弐、旅立ち 終幕
[ミカエル!おまぁ――]
光来が彼に怒鳴ろうとすると、龍稔が其れを静止した。
「良いよ…親父。今話したくないんだったら、今話さなくて良い…ミカエルだったら、何時かは話してくれるさ」
[龍稔…]
「すまない…ケイアス」
ルークは、そう言い立ち上がると、龍稔に近付いた。
「ミ、ミカエル?」
ルークの顔が目の前に近付き、龍稔は目をパチパチする。
そして――チュッ…と、龍稔の唇に何か軟らかい物が当たった。
『なっ!?』
一同は、驚きを隠せない。何故なら、ルークが龍稔に――
「御馳走様☆」
ルークはそう言いながら、自分の唇を軽く舐める。
そう…キスをしたのだ。しかも、唇に…
「ミ〜ィ、カ〜ァ、エ〜ェ、ル〜ゥ!」
龍稔は、其れが分かると、顔を真っ赤にして怒り始めた。
良く聞いてみると、小さな声でブツブツと何か呪文を唱え始めていた。
[あ…怒った…]
「ヤ、ヤバイですよ…?光来殿」
[ん?何でだ?大和]
急に怯え始めた大和を見て、光来は不思議そうに見ながら聞く。
「光来殿は、あまり一緒ではいらっしゃらなかったので知らないでしょうが、実は…ケイアスが怒ったら、全員巻き添えになります…」
[は?何だそりゃ…]
「其れって、まるで光来じゃ…」
[ちょい待て…!ミカエル、其れは如何いう意味だ!?]
「其れはだね…光来。ケイアスは、お前の生き写しみたいなも――」
「雷神招来!雷撃陣!!」
ルークの言葉を遮るかの様に、次の瞬間、大和の言葉が真実のものとなった。
龍稔が放った術で三人は吹っ飛び、よろず屋の事務所は一部大きな穴が開き、外の雨が吹き込んで来ていた。
彼による事務所の破壊は、此れに止まらず…過去何回か、此れで修理を繰り返したのは言うまでも無い…
其れから四日後。
大和の雨乞いによって降っていた雨は、綺麗サッパリと止んでいた。
「う〜ん…良い天気だぁ…」
龍稔は、自室の窓を開け空を見ると、天井に高く腕を伸ばした。
「そうだな…旅立ちには、絶好の日和だ」
ルークはそう言い、ベッドから起き上がる。
「何で、ミカエルが居るんだよ…?此処に…」
「良いじゃないか…光来の部屋だと寝辛いし」
「は?だから、何で?」
質問にニコニコしながら答えるルークに、龍稔は首を傾げながら更に聞く。
「実はね――」
[其れは、俺が鍛治をやるからだ]
すると、ルークの言葉に続く様に、光来が横から口を挟む。
「そうそう、あそこ『鍛冶部屋』だから、焦げ臭くて…って、光来帰ってたの?」
[お…お前、最初から気付いてたくせに…]
ルークの嫌味ったらしい言葉に、光来は怒りを抑えつつ言うが、やはり腹が立ったのか睨んだ。
「親父、何処に行ってたんだよ?義姉さんが、心配してたぞ」
[アルベルトのとこに行ってたんだ…帰りが遅すぎちゃいけないだろ?]
「そりゃそうだな…」
光来の言葉に、龍稔は納得する。
実は、光来は二日間の間、ラリアス・シティへと戻り、国王であるルークの現状をアルベルト報告していたのだ。
[其れに、アイツからは文句を沢山聞いて来たんだ…今日こそ帰らないと、次はメグルの方が煩いぞ?]
「はいはい…」
こうして…三人(正しく言えば、二人+一匹(笑))は、ウィング・シティを出た。
そして、此れから起こる数々の試練が、龍稔達を待ち受けているのだった…
『旅立ち』 ―完―
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