を上げて見せます!」
「うむ。ダリエルパークの様にはなるなよ」
「心得ました……ところで」
「ん?」

 俺とタンヌダルクちゃんで、大人しくはしていたけれど船酔いで青い顔をしていたニシカさんを介抱していたところで、青年がふと俺たちの方を見やって質問していた。

「こちらに控えている騎士さまは……」
「そうであった、お前にお兄ちゃんを紹介しよう。お兄ちゃん、ちょっと来てくれるか?」
「お兄ちゃん、と言うと例の……?」

 手を止めて俺は野牛の奥さんとともに、青年エクセルパーク卿の前に出た。

「わらわの夫シューターとその妻タンヌダルクだ」
「あ、どうもこんにちは。サルワタ騎士シューターです。こちらは奥さんのひとりタンヌダルク」
「はじめまして、女神様の守護聖人にしてサルワタ騎士シューターの第二夫人、タンヌダルクでございます。生まれは誇り高きミノタウロス。族長タンクロードバンダムの妹です」

 ふたりそろってペコペコと頭を下げると、エクセルパーク卿はその優顔に似合わぬ厳しい顔をして、品定めをする様な態度で返事をする。

「お初にお目にかかる。義姉上がご再婚されたと聞き及んでね、そのお相手が大変気になっていたんだよ。なるほど全裸を貴ぶ部族の末と聞いているが、君は戦士の様だね」
「いかにもみなさんには戦士と認識されておりますねえ」

 当初このファンタジー世界にやって来た頃から戦士と確かに言われていけれど、あの頃はバイト戦士というのが実態だった。
 今は仮にも数度の死線を潜り抜けてきた自負もあるし、立場としても騎士なのだから、これはもう戦士と呼ばれてもきっとおかしくはないはずだ。

「うん。体は確かに鍛えている様だし、義姉上の護衛役から成り上がったと言うのもわかる気がするが……果たして辺境不敗というのはどうなのかな?」
「旦那さまはですねえ。わたしの兄さん、ミノタウロス最強と言われたタンクロードバンダムを死闘の末に破った事があるのですよう」
「ほう、タンクロードバンダムさんをか……」

 品定めの最中にタンヌダルクちゃんが言葉を添えてくれたものだから、俺を観察する視線が外れて野牛族長の方に注目が集まった。
 綺麗な歯列の白さを強調する様に、タンクロードがニコリと笑って見せる。

「フンス。この男の実力は俺が保証するものであるが、何か不満があるか」
「い、いえ。あなたがハルバートをひと薙ぎすれば兵士の命がたちどころに刈り取られた事は記憶に新しいです。それにしてもタンヌダルク奥さまが第二夫人という事は、義姉上は当然、第一夫人という事でしょか?」
「いいや、わらわは第三夫人だ」
「第三夫人?! 義姉上ほどのお方がですか!!」
「そうだの、わらわも大年増の未亡人だった故にそれぐらいの分別はある。しかしそんな事はどうでもよい!」

 アレクサンドロシアちゃんは言うべきは言ったという態度で俺にチラリと目配せをして来た。
 義弟くんのエクセルパーク卿はかなりの不満顔で俺を睨み付けている様だったが、俺としてはそんな事を気にしている場合ではない。直ぐにも俺から男装の麗人へ、男装の麗人は女魔法使いへとアイコンタクトのリレーをするのである。
 奴隷教育が行き届いてきたのか、女魔法使いが「行きますよ後輩」とモエキーおねえさんにひと声かけて、直ぐにも女猟師マイサンドラが引き出されてくるのだった。

「わらわがこのサルワタからゴルゴライにかけての広域を支配下におさめるに至り、物資の運搬には街道では無く河川を利用する事が出来る様になったからの。それ故、以後はこの河川を交通の要として、兵士と物資の輸送を行う事にする」
「ごもっともです。関所をお作りになる様お命じになられたのは、その様な配慮があったのですか」
「しかしわらわが不在の間にまたぞろあのオレンジハゲの好きなようにされてはたまらん。開戦と相成るまでこの関所周辺を監視させるために、この女を置いておく」
「こちらの女性は?」

 視線を向けられた先に、引き立てられて来たマイサンドラさんの登場だ。
 野趣味溢れるニシカさんの女猟師スタイルとは違って、胸の大きく開いた貫頭衣に革のコルセット、スリットの入ったロングスカートという出で立ちの彼女は、いつもの通り横柄だ。

「勝手にお尻を触らないでよ。女に触れられたって嬉しくもなんともないんだから」
「……この方もシューター卿のご夫人ですか?」
「ええと、俺の妻の従姉にあたるマイサンドラと言って、」

