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独りぼっちの世界

作者:キュウ
 ある一人の男が、重たい瞼を開いた――。

 窓から入り込む隙間風が、刺々しく男を今日も目覚めさせる。男はゆっくりゆっくり、その身体を傷だらけのベッドから起こした。
 本当は、このまま寝ていたい。
 自分はもう起きている、生きている資格など無い。何にも代えることのできない、絶対に赦されない罪を犯した。罪を犯してから、やっと我に返りその重さに気付いた。それなのに、自ら命を絶つ勇気すらも無い。
 男にとってもう、生きる事に価値など無かった。
 それでも、こうして生き続けていた。本当に勝手な事だが、死にたくはなかったのだ。自分も他人の命を奪ってきたというのに、自分にそれはできなかった。彼らも、その瞬間はこんな気持ちだったのだろうか。……いや。これ以上だったのだろう。どのみち、愚かな卑怯者になど、その気持ちを理解することはできまい。
 男にとってもう、生きる事に価値など無かった。
 毎日毎日、たった一人で、何も産み出さない生活ばかりをしていた。産み出したって意味など無い。自分は一人なのだから。
 男の生きる価値は、とっくに失われていた。
 あの日、あの時。とにかく周りが憎かった。「お前なんか要らない」と、そう言ってき続けた、周りが。この怒りは、自分の中に生まれたこの獣は、心などという脆弱な鎖では決して留めて置けるものではなかった。
 男の生きる価値は、とっくに失われていた。
 最初は両親を。次に兄弟。そして同級生を三人。走り出せば止まらない、獰猛な獣が暴れだし……いや、獣など本当は関係無いのかもしれない……とにかく、多くを殺めてきた。自分を捕まえようとした、捕まえようとしてくれた、罪の無い警官達をも。……それでも、憎しみは鎮まらなかった。
 男の価値を認める者、赦さない者。どちらだってもう居ない……。
 男は家の扉をキイと開いて外へ出た。
 見渡す限り灰色の世界。地面には亀裂が入り、宙には砂が舞い、空はどんよりと歪み、立ち並んでいた建物は、皆寂れた古代遺跡のように崩 れ去っていた。男は一人、何時間でもそこに立ち尽くした。
 男の価値を認める者、赦さない者。誰一人、そう一人だって、もうどこにも居ない……。

 男の犯した罪。一体、誰が裁けると言うのだろうか。
 男は今日も独り。廃り果てた無色の世界で、ただただ立ち尽くすことしか、できないのだった……。
滅亡した世界が舞台のダークなお話です。
息抜きにいかが?って3分短編を書いてますが、
あんまりこういう話だと息抜きに合わないかもですね(笑)。
それでもこの独特の世界観に浸っていただけたら幸いです。

HP(→http://kyunote.blog.fc2.com/)にて
コメントや編集後記、ほかのお話のまとめも掲載しておりますので
ぜひこちらにもどうぞ

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