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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第4章 アレクサンドロシアの野望

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98 俺たちの会談ははじまったばかりだがすでに難航している


「ガンギマリーさま!」

 談話用のソファに腰を下ろしていた俺たちは一斉に立ち上がる。
 古参の修道騎士が少し疲れた顔をしている雁木マリに声をかけた。

「今夜はもう遅いから、続きは明朝という事になったわ」
「そうですか、お疲れ様です」
「司祭どの。申し訳ないけれど、我々に何か暖かい食事を用意してくださらないかしら。昼間から移動の連続で何も食べていないから」

 ちょうど控室に入って来た司祭さまを捕まえて雁木マリが言った。
 そう言えばブルカとこの村までの間を往復してマリは休む間もなかったのだろう。

「わかりました。お食事の場所はどうなさりますか」
「宿泊所が確かあるのよね、申し訳ないけれどそちらに運んでくれる?」
「了解です。ただちにご用意いたしますので」

 司祭さまはペコペコと何度か頭を下げると教会堂の厨房の方に飛んで行ってしまった。
 雁木マリの表情を観察する。
 まだ中から女村長が出てこないので、会談の進捗がどうなったのかはわからない。
 俺はそれが気になって、少しでもマリの表情から結果がどうなったのかを理解しようとした。
 すると、ふと雁木マリが俺から視線を外して伏し目がちになる。
 どうやら会談の前半は不調に終わったらしいな……
 そこに礼拝所から戻って来たカーネルクリーフ総長が姿を現した。

「総長、司祭どのに今食事を用意してもらっているわ」
「そうか、それはありがたいな」
「みんなも、宿泊所に移動するわよ。シューター、また後程……」
「おう。じゃあな」

 カーネルクリーフ総長とすれ違う直前に、彼は俺にまた例の猛禽の射抜くような視線が送って来た。
 何かカーネルクリーフ氏の気に障る事でもしたかと思ったが、そうではないらしい。

「ガンギマリーどのの事はよろしく頼むぞ、騎士シューターどの」
「?!」
「ちょっとカーネルクリーフ、いきなり何を言い出すのよ?!」

 突然そんな事を言われて俺はビックリしてしまったが、それより雁木マリの方が驚いていた。
 そりゃそうだ、生きた心地のしないような鋭い視線を送り付けている(様にしか見えない)騎士修道会の最高指導者が、そんな事を口にするなんて誰が想像するか。

「早く行きましょうカーネルクリーフ。シューター、じゃあこれで!」

 ハッハッハなどと笑っている総長の背中を押して、雁木マリたちが退場していった。
 ちょっと今の状況に面食らっている俺を尻目に、退出する総長に頭を下げていたエレクトラが、俺に目配せで許可をもらいながら動き出す。
 未だに礼拝所から姿を見せていない女村長のところに駆けていったのだ。

「シューターさん。ぼくたちも、行く?」
「お、おう。そうだね」

 礼拝所の暗がりの中で、静かに女村長が女神像を見上げながらぼんやりと座っている後ろ姿を見止めた。
 俺よりも先に駆け出したエレクトラが、その側に近づいたものの声をどうかけていいのかわからずに固まっている。
 気になった俺たちも急いでその側に近づくが、難しい顔をした女村長は無言でじっと正面を見据えていた。
 女村長の隣に、遠慮なく俺は腰を下ろした。

「無理難題を言われたと言う顔をしているな」
「わかるかの」
「まあわかりますよ。さしずめキッパリお断りされた方が村長さまも態度に出していただろうから」

 ふむ。いったい何を言われたらこういう難しい顔をするのだろうか。
 俺ははやる気持ちを抑えつけながら、アレクサンドロシアちゃんの口から言葉が飛び出すのを待つことにした。

「皆も気になっているであろうから、ひとまず結論だけを言う事にする。騎士修道会をわが領内に誘致する事は難しい様だ」
「…………」
「……アレクサンドロシアさま」
「安心せよ。騎士修道会との関係が悪化すると言う事はないし、基本的には可能な範囲で協力を惜しまないという言質はとれた」

