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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

間章 サルワタ動乱編

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閑話 アレクサンドロシアの野望 風雲禄 9

投稿後、一部内容に加筆修正を加えました。
「あ、アレクサンドロシアさま。いったいこれから何がはじまるんです?」

 女にしては大きすぎる体を丸めたエレクトラが、心配顔でそう質問をして来た。

武力解決手段(フェーデ)だ」
「ふぇっフェーデですか……いったい何でまたこの様な場所で。相手は誰なんです……?」
「ああ、マリリンマーキュリーと言ったか。あそこに見えるオレンジハゲの息子だの」

 場所はわらわたちが飲食をしていた酒場を出て直ぐのところ。
 何がはじまるのかと酔客たちが興味津々という格好で、こちらをぶしつけに観察している姿が見えた。
 そんな見物人たちの事などは気にしている場合ではなく、突然わらわがこんな事を言ったのに驚いているエレクトラやダイソンは眼を白黒させているのだ。
 タンクロードだけは状況が理解できず「フェーデとは何だ?」とダイソンに質問をしていたが、まあよい。

「何、酒席の余興をするだけの事だ、何も動ずる事はない」
「しっしかしですよ、あのオレンジ髪のハゲってどこかで聞いたような風体……あっ、みっミゲルシャール! ブルカ辺境伯じゃないですか!!」
「ばっかエレクトラ声がでっけぇぜ、ハゲとか言ったら無礼打ちにされるじゃねえかっ」

 わらわの回答に、大股で酒場の中から出てきたミゲルシャールに向かって、エレクトラとダイソンが言い合いをしていた。
 ミゲルシャールめは、自分たちにあてがわれていた個室から部下たちを引き連れて、早速にも余興にかこつけた勝負をするための準備をしていたらしい。
 一方の当事者はわらわであるが、もう一方の当事者はミゲルシャールめの息子、マリリンマーキュリーという若者である。

 いったい何で武力解決手段の勝負をするのかと思えば、マリリンマーキュリーの手に短弓がふたつ握られていた。
 なるほど、血を流さず剣も使えないという勝負になるのだから、何かで腕を競わなくてはならぬ。
 酒の呑み比べなどを口にされてはわらわも困ってしまうところだったが、これならば堂々と相手になってやろうではないか。

「弓か。それで射的をするというのだな」
「勝負は簡潔に行こうぜ。通りに置いた目標に向かって、弓を射かける。先に当てた方の勝ちだ」

 ああそうだと大きな口をニタつかせたミゲルシャールめは、風に揺れるオレンジ髪をかき上げながらそう返事をした。
 大きく後退した額に髪がかかると、どうも気になるらしい。
 いっそその髪を丸めて坊主にしてはどうかと思ったが、今は関係の無い事なので黙っておくことにする。
 少しでも髪がある事が自分が現役の施政者なのだと信じ込ませる秘訣なのやも知れぬ。お兄ちゃんにも将来の事を考えて伝えておくことにするか。

「的は何にするつもろなのだ」
「おう。それなんだがな、」

 ミゲルシャールめは書記官から何かの的を受け取った。
 見ればその書記官の男は、会談の折にも同席して弁舌を振るっていた男である。酒が入っているから少し赤い顔をしていた。
 だがまさか自分たちと同じ酒場にサルワタの人間がいるとは思いもしなかったのだろう。
 よほど驚いた顔をして、こちらをチラチラと見やっているではないか。
 だが今はそんな事はどうでもいい。
 問題はミゲルシャールめの手に握られているものが、わらわを一段と不愉快にさせる。

 ヤツの手には人形が握られていた。
 その人形は、わらわにとっても馴染みあるものであった。
 ゴブリン人形である。

「その様な者をどこから手に入れてきたのだ」
「さる商人がな、最果ての片田舎にはゴブリンの木彫り人形を作っている集落があるというじゃねえか。これがなかなか精巧な細工であったので買い求めたんだぜ」

