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無職転生 - 異世界行ったら本気だす - 作者:理不尽な孫の手

第3章 少年期 冒険者入門編

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第二十五話「侵入と変装」

 リカリスの町。

 魔大陸三大都市の一つ。
 人魔大戦の頃、魔界大帝キシリカ・キシリスが本拠地にしていたという町である。
 別名、旧キシリス城。

 まずその町を見て驚くのは、町の場所である。
 なんと、巨大なクレーターの中にできているのだ。
 クレーターは天然の城壁であり、幾度となく敵軍の侵入を防いだとされる。
 現在でも、魔物の侵入を防ぐのに役立つ、自然の結界である。

 町の中心には半壊したキシリス城。
 この城は、ラプラス戦役において破壊された。
 当時のキシリカ派の魔王と、魔神ラプラスが戦った痕跡である。

 頼もしき城壁と、かつての栄華の面影を残す黒金の城。
 その二つは当時の魔界大帝の威光と、魔族の過酷な歴史を人々にしらしめる。
 リカリスは由緒正しき町である。

 そして、旅人は夕刻にて、この町の本当の美しさを知るであろう。


 冒険家・ブラッディーカント著 『世界を歩く』より抜粋。


---


 というのが、俺の知識にある「リカリスの町」である。

 町の入り口は三つ。
 クレーターの裂け目がそのまま入り口となっている。
 クレーターは高く、空でも飛べなければ入り口以外から侵入するのは難しいだろう。

 そして、入り口には二人の門番。
 つまり、この町の警備は厳重だ。
 ルイジェルドを見る。

「どうした……?」

 ミグルド族の里での話を思い出す。

「ルイジェルドさん。この町……入れますよね?」
「入ったことはない。いつも追い返されるからな」

 人族の間でも、スペルド族はかなり嫌われている。
 それはもう遺伝子レベルでだ。
 エリスのあの態度を見ればわかる。
 魔大陸ならあるいはと思ったが、そんなことはないらしい。

「ちなみに、どんな感じで追い返されます?」
「まず、町に近寄ると門番が叫び、しばらくすると大量の冒険者がやってくる」

 俺の脳裏に、衛兵が「スタップ!!」とか言い出し、
 町中から屈強な男たちが次々と出てきて、襲い掛かってくる光景が浮かんだ。

「じゃあ、変装とかしたほうがいいですね」

 そういうと、ルイジェルドはむっとした顔で俺を睨んだ。

「変装だと?」

 何か嫌だったんだろうか。

「落ち着いてください。まずは町中に入ることです」
「いや、変装とはなんだ?」
「え?」

 変装を知らないらしい。
 文化の違いだろうか。
 いや、そもそも知っていれば、町中ぐらいには入れただろう。

「変装とは、外見を変えて、身分を偽ることです」
「ほう……どうやってやるんだ?」
「そうですね……とりあえず、顔を隠しましょうか」

 俺はとりあえず、その場に座り込み、地面に手を当てて魔力を込めた。


---


「止まれ!」

 町の入り口には、兵士が立っていた。
 蛇の頭をした、いかつい感じの奴と、
 豚のような頭をした、ふてぶてしい感じの奴だ。

「何者だ! 何をしにきた!」

 腰の剣に手をやって誰何したのは、蛇の方だ。
 豚の方はいやらしい目でエリスを見ている。
 この(ロリコン)野郎……気が合いそうじゃねえか。

「旅の者です」

 打ち合わせどおり、俺が前に出る。

「冒険者か?」
「は……いえ、違います。旅の者です」

 思わずハイと答えそうになったが、証明できるものがない。
 俺とエリスぐらいの年齢なら、冒険者志望と言っても、おかしくないだろうが。

「そっちの男は? 怪しい風体だが」

 ルイジェルドは俺の作った岩石製のフルフェイスの兜で顔を隠している。
 槍は布で穂先を巻いて、杖のように見えなくもない。
 怪しい。
 とはいえ、スペルド族の姿よりはマシだろう。

「兄です。変な冒険者が持ってきた兜を身につけたら、外れなくなったんですよ。
 この町なら、外してくれる人もいるかと思って……」
「ハッハ! マヌケな話だな!
 そういう事なら、仕方ないな。
 道具屋の婆さんにでも頼めば、なんとかしてくれるさ」

 蛇頭が笑いながら一歩下がった。
 あまり警戒されていない。
 日本なら、フルフェイスのヘルメットをかぶった男が現れたら、もっと警戒されるのだが。
 子供連れだからだろうか。
 それとも、兜をつけたヤツは少なくないのだろうか。

