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無職転生 - 異世界行ったら本気だす - 作者:理不尽な孫の手

第11章 青少年期 妹編

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第九十九話「手紙」

 朝、目が覚める。
 シルフィが俺の腕枕で寝ていた。

 白い髪に、白いうなじ。
 よく見ると長い睫。
 こんなに可愛い子がパンツ一枚のあられもない姿で俺の腕枕で寝ている。
 安心しきった無防備な寝顔を俺に見せている。

 そんな状況だけで、朝からハッスルしそうになる。
 ちらりと毛布をめくってみると、シルフィの桜が見えた。
 その少し上には、小さな痣が残っている。
 いわゆるキスマークだ。
 昨晩、俺がつけたものだ。

 生前、キスマークをつけるのの何が楽しいんだと思っていたが。
 こうして朝起きて、自分のつけたキスマークを見るのは実に楽しい。
 DQNが自分の彼女にイレズミやらピアスやらを付ける感覚なのだろうか。
 征服感が湧いてくるのだ。
 シルフィは俺の女だ。
 誰にも渡さん。

 なんて考えていたら、息子が朝のラジオ体操を始めてしまった。
 昨日あんなに激しい運動をしたのに、元気な事だ。
 生前では自主トレばかり、ここ数年は引きこもりだったのに、
 最近になって活躍の場を得たからか、実に元気だ。

 いかんいかん、朝から盛っていては。
 シルフィは今日も仕事なのだ。
 俺の方はスポーツで昇華させてやるとしよう。
 腕枕からシルフィの頭を抜いて、枕を差し込んでやる。

「んぅ……ルディ、それは飲み物じゃないよぅ……」

 シルフィは身じろぎをして、きゅっと体を縮めた。
 寝言が可愛い。
 夢の中で俺に何を飲ませているのだろうか。
 シルフィのミネラルウォーターならいくらでも飲める気がする。

 なんとなく、シルフィの胸をさわりとひとなで。
 朝から強くするとおきてしまうので、優しく優しく。
 絹ごし豆腐でも触るように。
 慎ましやかな感覚。
 朝からこんないいものを触れるなんて、俺は世界一の幸せものかもしれん。
 これがリアル充足か。

「ん……るでぃ……」

 シルフィはうっすらと目を開けて、俺を見る。
 そして俺の手を掴んで、ぼんやりとした顔でにへらと笑い、言う。

「……いってらっしゃい」
「いってきます」

 俺は部屋を出た。
 次に一緒に寝るのは三日後か。
 待ち遠しい。


---


 ここ最近、実に平和に過ごしていた。

 事件らしい事件は無い。
 あったと言えば、リニアとプルセナに一人の少年を紹介されたぐらいだ。

 なんでも、この少年は一年生の不良で、二ヶ月で同学年の不良どもをシメたのだそうだ。
 その後、調子にのって番長グループに手を出そうと思ったら、第一の刺客(ザノバ)にこっぴどくやられたらしい。
 その結果、色々あって俺の傘下に入る事になったのだそうだ。

 寝耳に水な話である。

 聞いた話によると、この学校には『六魔連』と呼ばれる四天王的存在が支配しているらしい。
 その頂点に君臨するのが俺だそうだ。

 彼らを全員倒すと、ボスである俺に挑戦する権利を貰えるらしい。
 不良漫画的な構成だな。
 愕怨祭がくえんさいとかそんな感じの名前が付いていたりしないだろうな。

 ちなみに、その六人とは、ザノバ・クリフ・リニア・プルセナ・フィッツ・バーディガーディの六人だ。
 彼らを全員、というと、俺は魔王を倒せるような奴を相手にしなければいけないのだろうか。
 やだなぁ。

 何はともあれ、今年の一号生筆頭は哀れな事に、最初の男に倒されてしまった。
 俺の所に来た時には、尻尾を丸め、頭も丸め、実にしおらしい態度であった。

 この一号生筆頭、ザノバとは距離をとって魔術で戦うという戦法のお陰でそこそこいい勝負はしたらしい。
 ザノバはなんとか耐え、相手が魔力切れを起こして接近してきた所をワンパンで沈めたのだとか。

 どうにも遠距離戦になるとザノバは苦戦をしていかんな。
 ザノバには今度、岩石をゴルフスイングして相手にぶちあてる中国の奥義を教えてやろうと思う。


 それにしても、いつしか本当に番長扱いされるようになってしまった。
 でもまあ、お陰で不良の人がいう事を聞いてくれるので助かる。
 この間も校舎裏でリンチを行なっている奴らを見つけた時もそうだ。
 一戦覚悟で一言言ったら顔を青くしてやめてくれた。
 イジメっ子に対して一言言うだけでイジメが止まる。
 悪くはない立場だ。