 けれども、そのためには何か条件を口にされたと言う事なんだろうな。

「すると、今後のリンドルやオッペンハーゲンでの外交についても再考する必要が出てきそうだな」
「そういう事になるかの。だが会談は明日も行う予定だから、そこで少しでも協力できる条件を引き出さねばならんという事だ。シューターには後で色々と相談がある故、体を貸してもらいたい」
「何なりとご用命を、村長さま」

 すっくと立ちあがった女村長は、正装のドレスのしわを伸ばしながら俺に振り返った。

「さて、夕飯の途中で会談になってしまったから、少し小腹がすいてきたな。食堂に戻るとしようか。エレクトラ、付き合え」
「はい、すぐに温めなおしてもらえる様にお願いしますので!」

 女村長はつとめて明るい表情を作ると、エレクトラを従えて食堂に向かって歩いて行った。
 俺はもう飯を食う気分ではなくなっている。
 騎士修道会が難色を示したか……
 やはり政治に介入する事に微妙な顔をされたのか、それとも彼らの立場としても微妙な状況という事なのだろうか。
 うーん。

「シューターさん、ぼくたちはどうしよう?」
「エルパコ、君はお腹はすいていないかな」
「ぼくは、もう大丈夫だよ」
「俺も何だか飯を食いたい気分じゃなくなったんだよなあ。宿泊所で、村長さまが戻って来るまで部屋で待っているか」
「うん。ぼくも一緒に行くよ」

     ◆

 ランタンを片手に教会堂に併設されている宿泊所に戻ってくると、女村長が泊る部屋では未だにヘイジョンさんが絵筆を片手に肖像画の製作を頑張っているところだった。
 覗き込んでみると、ずいぶんと色の塗り込みが進んでいるみたいだ。
 数本のろうそくで照らされたような部屋で、よくこれだけ出来るもんだと感心していると、

「わっ脅かさないでください! ビックリして手元が狂ったらどうするんですか」
「悪い悪い、上手いもんだな。不機嫌そうなアレクサンドロシアちゃんの表情なんかもうカンペキだ」
「そうでしょうそうでしょう。僕もなかなか女騎士さまのあのお顔を再現できたと思っています」

 自画自賛するヘイジョンさんは、いったん筆を止めると三角帽の位置を改めた。
 なるほど。アレクサンドロシアちゃんそのものだ。
 昼下がりのこの部屋で、暑さで不機嫌の極まった女村長が安楽椅子に腰かけて肘をついている姿がそこには描かれていた。
 問題は本人が気に入るかどうかだが、ちょっと不機嫌な表情をしたアレクサンドロシアちゃんの顔は、確かに威厳が備わっていて、肖像画として間違っていない気がする。
 うん、後は口八丁手八丁で褒めそやしておけば問題ない気がしてきた。
 むかし俺がとあるWEB制作の営業代行会社でバイトをしていた時などは、受注から納品までいかにクライアントに口を開かせないようにするかを苦心したものだ。
 俺はあくまでも営業補助のバイト君に過ぎないので、最初の飛び込み営業の時は本職の営業さんが付いてきてくれていたが、それでもその後は自力でどうにかしなければならなかった。
 そういう時クライアントの要望を聞きだすと納期までにとても間に合わない様な注文を次々につけられたりした。
 アレクサンドロシアちゃんはあれで乗せられやすい性格なので、うまく彼女の機嫌をよくさせておいて、いかにこの肖像画が特徴を捉えかつ素晴らしいか絶えず説明すれば、きっと喜んでくれるに違いない。
 ビジネスの基本はどうやって取引先に気持ちよくなってもらえるかだからな。