「ところで、この町で稼げる所ってどこにありますか?」
「稼げる所? そんな事聞いて、何になる?」
「兄の兜が外れるまでは滞在しなきゃいけませんし、
 もし外すのにお金を要求されたら、稼がなきゃいけません」

 蛇頭は、「そうか、あのババアならありうるか」と呟いた。
 道具屋は業突く張りなのだろうか。
 まあ、関係ないか。

「なら、冒険者ギルドだな。
 あそこなら、よそ者でも元手無しで日銭を稼ぐ事ができる」
「なるほど」
「冒険者ギルドは、この道をまっすぐだ。
 大きな建物だから、すぐに見つかるはずだ」
「ありがとうございます」
「冒険者ギルドに登録すれば、宿がちょっと割安になる。
 登録だけでもしといたほうがいいぜ」

 俺は適当に会釈をしつつ、門を通り過ぎた。
 そして、ふと立ち止まる。

「そういえば、この町っていつもあんなに物々しいんですか?」
「いや、最近、この近くで『デッドエンド』が目撃されたらしいからな。警戒中だよ」
「なんですって! それは怖いですね………」
「そうだな、早くどっかにいっちまうことを祈るよ」

 『出会えば死ぬ(デッドエンド)』か。
 怖い名前だ。
 さぞ恐ろしい魔物なんだろう。


---


 町中に入る。
 ロアと比べていささか背の低い町並みが広がっていた。
 しかし、町の構成はどこでも似たような感じらしい。
 入り口付近には商人向けの宿屋や馬屋といった店が軒を連ねていた。

「さて、冒険者か……」

 今までの人生の中で聞いた話を総合すると、冒険者というのは派遣社員だ。
 手に職をもっている人たちが、冒険者ギルドという名の人材派遣会社に登録し、
 仕事を紹介してもらいつつ、自分の評価を高めていく。
 人々は冒険者ギルドを通して仕事を依頼。
 能力に自信のある冒険者が送られてくる。

「稼げるかどうかはわからないけど、登録しといたほうがいいのかな?
 身分証明にもなりそうだし、エリスはどう思う?」
「冒険者! なる! なるわ!」

 エリスの目がキラキラしていた。
 そういえば、エリスは何度もギレーヌの冒険者時代の話を聞いていた。
 案外、憧れていたのかもしれない。

「ルイジェルドさんって、もう冒険者だったりします?」
「いや、俺は冒険者ギルドのあるような大きな町には入ったことがない」

 そうでしたか。
 なるほど、冒険者ギルドは大きな町にしかないのね。

「ま、その方が都合がいいか……」

 俺の頭の中で、着々と予定が整っていく。
 いつまでもこんな重たいヘルメットを被っているわけにもいかないしな。
 顔を隠したままでは、いつまで経ってもスペルド族の名声は得られない。

 何か大きなことをやって、実はスペルド族でした!
 っていう流れでもいいのかもしれないが、
 冒険者の最低ランクの仕事は町中の雑用という話だ。
 むしろ、大きなことをするより、こういう小さなことで意外性を出したほうがいいのかもしれない。

 うまくすれば町中での信用につながる。
 ルイジェルドの人柄は悪くない。
 いきなり強い魔物を倒して、町を守ったんだから受け入れてくれ!
 というより、迷子の子供を助けました、というギャップの方が受ける。
 それはミグルドの里でも証明済みだ。
 魔物退治より、人助けを中心にしたほうがいいだろう。
 先入観無しで人と接するのだ。
 ルイジェルドの人柄なら、それでも十分だろう。

 しかし、人助けをするのに、このヘルメットはよくない。
 表情が見えないのはマイナスだ。
 俺だったら、顔を隠したヤツは信用しない。
 髪と額だけ隠したヘルメットにするか……。
 いや、それでも怪しいな。
 この世界に人と会うのに被り物を脱ぐ云々の文化があるかどうかは知らないが、俺だったら、失礼だと思ってしまう。

 しかし、少しずつ小さな事をやった所で、時間が掛かるだけだ。
 ルイジェルドという存在を街中に浸透させ、それを善とするようにしなければ。

「うーむ……どうすべきか」

 まずは知名度が必要だ。
 いくらいいことをやっても、名も無き青年の所業では意味がないのだ。

 やはり、名前を覚えてもらうためにも、
 最初に大きく魔物退治の一つもやったほうがいいかもしれない。
 この世界では、力ある者は受け入れられる傾向にある。
 知名度の高い魔物を退治することで、多少なりとも地位が向上する可能性もある。