 これほど手の込んだ人形が作れるとは、田舎の村人というのは暇でしょうがないらしいな!
 そんな事を口にして、豪胆に笑って見せたミゲルシャールめは、そうしておいて短弓をこちらに投げて寄越した。
 通りのひとびとは、ここで弓の射かけ勝負が行われるとわかって、わっと人垣が割れる様に引き下がる。
 当たり前のことだが、ここで的を外れた弓に怪我を負わされてはかなわないと思ったのだろう。

「そ、村長さま大丈夫ですか? 何でしたら俺が弓で狙いましょうそうしましょう」
「なっ何ならあたしが変わりましょうそうしましょう。あたしは細剣が一番得意ですが、弓も多少なら……」
「フンス、ここは誇り高きミノタウロスの族長が、弓勢もまた一族最強である事を見せてやらねばなるまい」

 部下たちは好きな事を言って並べるが、わらわは自然と口元に笑みがこぼれた。
 馬鹿め。
 わらわに弓の勝負を仕掛けたというのは、恐らくだがヤツの側近だか斥候だかをしているという、ツジンからの情報に基づいての事だろう。
 わらわが馬上にて槍を振るう姿を知って、槍の勝負は避けたという事だ。

「安心せよ、わらわは騎士だぞ。剣馬槍弓の術、これは騎士の基本的な心得、出来て当然だ」
「ほ、本当ですか? 負けたらどうなってしまうんでしょう俺たち」

 心配性のダイソンは、エレクトラに「あんたが代わりにやんなよ。あんたが負けたらあんたが責任をとれば済むんだから」と背中を押されて口を開いた。
 確かに負ければ負けた当事者に責任をかぶせて知らぬ存ぜぬと逃げる方法もあるかもしれない、だがそんな事をわらわは望まない。

「騎士のたしなみというのなら、弓でいんだな?」
「わかった。勝負は弓で構わないが、勝負というからには何を賭けるつもりでおるのだ」
「そうだな、息子が勝てば、お前ぇんところで捕まっているマテルドを返してもらうというのでどうだ。ん? あれでマテルドは一族の者だからな。代わりにお前ぇが勝てば、マテルドの生殺与奪は問わねえって事で、殺してもらってもかまわんぜ」
「それではわらわがこの勝負に勝利しても何のメリットもないではないか」
「ふうん。そうだな、じゃあこうしようぜ。お前ぇが勝ったらひとつ俺の持っている爵位をくれてやる。そうだな、お前に縁のある領地がいいだろう。ツダなんてどうだ?」

 爵位をくれてやると口にしたミゲルシャール。
 ツダはわらわがカーネルクリーフどのと騎士修道会との同盟のために会談を行った場所である。
 そこまでの情報を得ていたという事実に空恐ろしいものを感じるところだが、何より腹立たしいのはこの者の息子が勝つこと前提で大盤振る舞いの発言をしている事だろう。
 だが、爵位ひとつとマテルドの首というのは、割りに合う駆け引きかどうか、この場この瞬間に判断するのは難しいものがあった。

「ツダの騎士爵位か。フン……」
「あ、アレクサンドロシアさま。大丈夫なんですかい?」
「ここまで来て引き下がるという選択などないわ」

 酔ったダイソンは、それでもわらわを心配そうに見ながらそんな言葉を投げかけてくれる。
 しかし、このマリリンマーキュリーなる男とミゲルシャールの意図を探ると言う意味では悪くない。
 酒の余興だと後で不意にされても、飛び地の領地など拝領して下手に領地経営で苦労する事を考えれば、惜しくないとも言える。
 どのみち、この余裕の態度を見れば、マテルドを後から始末するつもりがミゲルシャールめにはある様な気もする。
 考える事は大切だが、隙を見せるわけにはいかない。

「フン、いいだろう」
「キャシャシャシャッ。いいねえ親父よう。俺が勝つのは当然だから、マテルドちゃんは俺のモノになるって寸法だね。けど俺はせっかくなら、アレクサンドロシアちゃんの身代が欲しいんだぜえ?」
「…………」

 この男、よほど息子の弓の腕に自信があるのだろうか、大口で破顔させてこちらを見やるのだ。
 そしていかにも馬鹿息子なマリリンマーキュリーなる道化男は、わらわをあろう事か「アレクサンドロシアちゃん」などとまた言うのである。
 ちゃん付けで呼んでいいのはお兄ちゃんだけだ!