 俺の目の黒いうちは弱者をいたぶる事は許さん。
 例えイジメられる方にも問題があっても、だ。


---


 そんなある日。
 手紙が届いた。

 パウロからである。
 どうやら、一年ほど前に送った手紙がようやく往復してきたらしい。

『ルーデウスへ。
 手紙は見た。魔法大学に入学するんだってな。おめでとう。
 色々あったが、お前がお前の道を歩いてくれるのを嬉しく思う。

 エリナリーゼから聞いたと思うが、ゼニスの事はなんとかなりそうだ。
 ロキシーやタルハンド、エリナリーゼのお陰だな。
 エリナリーゼにもヨロシク言っといてくれ。
 まあ、アイツは嫌な顔するだけだろうけどな。

 さて、俺たちは今、イーストポートにいる。
 これからベガリット大陸へと向かう所だ。
 ベガリット大陸は行ったことはないが、魔大陸の次に過酷な土地だ。
 子連れで渡るには、ちと憚られる。
 ノルンとアイシャはまだ九歳だしな。

 そこで、子供たちだけお前の所に送るって案が出た。
 つっても、もちろん子供だけで旅をさせるのも危険な話だ。
 ジンジャーが護衛についてくれるっていうが、何が起こるかわからねえ。
 危険だが、また離ればなれになってやきもきするぐらいなら、連れて行った方がいい。

 そう思ってた時に、ある人物と再会した。
 お前も知ってる人だ。
 その人が子供たちの護衛を引き受けてくれるっていうんで、お願いした。
 お前も会ったら驚くと思う。
 頼れる人だ。

 正直、苦渋の選択だ。
 もし、旅の途中で何かあったら、目を離して酷い事になったら。
 そう思うと、連れて歩きたい気持ちも大きい。
 けど、やはり子供達には安全な場所にいてほしいんだ。
 お前も含めてな。

 ノルンとアイシャがそっちについたら、小さくてもいいから住む場所を用意して、学校に通わせてやってほしい。
 入学金や当面の生活費を含めた費用はもたせてある。
 結構な大金だ。
 女とか買うなよ?
 ……なんてな。まぁ、お前なら上手くやってくれるだろう。

 って、本当はオレがやんなきゃいけない事なんだがな……ダメな父親ですまん。
 悪いが、頼らせてくれ。

 思えば、お前ももう15歳、この手紙が届く頃には16か。
 成人だな。
 誕生日を祝ってやれなくて申し訳なく思う。
 アイシャとノルンの10歳も祝ってやれない。
 けどまぁ、それは再会した時に盛大にやろう。
 家族みんなで、な。

 こっちは任せてくれて大丈夫だ。
 フィットア領捜索団は事実上解散したが、
 オレに、リーリャ、タルハンド、ロキシー、ヴェラ、シェラ。
 ベガリット大陸に行って戻ってくるぐらいの戦力はある。
 順調に行けば、一年か二年遅れでそっちに付けるだろう。

 最初は、リーリャも子供たちと一緒に旅させようと思ったんだが、
 どうやら、リーリャは子供たちよりオレの方が心配らしい。
 締まらねえ話だよな。情けねえ。
 とはいえ、リーリャはアイシャの事を信頼してる。
 教えられる事は大体教えたってな。
 アイシャは天才だ。
 お前といい、アイシャといい、自分の種が怖くなるよ。

 でもノルンは普通の子だ。
 お前やアイシャとは少々、違う。
 だからもどかしい事が多いと思うが、長い目で見てやってくれ。
 あと、オレが甘やかしすぎたせいで、ワガママな所もあると思う。
 お前の事も嫌ってるし、アイシャとも仲があまり良くない。
 そっちだと、孤立する可能性もあると思うが……兄貴として嫌がらずに面倒をみてやってほしい。

 念のため、二人にも同じ手紙を持たせてある。
 あの人に任せておけば大丈夫だと思うが、
 もし、この手紙が届いて半年経って二人がたどり着かなければ、
 お前の方から探しに行ってほしい。

 とりあえず、そんな感じだ。
 なんでもかんでもお前に任せる事になって、申し訳なく思っている。
 よろしく頼む。

 パウロ・グレイラットより』


 申し訳なさの溢れる手紙だった。
 パウロったら、まったく。

 ノルンとアイシャだけ先にこっちに来るらしい。
 少し不安だが、ベガリット大陸に連れて行くよりはこっちの方がいいか。
 でも、ゼニスの実家に預ける、という方法でもよかったんじゃないだろうか。
 いや、それはそれで問題があるのかもしれないな。
 ノルンはともかく、アイシャはゼニスの血が流れていないわけだし。

