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異世界に転生したら村八分にされた 作者:狐谷まどか

第3章 奴はカムラ

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祝100万PV感謝&記念SS シューターズ・サマーキャンプ 前編(※ イラストあり)

お色気回です。苦手な方は読み飛ばしてください。

 俺の名は吉田修太、三二歳。
 タンヌダルク杯、異世界パンツレスリングのチャンピオンに輝いた事もある男だ。
 参戦者はたった二名の大会だったけど、気にしてはいけない。
 何しろタンクロードバンダムは野牛の一族最強のパンツレスラーだったからなっ。

ところでこうしてヒモパン一丁で自分の体をまじまじと観察するのは久しぶりである。
 元の世界で生活していた頃は道場に週一、二回通う程度の生活だったので、体も今よりもなまっていたし、ついでに脂肪もほんのり全身を包んでいた。
 何より腹の肉はそろそろ自分が中年と呼ばれるべき年齢だと自覚するところまでやって来ていたものである。

 それがどうだ!

 静かな湖面に映り込んだ自らの体を見るに、このファンタジー世界にやって来てからずいぶん体が絞れてきた事に俺自身、衝撃を隠せなかった。
 食習慣の変化もやはり影響しているのかも知れない。
 いち度、自分の顔をカサンドラの手鏡を借りてまじまじと見たことがあった。
 その時に気が付いたのは、以前に比べても頬がずいぶんと細くなったなあという印象だった。
 きっと食事量よりも運動量が多くて、酒も毎日は飲まなくなったので健康的な体に一歩近づいたのだろう。
 まるで十代の頃の自分の体を取り戻したような気分になって、湖に写り込んだ自分の体にポーズを取らせてみた。
 ムキッ。もしかして俺わりとマッチョなんじゃね?

「あの、シューター。何やってるのかしら?」
「えっと、ちょっと体の具合を確かめていたんだよ。ハハハ」
「まあ、別にいいけれど」

 ヒモパン一丁で力こぶを作っていた俺にジト眼を送って来たのは雁木マリだった。
 本日はサルワタの森にある湖の建設現場から、少し離れた湖岸の砂浜に、家族そろって遠出しに来ていた。
 目的は一応、傷の全快した事を確かめるために軽く運動する事だったけれど、実際のところは避暑のために行楽しに来たと言う方が正しいかもしれない。
 季節は夏の本格到来を告げる嵐を迎えた後で、ますます暑さが激しくなりつつあったしな。
 暑くて湖岸に遊び来れば、やる事はひとつである。

「どれぇ! 早く泳ぎましょー」
「こら待ちなさいッヨイ、準備運動してから水に浸かるのよ!」

 すでにカサンドラにフリルワンピを脱がしてもらったようじょが、肥えたエリマキトカゲと一緒にヒモパン一丁で砂浜を駆け回っていた。
 この世界にやって来て無駄に使い込んだ傷だらけの俺の体であるが、それをマジマジと見たり視線を逸らしたり繰り返していた雁木マリは、ッヨイさまが水辺に走り出したところで、あわてて注意する。
 日本人ならプールに入る前は準備運動しましょう、と教えられたものだからな。

「ちょ、見てないでシューターも何か注意しなさいよッ」
「しっかり体操しましょうねッヨイさま」
「はい、どれぇ!」
「キュビー!!」

 雁木マリは言う事を聞かないバジルを抱きかかえて、ッヨイさまと一緒に小石の少ない場所まで移動していった。
 元気なのはよいことです。いっぱい運動してすくすく成長しましょう。
 俺がそんなほほえましい気分になってマリとッヨイさまを眺めていると、

「お、おう。びっくりした!」
「ぼく、おかしくないかな……?」

 気が付けば俺の隣には気恥ずかしそうにしたエルパコが立っていたではないか。

「これから泳ぐんだから服を着ていたらおかしいだろう? 男は黙って越中(ふんどし)スタイルだぞ」
「うんそうだね」

 俺の口にした事の意味はまるで理解していないはずだが、けもみみはこくりとうなずくとはにかみ笑顔を見せた。
 エルパコは今ヒモパン一丁だった。
 俺たちは泳ぎに来たのだ。泳ぎに来たのであれば服を脱がなければならない。
 ちなみにこの世界には水着などという気の利いたものは存在しない。
 ここは女神さまが地上にお作りになったパラダイスなのである。