「完成はいつになるのかな」
「そうですね。もう完成でも問題ないところまでは仕上がっているんですが、せっかくなので最後の調整をやりたいです。僕としてもかなりこの絵は気に入っているので」
「そうかい。まあ体の負担にならない程度で頼むよ。今日はこの辺で上がりにしてくれ」
「わかりました。ではまた明日にでも顔を出しますので、続きはまた……」

 帽子をとって優雅に頭を下げたヘイジョンさんは、もういち度だけ自分の描いた女村長の肖像画を見てひとつうなずいてから退出した。
 木のバケツに絵筆とパレットを放り込んでさようなら。
 残された俺たちは、改めて肖像画を覗き込んでみる。

「これ、すごいね」
「そうだなあ。よく描けていると思う、不機嫌な表情なんかはアレクサンドロシアちゃんそっくりだ」

 俺はそう言いながら昼間に女村長が座っていた安楽イスに腰かけてみた。
 女村長が好んで座っているのは、いわゆる揺りイスと呼ばれる形状のものである。
 座って前後に揺らしてみる。
 そういえばむかし家にこの揺りイスというのがあったのを覚えている。
 普段は妹たちが誕生日プレゼントか何かでもらった大きなぬいぐるみが座っていたが、座ってみるとその頃の記憶を思い出して妙に懐かしい気分になった。

「シューターさん、飲む?」
「おう、ありがとうな」

 俺がそんなむかしの事を思い出していると、けもみみが水筒を口に運んだ後それを俺に差し出した。
 いつだったか何も考えずに口に水筒を運んだら中身が芋の酒だった事があったけれど、そこはエルパコの事。
 ちゃんと普通の水だった。
 そうしている間にエルパコは描きかけのカンバスを部屋の脇に片付けてくれて、俺は水をチビチビやりながら揺れる安楽イスで人心地つく。

「お前も適当に座りなさい」
「うん」
「何だか、その絵。ずっと村長さまが監視しているみたいで落ち着かないな」
「そうだね。とってもそっくりだから、ビックリだよ」

 ほぼ完成状態の女村長肖像画は、カンバスの向こう側からずっと俺たちを睨み付けている。
 描いたはいいが、この絵は村に持ち帰ることになるのだろうか。
 サイズはなかなか大きくて、畳一枚分ぐらいのサイズになるんじゃないかと思えるほどだ。

「どうなるんかなあ外交使節団。色々と思いやられるぜ」
「上手くいってないんだよね……」
「そうだな。どんな事でも完全に上手くいくなんてことはあり得ないから、可能な手立ては出来るだけ多くやる方がいいし、どこかで妥協も必要だ。会談の内容もそんな感じだったんだろう?」

 礼拝所の会話内容に聞き耳を立てていたけもみみに質問すると、

「う、うん。そうだね、むつかしいはなしはわからないや……」

 簡易イスにチョコンと座ったけもみみが、イスの面に手を付いてポンと足を放り出した。
 ボーイッシュな女の子という感じの銀髪けもみみが、天井を見上げながら足をぶらぶらさせているところを見ると、思うところはある。
 例えブルカとの対決が避けられないものだとしても、血を流す戦争は出来るだけ避けないといけない。
 エルパコは猟師の移民として俺たちの村にやって来たというのに、早々戦争で殺し合いに参加させるのはしのびないじゃないか。
 本人は俺の護衛役というポジションを気に入っているみたいだけれど、それはまた別問題だ。

「どうしたのシューターさん。こっちばかり見て」
「いやあ、エルパコはかわいいなあ」
「うぇ、うん。えっと……」
「これからもそのかわいいエルパコを守るために、俺たちも頑張らないとな」

 どう返事をしていいのかわからずに戸惑っているけもみみかわいい!
 しかし女村長とカーネルクリーフとの間にどんな会話があったのかますます気になる。
 そう思っているところに、ちょうど雁木マリが扉を開けて入って来るではないか。

