参、紅の少女 序幕
「オバチャン、AランチとCランチ…あと、コレにはサラダね?」
「あいよ〜ぉ!」
――スエズ村に一軒しかない酒場。
ウィング・シティを出て一日が経ち、ラリアス・シティまであと一日。
龍稔達は、暫しの休息を得る為、其の酒場に立ち寄っていた。
オバチャンが、彼らから離れて行くと――
「コレって…俺を物扱いするな!」
実の息子(今は繋がっていないが…)に、『コレ』と言われたのが気に食わなかったのか、光来が小声で龍稔に怒鳴った。
「仕方が無いだろ?」
すると、龍稔は、呆れた様に溜め息を吐きながら言う。
「ミカエ――じゃなくて…ルークは、身分を隠さないといけないし…親父は親父で、他の人から見ればただの生き物だ。喋れる事がバレたら、拙いだろ?親父、お喋べりだから」
此処で、改めて説明しておこう。
この世界は通称【ガーナリア】と言い、龍稔達が今住む所はエターナリア大陸の北東にあるラリアス王国である。
【ガーナリア】では、三つの角と尾を持つ生き物等、普段から付近の森に居り、見慣れている。何せ…この世界には、大和の様な龍族が存在しているのだ。光来の様な者が居ても可笑しくない。
「確かに…光来は、口が滑りやすいから」
「うっ…」
如何やら、図星の様子…親友と息子に言われ、光来は言葉を詰まらす。
「あ…あのぅ…」
すると、ルークの横から少女の声が聞こえて来た。
『はい?』
龍稔達は、声のする方へと一斉に振り向いた。
其処に立っていたのは、紅い髪に緋い瞳の少女だった。
「此処、空いてますか?他に座れる場所が無くて…」
少女は、困った顔で龍稔に聞いた。
「あ、良いよ。一つ空いてるから…」
「有難う」
龍稔に勧められ、少女は彼の隣に座る。
「ん?(どっかで見た覚えが…)」
少女を見て、龍稔はふと気付く。少女の見た目は細身だが、割りと躯つきはシッカリとしている。良く見ると、両耳には雫型の赤翡翠のピアス、胸元には縦長の楕円状の此れまた赤翡翠のブローチがしてあった。
そう…彼には、見覚えがあったのだ。少女の顔に…
「な…何?あたしの顔に何か付いてるの?」
あまりにもジーッと見られていたせいか、少女は迷惑そうに龍稔に言う。
「『あたし』?――あ〜ぁぁぁぁぁ!」
其の口調で、彼は思い出した。
「お、お前は、鈴!」
「え?」
「忘れたのか!?俺だ!神龍稔だ!!」
急な事でポカーンとしている少女に、龍稔は必死になって言う。
「ま…まさか、リュウ…?リュウなの!?」
彼女もまた、龍稔の口調で思い出す。
二人は、お互いを見合う。流石に、まだ驚いている様だ。
「あれ?二人共、知り合い?」
其れを見て、ルークはキョトンとしながら聞くと、
「し…知り合いも、何も…俺達は」
「お…幼馴染みです…」
と、龍稔と少女・鈴は、真っ赤にしながら答えた。
[やっぱり、鈴ちゃんか…]
すると、横から光来が口を挟む。
「光来、此れも知っていたのか…?」
[あぁ…影から見守ってたから…な――]
自慢気に話す光来をルークは、ハリセンでバシッと叩いた。
ハリセンが、何処から出て来たのかは…秘密である← |