 これ以上マイサンドラを自由にしていると偉そうな態度でエクセルパーク卿に接してしまいそうだ。あわてて俺が説明を加えようとしたところ、男装の麗人がずいと前に出て勝手にマイサンドラについて説明をはじめてしまった。

「この者はありがたくも辺境不敗の守護聖人たるご主人さまの忠実な下僕、マイサンドラと申します。工作員の訓練を受けた猟師でありまして、ご主人さまの命令には絶対服従ですので使えますよ」
「わっ、わたしが下僕ってどういう事よ」
「黙りなさい! さあ教えたとおりにするのです」
「くっ……」

 マイサンドラが忌々しそうに男装の麗人を見上げながらも、片膝を付いて貴族の礼を取って見せるではないか。
 ちょっと不思議な風景だったので俺とタンヌダルクちゃんはおやという顔をしてしまった。

「ご主人さまの忠実な下僕、マイサンドラです……」
「そ、そういうわけですので騎士シューターの代理人として、この者を関所の守衛官に任ずる事に相成った。野牛の兵士とパトロール隊を作って、周辺の森や河岸などを徹底的に警備させます」

 恨めしそうな顔をしたマイサンドラをこれ以上黙らせておくのが難しそうなので、俺はさっとその事を説明して、河岸の桟橋を見やった。

「領主さま、ここに関所を設けたんですよね」
「そうだぞお兄ちゃん。今はトカイめが焼き落した橋の再建作業をやっていて、大工が周辺集落から集まっておるでな。ゴルゴライのものは戦争に備えて帰還したが、今ならスルーヌ周辺集落とクワズの大工がアテに出来る」
「それならばエクセルパークさま、ここに監視台を作っちゃいましょう」

 いち度は焼き落された橋が、ひとまず応急修理という形で再建されてはいた。
 トカイも焦って交通路を遮断したのだろう。もともと渡し板だけを焼いたにすぎないので、俺たちを妨害した後に再建しやすい様に、手加減したのかもしれない。
 しかしその事が油断に繋がったな。
 俺たちはスルーヌの橋とサルワタより連なる河川の重要性に気が付いたし、ここに関所を設ける事になったのだからな。

「今ここにあるのは監視小屋とは名ばかりの掘っ立て小屋です。弓や魔法で橋を攻撃される様になったら問題ですからね、少しでも遠くを見渡せるほうがいい」
「……なるほど了解です。シューター義兄上は軍学の心得もおありなのですね」
「いやあ、そんな事はないですよ」

 実際のところ、ニシカさんが舟の中で俺にあれこれとアドバイスしてくれたというのが事実だ。
 俺が褒められたのが妙に嬉しかったのか、俺たちの後列で待機していたニシカさんが、わが事の様にニヤニヤしながらエッヘン腰に手を当てると、ぼいんぼいんと重いお胸がよく揺れた。
 この星には重力がある確信。

「よう相棒、その際には視界の妨げになるだろう周辺の植え込みや木々も、伐採してしまった方がいいいぜ。あそこのデカい木とか、向こうの林は、伏兵されると厄介だ」
「可能であれば早い段階で石造りの監視塔と検問所にした方がいいな。どれぐらいの時間があれば出来るでしょう、エクセルパークさま?」
「むむっ……」

 俺とニシカが思案しながらそんな事をエクセル卿に提案したところ、とても嫌そうな顔で俺の方を睨みながら唸っていた。
 何か俺、嫌われる様な事をしただろうか……

「今は戦時下であるから本格的なものを作る事は出来ないよ。石造りなんてもっての他だ」
「はい、心得ています。なので、屋根はもう板張りの上に藁ぶきでいいと思います。防御力の観点で、側面だけは何とか石を土壁に入れる形で、こう……」
「監視塔は仮のものでいいんじゃねえか。木で作っておいて後日大きくて立派な」
「しかし、ぐぬ」

 なおも微妙な顔で俺を睨んでいるところを見ると、やはり俺が気に入らないのか?

「エクセルパークよ、夫は戦場で負けの知らない辺境不敗の優れた戦士だ。身内贔屓に聞こえてしまうかもしれぬが、歴戦の戦士の言葉と思って、出来るだけ聞いておいてはくれないか」
「それはもう、義姉上のお言葉ならば間違いありません。すぐに手配します」

 何だこの変わり身は!
 気に入らねえ……
 そんな事を思っていたら、さっそく横柄に足が生えて歩いている様な女マイサンドラが動き出した。
 俺の領主奥さんにペコペコしているエクセル卿の肩を強引に掴むと、そのまま力づくで振り向かせたのである。

