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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第5章 俺たちは辺境諸侯を歴訪します

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125 黄色の谷底に若草は萌ゆるか

お色気回です。苦手な方は読み飛ばしてください。

 俺の名は吉田修太、三二歳。
 おっぱいエルフと夜中に裸で同衾している男である。

「呆れたもんだぜ。オレたちゃ全裸で牢屋に放り込まれたってのに、どうしてお前はそんなに堂々としていられるんだ」
「俺はこれがはじめての経験ってわけじゃないですからね。村でもブルカでも経験済みなんでねぇ」

 暗がりの中、俺は鱗裂きのニシカさんのたわわなな胸と天井を見上げながらそんな事を言った。
 ここはセレスタの街のどこかにある妖精剣士隊詰所の牢屋である。セレスタ領主の官憲さまに酔っ払いの乱闘と勘違いされてこのザマだ。
 けれども、そのおかげで狭苦しい牢屋の中は畳二畳ぶんほどの広さしかない場所で俺とニシカさんは密着していた。
 開けっ放しの小さな跳ね板窓から差し込んだ外の明かりで、呆れた顔をしたニシカさんの表情が見て取れる。

 俺は今たいへんありがたい事にニシカさんのむちむちした太ももで膝枕してもらっているのだ。傷だらけになった俺の体を気遣って、ニシカさんが寝ている様にと横にしてくれたからである。
 ありがとうございます、ありがとうございます。
 筋肉と脂肪のバランスが絶妙な飛龍殺しの眼帯女の太ももは最高です。
 例えて言うなら女子バレーボール選手か女子水泳選手というところだろうか。
 いいね!

「逮捕されたら身ぐるみはがされて牢屋に入れられるのが普通なんじゃないですか?」

 そうなのである。
 もとから全裸に等しかった俺はともかくとして、あえなく俺が意識を失った時にニシカさんまで殴り飛ばされて気絶させられたというじゃねえか。
 その上、武装解除とばかり身ぐるみ剥がされてそのまま全裸ままである。
 俺としては暗がりの中でニシカさんの肢体を楽しめるので至上の喜びであるけれど、それがニシカさんとしては大変ご不満なのである。

「そもそも逮捕されないのが普通だろうよ。ったく、とんだとばっちりだぜ。お前本当に女神さまの聖使徒なのか? 疫病神の守護聖人ってオチじゃねえだろな、オイ」

 おっぱいエルフの暴言に腹を立てた俺は、豊かな胸の先端でも引っ張ってやろうかと画策したがやめにした。
 ニシカさんの手が俺の頭に置かれて、撫でられてしまったからである。
 そんなんされたら惚れてまうやろ!

「けもみみが外を走り回ってるからよ、じきに誰かが迎えに来る。それまで大人しく辛抱してな」
「わかりました。大人しくしておくことにします」
「ああそうしろ。何てったってお前ぇはサルワタの大切な騎士さまだからな、お前より強い男なんてのは辺境中探したっていないんだ」
「そうですかね? ニシカさんは俺より強いと思うんですけどねえ」

 なでなでされながら、谷間から覗き見えるニシカさんの表情を見やる。
 吐息は相変わらずほんのり酒臭かったが、悪い気はしない。
 この眼帯長耳の女は、こう見えて情に厚いところがあるから俺は好きだぜ。

「ばっかそりゃお前、男の中ではって話だ。オレ様の名前を言ってみろ。ん?」
「そうですよね、サルワタにそのひとありと言われた飛龍殺しの鱗裂きですもんね」

 赤鼻と茶化す事はやめにした。
 してみると、ニシカさんは優しい微笑を浮かべて「そういうこった」と口にした。

「けどそのオレ様も、風の魔法が無けりゃタダのどこにでもいる女猟師だ。お前ぇみたいに棒切れひとつで男どもをボコスカと制圧するなんて事は出来ねぇ」
「マシェット使いはお得意じゃないですか」
「ん、マシェット?」

 撫でる手をふと止めたニシカさんがボリボリと頭をかきながら首を傾げた。
 すると暴力的な爆乳が揺れよるわ揺れよるわ。
 あまり見ていると血が足りないのに息子が元気になってしまうので、あわてて体を横に向ける。

「ああえっと、いつも使ってる山刀の事ですよ。俺の故郷じゃマシェットって呼んだりするんです。その山刀捌きはなかなか堂にいってるじゃないですか。俺もナイフは専門外なんで見惚れちゃうね」
「照れるじゃねえか、あんなもんは猟師なら当然だ。ッワクワクゴロの馬鹿弟どもにだって出来るぜ」
「そうなんですか?」
「おい、お前あんまゴソゴソ動くなよ」
「違うんですよ、その、耳に。ニシカさんのお毛々さまがまとわりついて、くすぐったいんです」
「しょうがねえだろよ! 裸なんだからっ。こら動くな、体に血が足りないんだろ」

 恥ずかしがってるニシカさんかわいい。
 こそばゆいので姿勢を変えようと頭を動かしたところ、ニシカさんに体を取り押さえられてしまった。
 そうする事でニシカさんの巨大なドッヂボールが俺の顔にかぶさる様になってしまったではないか。
 いかん。まことに遺憾である。
 ドッヂボールさんのドッヂボールに圧迫攻撃される。
 喜びと倦怠感で不思議な気分になりながら「だから暴れるなって」と案外優し気な声で押し付けられると、諦めて大人しくなってしまった。

