弐、旅立ち 第七幕
如何やら、鼻に思いっきり当たったらしい…
「いてててて…」
龍稔は、鼻を擦りながら、何が当たったのか確認する。
「って、大和!?」
目の前に居たのは、小さな灰色の龍だった。
この龍は、大和といい、龍稔に使える【守護人】の一人で、本来の姿は千年以上も生きる巨大な龍だが、動き易い様にこの様に小さくなったり、人型になったりしている。
大和は、龍稔にぶつかったのに罪悪感を感じているのか、目に涙を溜めていた。
[ケイアス…痛くなかった?]
「ちょびっと…」
[ごめん!]
龍稔の一言で、大和は大量の流し始めた。
「どっわぁ!?な、泣くな!【雨乞い】になるから!!」
龍稔は、慌てて彼を泣き止まそうとした…が、遅かった…
外は、既に黒い雲が広がり、酷い土砂降りとなっていた。
三十分後――
大和は、既に泣き止んではいたが、外はまだ激しく雨が降っていた。
「まさか…龍族の【雨乞い】が、此れ程までとは…この調子だと、明日は帰れそうに無いね…」
「わ、わりぃ…」
窓の外を眺めながらルークが言うと、龍稔は面目無さそうな顔で謝った。
龍族の【雨乞い】とは――龍が涙を流すと、流した量だけ雨が降るといわれている。
其の雨が降る期間は、能力の数値で違い、能力が低ければ短く、逆に能力が高ければ高い。
大和の場合、龍族の長であり、【聖龍】の中ではトップクラスの実力を持っている為、期間は大体四〜五日くらいである。
「さて…何処まで話したかな?」
[【長老会】が出した条件までだ。其のくらい、覚えとけ]
「全く、嫌味ったらしい奴だな。お前は…」
光来に言われ、ルークはギロッと睨む。すると、光来は黙り込んだ。
「オッホン。ケイアス、聞きたい事があるのでは無いか?」
「え?俺は――」
「良いから、良いから」
「じゃ…じゃあ…ミカエルが、俺に【鍵】の場所と【神】の称号を持つのが誰なのか教えたら、如何なるのさ…?」
ルークに言われ、龍稔は恐る恐る聞いた。
しかし、ルークは黙っていた。
すると、横から灰色の髪の青年が、二人に珈琲を出す。
え?この青年が誰かって?勿論、この青年はあの大和である。彼が人形の時は、灰色の神と銀色の瞳に、額に五つの大小様々の緑の菱形の痣がある。
不安そうに聞く龍稔を見て、
「そろそろ話されたら如何なんですか?ミカエル殿」
[そうだぞ?見返る。龍稔は知りたがってんだ…そろそろ話しても良いんじゃねぇのか?あの事を…]
大和と光来が口を挟む様に言う。しかし――
「そう云われても…今は話せない」
ルークは、そう言い再び黙り込んだ。 |