 もっとも、スペルド族の場合は強いという事はすでにわかっているから、
 逆効果になる可能性も高いか。

 まてよ、でも、町に迫る危機に対して、ならどうだろうか。
 誰もが窮地に陥った中で、処刑ソングと共に颯爽登場、
 魔界美青年ルイジェルド、って感じで一撃で相手を仕留めたら。

 おお、いいんじゃないか?
 問題は、その相手を何にするかだが、
 ちょうどいい相手の名前を、先程聞いたばかりだ。

「ルイジェルドさん。
 『デッドエンド』って何のことだか知ってます?」

 『デッドエンド』とかいう魔物を町に誘導。
 町をパニックに。
 それとルイジェルドが倒す。
 勧善懲悪のストーリー。
 完璧だ。

 しかし、帰ってきた答えは予想外のものだった。

「俺のことだ」
「……どういうことですか?」

 なんだそれは?
 また哲学なのか!?
 と、思ったが……。

「俺は一部では、そう呼ばれている」

 ルイジェルド=『デッドエンド』
 ということらしい。
 なるほどね。
 納得だよ。
 スペルド族が町の近くを歩いていたら、そりゃ警戒もするよね。

 はぁ……。

 それにしても、
 そんな危ない二つ名まで付けて恐れられているとは。
 どんだけ恐れられているんだか……。

 門番ももうちょっとちゃんと仕事しろよなと思う。
 きっと、スペルド族を人として見ていないのだ。
 暴れまくるだけの魔族だから、変装する知能なんて無いと思っているのだ。

「どうしたものか……」

 しかし、この二つ名、知名度は高そうだな。
 利用出来るかもしれない。

「賞金とか、掛かってないですよね?」
「ああ。それは大丈夫だ」

 本当かな?
 本当だよね?
 信じるよ?
 嘘ついちゃ、やーよ?

 とりあえず、少し計画を変更だ。


---


 まず、
 冒険者ギルドに行く前に、俺たちは露天を見て回った。
 入口付近にある露天はどこも似たようなものである。
 とはいえ、相場は大きく違うが。

 さらに、売っている物も大きく違う。
 例えば、ロアでは馬屋だった場所では、トカゲのような生物が売っている。
 高低差と岩の多い魔大陸では、馬よりこうした生物のほうが役立つのだろう。
 また、乗合馬車は無いが、商人が個別で馬車を出している。

 これから長い旅をするに当たって、欲しいものは多い。
 少しずつ、買い集めていく必要があるだろう。

 が、今回買うものは決まっている。

 ざっと相場を調べながら、なるべく安い店を探す。
 急いではいるわけではないが、それほど時間も掛けたくない。
 目当てのものは、染料とフードだ。あと、あればレモンのようなものも欲しい。

「おっちゃん、この染料、ちょっと高すぎない? ボってんじゃないの?」
「バカ言え、適正価格だ」
「本当かなー」
「あったりまえよ!」
「でもあっちで同じのが半値で売ってたよ?」
「なにぃ!?」
「品質の差もあるだろうしなー。あ、このフードいいな。コレと、そっちのレモンっぽいのも一緒に買うから、オマケしてくんない?」
「坊主、お前商売上手だな。わかったよ。もってけ」
「あ、そうだ。これ買い取ってよ。パクスコヨーテの毛皮と、アシッドウルフの牙とかあんだけど……」
「結構あるな。ちょっとまってろ……にのふのよの……屑鉄銭3枚って所でどうだ?」
「そりゃないよ。せめて6枚」
「しゃーねーな。じゃあ4枚だ」
「おっけ、それでいこう」