「その大口を後悔させてやる……!」
「フンス、ご領主よ大丈夫であるか?」
「問題ない。鱗裂きのニシカほどではないが、わらわとて戦場を駆けた騎士である。二言はない!」

 互いに矢を受け取りながら、ゴブリン人形の置かれた場所から距離を置いて離れて行く。

「ようし。まずは勝負事を見届ける証人を立てる事にしよう。だけどここには女神様の代理人たちはいねぇし、連中はどういうわけか売女ばかりを贔屓にして信用ならねえ。だからこの勝負の証人は、この俺と酒でご機嫌のお前ぇたちみんなだ!」

 何が始まるんだ? と興味津々の酔客たちを相手にミゲルシャールめが大声で怒鳴った。

「おお、フェーデをやるのか?」
「武力解決手段なんて、俺生まれてはじめてこの眼で見るぜ」
「という事は、あの姉ちゃんと変な顔の兄ちゃんはお貴族さまなのか。おっかねえ」

 すると酔客たちが騒いではやし立てるではないか。
 その場の人間をすべて証人にするというやり口は、なかなか狡猾だ。
 ここはブルカとゴルゴライとを繋ぐ街道の宿場村であるし、シャブリン修道院の御膝元である。
 この場にいる酔客たちも多くがこの宿場村を訪れた旅人であろうし、そうでない者も昼間は旅人たちを相手に商いをしている連中のはずだ。
 ここで起きた勝負の事は、間違いなく後日、うまく情報を伝播してくれるのであろう。

 まさかこの勝負を計算づくで仕掛けていたとは思えないが、少なくともブルカ伯という男は狡猾にも上手く利用してやろうとでも思っているらしかった。

     ◆

「キャハハ、まずは二〇歩離れたところからはじめるぜ?」
「フン、他愛ない」

 勝負の仕方は非常に単純だ。
 腹立たしくはあるが、わが領内で造られたゴブリン人形を的にして射つ。
 最初は二〇歩からはじめて、二五歩、三〇歩と離れながら、どちらが最初に矢を的から外すのかを競うというものだった。

「ではまずわらわから、手本というものを見せてやる」

 軽く深呼吸をするとまずわらわから弓を番え、そして放つ。
 この程度の距離ならば外す方がどうかしているというものだ。
 当然の様に直線的に射出された矢は、わが村で造られた民芸品に吸い込まれ、トスンと人形を揺らした。

「いいねえ。じゃあ今度は俺だぜ。キシシ……」
「御託はいいから、早うしろ」

 やや痩せ身の少し猫背の男だと思っていたが、弓弦を張る瞬間だけはしっかりと姿勢を正して見せたマリリンマーキュリーは、少し真面目な顔を作って矢を射ち放った。
 パスンと小気味よく扱けたままの人形に刺さって、巧い具合に民芸品を立ち上がらせるではないか。
 おうおう、やるじゃねえかと外野がはやし立てる声が耳にうるさかった。

「ちっ、この程度は勝負を仕掛けただけあって当然か」

 思ったよりも弓の扱いが巧みと見えて、わらわの部下たちは固唾を呑んでその有様を目撃していた。
 そして次は二五歩の距離で互いに弓を放つ。
 これもわらわは難なく射止めて見せ、マリリンマーキュリーもその瞬間だけは真面目顔を創り射抜いた。
 余興とは言え、負ければ大罪人マテルドの生殺与奪を奪い合うのだ。

 二五歩の距離を狙う長さになった辺りで、さすがにわらわも緊張を覚えはじめた。
 酒は深くまでは呑んでいなかったけれども、やはり弦を引く腕がどことなく震えるような気がして、気分を落ち着けようと何度も深呼吸し、放った。
 矢は弧を描いてシュンと駆け抜けたが、そのままゴブリン人形に無事突き刺さった。
 マリリンマーキュリーも、下品な笑い口を引っ込めて矢を放ち、胴体を射抜く。

