壱、十三の神と鍵 第二幕
――其の夜。
二人は、他の子供達と一緒に野宿をした。
勿論、ルーク以外誰もミカエルは視えてはいない。
「ん?」
ミカエルは気付く。外に誰か居る事に――
『ヒヒヒヒ…子供達、グッスリ寝てましたぜ…兄貴』
『そうか…子供とは呑気なもんだな…人質だというのにな…』
「!?」
如何やら、外に居るのは見張り役の男二人。
何やら、二人で話しているようだ。
ミカエルは、更に【霊視】を試みた。
『兄貴、あいつ等如何します?』
『俺たち以外何も食わしてねぇんだ…あの王子様も、其の他の子供達も、其の内王様に見捨てられて死ぬさ…』
『そうッスね…俺達は、王様や他の子供達の親から金をガッポリ貰えば其れで良いッスね』
「あやつ等…」
「駄目だよ…今出ちゃ…」
ミカエルが立ち上がり盗賊達の方へ向かおうとすると、ルークは彼の袖を掴み止めた。
「あの人達が悪い人だとは分かってる…」
「だが、しかし…」
「僕に任せて…?ね?」
「う…うむ…」
ルークに言われるまま、ミカエルは渋々と元の位置に座った。
そして、其のまま夜が明ける――
――翌朝。盗賊達は、ルーク達を見て驚きを隠せずに居た。何故なら、三日間何も食べさせてない筈の子供達に、活気が見られたからである。
彼等は、怒りのあまり一番地位が高いルークに目をやり、胸倉を掴み上げた。
「貴様!隠してた食料を食ったな!?」
「そんな物知らないよ…僕達は神様から貰ったんだ!」
ルークは、恐れの無い眼差しで言う。
勿論、彼の言っている事は間違いでは無い。
「嘘をつくな!貴様等は、食の欲望のあまり、俺達の食料を食いやがったんだ!!」
怒り狂った盗賊に、最早彼の言葉は届いてはいない…証拠を調べずに、彼に言いがかりをつけている。
実は、盗賊達の食料はちゃんとあるのだ。別の倉庫に――
だから、ルーク達が食べたのはミカエルの物であって、盗賊達は勘違いしているのだ。自分達の食料を子供達が盗ったのだと――
奪われたと思い込んでいる彼等は、頭と思われる人物に早速報告を入れに行ってしまった。
「此れは拙い事になった…」
其れを見てミカエルは、ポツリと呟いた。
彼の額には、汗が滲み出ていた。
「兄貴ぃ!」
「なっ!?」
盗賊達は、空家から少し離れた所にある倉庫に駆け込み、ある一室のドアをバンッと開ける。
しかし、其処には、男が数人重なった人の山の上に座っていたのだった。
「あ…兄貴?」
「よぅ…如何した?お前等…」
男は、殺気立った目で、盗賊達を睨みながら言った。
「あ…兄貴は如何したんだよ!?」
「ん?兄貴?兄貴というのは…この男の事か?」
男はそう言いながら、自分の尻の下にある人の頭を踏みつけた。
盗賊達は、其の顔を見て絶句した。
自分達の頭の変わり果てた姿――彼等は信じられずに居た。
「お…オメェは何者だ!?」
「俺か?俺の名は、神 光来だ…」
『神…光来!?』
男の言葉に、驚愕の声を上げた。
男の名は、神光来――大陸中に響き渡る程の凄腕で、世界最強といわれている『伝説の殺し屋』である。
盗賊の間では、知らぬ物は仏(?)と言われる程有名な殺し屋なのだ。
「ったく…取引を持ちかけたら、皆此れだ・・・俺は疫病神か?」
「と…取引だと?」
「そう。頭の座を俺にくれってな…」
「ふ、ふざけるな!やれる訳ねぇだろうが!?」
光来の言葉に反発する盗賊達。
「ふ〜ん…でも、まあ…本当に頭が死んじまった訳だ…俺が頭になっても構わねぇだろ?」
「そ…そんな事――」
「認めねぇってか?」
光来の質問に動揺を隠せずに居るNo.2と見られる男。如何やら、頭の座を狙っている様だ。
「か――」
No.2と見られる男が口を開こうとした其の時――
「い、いえ、滅相も無い!今日から貴方が頭で結構です!!」
(え?)
もう一人の男が、光来の殺気に畏れを生したのか――慌てて其れを認めた。
「お、おい!?良いのか!?コイツ殺し屋だぞ!?」
「今殺されるよりはマシだ!」
「じゃあ、決まりだな…で?何の用で此処に来たんだ?お前等」
光来は、不敵な笑みを浮かべながら聞く。
しかし、此れが悲劇の幕開けになる事は、誰もまだ知らずに居た。 |