 近頃は自分が女子だったという事が発覚して、エルパコ自身もどう振る舞っていいのかわからないらしい。
 お風呂に入る時は気恥ずかしそうにしてるものの、ちゃんとヒモパンを装着している時はあまり恥ずかしがる風でもなかった。
 ヒモパンの有無が、このファンタジー世界の倫理観念を決定づける一枚なのである。
 よくわかんねぇな異世界。

「君もッヨイさまたちと水に入る前に準備運動の体操をしてきなさい。水の中で足がつったりしたら大変だからな」
「わかったよ。シューターさんは、いかないの?」
「俺は奥さんたちを待っているから先に行ってきなさい」
「でもそれだと、準備運動が出来ないよ?」

 体が硬いのか、柔軟をやっているようじょの背中を雁木マリが容赦なく押している姿をエルパコが指さした。
 なるほど相手がいないという事か。
 ひとりで準備運動とかぼっち過ぎるので急にかわいそうになったところで、ニシカさんが服を脱ぎ散らしなが近づいて来る。
 それにしてもデカい確信。
 普段はブラウスに隠れてその双丘、いや双球を拝顔する事は叶わないのだが、こうしてみるとまるでドッヂボールがふたつ並んでいるみたいだ。
 これからは心の中でニシカさんの事をドッヂボールさんと呼ぼうと決意した吉宗であった。

「じゃあオレ様が相手になってやるぜ。おいけもみみ、ついて来な」
「それじゃお言葉に甘えて一緒にやってきなさい。ニシカさん頼みました」
「おうよ!」

 けもみみの頭を撫でながらそう言うと、ふたたびこくりとエルパコがうなずいた。
 それにしてもデカい。
 ドッヂボール・ニシカさんが元気に返事をくれると、ドッヂボールがばるんばるん暴れた。

「お前も獣人の端くれなら泳ぎは得意でないとな。オレ様が泳ぎの特訓をしてやるぜ」
「べつに、いらないかな……」
「何でだよ! 教えてやる代わりに酒をよこせとか言ってないだろ?! 遠慮せずに教わっておけよ」
「ぼく、シューターさんに教わるから……」
「なんだ手前ぇ、息子が付いてるくせにちっちぇえヤツだな! これだから皮被りは駄目なんだ」

 おふぅ。皮被りは駄目とかやめてください……
 不機嫌に抗議をするニシカさんのひと言に、俺まで反応して息子を両手で庇ってしまった。
 とても恥ずかしい気分になった俺は背を向けようとしたところ、視界の端に写っていたエルパコが俺を指さしながら反論をしていた。

「シューターさんだって被ってるじゃん」
「だからこの村の男はみんな駄目なんだよ!」
「でも。ぼく、おんなのこだったから。ちっちゃくても問題ないよ……」
「うるせぇ、けもみみはもう少し甘えるという事を覚えたほうがいいぜ。さあついて来い!」

 俺のハートがズタズタにされたところで、ふたりの狩人は雁木マリとッヨイさまのところに合流したのである。
 ちょっと立っているのが辛いな。
 雁木マリはもう動いても大丈夫だと全快を宣言していたが、もしかしたらまだ血の量が足りていないのかもしれない……

     ◆

 ビーチパラソルの様な便利なものはないが、家族と共にやって来たッワクワクゴロ四兄弟は簡易テントの様なものを設営していた。
 彼ら猟師が長期間森に入って獲物を追跡する際に使っているものである。
 休憩と日除け代わりに使う他、遊びに来た家族の荷物を置くのに立てたのだが、悪魔面をした小さな筋肉達磨たちがヒモパン一丁でせっせとテント設営していく姿は、正直見ていてもあまり嬉しくない。
 とは言え俺も一緒に設営を手伝おうとしたところ、

