四、偽りの薔薇 第三幕
「私だって、話すつもりだったさ…」
椅子をアルの方へ向けると…其の者は、国王の姿では無く、【天界の民】の姿になっていた。
金髪で額に小さくて青い丸い痣の【天界の民】…其れが、ルーク――いや、ミカエルの本来の姿であった。
「しかしね…誰かさんに似て、話そうにも話せる場を与えてくれない者ばかりでね…」
ミカエルはそう言い、宝蘭からお裾分けして貰ったハーブティーを一口口にする。
[悪かったなぁ…俺の家族が、皆こんなんで…]
「別に、嫌味を云っている訳じゃないよ?」
光来がムッとしながら言うと、彼は不敵な笑みを浮かべた。
(ゼッテェ…嫌味だ…)
光来が、そう思っていると――
「何か云ったかい?光来」
ミカエルは、視てないフリをしながら言ったが…光来には、自分の心を彼は何時も視ている事は分かっていた。
[今日と云う今日は、ゼッテェに許さねぇ…]
「え?何をだい?」
今までの怒りの限界を超えた光来に対し、ミカエルは分かっているのか分かっていないのか…まだ不敵な笑みを浮かべていた。
しかし、次の彼の一言が、ミカエルの行動を変えたのだった…
[もう人(?)の心を勝手に視るな!視る時は、必ず俺に聞け!!じゃなかったら、俺はお前の影武者を辞めるぞ!?良いな!?]
全身の毛を逆立て殺気立った状態で、光来はミカエルに言った。
流石に此れ以上怒らすと、何を仕出かすか分からないと思ったミカエルは、
「わ…分かったよ…」
と、渋々承諾した。
因みに、最初に光来が話したと思うが…彼は、霊獣の【複製】を生かし、ミカエルの影武者をやっている。だが、六年前からミカエルが直々に天界に赴いた事で、本人が人間界に居る事がバレている為、今の光来は伝言役として天界と人間界を行き来しているのだ。
「ところで…」
「ん?」
「ケイアス様は、如何致しましょう?」
「う〜ん…ケイアスには、此処まで色々苦労をかけたからね…其の疲れでも出たのかもしれないね。そうだね…客室に寝かしておいてくれないかい?アルベルト」
「畏まりました…では」
アルはそう言うと、龍稔を抱えたまま、書斎から出ようとした。すると――
「あ…そうそう…」
「何だい?アルベルト」
「早く【ルーク様】にお戻り下さいね…?直ぐ其処まで、あの方が来てますよ」
アルは忠告をした。
「あ、ああ…確か――」
「翠彩様です」
「構わない…私の本当の姿は、彼は知っているから」
「そうですか…其れなら安心ですね。では」
「ああ…頼んだよ」
アルが書斎から出ると、其れと入れ違いに黒い髪の少年が入って来た。
「失礼致します…ミカエル殿」
「やあ…いらっしゃい。翠彩…あと、兄さんもいらっしゃい」
翠彩と思われる少年を椅子に座らせると、彼の肩を見ながらミカエルは言う。
少年の肩には、黒い兎がちょこんと座っていた。
[気付いてたか…【聖王】よ]
黒い兎は、テーブルに降りると葉巻を出し、火を付け吸い始めた。
如何やら、ミカエルとは兄弟か何かの様だ。
「気付くよ…一緒に創られ、兄弟みたいなものなんだから」
[確かにな…で?何の用だ?我輩を呼んだのは、あの小僧についてだろ?]
黒兎は、光来をジロッと睨む。光来も無言で睨み返した。
「御名答…流石は、兄さんだ。そう…ケイアスの事でお願いがあって呼んだんだ…」
[其れは、わざわざキースから呼び出す事か?【霊視】で通じ合えば良かろうに…]
「其れだったら、あの方々に知られてしまうからだよ…」
[成程…確かに、今回のは制限が多過ぎるからな…で?頼みは何だ?我輩は、此れでも魔族だ。内容次第では断るぞ?]
「大丈夫。今の兄さんなら、引き受けてくれる内容だから」
「ん?」
ミカエルの言葉に、黒兎は首を傾げた。
この後、ミカエルは、黒兎にある事を頼んだ。
勿論、この内容は、内緒である。 |