 旅は、まぁ大丈夫だろう。
 中央大陸は魔大陸なんかと較べても危険度が低いしな。
 この世界は人さらいが多いのが心配といえば心配だが、人さらいは基本的に弱者しか狙わない。
 ある程度腕のたつ護衛が二人もいれば、無理にさらおうとはしないだろう。

 手紙には、護衛がついていると書いてある。
 ジンジャーは、ザノバの親衛隊だった女騎士だ。
 どれぐらいの腕だったかは覚えていない。
 ただ、シーローンの騎士は水神流を習得しているから、護衛という任務では役立つはずだ。

 それと、もう一人。
 信頼できる人物と書いてある。
 誰だろうか。ギースかな?
 まさかエリスじゃあるまいな。
 他に頼れる人で俺とパウロが知ってる人……あ、もしかして、あの人だろうか。
 中央大陸を探すと言っていたから、もしかすると運よく遭遇できたのかもしれない。

 もしあの人なら、任せられる。
 ジンジャーもいらないぐらいだ。

 それにしても、文面からパウロの俺に対する信頼を感じる。
 信頼には応えねばならんな。
 長男だし!

 しかし、そうなると家を買ったのは功を奏したな。
 部屋も余っているし。
 迎え入れは問題なくできる。

 問題があるとすれば、妹二人がまだ幼い事だ。
 俺とシルフィの愛の営みは教育上よろしくない。
 まあ、寝室から離れた部屋を用意すればいいか。

 楽しみだな。
 いつ頃来るだろうか。
 二ヶ月後ぐらいかな。

 と、その前にだ。

「こういう事はきちんと相談せねば」

 シルフィの姿を探す。
 今の時間は台所でお料理中だ。

 台所へと移動すると、小柄な少女がトントンと野菜を刻んでいた。
 低い背に小さな肩、すらりとした体。
 そんな後ろ姿を見ていると、なにやらムラムラしてきた。

「シルフィ……!」

 俺は後ろからシルフィに抱きついた。
 エプロンの裾から中に手を入れて、柔らかい胸部をもみっと。

「痛っ!」
「あ」

 見ると、シルフィの指がザックリと切れていた。
 赤い血が球を作り、ポタリとまな板の上に落ちた。
 俺が抱きついた拍子に指を切ったのだ。

「……もう。ルディ、刃物を持ってる時は危ないよ」

 シルフィは珍しく、咎めるような口調で言う。
 指の傷はあっという間に治ってしまう。
 ほぼ無意識中に無詠唱で治癒魔術を使っているのだ。

「ごめんなさい。料理中は抱きつきません」
「うん。料理中は我慢してね。すぐ出来るから」

 俺は台所を退散し、食堂にて待った。
 ちょっとそわそわする。
 怪我をさせてしまった。
 調子に乗りすぎたかもしれん。

 椅子に座し、待った。
 そして、台所からシルフィが出てきたので、頭を下げる。

「先ほどは申し訳ありませんでした」
「そんなに怒ってないから。謝るなら普通に謝ってよ」
「うん。ごめん」
「はい。次から気をつけてくれればいいよ」

 俺たちは二人でイスに座り、食事を始める。
 シルフィの距離は近い。
 怒ってはいないらしい。
 最近、愛され過ぎていて、愛想をつかされた時の反動が怖い。

「それで、どうしたの。ルディがあんなに浮かれるなんて珍しいよね」
「ああ、父さんから手紙が届いたんだ」
「えっ! パウロさんから!?」

 俺は驚くシルフィに手紙を渡した。
 彼女は緊張の面持ちで手紙の出だしを読み、ちょっと残念そうにした。

「あ、まだ結婚したって報告は届いてないんだね」

 結婚に対する、俺の家族の反応を知りたかったようだ。
 しかし、読み進めていくうちに真面目な顔になった。
 最後に「そっか」とつぶやいた。

「よかったね、ルディ。みんな無事で」
「ああ」

 そういえば、何気なく言ったけど、シルフィは両親を亡くしているのだった。
 少々、デリカシーに欠けたかもしれない。
 俺の顔を見て、シルフィは苦笑した。

「もう、ルディったら、そんな顔しないでよ。
 確かに、お父さんもお母さんも死んじゃったけど、
 今はルディも、エリナリーゼさんもいるから、ボクは寂しくないよ」

 シルフィはそう言って、俺の手を握って、えへへと笑った。
 最近、シルフィは一段と可愛くなった。
 ベリィショートだった髪は伸びてショートぐらいになり、より女の子っぽくなってきている。
 白い髪はサラサラで、髪の間から伸びる長耳がキュートだ。
 こんな子が俺の嫁なのだ。
 夢ではなかろうか。