 そして次はいよいよ三〇歩の距離という距離になったところで、またぞろ外野が騒ぎはじめた。

「思ったより射的というのも盛り上がらないもんだべ」
「どうせふたりとも弓が上手いんだったら、いっそ四〇歩から射かけ勝負をすりゃあいいんじゃないかね」

 ちっ、余計な事を口にする酔客どもである。
 そうすると鷹揚に構えて勝負を見やっていたミゲルシャールめが、その言葉を耳ざとく聞きつけてこんな提案をしてくるのだ。

「おう、証人のみなもああ言っている事だぜ。お前ぇら度胸を見せるなら、いっそ五〇歩の距離からゴブリン人形を射抜いて見せたらいいんじゃねえか? もちろん騎士のたしなみだってんなら当然可能だろうぜ。ん?」
「五〇歩!」

 その言葉にはさすがにわらわも驚いた。
 鱗裂きのニシカならばいざしらず、それほどの距離から人間でも無く、はるかに小さな的のゴブリン人形を射抜く事はさすがに難しい。
 そよぐ夜風に邪魔をされて、多少でもて元が狂えば間違いなく外れるだろう。
 だが、わらわには魔法がある事も事実だ。
 風を誘導して射抜く事は魔法発動体を持っていので多少難しいかもしれないが、やって出来ない事はない。

「キャハハハ、親父は面白い事を言うなあ! 俺は一向にかまわないけど、勝負をダラダラやるよりはいいんじゃねえかい。アレクサンドロシアちゃん?」
「ぬっ、その呼び方をわらわにするではないわ。背筋が気持ち悪い。いいだろう、わらわも回りくどいのは好かん!」

 挑発に乗ったと思われるのも癪だが、こんなところで無駄に時間を潰して明日に堪える様ではまずい。
 わらわは大股になりながら、言われた通りゴブリン人形から五〇歩先まで歩いてやった。

「だ、大丈夫ですか。落ち着いて」
「目標が小さいだけに、なかなか難しいんじゃねえですかい?
「問題ない、ご領主には魔法があるからな。精神集中して魔力をわが身に帯びたならば、風は必ず矢を目標に送り届けてくれるであろう」

 話しかけて来る部下たちの言葉に「まあ見ておれ」とだけ短く返事をする。

 矢そのものに風の弾を纏わりつかせるように射出するのだ。
 戦場で矢を使う場合、騎馬の上から急速に接近してその一射を放つか、あるいは集団の敵に向かって他の射手とともに面で捉えて射ち放つのが定石だ。
 前者であるのならば風は矢の向きを誘導させる様に魔法を使うし、後者ならば矢にスピードを乗せて遠くへ飛ばそうと使う。
 その両方を必要とする距離を上手くやってのけるのは、猟師として体格にも優れ、弓を使い慣れているニシカでなければ上手くは出来ぬだろう。

 けれども、こうして同じ様に五〇歩の距離まで歩み寄って来るマリリンマーキュリーの表情を見ていればわかる事もある。
 道化の顔を先ほどまでしていたこの馬鹿息子の顔にも、今は緊張の色が見えた。
 恐らく狙ってギリギリの距離であるのは、この若者も同じなのであろう。

「キッヒュー。この緊張感、たまんないね!」
「貴様ら親子がけしかけた事だ。外せば恥をかくのはそなたの方であるぞ」
「言うねえ。俺が外したら、あんたも大事な人質を失うんだぜ? マテルドちゃんは元気にしてるかい?」
「あの者は屋敷の土蔵に放り込んで軟禁してある。ポーション漬けにされてはいるが、まだ五体は満足であろう」
「殺しておけばよかったと後悔するために、残しておいてくれたんだね。アレクサンドロシアちゃんっ」

 わらわの心を乱す様な言葉を語り掛けて来るけれど、当然無視だ。

「せっかくだから、俺とお前で同時に射かけるというのはどうかな。売女アレクサンドロシアちゃん」
「フン、好きにせよ」

 同時に射かけるとなれば、先に当たった方が的のゴブリン人形を動かしてしまう事になる。
 その様な事をさせないためにも、魔法で勢いを付けて……

 意識を集中させる。
 そしてふう、ふうと二度ばかり深い息を吐き出してから「お兄ちゃん力を貸してくれ」と小さく呪文の様に唱え、そして指先に魔力を集中させる。
 隣でも化粧男のマリリンマーキュリーが眼を閉じて精神統一を図っている様だった。
 魔法でもあるのなら別だが、そんな事をしても心を落ち着かせるだけの行いだ。