 などと交渉して、一度で売買を終わらせる。
 相場はわからないため、これがどれほどの金額かはわからない。
 正直、交渉はしてはみたものの、ボラれた感もある。

 残りの持ち金は鉄銭1枚、屑鉄銭4枚、石銭10枚。
 ロキシーの両親からもらったお金だ。
 大切に使わないとな。

 俺たちは人気のない裏通りへと入る。
 変な奴らに絡まれないといいが……。
 いや、絡まれたらルイジェルドがなんとかしてくれるか。
 お金を増やすチャンスだ。

「ルイジェルドさん。もし誰かに絡まれたら、半殺しでいきましょう」
「半殺し? 半死半生にしろということか?」
「いえ、普通に叩きのめすだけで」

 が、残念ながら絡まれなかった。
 いや、本当に残念だ。
 もっとも、カツアゲするような奴らだ。
 金なんて持っていないだろう。

「ルイジェルドさん。まずは髪を染めましょう」
「髪を、染める……?」
「はい。この染料で」
「なるほど、髪色を変えるのか。
 面白いことを思いつくな」

 感心された。
 どうやら、この世界には髪を染めるという習慣は無いらしい。
 いや、ルイジェルドが知らないだけかな?
 あんまり人里に降りてこないようだし。

「しかし、ならばもっと違う色のほうがいいのではないか?」

 俺が選んだのは、青色だ。
 出来る限りミグルド族の色に近いものを選んだ。

「いえ、ここから徒歩三日の位置にミグルド族の集落があります。
 それを知っている人は多いでしょう。
 ですので、ルイジェルドさんは今日からミグルド族です」
「……お前たちは?」
「僕らはそのへんで拾われたルイジェルドさんの子分その一とその二です」
「子分? 対等な戦士ではなかったのか?」
「そういう設定なんです。別に覚えなくてもいいですが、
 他の人にそう見えるように、僕が演技します」

 これからやるのはお芝居だ。
 俺はルイジェルドに『設定』を語った。


 今日からルイジェルドは、
 スペルド族の『デッドエンド』を騙る、ミグルドの青年ロイスである。

 ミグルドの青年ロイスは、常々皆から畏怖されるような存在でありたいと思っていた。
 そんなある日、二人の子供を拾う。
 魔術と剣術を使う子供たち。
 彼らは助けてくれたロイスに心酔した。

「心酔してるのか?」
「僕は別に」
「そうか」

 この二人は結構強い。
 それに眼をつけたロイスはある事を思いつく。
 自分はミグルド族の中でも背が高い。
 『デッドエンド』のルイジェルドを語れば、もっと簡単に皆に恐れてもらえるかもしれない、と。

 いざ喧嘩にでもなったら、二人をけしかければいい。
 この二人の子供は、子供だがなかなか使える。
 二人を利用して、一気に有名になってやろう、と。

「俺の名を騙るのか、許せん男だな」
「そうでしょう、確かに許せない。
 でも、もし偽ルイジェルドが、良いことをしたら。
 人々はどう思いますか?」
「………どう思うんだ?」
「明らかに偽物だと分かる奴だが、結構いいやつだ、とそう思うだろう」

 必要なのはコミカルさとちぐはぐさだ。
 他人を騙るようなヤツだが、根は悪いヤツじゃない。
 そう思わせるのが肝要だ。

「ふむ……」
「偽ルイジェルドはいいやつだ。
 という噂が流れればこっちのものです。
 いずれ噂は曖昧になり、『ルイジェルドはいいやつだ』という形になります」
「……それはすごいが、本当になるのか?」
「なります」

 断言した。
 少なくとも、今のルイジェルドがコレ以上評判を落とす事はない。
 現時点で最低評価だからな。

「そうか、そんな簡単な事でよかったのか……」
「簡単じゃないですよ。成功するかどうかもわかりませんし」

 計画ってのは、どこかで必ずほころびが生じるもんだ。
 綿密にすればするほど、後半で計画が狂う。
 だが、うまくいけば、噂に噂を重ねることで、ルイジェルドの本性が正しく伝わるかもしれない。

「しかし、嘘がバレたらどうする?」
「やだな。ルイジェルドさんは嘘なんて付いてないんですよ」
「………どういうことだ?」

 ミグルド族のフリをして、スペルド族を名乗る。
 予定通り、人に好かれるような良い事をする。
 名前だって偽らない。
 ロイス云々は、本物のスペルド族だとバレそうになった時の布石で、当人はルイジェルドと名乗る。
 スペルド族のルイジェルド。
 それを周囲が勝手にミグルド族のロイスが、ルイジェルドのフリをしているのだと勘違いするだけだ。

 だから嘘なんてついていない。

 嘘を付くのは俺だけだ。
 でも、ルイジェルドは嘘を付くのに抵抗があるようだから、それは黙っておこう。

「向こうが勝手にミグルド族だって勘違いするだけです」
「む……ああ、そうか。俺が俺を騙るから、しかしロイスの振りを……。
 頭がこんがらがりそうだ。俺はどうすればいい?」
「普段どおりでいいですよ」