「とりあえず鼻たれが言ったように、関所の周辺の木々は全部伐採しなさい。あそこに小高い丘があるでしょう、あそこに監視塔をひとつ。それから河岸の反対側にもひとつ。もうひとつが監視所の隣ね」
「み、みっつもいるのか」
「当然だわ。それぞれの監視塔はそんなに高くなくていいから、どうせ後日は硬くて長くて立派な石塔に立て直さないといけないでしょう。それなら相互に監視出来るわ」
「それだと二度手間に……」
「騎士の癖にもやしみたいな人間が口答えをするんじゃないわよ わたしを誰だと思っているの?」
「きっ騎士シューターの奴隷では……」

 さっそく監視塔と検問所の建設場所について上から目線で命令をはじめたマイサンドラである。
 まあ放っておけばいいか……

「奴隷じゃないわ!」
「し、失礼しましたマイサンドラ夫人……」
「そうじゃないわ! 部下よ部下! 夫人あっちの黄色い長耳よ!」

 最後まで恨めしそうに睨んでいたエクセル卿とマイサンドラに、スルーヌ領の事は任せるとしよう。
 こうして俺たちは、馬とスルーヌの村から摘発した荷馬車の列に分かれて乗り込み、陸路からゴルゴライを抜けてセレスタの街を目指す。

     ◆

 太陽が頂点に上り詰めるよりも前にゴルゴライの村に到着した俺たちは、少し早めの昼食を執る事になった。
 ここから先は元のルートと同じに迎えの軍船を使っていったんセレスタに向かう。
 セレスタの街では男色男爵がアレクサンドロシアちゃんの到着を待っているはずだ。
 ふたりの辺境有力領主が同道して往還を南下、さらにはここでマタンギの騎士爵が合流するという運びになっているのだった。

  俺とアレクサンドロシアちゃんは馬を二頭並べて驚いてしまう。

「もはやゴルゴライは、見る度にその姿を変えておると言えるのではないか」
「まったくですねえ。この前来た時は村の防風林の外を掘っ立て小屋が並んでいる様な感じだったのに」
「いくつかの商会が店を出している様なので、それ向けの家という事かのう」

 それが今は拝み小屋とは馬鹿に出来ない様な立派な家屋がいくつも並んでいるではないか。
 石造りの立派な建築物こそ見当たらないが、西部劇の映画に出て来そうな木造建築の家屋が、それなりに林立している箇所まであった。
 それに防塁だ。
 全ての外縁部に防塁を造る事は当然出来ないだろうけれど、ブルカ方面からの街道口には、敵の騎兵突撃を警戒する様にしていくつかの防塁が設置されて、それ以外の個所にも防柵を巡らすなどいよいよ軍事要衝の名に恥じない雰囲気を醸し出している。

 村の入り口で出迎えに現れた修道騎士スウィンドウ卿を見かけると、アレクサンドロシアちゃんが思った事を口にする。

「レンガの家まで見かけた様であるが、あれは建設に手間がかからないからであろか。いやしかし感心した」
「お褒めの言葉、ありがとうございます。時間があればさらに堅固な守りを敷けるのですが、今はこれが精一杯ですね」
「当然心得ておるよ。ここは戦争が終結した後も軍事要塞であり続ける必要はない」
「ははあ。ではアレクサンドロシアさま、シューターさまにおかれましてはお食事の準備が出来ておりますので、領主館の中へ……」

 時間に限りがある中で情報共有しなくてはいけない。
 急ぎ足で馬を降りた俺たちは、そのままゴルゴライの領主屋敷に吸い込まれて行って、簡単な食事を片手に報告会に移行しなければいけない。
 ちなみに成人すると誰もが軍人訓練を受けるのが当たり前のミノタウロスだけに、タンヌダルクちゃんはたぶん俺よりも馬の扱いが様になっている様だった。

「タンヌダルクちゃんは馬上で武器を扱うのは得意かな?」
「胸を張って言えるほどではないですけど、槍弓の扱いは出来ますよう」

 いやいや、十分におっぱいは張っていますからゴクリ。
 そうして領主屋敷の食堂で着席する。
 食事マナーなどはそこそこにみんな手甲を外して指先を濯ぐと、すぐにも戻した干し芋とアヒル肉のシチューを食べた。
 ひよこ豆や玉ねぎ、ニンジンとブロッコリーが入ったそれは、言わば見た目と食感が肉じゃがそのものだった。
 何だか懐かしいものを食べながらタンヌダルクちゃんとニシカさんと、食卓の端で大人しく食事をしていると、

「いよいよブルカ辺境伯は、自領に隣接する周辺領主に対して寄騎の召集命令を実施した様ですね」
「辺境旗頭として召集命令の権利を行使したというわけだな」
「その様です。いくつかの領主はその召集を受けて戦士の動員を開始した事はわかっております。しかし全ての領主が応じる事はないでしょうね」
「当然だ。形式として、わらわたちが何かしらの軍事行動を行使するまで、あのオレンジハゲはこの召集命令を行使するのを待っていたはずだ。今回リンドルの御台マリアツンデレジアが、シェーン子爵の名前で有力諸侯を集めようとする動きが、ひとつのキッカケになったのであろう」