「仮にも騎士さまに手伝わせるわけにはいきませんシューターさん」
「そうです。それよりも街の女の子を紹介してくださいシューターさん」
「俺たち最近、文字書きを勉強し始めたんですよ。文通相手いませんかねシューターさん」

 ッワクワクゴロさんの顔の見分けがつかない三人の弟たちが、口々に俺はゆっくりとしていろと言ってくれた。

「シューターはいちおう病み上がりだからな。こういう荷運び手伝いは馬鹿弟にやらせておけばいい」
「そうですか、では遠慮なくお任せします」

 ひとりだけ赤いヒモパンを着用したッワクワクゴロさんが、弟たちをどやしつけながら気を使ってくれた。
 いつだったか街でようじょや雁木マリが言っていたが、染めの入った布生地というのはそれだけで高価なものであるらしい。
 してみると、近頃猟師の親方になって景気の良いッワクワクゴロさんは、わざわざ赤に染め抜いたヒモパンを用意したのだろうか。
 まるで成金である。

「ん? どうしたシューター。俺をマジマジと見て」
「いやあ赤フンだなあって思いましてね。ッワクワクゴロさんにお似合いですよ」
「そうか。俺も近頃は親方としての貫禄を身に着けないといけないからな、うかうかしているとニシカに親方株を奪われかねん」

 あまり気のない俺が適当な返事をしておくと、ッワクワクゴロ親方は妙なところでニシカさんに対抗心を燃やした。
 もっと猟の腕を競った方がいいですよ、と言おうと思ったがワイバーン殺しの鱗裂きを相手にしたら分が悪いので言わない事にする。

「ニシカのヤツ、最近色気づいて黒い肌着を身に着け始めたからな。だったら俺は赤というわけだ」
「そう言えば街で買いこんだ肌着にそう言うのがあったかもしれない」
「おい、今度行く時は金を出すから、いい染物の生地を買ってきてくれるか」
「はあ……」

 話が脱線気味になったところで、ようやく簡易テントが設営完了である。
 ッワクワクゴロさんたちゴブリン四兄弟も、荷物をテントの隅に押し込んだかと思うと、軽く体を捻じりながら準備体操らしきものをして、砂浜を駆け出していった。

「よしお前たち、マスを捕まえるぞ!」
「マジかよ」「遊ぶんじゃないのかよ」「普通に泳ごうぜ兄貴」
「馬鹿野郎。三人揃って半人前以下の分際で、偉そうな事を言うな。誰のおかげで生活出来ていると思ってるんだ」
「シューターさんですよ」

 弟のひとりがしたたかにッワクワクゴロさんに尻を叩かれたのを見届けた俺は、興味がなくなってテントの中に入った。
 テントの中では麻布を敷くふたりの妻がいた。
 しゃがみ込んで風で吹き飛ばない様に、四方に石を置いたり水筒の準備をしていたりしている。
 もちろん、ふたりともヒモパン一丁である。

「おおおおっ」
「どうしましたシューターさん?」
「旦那さまったら、他のみなさんと泳ぎに行かないんですか?」

 すばらしい。
 カサンドラの肢体をお天道様の下でしっかりと見る事が出来るのは、眼福である。
 そして豊かな胸を持ち上げる様に腕を組んだタンヌダルクちゃん、これはいけない。

「ありがとうございます、ありがとうございます」

 俺はたまらず前かがみになりながら感謝の言葉を口にすると、ふたりの奥さんは不思議そうな顔をしていた。



http://15507.mitemin.net/i168308/

挿絵(By みてみん)
正妻カサンドラのキャラクター設定をマテルドさんに描いていただきましたので、ここでご紹介させていただきます。
みなさまのおかげで総合評価10000ptを達成する事が出来ました。
これもひとえに読者のみなさまのおかげです!
ありがとうございます、ありがとうございます。

まもなく200万PVの到達が迫っていますが、これからも本作をよろしくおねがいします!
+注意+
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