「おい、お前のタケノコがキノコになってんぞ!」
「言わないでください、生理現象です」
「ばっかお前ぇ、早く何とかしろ!」

 その時である。
 俺たちの放り込まれていた牢屋の前に、ひとりのキノコ男がぬっと姿を現した。

「おい面会だぞ。何やってるんだお前らは……」

 慌ててニシカさんは俺を取り押さえる手を放して澄まし顔をしていたけれど、きっと長耳まで真っ赤にしていたに違いないね。
 俺はと言うと、真顔でキリっと返事をしておいた。

「スキンシップです」

     ◆

「シューターさん……」
「おう、今回は迷惑をかけたな。ニシカさんを呼びに行ってくれて助かったぜ」
「でもシューターさんを守れなかったよ」

 気落ちしたけもみみと俺は、官憲の事務所の様な場所で対面していた。
 俺がパンストライク一味と死闘を演じている間、このけもみみは俺のためにニシカさんを探し出し、冒険者ギルド近くの酒場でハーナディンを見つけ出し、そしてその足で教会堂へ戻って仲間たちに報告に走ってくれていたのである。
 俺たちが官憲さまに逮捕されて牢屋にぶち込まれた後も、事務所の前で開放を訴えて張り付いていたというから嬉しい話だ。
 そんな俺たちのために駆けずり回ってくれたエルパコの事を俺が悪く言えるだろうか。いや言えない。
 傷だらけになった俺の事を心配し悔いているのだ。
 かわいいじゃないか、俺のボーイッシュ妻。

「傷はここの兵隊さんに応急処置をしてもらったから、ちゃんと傷口の縫合は終わってるよ」
「うん」
「だから体の事は安心してくれ。ちょっと血が足りない気がするけど、雁木マリかハーナディンが後で何とかしてくれるだろ」
「うん……」
「お前は十分に俺を守ってくれたよ。だから安心しなさい」
「わかった」

 よしいい子だ。かわいいボーイッシュ妻はこくりと頷いた。
 安っぽい木の机ひとつを挟んで、俺はエルパコを安心させるために手を握ってやる。
 すると事務所の端で執務机に向かっていた妖精剣士隊のキノコ兵がぎろりと視線をこちらに向けてくる。
 俺はあわてて手を外すと話題を変えた。

「ところでカサンドラや雁木マリたちはどうしてる?」
「姉さんたちはまだ宿泊所にもどっていなかったけれど、領主のお屋敷を知っているッジャジャマさんが伝令に走ったよ。今頃はきっと知らせが届いていると思う」
「そうか。もし奥さんたちが戻ってきたら、下手を打って心配をかけちまったが、俺は元気だと伝えておいてくれ」
「うん、わかったよ」

 主に先ほどまで元気だったのは息子だが、今は平静を取り戻している。
 うなだれたけもみみをひとなでしてやると、エルパコは少しだけ力ない笑みを浮かべた。

「時間だ、退出しろ」

 あえなくキノコ頭の剣士に退出を命じられたエルパコは、名残惜しそうにこちらを振り返った後「明日には必ず出られるようにするから」と言って、そのままキノコに促されて事務所を出て行った。
 すると事務所に詰めていた別のキノコ兵士が俺の方を見ながら口を開く。

「何なんだお前は。酔っぱらって路地裏で暴れたと思ったら、次から次へと賑やかなお仲間が登場だ」
「はあ、すいませんねえ」
「すいませんと思うなら、セレスタ男爵領の治安を乱す様な真似はするな。次にやったらその場で斬り殺すぞ」

 冗談じゃない。
 俺はスリを捕まえてぶちのめしただけであるというのに、この扱い。
 キノコの剣士を睨み付けてやると褐色肌をしているではないか。何だコイツ、黒人か? キノコ頭もアフロヘアーというやつである。
 この場で抗弁してやろうかと思ったが、きっと明日にはカサンドラたちに知れて救出される事もわかっているので大人しくしている事にした。
 あまり文句を言ったり迷惑をかけたりするとサルワタの評判が悪くなる気がするのでね。
 だが嫌味のひとつも言いたいところだ。

「さて、牢屋に戻ってもらうか」
「格別の配慮、まことにありがとうございます。出来れば山の夜は冷えるので毛布など所望します!」
「ん? わかった。毛布は用意するがところでお前、」

 褐色キノコが机の上の木箱の中から、チェーンの付いた冒険者タグを引っ張り出した。あの箱の中には俺が乱闘現場でまき散らした遺留品と、ニシカさんの私物が突っ込まれているらしい。

「冒険者だったのか」
「あ。ええと、まあそうですね」
「冒険者なら明日にも隊長が調書を取ったらたぶん釈放されるだろうから、それまで大人しくしてろよ。あの女と場所もわきまえずにちちくりあってたら、今度こそ許さんぞ」
「あっはい」

 冒険者だと思われたが、まあ否定はしない。
 本来は大使一行の身分を証明する通行手形は、宿泊所に置いてきているからな。今は晩餐会に招かれたカサンドラが所持している事だろう。
 たぶんそれがあればすぐにも誤解は解けていたんだろうが、残念なことに俺は改めて牢屋にぶち込まれた。
 自業自得だ、しかたないね。

     ◆

「おい、あんまし動かすなよ。ケツになんかあたってんだよ」
「当ててるんですよ、言わせんな」
「ちょ、手前ぇ何で鼻息が荒いんだよ」

 俺たちは貸し与えられた毛布にくるまって、朝まで大人しく過ごした。
 息子は大人しくしてくれなかったが、イッパツ蹴りを入れられたら大人しくなったのである。
 息子の第二次性徴期はあえなく終わった。

 暴れん坊の息子も、黄色い蛮族に逆らってはいけないと心に誓う吉宗であった。
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