 ルイジェルドは難しい顔をしていた。
 演技派の俳優にはなれないな、この男は。

「でも、安い挑発で切れて相手を殺したりはしないでください」
「ふむ……それは、喧嘩をするなということか?」
「してもいいですけど、苦戦するフリをしてください。
 何発かもらって、肩で息をして、で、最終的にはなんとか勝った、って感じにしてください」

 言って見てから、そんな演技、出来るのだろうか。
 と思ったが、

「手加減をするのか、どういう意味があるんだ?」

 そこは大丈夫らしい。

「ホンモノのルイジェルドならこんなに弱くない、と思うと同時に、
 ホンモノだったら俺って結構すごいんじゃね? と思わせる事ができます」
「よくわからんな……」
「こっちを偽物だと思わせると同時に、相手の気分がよくなるんですよ」
「気分がよくなってどうする」
「スペルド族が弱いという噂を流してくれます」

 すると、ルイジェルドはむっとした顔になった。

「スペルド族は弱くないぞ」
「知っています。
 けれど、強いから恐れられているんです。
 弱いとわかれば、今のような状況も緩和されるかもしれません」

 とはいえ、あまり弱いと思われすぎるのも問題だ。
 知らない土地で生き残っている(かもしれない)スペルド族。
 彼らに対し、また迫害が起きるかもしれない。
 バランスが大事だ。

「そういうものか……」

 さて、こんなものか。
 あまり色々言っても、ボロが出るだけだからな。

「僕は全力でサポートしますけど、
 どう転ぶかはルイジェルドさんの頑張り次第です」
「ああ、わかっている。頼む」

 俺は露天で買ったレモンっぽい果物の果汁を使ってルイジェルドの髪を脱色。
 元々エメラルドグリーンで色素が薄い所を脱色に成功。
 染料でベットリと着色。

 うーむ。
 あまり綺麗ではない。
 むしろ汚い。

 が、少なくとも緑っぽくはない。
 遠目ならミグルド族には……見えないか、背丈が違いすぎて。
 けど、スペルド族っぽくは見えないかもしれない。

 まあ、変装は曖昧なぐらいがちょうどいい。
 ミグルド族っぽいけど、スペルド族って名乗ってるし、
 でもどっちでもないし、あれ? ってぐらいでいい。

「あと、これを渡しておきます」

 俺は首からネックレスを外し、ルイジェルドの首に掛けた。

「これは、ミグルドの守りか」
「はい。僕の師匠が卒業祝いにくれたものです。以来、肌身離さずつけています」

 これをつけていれば、少なくともミグルド族の関係者だとは思ってもらえるはずだ。
 知っている相手には、ね。

「大切なものだな。必ず返そう」
「絶対ですよ」
「ああ」
「無くしたら本気でぶっ殺しますよ」
「わかっている」
「具体的に言うと、土の魔術でこの町の入り口を閉鎖、クレーターが完全に埋まるまでマグマを流し込みます」
「他の町人も巻き込むつもりか? 子供もいるんだぞ」
「子供の命を助けたかったら、絶対になくさないでください」
「むぅ……そんなに不安なら最初からお前が持っていた方がいいんじゃないか?」
「いえ、もちろん冗談ですよ」
「………」

 さて、フードの方はエリスに被ってもらうか。
 彼女の赤い髪は目立つだろうからな。
 視点は一つに集めなければ。

「エリス、このフードなんだけど……」

 と、先程買ったフードを広げてみると、『耳用の袋』がついていた。
 なんというか。
 ファイ○ルファンタジーⅢに出てくる、導師の被っているフードだ。
 色は白ではないが、マントのように後ろに広がっている。

 獣族用なのだろうか。
 これは買い物を間違ったかもしれない……。

 エリスはあまり服装には拘らない。
 だが、あのボレアス流の挨拶を見ていればわかる。
 あまり獣族っぽい格好やポーズはしたくないのだ。

「あの、エリス、これ、なんです、けど」
「そっ! それっ! ど、どうするの!」
「え、エリスに、どうかなぁ~って……」
「ホント!」

 と、思っていたのだが、すごく喜ばれた。
 あのポーズ自体は嫌じゃなかったんだろうか。

「大切にするね!」

 早速フードを付けたエリスが、満面の笑みで言った。
 まあ、あれだな。
 なんだか知らんがとにかくよし! ってやつだ。


 さて、まずは冒険者ギルドだ。
 必要なのは、コミカルさ。
 そいつを忘れないように。

 うまくいく事を祈ろう。
+注意+
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