 矢を番え、構え、そして放つ。

 右手にその力を宿して射出の瞬間、追い射ちの様に風の魔法を乗せるのだ。
 弓勢は力強く的に向かった。
 威力は申し分ない。
 後はその矢の勢いを殺さぬままコントロールする!

「「!!」」

 はじめ、こちらの矢がわずかの間にゴブリン人形に吸い込まれた。
 すると風の魔法を乗せた勢いで人形がカタリと弾き飛ばされたのであるが、にもかかわらず横にズレた人形めがけてマリリンマーキュリーの放った矢が刺し込まれたのである。

 おおお、と酔客どもの歓声があがる。
 大方この距離で弓を放つのは常識から外れている事なので、わらわとマリリンマーキュリーが時間差で矢を的に当てた事が驚きだったのであろう。

 だがこの時。
 無意識のうちに、わらわの近くで魔力が感じられるのを悟った。

「ど、どういう事だ、そなたは魔法使いなのか?!」
「いいやあ、俺は魔法をいくつか使えるだけの、どこにでもいるマリリンマーキュリーだぜ?」
「…………」
「それにしても、またおあいこかよ。つまんねぇなあ!!!」

 今度は六〇歩で勝負するかなあ。どうだいと声を掛けられそうになった瞬間の事である。
 目抜き通りを大きく分けて観覧していた酔客どもの中で、ざわざわと何かの口論めいたものが聞こえるのがわかった。
 どうやら警備の非番だった王国の兵士どもが騒いでいるらしい。
 いや、非番の兵士が上の者に通報をしたのだろう。

 気が付けば公正明大男のタークスワッキンガー将軍がのしのしと、ひとびとをかき分けながらこちらにやって来るのが見えた。

「何をやっているんだあんたたちは! 弓矢など持って、勝負事をしていたのか?!」
「ありゃ何だ親父どの、無粋な兄ちゃんが現れてよう?」
「がっはっは、来るのが遅いじゃねえか、ワッキンガー将軍!」

 問答無用で実用剣に手を掛けていたワッキンガー卿は、一同の前に躍り出るとその剣を鞘走りさせて、こちらに構えて見せるではないか。

「何をしているのか聞いているんだぞ俺は! 会談の最中は血を見せる事まかりならんと言っていただろう」
「そうじゃねえ。俺たちは酒席の余興でな、サルワタの売女騎士どのと射的ごっこをやっていただけだよ!」
「だからと言って騒ぎを起こすとは何事だ。国王陛下の代理人としてこの会談を預かっている俺に黙って、この様な事をするとは許さんぞ。そっこく解散しろ!」

 叫んで剣をぐるりと振って見せたワッキンガー卿に、オレンジハゲは「おおコワイ」とおどけてみせるばかりで、その馬鹿息子は不敵な顔を崩さないまま両手を軽く上げて降参というポーズをしてみせた。

「アレクサンドロシア卿、貴公もこの様な余興の相手などするものではない。俺の顔に泥を塗るつもりか」
「むむっ、わかっておるわ!」

 わらわたちも王国の兵士たちがぞろぞろと集まってきたので、部下どもを纏めて引き上げざるをえなくなってしまった。
 これでよかったんですよ、などとあわててこちらに駆け寄ったエレクトラに短弓を押し付け、早々シャブリン修道院に退散しようとしたところ、

「ツダの村をもらいそこねたね売女ちゃん、邪魔が入っちゃったから続きは戦場でね。マテルドちゃんによ~ろしく。キャハハハハ」

 気色の悪い若者はそう言い放ち、アッカンベーをしてみせるのだった。
 どっどこまでわらわをコケにするつもりか!
 戦場でその顔を見つけたら、親子ともどもに干し首にしてくれるわ……!
+注意+
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