「シルフィ……」

 この可愛い子に新しい家族を作ってやりたい。
 自然とそんな欲望が湧き出してくる。
 一緒にいる日は、ほぼ毎晩ヤっているので、なおさらだ。

 とはいえ、出産となると大変になるのはシルフィだ。
 彼女のお尻は小さくキュートで、安産型とは程遠い。
 この世界は治癒魔術もあるし、出産での死亡事故は少ないようだが。
 しかし、死なないのと大変なのはまた別の話だ。

 いや、問題はそれより、俺たちに子育てができるかどうかという点か。
 正直、俺もシルフィもまだまだ人としては未熟だ。
 無論、年齢はこの世界においては成人だし、金も稼げる。
 けれど、一人の人間の親として、やっていけるのだろうか。

 ……大丈夫、世の中の生物はみんなやってる事だ。
 俺にだって出来るはずだ。
 できなくても、シルフィもついてる。
 二人で一生懸命やっていけばいいんだ。

 二年後にはパウロ達も戻ってくるだろうし。
 リーリャは子育てについては一家言持ってるから、何も心配はないだろう。
 問題は姑だが。
 ゼニスとシルフィは仲がいいという話だから、胃が痛くなるような事は無いと思いたい。
 パウロは……孫とか見せたら単純に喜びそうだな。

 っと、いかん。
 それは今は置いといて。

「手紙を読んだらわかると思うけど、妹が二人来るんだ。
 この家に住まわせてあげようと思ってるんだけど、大丈夫かな」
「もちろんだよ。この家も賑やかになるね」

 シルフィはそう行って、はにかんで笑った。
 何も問題はない、と。


---


 晩飯を食べた後、リビングへと移動する。
 魔術のお勉強の時間である。

 相変わらず無詠唱による治癒は使えない。
 だが、詠唱を暗記しておいたり、理論を知識として蓄えておくことは後で生きてくる。
 無詠唱だけが技術ではない。
 こだわる必要は無いし、一足飛びで上手になる事も考えない方がいい。

 俺もこの世界では才能がある方だと思うが、どうせてっぺんには行けないのだ。
 だったら、足元を固めて落ちないように気をつけなければならない。

「ふぬぬ……!」

 現在、シルフィは俺が作った水球を乱魔で消そうとしている。
 俺の手に指先を向けて、顔を真っ赤にして唸っている。
 俺は消されないように、魔力を使って水球を維持する。
 まるで負荷トレーニングのような感じだ。

 ぐねぐねとうねる水球が弾け飛んだらシルフィの勝ち。
 俺をベッドの上で好き放題する権利を取得する事が出来る。
 別にそんな権利なくても、一言言ってくれればその通りにするつもりだが。
 逆に、維持しきれたら俺の勝ち。
 ベッドの上でシルフィを思う存分可愛がる権利が得られる。
 勝たなくても持ってるが。
 ちなみに、大抵は俺が勝つ。


 シルフィは現在、火以外の攻撃魔術を上級まで使えるらしい。
 さらに治癒も上級、解毒も上級。
 こんな感じだ。

---

 火魔術:中級
 水魔術:上級
 土魔術:上級
 風魔術:上級
 治療魔術:上級
 解毒魔術:上級

---

 極めてハイスペックだ。

 最近知ったのだが、この六種類は、魔法大学では「基礎六種」と呼ばれている。
 最も使用頻度の高い六種類だ。
 魔法大学においては、最初の二~三年でこの六種類を初級にすることを目標とする。

 それらが取得したら、
 残りの数年で専攻するものを決め、上級まで学習する。
 というのが基本的な流れだそうだ。

 一つの事に打ち込んでも、才能が無ければ中級止まりになってしまう。
 魔力総量が足りなかったり、混合魔術で躓いたり……。

 何種類も上級を取れたり、聖級まで至る人物はほとんどいない。
 もっとも、シルフィやクリフのような逸材は十年に一人はいるようだ。
 十年に一人の逸材。
 毎年一人はいる奴だな。
 天才といえば天才なのだろうが、一般的な範疇だ。
 神とか呼ばれている化け物には及ぶべくもない。