 どうやらブルカ辺境伯が周辺領主をかき集めているらしい。
 リンドルの発起で俺たちやセレスタ、オッペンハーゲンなどが集まろうとする動きに対する対抗策だろう。

「蛮族の大領主もこちらと同じことを考えているのですねえ、旦那さま」
「実際にどこまでの領主たちを当てにしているかはわからないぜ、ダルク」
「そうなのですかニシカさん?」
「オレさまは詳しくねえが、なあシューター。辺境には数多くの軽輩領主たちがひしめきあっているだろ? 騎士爵といえば村長と同じ爵位を持った貴族であるけれど、たかだか人口数百の農民を抱えている領主の出せる軍事力などは知れているんじゃねえか」

 そう言う場合、村長である騎士が馬を連れていて、後は数名の護衛の戦士を引き連れているというのがやっとなのではないか。

「まあそうですよね。騎士とその郎党のパッケージを送り出して終わりなんじゃないだろうか」

 実際、アレクサンドロシアちゃんが以前と同じ様な立場であれば、こういう召集命令に送り出せた戦力などはたかがしれていただろう。
 アレクサンドロシアちゃん本人と、村長屋敷に詰めていた若い五人の戦士がその役割だ。
 肉じゃがみたいなシチューにパンを浸して食べつつ、どこの領主がどうやらブルカ伯の命令に応じたとか、あそこの領主は動員兵力が数百に及ぶとか、そのあたりの会話をスウィンドウ卿の報告で聞き取った。

「現在わかっている範囲での推定で、ブルカ辺境伯軍の動員力はブルカ領軍八〇〇〇余、周辺領主連合が二五〇〇余、あわせて万を超える軍勢になる事が予測されています。アレクサンドロシア卿がお戻りになるまでに、ブルカ辺境伯に付いた領主がどの程度のものであるかは、あらかた情報が伝わってくる事でしょう」
「うむ。その点には期待しておるが、情報に惑わされる様な事があってはならん」
「かしこまりました。偽情報に踊らされぬように留意しつつ、情報収集を継続します」

 そして俺たちは昼食を取り急ぎ済ませると、ゴルゴライの村から少し離れた場所にある河岸の港へと到着。
 セレスタ領の軍船を見つけて、いそいそと乗り込むのである。

「ニシカさん、今度はもう暴れないんだぜ」
「それもこれもシューター、お前ぇのお陰だぜ。朝に酔わないという魔法のおまじないをしてもらったおかげで、ぴんしゃんしているからな」

 だったらそれは何よりです。
 俺がそんな風にニッコリしていると、ニシカさんは平気な顔でセレスタの軍船に乗り込んでいくのだった。
 タンヌダルクちゃんと軍船に乗り込んだところを振り返ると、最後まで河岸の桟橋でアレクサンドロシアちゃんが、修道騎士イディオ卿と傷だらけの顔を持つ傭兵モンサンダミーと、何事かの情報確認めいたことをやっているのが見える。

「そう言えばモンサンダミーは、アレクサンドロシアちゃんの元部下をやっていたんだっけか」
「はいご主人さま。十数年ぶりの再会という事で、旧交を温めているところでございます。あの者はしばらくゴルゴライ周辺で作戦に従事してもらう予定なので」
「作戦?」
「敵の傭兵の動向を探らせます。彼と彼の仲間は傭兵歴の長い人間が多いですから、上手く溶け込んでくれると思いますよご主人さま」

 ニヤリとした男装の麗人は、優雅な動きで右手を胸に置くと貴人の礼を取って見せた。
 胸を置いた瞬間にぐっと押しつぶされるそれが破壊的だ。
 どうやら引き続きモンサンダミーはここに残るらしいね。女領主の元部下で今は俺の部下か。
 いや、男色男爵の手の者と考えた方がいいかもね、男装の麗人も含めて……

「これからも旦那さまの事をよろしくサポートしてくださいよう」
「はい奥さま!」

 ようやく旧交を温めつつ情報交換が終わったらしいアレクサンドロシアちゃんが、赤いドレスの裾をつまみながら小走りにやってくると「待たせたなお兄ちゃん」と口元をほころばせてくれた。

「よし船長、船を出しなさい」
「はい隊長!」

 女領主の乗船を見届けたところで、男装の麗人はこのセレスタ軍船の船長さんに合図を送っていた。
 かつては妖精剣士隊の隊長のひとりだったベローチュに、強面のヒト族のおじさん船長がうやうやしく頭を下げているではないか。

「よし、出向だ。ロープを外せ、帆を上げろ!」
+注意+
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