「おうマリか。騎士修道会の連中は放っておいていいのか」
「総長たちが今、部下たちと話し合いをしているところなのよ。あたしは一応、サルワタ領に移住した冒険者だからね。遠慮したの」
「そうかい。色々迷惑をかけるな」
「い、いいのよそんな事。冒険者タグだってブルカから引き揚げているしね。なっ仲間のいるところが、あたしの居場所だって思ってるから」
「そうだな、ッヨイさまもサルワタにいるんだしな」
「そうよ、シューターもね」

 仲間か。嬉しい事を言ってくれるじゃないか。
 妙にジロジロと俺の方を見て来る雁木マリにニッコリしてやると、マリはあわてて視線を外しやがった。
 仲間なんて口にして、ついでに俺の名前も言葉にしてみたものだから、気恥ずかしくなっているに違いない。

「待たせてすまんな。腹がふくれて少し気持ちが落ち着いた」

 照れた雁木マリを見てニヤニヤしていると、女村長がエレクトラを従えて部屋に戻って来たではないか。
 俺はあわてて立ち上がるが、女村長は手をひらひらさせて制止した。

「よいお兄ちゃん、そのまま座っていていいぞ」
「お、おう。ではお言葉に甘えて」
「皆もくつろぐがいい。わらわは失礼して寝台に座らせてもらうぞ。さすがに疲れた」

 力なく笑った女村長が、ポフリとはならないせんべい布団と寝台に腰を落とす。
 それを見届けて俺たちも適当にくつろぐことにした。
 雁木マリは俺の側に簡易イスを引き寄せて腰かける。
 エルパコもそれにならい、エレクトだけは立ったまま女村長の側に移動した。

「では早速だが、カーネルクリーフどのから騎士修道会がわらわたちに味方するためには条件があると、こう言われた」

 その言葉が俺たちの腹に落ちるのを待って、ゆっくりと女村長が言葉を続ける。

「条件はこうだ。助祭マテルドを引き渡す事。それに聖堂建設を依頼するのであれば、それはわらわからの寄進という形で聖堂を建立する必要があるという事だ。教会堂など村々にある修道会の施設は基本的に領主の寄進によって建立するのが建前になっておるが、その代わりに医療の提供と葬儀の取り仕切りを修道会が行ってくれる。修道騎士までも提供せよという事であれば、それは寄進によって聖堂を建立する建前が必要だとカーネルクリーフどのは言っておられた」

 なるほど、その理屈は非常にわかりやすい。
 あくまでも建前として騎士修道会がサルワタに肩入れをするのであれば、相応の理由が必要なわけだな。
 あのカーネルクリーフという壮年、なかなか道理の通った話し運びをするらしい。

「どうしても他の領主たちを納得させる理由付けが必要だって事なのよ。今までに聖堂を建立して寄進した貴族なんていなかったし、ブルカの聖堂は騎士修道会が自分たちで建てたものなのよね」
「するとあれか、ブルカの聖堂を超える様な立派なものを建てる事が出来れば、それこそ騎士修道会の拠点そのものをサルワタに移す事も検討してもらえるんじゃないか」
「そうね、それは確かに可能なんだけれど……」

 それならば悪い話ではない。
 悪い話ではないのだが、女村長の顔は明らかに重苦しいものだったし、雁木マリも困り切った顔をしていた。
 対照的にあまり会話の理解が追い付いていないのか、エレクトラは不思議そうな顔をして、エルパコはぼけーっとしている。
 つまり、今の俺たちには先立つものが無いのだ。

「ちなみにブルカのものを超える聖堂を建設するとなると、予算はどれぐらいの見積もりになるんですかねえ」
「そうね、ちょっとわからないけれど、ブルカ聖堂会は大理石をふんだんに使ったかなり豪華な礼拝施設よ。聞いた話では建設のためにブルカ辺境伯金貨で一〇〇〇〇枚という話だったかしら」
「一〇〇〇〇枚!」

 俺はたまらずすっとんきょうな声を上げてしまった。
 奴隷として俺の価値がせいぜい二〇枚たらずのはした金だった事を考えれば、途方もない数字に目まいすら覚えてしまうのである。