 俺はどうなのだろうか。
 バーディガーディやキシリカの話を統合すると、
 俺の魔力総量は神級の域にあるらしい。

 だが、決して俺自身が神級になれるわけではなさそうだ。
 俺の場合は一般車に旅客機の燃料タンクをくっつけたようなものだ。
 いくら走ってもなくならないが、スピードは出ない。
 燃料タンクに見合ったジェットエンジンを積めば、今度は車体が持たない。
 設計思想からしてポンコツだ。
 いくら走っても無くならないのは、大きな利点だが。

「そういえば、シルフィ」
「な、なに? 今集中してるから……」
「俺たちの子供ってさ、やっぱり魔術の才能があるのかな」
「ふぁっ!?」

 シルフィの集中力が乱れた。
 未熟な乱魔は散らされ、水球は完全なる球体を作った。
 俺はそれを凍らせて、目の前のコップにチャポンと鎮める。

「そ、それは生まれてみないとわからないよ……」

 シルフィは顔を真っ赤にして、ふとももをもじもじとすりあわせている。

「生まれるには、その、旦那様の頑張りも重要というか、ね?」

 笑ってごまかしつつ、シルフィは俺の太ももをさわさわと撫でてきた。
 シルフィの細い手がくすぐったい。
 お返しに俺もシルフィの肩の後ろあたりをなでなで。
 こういう接触がなんだか嬉しい今日このごろ。
 リビングは一瞬にしてピンク色のムードになった。
 シルフィは俺の肩口に顔をうずめるように抱きついてきた。
 可愛い。
 旦那様は今すぐ頑張りたい。

 まあ、まだ生まれるどころか出来てもいない者の事を話すのは早いな。
 捕らぬ狸のなんとやら、だ。
 まずは狸を捕らなければ。

「あ。でも、ボクは長耳族の血が濃いから、出来にくいというか……。その、ルディが子供欲しいと思ってるのは知ってるんだけど、結構、長い年月が掛かっちゃう場合もあってね。おばあちゃ……エリナリーゼさんにも言われたけど、その、すぐには出来ない可能性の方が高くてね……」

 シルフィは俺の肩から頭を離し、やや不安げに俯いた。

 結婚してから、数ヶ月。
 俺とシルフィの性的な関係は順調に歩を進めている。

 少々赤裸々な話になるが、俺もマグナムをトリガーする瞬間に、エロゲーにありがちな台詞を言ったりもする。
 特に深い意味はなくて、単純に言ってみたかっただけな台詞で、
 かなり気持ち悪いと自覚しつつも、なんとなく興がのって口走ってしまっている。
 それをシルフィは真面目に受け取っているのかもしれない。

 まだ不妊を悩むほどではないだろうが、
 しかし彼女なりに、少々不安に思っているのかもしれない。

「そ、その、ボクに子供が出来なかったら、お妾さんを迎えてもいいからね?」
「今の所、その予定は無いよ」
「でもルディ……子供が欲しいんだよね?」

 逆の立場で考えてみよう。
 俺が種なしだと発覚して、シルフィがどうしても子供を欲しいと思って。
 シルフィが別の男を連れてきて、子供を作ったら。

 俺は自殺するかもしれない。
 シルフィにそんな思いをさせるわけにはいかない。

「馬鹿だなシルフィは。俺が欲しいのは子供じゃなくて、好きな相手との愛の結晶さ」
「ルディ……」
「愛してるぜシルフィ。俺のお姫様」

 我ながら歯の浮くセリフだ。
 背筋が痒くなる。
 しかしシルフィ……というかこの世界の人々はこういうセリフに弱い。
 この間も、冗談で「君の瞳に乾杯」とか言ってみたら、シルフィは顔を真っ赤にしていた。
 効果は抜群だ。
 恥ずかしがってちゃ前には進めない。

「……ボクも、愛してるよ」

 シルフィが目をうるませながら、俺の腕に抱きついてきた。
 顔は真っ赤で、恥ずかしそうに口元が結ばれている。
 パーフェクトコミュニケーション。

 さて、盛り上がってきた所で二階の方に移動しましょう。
 俺はシルフィを、お姫様だっこにて持ち上げる。
 シルフィは俺の首の後ろあたりに手を回して、為すがまま。
 潤んだ瞳には、精一杯かっこよくしようとしている俺の姿が映っており、心臓の鼓動がドクドクと早鐘を打っている。
 彼女もまた興奮してくださっているようで何よりだ。
 こういうのはお互いの気持ちが大事だからな。

 さて、今夜は熱い夜になりそうだ。
+注意+
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