「そんな金はどうやってもわらわに捻出する事は不可能だ。しかもそれを超えるだけの豪華な聖堂となれば、金貨一〇〇〇〇枚でも足りぬという事になる。そもそもそんな金があるのであれば、最初から傭兵なりを雇い入れるし、より積極的に開墾を進める方に投資する。事実上それは騎士修道会から協力を断られたに等しい」

 まったくその通りだ。
 辺境一帯に横たわる諸貴族の領土と公平を期すためとは言え、そんな金はどうやったって用意出来ないだろう。
 だがこれで驚いていたら話は続かない。
 もうひとつ確認しておかねばならない事があるのだ。

「じょ助祭さまを引き渡せという件についてはどうなんですか。あの女は仮にも事件を起こした犯人だ。聖堂会の人間だからという事で処分保留のまま薬漬けにされている状態だけど、むしろ俺たちの手で裁く権利があってもおかしくないはずだろう」
「そこは安心して。組織を守るために引き渡しを要求するのではなく、ブルカ辺境伯に事実を突きつけるためにも、彼女の身柄を引き渡してほしいという事よ。理解してちょうだい」
「すると生き証人として必要だから、引き渡せと言う事か」
「そういう事ね」

 雁木マリが珍しく色を変えて抗弁したので、なるほどと耳を傾けた。
 だが俺は商人よろしく値引き交渉をしておく事も忘れない。

「しかし今回の件は騎士修道会にも責任があるんだろう。いかにも大金が必要な聖堂の寄進を求めてくるというのは度が過ぎているぜ。いくらかまかりなりませんかね?」
「それを具体的に話し合うために、明日も会談の続きをするのよ」
「そうか、そうだよな」
「わらわたちがその様な金貨を用意する事はどのみち不可能だ。その半値でも無理なものだからな、何かもっと別の取引材料を探さねばならぬ」

 俺と雁木マリの会話に、女村長が深くため息をつきながら言葉を重ねた。
 これでみんな黙り込んでしまった。

 お金がないなら、お金を稼げばいいじゃない。
 単純な理屈なのだが、俺たちの村にはまともな産業がないのは周知の事実である。
 ついでに、特産品になりえるワイバーンの素材は、これから先はリンドルやオッペンハーゲン相手の交渉で取引材料にするものだ。
 仮に何か面白おかしい名案が思い付くか、村の近くで金鉱でも発見出来たのなら未来は明るい。
 いや、それだとしても、それが実際に金となって流通するまでにはしばらく時間がかかるだろう。

「まあ、今すぐに皆に何か必死でアイデアをくれと言ったところで、すぐには出てこぬであろう。会談は明日にするという事なので、朝にまた改めて話し合いの場を持つことにする」

 パンと手を叩いて立ち上がった女村長は、俺たちを見回して微笑を浮かべた。
 から元気なのだろうが、領主として立派な態度だな。

「さあ、各々の部屋でゆっくりと休むがよい」

 俺たちは立ち上がって、女村長の部屋を退出した。
 退出の間際、チラリともういち度アレクサンドロシアちゃんの顔を見やる。
 もしかすると心細くて俺にひとこと声をかけてくるかもしれないと思ったからだ。
 俺も自分が彼女から信頼を置かれている事は理解できるし「後で体を貸せ」と言われていたのを覚えている。
 このタイミングで何か話しかけるのではないかと思っていたので、気にかけたのだ。
 だがチラリと見た俺の視線に気付いたアレクサンドロシアちゃんは疲れた笑みをこちらに見せただけで、何も言わなかった。
 かわりに雁木マリだけは、簡易イスに座ったままじっと女村長を見続けていた。

 ん?
 このふたり、何か会談の場であった出来事を隠しているのではないか。
 そんな風に俺の直感が脳裏に告げている様な気がしたのだ。
+注意+
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